絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

たまにはこんな違う一日も

文と霊夢。

 

「動物を愛でることは大切だと思います。主に鳥」
「とりあえず、あんたは私の頭の上から降りろ」

 霊夢の頭の上に、文が無駄に背筋をぴんと伸ばして立っている。もちろん、本当に体重を預けているわけではなく、あくまで頭の上にくっついて浮いているだけだ。
 文のことを人間と勘違いする者がいたら、人の上に人が立っているとしか見えない奇妙な光景ではある。

「今日は良い天気ですね」
「話を逸らすな。降りなさい」
「そういえば私、今日お土産にお饅頭を――」
「よし、そのままでも許す」
「持ってきてません」
「くたばれ」

 上空から陰陽玉でも落としてやろうかと考えたが、自分の真上に居るため巻き添えを喰らいかねないと思い、やめた。
 さて、どうやって仕留めてやろうかと霊夢が思考を巡らした瞬間、文が目の前に降りた。

「不穏な空気を感じたので降りました」
「最初から降りなさいよ。で、今日は何の用?」

 どうせ何かしら厄介な用事でもあるのだろう。そう思い、ため息混じりに訊いてみた。

「とりあえず、これお土産の天狗煎餅です」

 天狗煎餅は、天狗の山限定のお菓子だ。
 この煎餅は鼻高天狗がモデルになっていて、煎餅の中央部分が不自然に数センチほど出っ張っている。これを面白いという者もいれば、なにこれ気持ち悪いと嫌悪する者もいる煎餅だ。

「珍しい……あんたがお土産なんて。もしかして、よほど厄介な用事なのかしら? 残念だったわね、私はお煎餅くらいじゃ釣られないわよ」
「霊夢さんー顔がすっごい笑顔ですよーそして煎餅の箱、大切そうに抱いてますね」

 口ではそう言うが、体は正直というやつだった。
 霊夢は気が付くと、煎餅の箱をぎゅっと抱きしめていた。
 そんな霊夢の様子に、文は苦笑い。

「はっ、違うのよ! お煎餅が魅力的すぎて、その……」
「はいはい、とりあえず中でお話してもいいですか?」
「ん、そうね。境内より茶の間でお煎餅食べた方が美味しいものね」
「いや、話を聞いて欲しいのですが……」

 文の言葉を軽く無視しながら、文を茶の間へと案内することにした。



◇◇◇



「で、用件は? 今の私はとっても機嫌が良いから、どんな厄介事でも言ってみなさい!」

 煎餅を平らげて、お茶を飲み一服。
 そんな時間をだらーっと過ごした後、霊夢はやっと文の話を聞く気になった。
 正面に座っている文に向かって、薄い胸を張ってどんとこい、といったような態度だ。煎餅でここまでテンション上がるのも、ある意味凄い。今度からは常にお土産を持ってくることにしようかな、などと思う文だった。

「えーと、それじゃあ一つ、お願いがあるのですが」
「よし、何?」
「何も理由は訊かずに黙って今日一日、泊めてくれません?」
「お帰りはあちらよ」
「即断られた!? いやいやいや、ちょっと待ってください。話を聞いて」
「あんたが何も訊かないで、って言ったんじゃない。だから私は何も訊かない。けど、理由も無く泊めたくない。そうなったら、お帰りいただくしかないわ」

 ニコッと笑顔で、霊夢は障子の方を指さす。つまりは、帰れという意味だ。
 文はうーうー唸るだけで、説得しない。いや、本当は説得して泊めてもらいたいのだが、その場合は理由を話さなければならない。そのせいで、言うべきか悩んでいるのだ。

「……理由言えば、泊めてくれますか?」
「場合によるけど、少なくとも泊めてあげる可能性はゼロじゃなくなるわよ」
「……分かりました。言いましょう。ですが、一つお約束を。絶対笑ったりしないでくださいね?」
「ん、分かったわ」

 霊夢が頷いたのを確認すると、文は大きく深呼吸。
 そして、目を瞑った。
 どれくらい、そんな状況が続いたか。そんなに長くは無い時間だったが、いつになく真面目な文の様子に、霊夢はとても長い時間のように感じた。
 ふいに、文がその口を開く。

「実は……」
「実は?」
「家、なくなりました」
「……は?」

 あまりにも予想外の言葉に、ぽかんとなる霊夢。

「えーと、なんで?」
「昨日、私の家で飲み会がありました。参加者はチビ鬼こんちくしょう――じゃなかった、素晴らしき鬼の萃香さんと、明らかに異常だけど自称普通の魔法使いの魔理沙さんです」
「あー……」

