疲労回復膝枕2010-06-06 Sun 21:47
文と霊夢であやれいむ!
ほのぼの、かな。 「巫女、飲み物~」 「水銀でいいなら」 「わーお、仕留める気満々ね」 霊夢の隣で、だらだらごろごろとしている文。 いつもと同じように、霊夢が縁側で一息ついていると、文が暴風と共に降ってきた。そして、突然のことに呆然としている霊夢に向かって、ただ一言「ちょっと休ませて」とだけ言って、今に至る。 別に霊夢は、休んでもいいなどと言った覚えは無いのだが、どうやら本当に疲れきっているようなので、仕方なく何も言わないでやった。 文は何をするわけでもなく、ただ本当にごろごろとしているだけだ。 「あんたさ、なんでそんなに疲れてるの?」 「んー? ちょっとね。組織の方でごたごたしてて。新人の下っ端たちを、何故か私が 訓練するはめになってね。もう三日三晩寝てないわ」 「ちょ、それ大丈夫なの?」 「うっそー。さすがに三日三晩はないわ。けど、最近睡眠時間がほとんどないの。それで、ちょっと隙見て抜け出してきた」 「それって、さぼりじゃないの?」 「いいのよ。大体、私は報道機関だっての。戦闘を教えるなんて、専門外なのよ」 それでも文が選ばれたのは、天狗という種族の枠を越えて、幻想郷においてもかなりの実力者に入るからだろう。文が本気を出すということはまずないが、それこそが強者が持つ余裕というものだ。 霊夢がふと横を見ると、文が疲れ切った表情でため息を吐いていた。 「あんたって、組織とかそういうのに所属してるの、似合わないわよね。結構自由人だし」 「安定を求めてるのよ。無限の自由は、それこそ不自由に繋がるわ。というわけで、お茶ー」 「客じゃない者に出すお茶はないわ」 「客であっても出さないくせにー」 「あら、分かってるじゃない」 「むぅ……巫女はけちだー。今度記事にしてやる」 「そんなこと記事にしたら、あんたの家乗り込んでやるわ」 「え? お泊りですか? いやーん。大胆ですねー」 「うっざ」 無駄に取材口調かつ棒読みで言う文を、霊夢は割と本気でウザいと思った。 「あ、もしかしたら追っ手が来るかもしれないけど、来たら適当に蹴散らしておいてね」 「なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ」 「ほら、私たち友達でしょ。いや、親友じゃないですか!」 「ったく、調子の良い奴ね」 「ありゃ? 否定しないのね」 「え? だって友達でしょ?」 「……霊夢はたまーにそういうこと、素で言っちゃうところが反則だと思う」 文が何故か腕で顔を隠しながら、そう言った。だが、霊夢は何かおかしいこと言っただろうか、と首を傾げていた。 なんとか顔を覗きこもうとしても、そのままそっぽを向かれてしまって、見ることが出来ない。 「ちょっと、突然どうしたのよ? こっち向きなさいよ」 「やーだ。今は顔見られたくないのー」 ぐいぐい。 じたばた。 見せろこら。 いやいや、見るなって。 霊夢が無理矢理腕を退けようとするが、文は暴れて抵抗する。 結局、文の表情も何故顔を見せたくないのかも分からずだった。 「はぁ……巫女のせいで、余計に体力使ったわ」 「あんたが隠し事するからでしょ。気になるじゃない」 「罰として、霊夢は私に今すぐ飲み物を持ってくること。それがあなたに出来る善こ……なんとかです」 「あんたは何処の閻魔よ。そして真似するなら最後までしなさい。なんで、最後一文字だけ言わないのよ」 「喋るのも面倒なくらいに、疲れてるのよ」 だらけきった文を見て、霊夢は呆れたようにため息を吐く。 文がここまでだらけている姿を初めて見た。よほど疲れているのか、それともただ単にこれが素なのか。霊夢にはどちらか分からなかったが、正直どっちでもよかった。 霊夢がすっと立ち上がる。 「あやややや、何処に?」 「飲み物持ってくるのよ」 「なんだかんだで優しい、そんな巫女が大好きよ」 「早苗のことね」 「霊夢のことよ」 「ふん、思っても無いことを」 「失礼な。