明けメリ2010-03-29 Mon 00:08
アリスと魔理沙。1月11日くらいに書いたものです。
「メリークリスマス!」 「もう新年よ」 「アリスは良い子にしてたから、マリサンタからプレゼントをやろう」 「新年だってば」 「はい、プレゼントの土偶詰め合わせ」 「そしてチョイスがおかしい」 「これは私特製の土偶でな、お腹の部分を押すと『土器!』って叫ぶんだ」 「もう帰れ」 サンタクロースの格好をした魔理沙を(帽子だけはいつもと同じ)見向きもせず、アリスは人形を製作中。 アリスの言った通り、今はもう年が明け、クリスマスなんてとっくに過ぎていた。 だからこそ、普通なら魔理沙の言動はおかしい、と疑問を持つのだが、アリスは「まぁ魔理沙だし」と考えて疑問を持つのを放棄している。 「……せめて、私がどうしてこんなことをしているかくらい訊いてくれよ。なんか流されると恥ずかしいだろ」 「知らないわよ。あんたの言動がおかしいのはいつものことだし、疑問に思うほどじゃあないわ」 「アリスは冷たいな。冬なんだから、もっと温かくいこうぜ。そういえば、お茶はまだか?」 「本気で帰れ」 アリスはいつも以上に冷めた態度だ。 別に魔理沙の勝手な行動は慣れてしまっているから、どうでもいい。それよりも、アリスにとっては、人形製作の時間を邪魔されていることの方が、嫌なものだった。 このまま相手にしなかったら、ぎゃあぎゃあ勝手に暴れ出しそうだ。そう思ったアリスは、ため息を吐いて一旦作業を停止した。 「以前、八雲紫から外の世界の飲み物だって渡されたお茶だけど、それでいいかしら?」 「お、外の世界ってことは、レア物じゃあないか。飲んでいいのか?」 「えぇ、私には飲めそうに無かったから」 アリスの言葉に、疑問を覚えつつも、おとなしく椅子に座って待つ魔理沙。 魔理沙が体を椅子に目一杯預けると、木製の椅子がぎぃと音を立てた。 アリスは立ち上がり、部屋を出たかと思えば、数分で戻ってきた。アリスの手には、魔理沙が見慣れない容器を持っている。 「はい、冷たいけどね」 「それがお茶か? なんだその容器は?」 「外の世界ではペットボトルとかいう名前らしいわ」 ペットボトルには『お~いぬ茶』という文字が書かれていた。 魔理沙はそれを手に取って、蓋を開けてみることにした。 「美味しいのか?」 「私はコップに注いだ瞬間、無理って思ったわ。だから飲んでいない」 「それを私に飲ますのか」 「私は紅茶派だけど、あんたはお茶好きじゃない。飲めるわよ、多分ね」 魔理沙はなんとなく、不安になる。 アリスは、ただジッと見ている。それを飲んでどういう反応をするか、見るつもりなのだろうか。 「えぇいっ! 死にはしないだろう!」 「あ、本当に飲んだ」 「ぶはぁっ!?」 「あ、噴いた」 「げほっ、な、な、なんだこれ!?」 魔理沙が飲んだ『お~いぬ茶』は、その名のとおり、ぬちゃぬちゃしているお茶だった。 まるで納豆のように、魔理沙の口とペットボトルをお茶の糸が繋ぐ。 さらに、魔理沙の口内は、ぬちゃぬちゃとした奇妙な感覚で一杯だった。 「お茶好きでも飲めないのね」 「当たり前だ! お茶を侮辱してるぞ、この飲み物! うぅ……口の中が粘っこいぜ」 「はい、ティッシュ」 アリスからティッシュを受け取り、魔理沙は急いで口を拭く。 そしてその後、ペットボトルに蓋をした。間違って零したら大変なことになるからだ。 「ぅ~……最悪の気分だ」 「口直しにクッキーでも食べる?」 「おぉ、ありがたいぜ」 「八雲紫がくれた物なんだけどね。確かどっかの名物クッキーで、『赤い恋人』とか」 「なんか気持ち悪い恋人だな。紫のはもういらん。どうせ変なのばっかりだ。アリスのクッキーが食べたい。別にアリスのクッキーが大好きなわけじゃ無いぜ。紫のを食べたくないから、仕方無くアリスので我慢するだけだぜ」 「何わけ分かんないこと言ってるのよ。昨日焼いたクッキーがあるけど、それで良い?」 「あぁ、もちろん。まだ口の中粘っこいから、早く持って来てくれ」 再び部屋を出て行くアリス。 魔理沙は口をぱくぱくと動かし、粘っこさをとろうとする。よっぽどぬちゃぬちゃだったようだ。 椅子をぎぃぎぃ鳴らしながら、魔理沙は待つ。 魔理沙の視界に、さっきまでアリスが作っていた人形が映る。 「やっぱり、あいつ器用だなぁ」 魔理沙はそれに触れようと手を伸ばし――やめた。自分が簡単に触れて良いものでは無い。そう、魔理沙は思ったのだ。 とりあえず、アリスが来るまで魔理沙はじぃっと人形を見ていることにした。 「ほら、持って来たわよ。