絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

心模様

東方創想話2度目の投稿作品。『心模様』
早苗メインのお話でシリアス。
私はシリアス書いてると楽しいのですが、技術が足りないためか、荒い出来になってしまいます。でもやっぱり書いてて楽しいです。





 なんだろう、視界がぼやける。頭がフラフラする。
「それでは、行ってきます!」
 八坂様と諏訪子様に挨拶をし、境内から一歩踏み出した。
 その瞬間に、世界が逆転していく様がスローモーションで視界に入り、最後に曇天が見えて、私の意識は途切れた。


◇◇◇


「早苗! 良かった……」
 私が目を開けた時、そこは自室の布団の上だった。
 視界には心配そうに私を見つめる八坂様と諏訪子様が映っていた。
「私……一体どうしたんですか?」
「倒れたんだよ。熱とかも無いから疲労だね」
「早苗最近頑張りすぎだよ?」
 どうやら私は倒れたらしい。しかも疲労でなんて、情けない。
「すみません。もう大丈夫ですから」
「ダーメ!」
 起き上がろうとしたのを、諏訪子様に手で制された。
「今日くらいゆっくり休みなよ」
「いえ、しかし今日は霊夢さんの所へ行って分社について話す予定が……」
「それでもダーメ!」
 再び起き上がろうとしたのを、今度は八坂様に制された。
「いいから大人しくしてなさい早苗。私はとりあえず栄養のつく物買ってくるから」
「でも休んでしまったら信仰集めが」
「それなら今日は私が行くから、大人しくしてるんだよ?」
 そう言って、八坂様は買い物に、諏訪子様は人里へ信仰集めをしに行ってしまった。
 神様自身に信仰集めをさせるなんて、本当に駄目なやつだ私は。それに買い物までさせてしまっている。情けなさに涙が出そうだ。
 一人で神社に居るのは不思議な気分だった。それも、ただ横になっている状態。
「少しだけでも体力回復しないと……」
 一人ぽつりと呟く。
 誰にも迷惑をかけてはいけない。でも、今の私じゃ誰にでも迷惑をかけてしまう。
 だから今は、とりあえず少し眠ろう。起きたら回復してるだろう。


◇◇◇


 今、夢を見ている。
 確信が持てたのは目の前に幼い私がいるから。
 この夢の中では私は所謂神の視点だ。
 しばらく見ていると、どうやら昔の記憶のようだ。
 幼い私が、友達と遊んだり、両親と夕食を食べていたりと、平凡なもの。
 しかし、私は知っている。両親も友達も、私を見ていないことを。
 幼い頃から大抵のことをそつ無くこなしていた私は、周りから『優秀』というレッテルを貼られていた。
 『優秀』だけだったらまだ良かった。
 私は神様を見ることが出来た。それは既に『優秀』の枠を越えてしまっていた。
 『優秀』というレッテルはいつの間にか、『神』というものに変わっていた。
 周囲の人間は、私を見ようとせず、私を通して『神』を見ようとしていた。
 私がテストで満点を取っても、凄いことをしても、何ができようが周囲の人間は、「出来て当たり前」という感じだった。
 巫女としては認められていただろう。でも私自身を、東風谷早苗の存在を認めた者は誰もいなかった。
 だから、怖くなった。
 もし、今まで出来ていたことが出来なかったらどうなるのだろう。
 神様を見聞き出来なくなったら、テストで満点を取れなくなったら、凄いことが出来なくなったら、一体私はどうなるのだろう。
 周りから捨てられるのだろうか。両親も友達も、私をけなすのだろうか。
 そう考えだしたら、もう止まらなかった。
 私は必死になった。
 毎日の信仰心も欠かさず、満点を取れるように勉強し、力を使いこなせるよう、努力した。
 そうして、現在の私が出来上がった。
 周りの人が望む、完璧な東風谷早苗が出来上がったのだ。
 そして――