これでも結構あなたのこと気に入ってるのよ?」 「ネタとして、でしょうに。それじゃあ、持ってくるからおとなしくしてなさいね」 「あ、ちょっと――」 文が何かを言おうとしたが、霊夢は聞かずに行ってしまった。 中途半端に伸ばした手は、ただ空を切っただけで何も掴むことは無かった。 「……掴めないなぁ」 文からすれば、割と本気で言っているのだが、霊夢はまるで風のように掴め無い。信じてもらえない原因はなんだろうか、と考え込むが、どうしてか分からなかった。もしこの場に文のことをよく知っている第三者が居たら、真っ先に「いや、普段の言動のせいだろ」とツッコミを入れるところだろう。 だが、今は文一人のため、そのツッコミは入らなかった。 「うーん、難しいなぁ」 どうしたものやら、と考えていると、風が乱れ始める。 文は目を細めて、しばらく風を読み取ることに専念した。そして、しばらくしてため息一つ。 「あー……追っ手っぽい」 風の雰囲気だけで、誰がこちらへ向かって来ているかが分かった。 隠れなければならないが、霊夢におとなしくしていろと言われたのを思い出す。動くべきか、霊夢が戻ってくるのを待つか。 「……むむむ」 悩んでいるうちにも、どんどんと近づいてくるのを感じる。 文は、もういいやどうとでもなれ、とその場から動かないことにした。 哨戒天狗の匂いや気配が、近い。文は覚悟を決めて、とりあえず寝たふりをする。 「文ーお待たせ。ありがたいほどに熱いお茶で火傷してしまえ――じゃなかった、美味しいお茶よ」 「……っ」 「って、寝てるし」 タイミング悪く、寝たふりを開始したら霊夢が戻ってきた。 寝たふりですよー、などと言ったら笑顔で蹴られる。そんな未来が予測できた文は、そのまま寝たふりをすることにした。どちらにしろ、今起き上がってしまえば哨戒天狗がその場面を目撃するだろう。 こうなったらやけだ、と目を強く瞑る。 「せっかくのお茶が無駄になっちゃうじゃない。んーけど、寝てるの起こすのもなぁ。こいつ、疲れてるって言ってたし……うーん」 霊夢はぶつぶつとそんなことを呟きながら、仰向けに寝転がっている文の頭を踏まないように気をつけながら、隣に座った。 すると、次の瞬間―― 「失礼。ここに射命丸様はいらっしゃいますか?」 哨戒天狗が二人、現れた。 霊夢は特に動じた様子はなく、お茶を啜りながら目の前を見据えた。文は寝たふりを続行しながら、さてさてどうしたものかと思考を巡らしている。少しは休めたし、おとなしく戻っておくのが無難だろうか。そんなことを思いながらも、この居心地の良い場所から動きたいとは思わなかった。 「文ならいないわよ」 「……さっきまで、ここに居たりしませんでしたか? 匂いだけはするのですが」 「あー正解。さっきまで居たけど、なんか突然飛んでったわ」 「ご協力感謝。では、失礼しました」 文は、ぽかーんとした状態だった。自分は確かに哨戒天狗の目の前に居たはずなのに、まるで存在しないかのような会話。そして、本当に哨戒天狗たちは帰ってしまった。気配が遠ざかるのが、確かに感じた。 すると、霊夢がふぅ、と疲れたように息を吐いた。 「以前にとりと共同開発した姿消せるお札、匂いは消えないのね。少し焦ったわ」 今度は大きくため息を吐いた。 それが自分の体にいつの間にか貼られていたのか、と文は思う。そして、霊夢が哨戒天狗を本当に追っ払ってくれたことに、正直驚いていた。霊夢なら、あっさりと突き出してしまう可能性の方が高いと思っていたのだ。 「……冷静に考えたら、なんでこいつのためにここまでしてやんなきゃならないのかしら。起きたら全財産お賽銭につぎ込ませてやろう」 このまま一生寝ている方が安全かもしれない。 財布を持ってこなくてよかった、と心の中でほっと息を吐く文。 もう寝たふりをする必要もないが、さてどうしようか。このまま本当に寝てしまうのも良い休みになる。 文がどうしようかと悩んでいると、ふいに霊夢が動く。 「んしょっと。頭痛いだろうからね。枕持ってくるのも面倒だし、かといってこいつを布団に運ぶのも面倒だから。