ん? なんで人形見てるの?」 「お、さんきゅ。いや、やっぱり器用だなぁって思ってさ」 「そう?」 アリスは首を軽く傾げ、そう言った。 周りから見れば、凄いとしか言えない技術だが、アリスにとってはこれが出来ることが普通なのかもしれない。魔理沙はそんなことを思いながら、クッキーを口にした。 「あー生き返る。口の中が清々しいぜ。でも、口の中の水分が無くなるな」 「さっきの、ぬ茶飲む?」 「お前は鬼か。捨てておけよ、ぬ茶」 物凄く嫌そうな顔をする魔理沙。 アリスは、ここまで魔理沙が嫌がるのなら、今後の魔理沙対策に使用してみようか、などと考えていた。 「うん、美味い。あれだな、アリスは良い嫁さんになれるな」 「結婚願望なんて無いわ」 「そうか。ならこれからも私のためだけにクッキーを作りたまえー」 もふもふと小動物のようにクッキーを食べながら、そんな冗談を言う。 アリスは「はいはい」と、軽くあしらった。 「そういえばアリス、人形作らなくて良いのか?」 「あんたが居るから、したくても出来ないわよ」 「お前の器用さなら、人形作りながら会話しながらクッキー食べながら弾幕ごっこも出来るさ」 「そこまでいったら器用じゃなくて変人でしょ」 「あっはっは! アリスは充分変人だろ!」 「上海おいで。よし、構えて……一緒に目の前の馬鹿を消し去りましょう」 「待てアリス、私が悪かったから」 ひらひらと手を振って、そう言う魔理沙は、反省している様子は無い。 アリスは別に本気では無かったので、すぐに矛である上海を引っ込めた。 ため息を一つ吐きながら、アリスもクッキーを食べる。 「うん、美味しい」 「自分で言うか、普通? いや、これを不味いとか言うやつがいたら、私がぶっ飛ばすけどな。作ったアリスでも」 「物騒ねぇ。もっと優雅に美しくなれないのかしら」 「私はほら、美しいっていうよりは可愛いタイプだろ?」 「それこそ、自分で言うかしら普通。いや、まぁ可愛いけどね」 「……え? や、ぇ、うぇ?」 魔理沙からすれば軽い冗談のつもりだったので、可愛いなどと本当に言われるとは思っていなかった。思わず、少し慌ててしまう魔理沙。 逆にアリスは、特に慌てた様子も無く、至っていつもと変わらない。 「自分で言ったくせに、何慌ててるのよ。いや、照れてるのかしら?」 「ばっ!? だ、誰が照れるか! ただ、ちょっと驚いただけだよ。そんなこと言われたの、ほとんど無いから」 「だとしたら、周りのやつらはよっぽど鈍感なのよ。私の目には、魔理沙は立派な少女よ」 「む……例えば?」 魔理沙は正直、自分がアリスにここまで言われるほど、少女らしいと思える要素が特に思い付かなかった。なので、少し恥ずかしいことではあるが、尋ねる。 アリスは、魔理沙をジッと見つめた後、口を開いた。 「そうね、まずは髪」 「髪? うわっ!?」 アリスが手を伸ばして、魔理沙の髪に触れた。 突然のことに、魔理沙は驚いた。 「こんなにも、さらさらでふわふわで綺麗。手入れに気を使っていることが良く分かるわ。それと座り方。必ず裾を気にしながら座る。他には――」 「もういいから。なんか恥ずかしい……」 「そう? ま、あんたも立派な女の子よね」 珍しく、いつもの強気な態度では無くなっていた。 帽子を深く被り、顔を見えないようにしているが、アリスには魔理沙が今どんな顔をしているか容易に想像出来た。 「大体なんでそこまで観察してるんだ……」 「癖とか見抜いたりして、戦闘に役立てることも出来るからかしら。私にとっては、相手を観察するのが癖みたいなものなのかもしれないわ」 魔理沙は無言でクッキーに手を伸ばす。 そして、口に含む。何故か、さっきよりも味が甘く感じた。 「そういえばさ、アリス」 「んー?」 しばらく無言だったが、魔理沙がぽつりと言葉を発した。 「結局、私が何故サンタ服なのかは訊いてくれないんだな……」 「えぇ、どうせしょうもない理由だろうから」 「冷たいぜーそんな冷たいアリスは、ぬ茶を一気飲みすることをお勧めする」 「誰が飲むか!」 ぬ茶のペットボトルを持ち、アリスに迫る魔理沙。蓋は開けていて、無理矢理飲ます気満々だ。 「ちょ、やめなさいよ!」 「私が味わった苦しみを受けろー!」 アリスは飛び掛かって来る魔理沙の手首を押さえ、ぷるぷると震えながら対抗する。 ぎゃあぎゃあと暴れた後、結局アリスの腕力に負けた魔理沙が、ぬ茶を零してしまい、サンタ服がぬちゃぬちゃになってしまったそうな。 |
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