絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

頑張れ小さな女の子~9.春ですよ

第9話。次回で最終回です。
今回はリリーを出すか紅魔館を出すか悩みに悩みました。
紅魔館は番外編で出せればいいなぁなんて考えていたりします。




「今日のー!」
「仕事をー!」
「言い渡ーす!」
「言い渡ーす!」

 しばしの無言。
 縁側に座っていた霊夢が立ち上がり、笑顔でルーミアの前に立つ。
 そして、

「真似するな!」
「ふわぁっ!?」

 ルーミアの額に、霊夢の強烈な八連デコピンが炸裂した。

「うぅ、痛いよ!」
「おちょくる方が悪い」

 涙目で文句を言うが、霊夢は軽く流す。
 ルーミアは、額を手のひらで擦りながら未だに霊夢を睨んでいるが、霊夢は腹の立つくらい綺麗な笑顔を返すだけ。

「霊夢、その顔気持ち悪い……痛い!」

 素直な感想を言ったルーミアは、こめかみをグーでぐりぐりとやられる。

「痛い痛い痛い! 馬鹿霊夢! くたばれいむ!」

 結局、ぎゃあぎゃあと喚くルーミアが解放されたのは、数分程度の時間が経った後だった。

「うみゃぅ~」
「今日の仕事を言い渡すわ」

 ルーミアは涙目で睨むけれど、霊夢は無視して話を進める。

「今日のあんたの仕事は、『春』という単語を言うやつを撃ち落としなさい」
「え? どういう意味?」
「多分今日辺りに飛んで来るから。私が合図したら弾幕で撃ち落としなさい」
「うん、とりあえずは分かったわ」
「じゃあそれまでいつもどおり、境内を箒で掃いてきなさい」
「はーい」

 箒を手に取り、境内へと向かう。もちろん、麦藁帽子を被って。
 えへへと笑いながら境内へ行くルーミアを見て、霊夢は何が楽しいのやら、と思っていた。

「ま、あいつがいつも楽しそうなのは今に始まったことじゃないから別に気にしないけどね」

 そう呟いて、お茶を啜る。
 陽射しがやけに眩しい。けれども、暑すぎる気候ではない。

「もう、春ねぇ……」





◇◇◇





「ふぁ~!」

 ルーミアは凄い勢いで落ち葉を掃いている。
 ただ駆け回っているだけのように見えるが、意外にもちゃんと集められているから驚きだ。

「よーし、ちゃちゃっと終わらせよう!」
「春ですよ~!」
「え?」

 緩い声と共に、ルーミアの頭上から雑な弾幕が降り注ぐ。
 慌てて避けるルーミア。

「ルーミア! 撃ち落としなさい!」
「え! あ、うん!」

 霊夢の声が響き、ルーミアは構える。
 頭上で雑な弾幕を放ちながら暴れる者は隙だらけで、ルーミアの放つ弾幕をもろに受け、落ちた。

「えと……」
「よくやったわね、ルーミア」
「い、一体何なの?」
「いいから、とりあえずこいつ回収するわよ」

 そう言いながら、地面に倒れ伏したまま動かない者を担ぎあげ、室内へと向かう。
 ルーミアがそれを追おうとするが、

「あ、ルーミアはまだ戻って来ちゃ駄目よ」
「え?」
「それ、片付けてからね」

 ルーミアが霊夢の指がさす方を向くと、そこには盛大に散った落ち葉があった。
 先ほどの弾幕で、集めた落ち葉が巻き添えをくらっていたようだ。
 苦笑いを浮かべるルーミアに霊夢は、

「頑張ってね」

 凄い笑顔で、そう言った。



◇◇◇



「霊夢! 終わったよ!」
「あーお疲れ様」

 ルーミアが掃き掃除を終えて、霊夢の元へ行くと、そこには、先ほど撃ち落とされた者がちょこんと座っていた。
 縁側にいつもどおり、ルーミアは腰かける。ルーミアと霊夢の間に、ちょこんと座る者は、先ほど撃ち落とされたせいか、白い服が少し汚れていた。

「えーと、誰?」
「春妖精リリーホワイトよ。それで今反省中」
「……すみません」

 リリーはしゅんとしている。
 ただでさえ小さいリリーの体が、今はもっと小さく見える。

「毎回この時期に興奮しすぎて見境無く弾幕を放つのよ」
「すみません……」
「その度に迷惑だから私や魔理沙やらから撃ち落とされてる、そんな子よ」
「どんな子よ……えっと、さっきは咄嗟に撃ち落としちゃったけど、怪我無い?」
「あ、はい。大丈夫です」

 未だに反省しているせいか、どこか弱々しい。
 どうすれば良いのやら、ルーミアが霊夢をチラッと見る。
 霊夢は小さく溜め息を吐いた後、リリーの首に腕を回す。
 突然のことに、リリーは目を大きく見開いてパチパチし、驚いている。

「はい! 反省タイムしゅーりょー!」
「え、でも……」

 リリーは根が真面目だ。
 その分溜め込んでいるものを、この時期に全て発散しているのかと思うほどに、普段が良い子なのである。

「そうだよ。気にしないで良いと思うよ。霊夢はすぐに忘れるタイプだから」
「誰が馬鹿っぽいって!?」
「い、言ってないよ! 痛い痛い痛い!」

 リリーの首に回した腕とは違う方の腕をルーミアに伸ばす。
 そしてルーミアの頭を片手で掴む。割と強めに。
 ルーミアは喚くが、霊夢は笑顔。
 そんな二人の様子を見て、リリーは、

