絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

ともだち

名無し妖怪二世さんのリクエストssで、さくれいむです。

 


「おい咲夜」
「はい、なんでしょうか?」
「お前、疲れていたりはしないか?」
「……はい?」

 お嬢様の言葉があまりにも珍しい内容で、思わず聞き返してしまう。こんなことを訊かれたのは、初めてかもしれない。
 一体何があったのだろうか。

「あー……その、なんだ」

 歯切れが悪いのも、珍しい。
 本当にどうしたのだろう。
 体調でも悪いのかしら。見た感じ、特にいつもと変わりは――って、なんだろう? 右手に何か、薄い紙が一枚握られている。

「お嬢様、その紙はなんですか?」
「え!? いや、あー……」

 尋ねてみると、私から視線をそらし、左手で頬をぽりぽりと掻く。見られたくないものなのだろうか。もしそうだとしても、お嬢様がおかしい原因ならば、知っておかなければならない。従者として。別に、興味本位とか、そういう理由ではない。断じて、ない。うん。
 時を止めて、その隙に紙を奪う。
 素直に、それ見せてください。なんて言っても、お嬢様の反応から察するに、絶対に見せてはくれないだろうから。

「すみません、お嬢様。見させていただきます」

 一応、謝っておいた。まあ、時間が止まったこの状況では、そんな行為はまったく意味をなさないけども。
 手にした薄っぺらいその紙には、いくつか箇条書きがされていた。

「ん? どういうことなのかしら?」

 咲夜を休ませる。気分転換させる。たまには、リラックスする機会を与える。などなどと、書かれていた。
 ふむ、この意外に丸っこくて可愛らしい字は、もしかしたらパチュリー様だろうか? お嬢様の字は、確か違ったはずだ。美鈴や妹様が書くとも思えないし。
 いや、その前に、なんでこんなことをお嬢様がされたのだろう。
 こればっかりは、お嬢様に訊かないと分からない。というわけで、時間停止終了。色を失っていた時間が、再び鮮やかさを取り戻す。

「……ん? あ、ちょ、咲夜それ!」
「勝手ながら、読ませていただきました。これは、どういうことでしょうか?」

 お嬢様が取り返そうと必死になるが、私とお嬢様の身長差では、全く届かない。手を上にあげる私に対し、ぴょんぴょんと跳ねるお嬢様。なにこれ可愛い。飛べば良いのに。
 なんか可哀想だったので、普通に返すことにした。

「もう、あんたの為を思ってのことなのに……」
「はい?」
「この前な、パチェと話していたんだ。人間は私たちが思っている以上に脆いんだ、と。仕事仕事ばかりではなく、たまの休みも必要だ。だから、咲夜!」
「は、はい?」

 ビシッと指を向けられて、その気迫に少し圧されてしまう。
 見た目は幼くとも、私よりも長生きで、たくさんの修羅場を潜り抜けてきたお嬢様だ。その気迫、目、声の感じに、意思とは関係なしに、体が固まった。

「今日一日、休め!」
「ええっ!? そんな突然、困ります。メイドたちにも迷惑をかけますし、仕事の構成やバランスが崩れてしまいますし、なによりまず、私は疲れていません。さらに言わせていただくと――」
「えぇいっ! いいからさっさと出て行けー!」
「わっ!? ちょ、お嬢様ー!?」

 まだ話の途中だったのだが、お嬢様に掴まれて、部屋の外へと放り出されてしまった。
 いや、休みをもらっても正直困る。
 することがない、なんていうのは私にとっては恐ろしい。暇を潰す方法なんて、全然知らない。一人、部屋で紅茶タイムというのも、なんだかしっくりこないし。さてさて、どうしたものやら。

「あら、どうしたのかしら、咲夜? ご主人様に散々弄ばれた揚句、お前とは遊びだったのだよ……ジョニー、って言われた時のゴンザレスみたいな顔して」
「それ名前間違われたショックも大きそうですね。まず、そんな状況が想像出来ないですけど」