◇◇◇


「……あ」
 目が覚めた。
 夢の内容はハッキリと覚えていた。
 身体はまだ怠かったが、それ以上に心が重かった。
「そして……私は霊夢さんに敗れたんだ」
 先程の夢を思い出し、呟く。
 完璧になっていた筈の自分。なのにそれを、私の積み重ねてきた全てを否定された。もう、どうすればいいのか分からない。
 ふと外を見ると、空は雲で覆われていて、今にも泣き出しそうな天気だった。
 そうだ、分社の件を話しに行かなければ。
 八坂様と諏訪子様には悪いけど、私はやっぱりじっとしていられない。
 起き上がり、博麗神社へ向う。早く行かないと、雨が降ってしまわないうちに。


◇◇◇


「あら、早苗」
「こんにちは霊夢さん」
 なんとか雨が降る前に到着出来た。霊夢さんは縁側でいつもと同じ様にお茶を飲んでいた。
「ん? 早苗、あんた大丈夫?」
「え?」
「顔色、悪いわよ」
 自分では気付かなかった。顔に出ていたのか。
「大丈夫です。それより分社の様子や現状についてを……」
 霊夢さんに歩み寄ろうと、一歩近付く。その度に足がふらつく。
 たった数歩、それだけで崩れ落ちそうになる。
「ちょ、ちょっと早苗」
 霊夢さんが私を支えに来る。
 ああ、迷惑をかけてしまっている。自分が本当に嫌になる。
「大丈夫ですから……離して下さい」
「何言ってんのよ! 駄目でしょうが!」
 放っておいて欲しい。苛々する。
「ほら、肩貸すから」
「いいから離して下さい!」
 支えていてくれた霊夢さんを無理矢理払う。
 私の突然の行動に霊夢さんは目を大きく見開き驚いていた。
「いいから、分社について話しましょう」
 霊夢さんには悪いけど、私はもっと頑張らなくちゃいけない。皆が望む私にならなきゃいけないんだ。
「早苗」
 優しい声で霊夢さんが私の名前を呼ぶ。
「何をそんなに頑張っているの?」
 一瞬何を言われたか分からなかった。周りが望むから頑張っているんだ。
 何故そんなことを訊くのか。
「本当の早苗は、何処に居るの?」
「私ならここに居るじゃないですか」
「私が訊いてるのは東風谷早苗という人間のこと」
 何を言ってるのか。私には分からなかった。
「私の勘も入ってるけど、何か無理してるわよね」
 霊夢さんの言葉が重くのしかかる。
「無理なんて……してません」
「じゃあ、何でそんな顔してるのよ?」
 何のことだ。私は今普段通り出来ている筈。
「何で、今にも泣きそうなのよ?」
「え?」
 頬に何かが伝う。それが私の涙だと分かるのに時間は要さなかった。
 あぁ、何やってんだろう私。上手くしてきた筈なのに。今までそうやって、生きてきたのに。
 八坂様にも諏訪子様にも悟られないようにしてきたのに、目の前の巫女には見抜かれた。
 空からポツポツと降り注ぐ水。
 雨が、降ってきた。
 濡れていく身体、だけど悪くない。頬を伝うものが、雨か涙か分からなくなってくれるから。
「早苗」
 また優しい声で名前を呼ばれる。
「そんな優しい声で、呼ばないで下さい……」
 私の中の感情が自分でも分からない。
 見抜かれている恐怖、今後の不安が入り交じる感情。
 私が作りあげてきた完璧な東風谷早苗がどうなってしまうのか、私自身にも分からなくなってしまった。
「私は完璧な、皆が望んでいるものにならなくちゃならないんです!」
 何故今こんなにも、声を張り上げて言っているのか。
「なのに霊夢さんの言葉や行動は、完璧を崩します!」
 完全な八つ当たりだ。自分で何を言ってるのか分からない。意味が分からない。
「これ以上! ……これ以上私を惑わせないで下さい……」
 こんなにも感情的になっているのに、頭の隅では冷静に考えていた。
 ああ、そうか。私は今までの私が崩れることに、怯えているのだ。
 皆が望む、認めている私じゃなければ、見放されるんじゃないかという恐怖が、今でも根付いていて。
「早苗、ここは何処?」
 本当の自分が心の部屋に鍵をかけている。
「ここは幻想郷よ」
 でも、私はどこかで助けて欲しいと思っていた。
「幻想郷は、全てを受け入れてくれる」
 臆病な心の部屋は、きっかけという鍵が無いと開かなかった。
「だから早苗」
 もし、これが私の待っていたきっかけなら。
「自分に正直になりなさい」
 私は、このきっかけで変われるのだろうか。まだ怖い。臆病な私は、このきっかけという鍵に手は伸ばしていても、まだ掴んでいない。
「でないと、本当の自分を見失うわよ」
 霊夢さんにギュッと抱き締められた。
 霊夢さんは、縁側に居てあまり濡れて無かった為、濡れた私の身体には温かい。
「私は、臆病なんです。認められてない私は、見放されるんじゃないかって……だから、私には無理です」
「何勘違いしてんのよ」
「え?」
 霊夢さんは私の頭にポンと手を乗せる。
「私はあんたを認めてるわよ」
 胸が高鳴る。今まで私自身が望んでいた言葉。
 認めて欲しかった。私自身という存在を。
 そして、私は今やっと認められた。
 きっかけという鍵を、私が掴まなくても、霊夢さんから使ってくれた。
 嬉しかった。涙が溢れ出そうになるのを堪える。
 私のそんな様子を見て、霊夢さんは柔らかい笑みを浮かべる。
「早苗、泣きたい時に泣かないと、笑えなくなっちゃうわよ。だから今は泣いときなさい」
 私の全てを壊していく。完璧だった私を壊し、今も我慢してるのに泣けという言葉だけで我慢が崩れた。
「う、うぇぇぇぇぇ」
 情けないけれど、声を上げて泣いた。
 今だけは、今まで我慢していた分を泣いてやろうと思った。
 私が泣いている間、何も言わずに霊夢さんは抱き締めてくれていた。