「あはっ」

 笑った。それは、春のように温かい笑みだった。
 それを見た霊夢が、ルーミアから手を離して、リリーの頭に手を置き、クシャクシャと髪を撫でる。

「よし! それで良いのよ」
「うん! 良い笑顔!」

 霊夢とルーミアが笑顔でそう言った。
 リリーも二人の笑顔につられて、また笑った。

「さてと……お茶にするかしらね」
「うん!」
「リリーも飲んでくでしょう?」
「いえ、私は……」
「そう、飲んでくのね。分かったわ」
「って話聞いて下さいよ!」
「あはは」

 霊夢はお茶を入れに行く。
 ルーミアとリリーが残る。
 頬を撫でる風が、心地良い。その心地良さに、リリーは目を閉じる。木々が、風が、匂いが、全てが、リリーにとって春を感じられるものだった。

「春好きなの?」
「春妖精ですから」

 どこかおかしいルーミアの質問に、小さく笑いながら答える。

「ルーミアさん、でしたよね」
「うん!」
「ルーミアさんは、春好きですか?」
「う~ん、意識したことないよ」

 春夏秋冬、季節を意識して感じる妖怪は少ないだろう。
 人間は短い人生の中、そこに美しさや儚さを感じたりするが、妖怪は長い時を生きるため、わざわざ意識している者は少ない。

「そうですか。なら、よかったら意識してみて下さい。感じてみて下さい。草木や空気を、春にしか感じられないものを……」

 目を瞑り、静かに言葉を紡ぐ。
 今度はルーミアの頬を風が撫でる。少し、くすぐったい。

「それで、春を好きになってくれたなら、嬉しいです」

 リリーの笑みは、ぽかぽか温かかった。
 ルーミアは頷く。

「はい、お茶」
「熱い!」
「熱いです!」

 そこに、霊夢が入れたてのお茶が入った湯飲みをリリーとルーミアの頬にくっつけた。
 リリーもルーミアも熱い熱いと騒ぐ。とは言っても、二人は本気で熱がっているわけではない。
 ただ、ふざけているだけで、その証拠に二人は楽しそうだ。

「はいはい、ふざけてないでさっさと飲みなさい。冷めちゃうでしょう」
「はーい!」
「ありがとうございます」

 また、リリーを間に挟むようにして座る。
 三人同時にお茶を啜り、三人同時に息を吐く。

「和むわねぇ」
「和むねぇ」
「和みますねぇ」

 どこか、年寄りっぽい三人だった。





◇◇◇





「すみません……遅くまでお世話になってしまって……」

 空は茜に染まりつつある。
 あのあと、リリーは霊夢に昼食やらおやつやらまでご馳走になった。
 そして談笑をして、楽しい時間を過ごし、あっという間に夕方になってしまった。

「せっかくだから夕食も食べていけばいいのに」
「作らないあんたが言うな!」
「ふゃなぁ!?」

 霊夢のデコピンをくらうルーミア。
 その様子を見てリリーはクスッと笑う。

「でも本当に夕食くらい食べていけばいいのに。なんなら泊まっていっても良いわよ?」
「いえ、私は春が訪れたことを早く幻想郷中に知らせに行かないといけませんから」
「そう……ま、気をつけて行きなさい。魔理沙とかに撃ち落とされないよう、あまり興奮するんじゃないわよ?」
「もう大分落ち着きましたよ」

 笑いながらそう言うリリーを見て、霊夢も軽く笑う。

「……それじゃあ、そろそろ行きますね。今日は楽しかったです。ありがとうございました」
「んー私もそれなりに楽しかったし、お礼なんて言わないでいいわよ」
「私も楽しかったよ!」

 リリーは霊夢たちに背を向け、飛び立つ。
 その背中に、ルーミアが手を振りながら、大声で叫ぶ。

「リリー! また会おうね!」

 その言葉に、リリーは、

「はい!」

 背を向けながらも、大声で答えた。
 霊夢も、小さくだが手を振っている。
 やがて、リリーの姿が見えなくなった。

「行っちゃったね」
「そうね」

 ルーミアは少し寂しそうに言う。

「ルーミア、あんた勘違いしてそうだから言っておくけど」
「ん?」
「リリーは春妖精だけど、別に春以外にも会えるわよ」
「え!? そうなの!?」

 どうやらルーミアは、来年の春までリリーにもう会えないと思っていたらしい。
 リリーは確かに春を知らせる妖精だが、別に春以外でも普通に会える。ただ、滅多に見掛けなくなるだけだ。

「そっか、じゃあ来週も再来週も会えるのかな?」
「まぁ会おうと思えばね。というかあんた単純ね。春妖精ってだけで春しか会えないと決め付けるなんて」
「う、うるさいなぁ……普通勘違いするでしょ!」
「しないわよ」

 少し恥ずかしそうに顔を赤くして拗ねた態度を取るルーミアを見て、霊夢は意地悪く笑う。

「あ、霊夢」
「んー?」
「ほら、あれ」

 ルーミアが指をさす方向を霊夢が振り向くと、ある一つの蕾が、小さな花を咲かせていた。
 それを見た二人は、

「春ね」
「春だね」

 そう、呟いた。
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