 この声は、聞きなれた声の一つ。
 聞こえるか聞こえないかくらいの、か細い声。
 姿を見なくても、誰だか想像が出来た。

「大丈夫、私も想像出来ない。で? どうしたの?」
「どうしたのって……パチュリー様がお嬢様とおかしなこと話したせいでこうなってるのですが」

 少し八つ当たりっぽいけど、間違ってはいない。なので、ジト目でパチュリー様を睨む。
 あ、笑われた。なんか悔しい。

「ま、たまの休暇は必要よ?」
「しかし、することがありません……」
「お友達の家にでも、遊びに行けば?」

 そんなパチュリー様の言葉に、私は固まった。
 改めて考えると、あれ? 私、友達いない気がする。
 え、もしかして私、いろいろまずいかも。ひきこもりがちのパチュリー様でさえ、アリスや魔理沙といった友達(私から見て)がいるのに。あ、今のはちょっとパチュリー様に失礼だった。心の中で謝罪。
 お嬢様は主。パチュリー様は、そのご友人。小悪魔は、まともに会話したことない。妹様は、それなりに親しいけど、友達という立場ではない気がする。美鈴は、仕事仲間。
 結果、友達いない。

「……パチュリー様、私ちょっと泣きたくなりました」
「なんで!?」
「……友達、いない、です」
「は?」

 パチュリー様が、ぽかーんとしている。

「えーと、魔理沙は?」
「親しいことは親しいですが、友達と言うほど親しくはない気がします」
「じゃあ霊夢は? あなたと霊夢、よく宴会の後片付けとか一緒にやってるじゃない」
「霊夢……ですか」

 そういえば、私と霊夢の関係ってなんだろう。
 知り合い? それだと少し、他人行儀すぎるかな。
 なら親友? そんな仲では無いと思う。
 もしかして友達? うーん、そんなに親しく会話をしたことがあっただろうか。確かに宴会の後片付けを一緒にしたり、普通にお茶を飲んでまったりと過ごしたこともあるけれど。
 知り合い以上、友達未満。なんかそれがしっくりくるかも。
 そこでふと思う。霊夢は、私をどう思っているのだろうか。

「友達……なんですかね?」
「いや、私に訊かれても困るけど。気になるなら、行ってくれば? せっかくの休み、有効活用しなきゃあ、損よ」
「休み自体、本当にいらないのですけどね」

 苦笑い一つ。
 頑固なお嬢様のことだ。何がなんでも、今日一日は働かせてくれないだろう。
 なら、せっかくだ。確かに有効活用するべきである。
 今は……お昼か。霊夢はまたお茶でも啜ってるんだろうか。

「パチュリー様」
「ん?」
「行ってきます」
「んー行ってらっしゃい」

 一礼すると、パチュリー様は手を振ってくれた。
 なんか、珍しいなあと思った。





◇◇◇





 境内には、落ち葉一つない。
 意外にしっかりと掃除をこなしているのか。普段のだらだらとした姿からは、てきぱき働いている場面が想像できない。
 さて、霊夢は何処だろうか。いつも通り、縁側に居そうな気がするが。

「あら、珍しい。あんた一人?」

 どうやら予想は外れたみたいだ。
 声がする方へと向くと、そこには箒を手に持った霊夢が居た。境内は綺麗だし、掃除終わりなのかな。

「ええ、ちょっとね」
「ちょっと待ってなさい。今、箒片付けてくるから」

 そう言われて、大人しく待つことにする。
 まだ春になりきれていない、そんな空気。ちょっぴり、寒い。風も、それなりに吹いている。思わず体がぶるっと震えた。何か、防寒道具を持ってくれば良かったかもしれない。などと、今になって思う。

「ん、お待たせ。で? 用件は何? ろくでもない用事だったら、耐久夢想封印三回コースよ」

 とてつもなく恐ろしいことをさらっと言う。
 しかも、私の来た理由って、そんな大したことないかもしれないし。言うべきか、言わないべきか。

「言わなかったら、お札と針のコースね」

 退路が見事に断たれた。
 なんという恐ろしい巫女だ。

「あー……なんていうか、その、ね」
「何よ? ハッキリしないわね。珍しい」
「だから、その、なんていうか……」
「あーもうっ! さっさと言いなさいよ! 寒いんだから!」