 なんとなく、どうしてそうなったのか霊夢には予想が出来てきた。
 文の表情は笑顔だが、言葉のふしふしに棘があるのがよく分かる。本心では怒っている、というのがよく伝わってくる。

「テンション上がって百鬼夜行にファイナルスパーク。朝になったら見事に私の家はなくなっていました」
「それで、なんで私のとこに?」
「責任を取らせるにも、萃香さんはしっかり定住してる場所がないですし、魔理沙さんの家は汚くてとても泊まれません。とりあえず、二人には今日一日使って修理させていますが」
「だからって、なんで私? 他に天狗の仲間くらい居るでしょうに」
「いえ、別になんとなくですよ。決して同僚たちにお前厄介だから絶対嫌だなんて物凄い拒絶されたとか、そんなことはないですよ。えぇ」

 文の笑顔が痛々しい。
 これにはさすがの霊夢も苦笑いしか出ない。

「はぁ……分かったわ。泊めてあげる」
「本当ですか!」
「けど、一日だけで大丈夫なの?」
「えぇ、鬼の萃香さんが居ますからね。明日までには修復余裕でしょう。では、改めてよろしくお願いしますね」
「ん、よろしくね」

 騒がしい一日になりそうだ。





 ~お掃除~



「おーあんたの力って便利ね」
「風を操るというのは、一見シンプルな能力に感じますが、扱いようによってはとても幅広くなります」

 霊夢は縁側に座って、文を見ている。
 箒を使わずに、風を起こして落ち葉を集めている。くすぐったさを感じるような微弱な風から、目を瞑ってしまうような突風まで、上手く活用した掃除方法だ。文はその場から一歩も動かずに、落ち葉が集められていく。
 掃き掃除を始めてたった数分で、掃除は終わってしまった。

「……いつもの数倍早い」
「ま、私にかかればこんなもんですよ」

 霊夢よりはある胸を張って、文は得意気にそう言った。

「文、おいで」
「あ、はい。なんですか?」
「えいっ!」
「おでこが痛い!?」

 素直に近付いてきた文に、割と全力でデコピンを放った。
 文は「くぁぁぁぁぁ!」と叫び、額を押さえている。見た目は地味な攻撃だが、結構な威力があるようだ。

「~っ……何故!」
「いや、なんか腹立ったから。主に胸」
「理不尽だー!?」




 ~おやつの時間~



「おはぎよ」
「これは手作り、ですか?」
「ええ、おはぎ嫌い?」

 もきゅもきゅとおはぎを食べる霊夢。
 文は、おはぎをジッと見つめたまま、まだ動かない。

「どうしたの?」
「いや、正直意外でして。霊夢さんって、結構ぐうたらしてるイメージがありますから、ご飯は作れてもこういう類のものは面倒だって言って作らないタイプかと思っていたので」
「あんた何気に失礼なこと言ってるわよね」

 一つおはぎを手に取って、ゆっくりと口に運ぶ。
 一口食べると、目を大きく見開いて驚いた様子になった。

「美味しい……ここ何年か、こんなに美味しいおはぎを食べたことは無かったです」
「……ん、そこまで言われると、ちょっと照れるわ」
「本当、美味しいです。お世辞とかじゃなく。うん、美味しい」

 まるで子供のように明るい笑顔で、もきゅもきゅとおはぎを食べる。
 作った霊夢からすれば、ここまで美味しそうに食べてくれるとやっぱり嬉しい。今まで、他人にこういうものを出したことが無かったから、素直に美味しいなどと褒められることに慣れていない。
 霊夢はただ素っ気無く、おはぎの乗せられたお皿を文に突き出すことしか出来ない。

「ん、まだ一杯あるからね」
「なんかすみませんね。泊めてもらうくせに、こんな美味しいおはぎまでいただいちゃって」
「べ、別に。また食べたかったら、いつでもどうぞ。結構よく作るからね」
「はい、是非!」





 ~夕飯~



「どうですか?」

 文が少し不安そうな表情を浮かべ、訊ねる。
 霊夢は目を瞑って、口を動かす。しっかりと、料理の味を味わっているのだろう。言葉を発さない霊夢に、文は鼓動が速くなる。どきどきが止まらない。
 しばらくして、霊夢は目を開いた。