うん、これが一番楽ね」 「っ!?」 霊夢は自分で言って自分で満足している。 文の頭にさっきまでの冷たくて固い床とは違った、温かくて柔らかい感触。それだけで、文は何をされているのかが、今がどういう状況なのかが分かった。 霊夢の太股に、文の頭。 つまり、膝枕だ。 長い年月を生きてきた文だが、こんなことをされるのは初めてだった。 今さら起きている、なんて言えなくなってしまった。顔が熱くなるのが分かってしまい、思わず両手で覆いたくなる衝動に駆られる。 「んー? なんか顔赤いわね。疲れたって言ってたし、まさか熱でも出たのかしら」 「……~っ!」 霊夢は文の前髪をそっと撫で、そのまま額に触れた。特に熱いわけでもなく、どうやら熱はないようだと確認し終える。 文は、もう全く動けないでいた。 ただただ純粋に、恥ずかしかったのだ。 一般人がこの状況を見たら、妖怪がこれしきのことで動揺するのはおかしい、と思うかもしれないが、強い妖怪ほど案外こういうことに免疫がなかったりする。ある意味精神を突くので、弱点かもしれない。 文の髪は予想以上に触り心地が良くて、霊夢は梳くように撫で続ける。ふわっとしていて、優しい手つき。まるで子どもをあやすような。 初めは恥ずかしかっただけの文も、次第に心が落ち着いてきた。 すると、思い出したかのように溜まった疲労感が文を襲う。体は重く、けれでも膝枕のおかげで心地良い。 「んっ……くぁ」 「あれ、起こしちゃったかしら?」 眠気に思わずふにゃっとした声を出した。 霊夢は起きてしまったかと心配したが、実際は逆だ。寝たふりをしていたのが、本当に眠ってしまったのだ。 しばらくして、すぅと穏やかな寝息が聞こえてきた。 微かに吹いている風が、子守唄のようだ。 「意外に睫毛長いわね」 寝ている文を見て、どうでもいいようなことを発見する。 そして、気付いた。 「私、文が起きるまで動けないじゃない」 霊夢はそう思って、今のうちに起こしてやろうかと思ったが、あまりにも文が心地良さそうに眠っているので、堪えることにした。 「ま、私からしたことだしね……」 ため息一つ零す。そして、起こさない代わりに、なんとなく文の頬をぐにーっと引っ張った。弾力があって、柔らかい。 ぐにぐに。 にゅーん。 霊夢はしばらくそうして遊んでいたが、文がうーうー唸ったので、やめてやることにした。 「さて、本格的にすることないわねぇ……」 眩しいくらいに青い空をぼーっと眺める。 そして、しばらくすると霊夢にも心地良い眠気が襲ってきた。その欲求に逆らうことなく、霊夢はゆっくりと眠りに落ちていった。 さっきまで微かに吹いていた風は、今は止んでいる。 二人の穏やかな寝息だけが、そこにはあった。 投稿時あとがき どうも、あやれいむ布教委員会会長の喉飴です。未だに会員は私だけです。 でも最近ちまちまとですが、あやれいむ増えてきましたね。嬉しい限りです。 今回はプライベート文ちゃんでお送りしました。取材モードではない文ちゃんも良いですよね。 疲れたときには膝枕が良いのよって友人が言ってました。 そろそろ、ゆかてん普及委員会&ルーミア保護協会としても久し振りに動きたいなと思います。 さて、そんなこんなではありますが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。 |
コメント
読んでて場面が浮かんできてにやにやしてしまいましたwwwww
霊夢のうっざとかの口調が好きですry いえ別にぼくはMじゃないですよほんとです 2010-06-07 Mon 03:04 | URL | いち [ 編集 ]
ひゃうっ、ありがとうございますw
これくらいきっつい口調が良いですよね! こう、攻められるというか突き放すというか、そんな感じの口調。 いえ、もちろん私もMじゃないですよ、えぇ本当に。 2010-06-07 Mon 08:16 | URL | のどあめ。@あみゃ [ 編集 ]
|
コメントの投稿 |
|
トラックバック |
| ホーム |
|