 あ、そういえば外か。
 霊夢の巫女服は、確かに寒そうだ。私のメイド服も寒いが、それ以上に露出があるし、薄いだろう。

「友達のところに……その」
「へ? 何?」
「と、友達のところへ遊びに訪れるのに、深い理由はないわ!」

 少し、いやかなり、やけくそ気味に叫んだ。
 さっきまで寒かったのに、今はなんだか、体中がやけに暑い。特に、顔。絶対に今の私は、鏡を出されたら全力で拒否するだろう。
 霊夢の顔が見れなくて、少し俯きがちになる。
 これで、いやー別に友達じゃないし、とか言われたらどうしよう。そもそも、私自身が霊夢を友達って認識しているかも、よく分かっていないのに。

「く……」
「く?」
「く、あ、あははっ! 何? 今日のあんたは本当に珍しいわね?」

 恐る恐る霊夢を見ると、腹を抱えて笑っている。
なんだか腹が立ってきた。ナイフを投げてやるが、楽々かわされる。笑っていても、避けることは忘れていないようだ。
 続けて二度、三度、同じことを繰り返すが、全て当たらない。より腹が立った。

「まあ、いいわ。それじゃあ、上がっていきなさい。お友達、なんだから。く、はは」
「次笑ったらスペルカードいくわよ」
「それもかわしてあげるわ」

 わざとらしく、お友達という言葉を強調しながら言う霊夢。むぅ、からかわれるのは好きじゃない。というか、慣れていない。どう反応していいか分からない。
 今の状態じゃあ、言うこと全てがからかわれるような気がするから、大人しく黙って霊夢の後をついていくことにする。
 その間も、霊夢はニヤニヤとした表情を崩さなかった。



「とりあえず、お茶。熱いから気をつけなさいよ」
「ん、ありがと」
「気にしないで、お友達なんだから」
「くっ……」

 いつまで引っ張る気だ。この熱いお茶でもかけたろか。
 それにしても、相変わらず簡素な部屋だ。私が言うのもなんだが、もう少し女の子らしくしても良いと思うのだが。箪笥、卓袱台、そういうものはあるが、可愛らしい人形とかそういうものは一切無い。室内が何かで装飾されているわけでもない。実にシンプルだ。
 まあ、落ち着きやすくて良い部屋でもあるけれど。

「あー、それにしてもおかしかった」
「しつこいわよっ!」
「ごめんごめん。でも、ちょっと嬉しかったわよ?」
「え? 何が?」
「私のこと、友達って思ってくれているんだなーって。あんた、そういうのどうでもいいっていうタイプに見えたし」
「いや、正直霊夢が友達かどうか、自分でもよく分かってないのよ」
「はい?」
「んーそれを確かめに来たっていうか……ねえ、霊夢」
「何よ?」
「あなたは私の友達なの?」
「いや、私に訊かれても……」

 うーん、自分でしていてなんだが、おかしな質問だとは思う。
 霊夢が困ったような表情で、こっちを見る。うん、返答に困るわよね、こんな質問。

「私は、咲夜のこと、えーと……と、と、友達だって、思ってるけど」

 珍しく、歯切れが悪い。あー霊夢もこういうことで恥ずかしがったりするんだなー、とかそんなことを思う。
 さっきの仕返しに、これでからかってやろうかと思ったが、後が怖いからやめておこう。
 それにしても、霊夢は私を友達って思ってくれていたのか。なんか嬉しいなぁ。結構無関心なタイプかと思っていたけど、そういうところは案外普通の少女なのかもしれない。

「何ニヤニヤしてんのよ!」
「え? 顔に出てたかしら?」
「出てたわよ! もうハッキリと! あーもうっ、ニヤニヤするな!」

 む、顔に出ていたか。
 それにしても、さっきはあれだけ私をからかったくせに、自分がそういう状況になると怒るのはどうかと思う。いや、私もさっきまで腹を立てていたけれど。

「いやいや、ごめん。素直に嬉しかったのよ」
「はぁ?」
「私、友達って言える存在、よく考えてみたらいなかったから」
「そうなの? 魔理沙やアリスや、それこそ紅魔館の連中だっているじゃない」
「うーん、親しいのは確かだけど、友達っていうとまた違う気がしてね」