「うん、美味しいわよ」
「それは良かったです」
「何よ、不安だったの?」

 文が自ら、泊めてもらうだけでは悪いからと言って夕飯の担当を申し出たのだが、不安だったようだ。
 霊夢の言葉に、文はホッと息を吐いた。

「いや~実は料理なんて真面目にするのは久し振りだったので。具体的には二年振りくらいで」
「……は?」
「いやー取材で疲れているから料理するのが段々と面倒になってきて、ずっと人里でお弁当を買ってました」
「あんた、もし今回料理失敗したらどうするつもりだったのよ?」
「そこはやっぱり、ほら、どんまいってことで!」
「……デコピンか陰陽玉か、選ばせてあげるわ」
「ちょ、冗談ですって! 本気と書いて冗談と読む、みたいな!」

 文の頭に、手のひらサイズのお手軽陰陽玉が三つほど降り注いだ。





 ~お風呂~



「お風呂沸いたけど、どうする?」
「え? それは一緒に入る的な意味ですか?」
「は? 何言ってんの?」

 冗談で言ったのに、普通に返されてしまい、なんとなく滑った感じがして恥ずかしくなる文。
 苦笑いを浮かべる。

「え、何? 一緒に入りたかったの? 別に良いけど」
「え!? や、そういうわけじゃあ――」
「んじゃあ、さっさと入っちゃいましょう。ぬるくならないうちにね」
「あ、ちょ、手引っ張らないでくださいって!」

 お風呂へと強制連行。
 予想外のことにわたわたすることしか出来なかった文。そのうちに、気が付いたらいつの間にやら流れに身を任せて衣服を脱いでしまっていた。
 細い体だが、しっかりと筋肉が引き締まっている。大きくもなく小さくもない胸が、露わになっていた。

「入りましょうか」
「え、えぇ……」

 そして、体にお湯をかけてから湯船に浸かる。
 湯船は決して広くはない。どうしても、体が触れ合ってしまう。さすがに正面向きあうのは恥ずかしくて、文は霊夢に背中を向けて浸かることにした。

「なんでそっち向いてるのよ」
「いや、普通恥ずかしいでしょう? なんで霊夢さんはそんなにオープンなんですか」
「……あー、本当だ。これ、恥ずかしいわね」
「今さら!?」
「いや、一緒にお風呂さっさと入るだけって認識だったから。文に言われて、初めてこの状況の恥ずかしさに気付いたわ」
「鈍いですね……」

 すると、霊夢も後ろを向いた。
 互いの背中が、そっと触れ合う。
 お湯の熱さとは、また違う熱さが伝わる。まるで、その触れ合っている部分だけ、火傷しているのではないかという錯覚にすら陥るほどの熱だ。
 妙な沈黙。

「えーと、そろそろ体洗いますね」
「そ、そうね」

 文は「洗いっこでもしますか?」と軽い冗談でも言おうとしたが、この状況でそんなこと言えるわけもなく、ただ湯船から体を出した。

「あ、あんまりこっち見ないでくださいね」
「わ、分かってるわよ」

 気まずいお風呂タイムは、まだ続く。





 ~おやすみ~



「狭くない?」
「大丈夫です。そちらは大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ」

 部屋は真っ暗。
 一つの布団に、文と霊夢二人で入っている。
 博麗神社には、布団が一つしかない。それを聞いた文は、自分は床で寝ると言ったのだが、一応客だからそんなことはさせられない、と霊夢が返した。
 そして、ぎゃあぎゃあと騒いだ結果、二人で寝れば良いという結論に至った。

「……霊夢さん、起きてますか?」
「起きてないわ」
「うん、起きてますね」

 なんてベタな、と心で呟く文。
 お風呂の時同様、互いに背をくっつけている。

「暗いし、顔見えませんし、そっち向いてみても良いですか?」
「……じゃあ私もそっち向くわよ」
「どうぞ」

 互いにもぞもぞと動いて、向き合う。
 暗くて何も見えないはずなのに、何故か二人とも、どんな顔をしているか見えるように分かった。

「ねぇ、文」
「なんですか?」
「……ううん。なんでもない。おやすみ」
「そうですか。おやすみなさい。それと、今日は本当にありがとうございました」
「別にいいわよ。たまにはこういう日も、良いって思ったわ」
「そうですか。では、またいつか泊まりに来ちゃいますね」
「……うん」
「いいんですか?」

 文は冗談で言ったために、霊夢の返事は予想外だった。

「いいわよ、別に」
「そうですか」
「ん、それじゃあ、改めておやすみ」
「……はい、おやすみなさい」

 そして、二人は目を瞑った。
 ひょんなことから始まった一日だったが、決して悪い一日ではなかった。
 また、こんな一日があっても良いかもしれない。
 そんな思いを、文も霊夢も抱きながら、深い眠りへと落ちていった。
 



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