 それなりに親しいのは分かっている。
 けれど、それが友達と言えるのだろうか。
 正直、私には友達というもの自体が分からないのかもしれない。

「あんたさぁ……」
「ん――って痛っ!?」

 突然、向い側に座っている霊夢が身を乗り出して、私にデコピンをしてきた。予想外の出来事に、少し驚く。そして、おでこが痛い。
 卓袱台に手をつき、身を乗り出したままの霊夢。顔が近い。目をそらすにそらせない。自然と、息を飲む。
 霊夢は、呆れたような、怒っているような、良く分からない表情をしていた。

「小難しく考えすぎなのよ」
「でも……」
「でも、じゃない! あんたが思っているほど、難しいことじゃないわよ、多分」
「多分って……なんだか不安ね」
「私の勘よ。不安なんてないわ」
「そう言われると、なんだか無駄に頼もしいわ」
「咲夜は、もうちょっと楽に生きた方が良いわよ。少なくとも、私はあんたを友達だって思ってる。魔理沙たちも、多分そう思ってるわよ」
「そうかしら……」
「大体友達なんて、なんとなく、みたいなものよ。空気っていうか、雰囲気っていうか。もっとね、気軽で良いと思うわよ。それに、そんなことで悩んでる暇があるなら、お賽銭の少ない可哀想なお友達に、お賽銭を渡しなさい」
「分かったわ。妖怪の山にある神社に今度お賽銭を入れておきますわ」
「おいこらそっち違う」

 割と本気で睨まれた。
 普通に怖い。少女の顔じゃない。鬼も泣きながら逃げ出してしまいそうな、そんな恐ろしい顔だ。

「はいはい、分かったから。お賽銭は後で入れておくから、その顔やめなさい」
「え!? 本当に!?」
「……ま、相談料ってところかしらね。一応、言っておくわ。霊夢」
「ん?」
「ありがと」
「はいはい、どういたしまして、でいいのかしらね」

 照れやら恥ずかしさやらのせいで、ちゃんと笑えているか分からないけど、今出来る精一杯の笑顔でお礼を言った。
 霊夢も、笑顔で返してくれた。
 むぅ、その笑顔のせいで、なんだか余計に恥ずかしくなった。
 照れ隠しに、お茶を一杯啜る。熱かったはずのお茶は、いつのまにか冷めてしまっていた。苦いだけの、ただの水を啜っているみたいだ。

「お茶、入れなおそうか?」

 どうやら霊夢も飲んでみて、冷めてしまったことに気付いたようだ。
 少し悩んだ末に、お願いすると答えた。

「ん、じゃあちょっと待って」
「ねー霊夢」

 湯呑みを持って立ち上がり、お茶を入れに行く霊夢の後ろ姿に声を掛ける。

「んー?」
「今日、泊まっても良いかしら?」
「はぁ? なんでよ?」
「お嬢様にね、今日一日は休みを渡されちゃったのよ。寝る場所がないわ」
「なんでよりにもよって、私のところなのよ……」
「友達だから」
「……はぁ。仕方ないわね。布団と枕、一つしかないから、狭いわよ?」
「ん、充分よ。ありがとう」
「どーいたしましてー」

 やる気のない返事が返ってきた。
 お友達の家に泊まる、か。うん、悪くないと思う。
 そんな馬鹿みたいなことを考えながら、霊夢の背中を視線で追った。
 ボーっと眺めていると、案外思っていたよりも小さい背中だということに気づく。どうでもいいことかもしれないけど、なんだか新しい発見をしたような気分だった。
 もしかして、なんだかんだ良い休日の過ごし方をしているのではないだろうか。
 そんなことを思いながら、新しいお茶を待つことにする。
 障子から差し込むおぼろげな陽射しが、少しだけ暖かく感じられた。
 






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コメント

相変わらずほっこりする話を書いてくださる。
好きだなぁこういうのw
2010-03-28 Sun 08:59 | URL | [ 編集 ]
やっぱり、こういうほのぼの路線が自分は書いてて楽しかったりします。
気に入ってもらえて、嬉しいです。
ありがとうございます。
2010-03-28 Sun 15:47 | URL | 喉飴 [ 編集 ]

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