◇◇◇


「すみません。服汚してしまって」
「あぁ、別にいいわよ」
 泣いていた私を抱き締めていたから、霊夢さんの巫女服は濡れていた。
「どうせ雨に濡れていたじゃない」
 そう、だから私の巫女服も濡れていた。
「早苗ー!」
「やっぱりここか!」
 八坂様と諏訪子様が走って私の所まで来た。
「寝てなさいって言ったでしょうに」
「そうだよ早苗」
「ごめんなさい八坂様、諏訪子様」
 謝罪をする私の顔を、八坂様と諏訪子様はじっと見つめる。
「な、何ですか?」
「早苗、何か重荷が降りたような顔だね」
「うん。良かった……」
 嬉しそうに言う八坂様と諏訪子様。もしかして、気付かれていたのだろうか。
「気付いてらっしゃったんですか?」
「当たり前でしょ?」
「そうだよ。だって私たちは巫女とか神様の関係以前に家族じゃない。分からない訳が無いよ」
 あぁ、本当に私は愚かだった。
 最初からお二人は知っていたのか。
 それに、お二人はとっくに私を認めていてくれた。私自身を『家族』と。
 ただ私が気付かなかっただけだった。
「あんたたち、知ってたならどうして何もしなかったのよ?」
 霊夢さんが言う。八坂様がムッとした顔になる。
「仕方無いだろう。何を言っても早苗は大丈夫です、としか言わないんだから」
「本人に大丈夫だって言われると、それ以上踏み込めないからね」
 八坂様と諏訪子様は言った。
 なら、私は今まで救ってくれようとした手を自分で払っていたのか。
 それで上手く悟られて無いと思ってたなんて、私は実に滑稽だった。
「そうだ早苗、体調は大丈夫なのかい?」
「あ、はい。もう大丈夫です」
 もう身も心も軽くなっていた。笑顔で八坂様にそれを伝える。
「あ、早苗の笑顔久し振りに見た気がする」
 嬉しそうな笑みを浮かべる諏訪子様。
 その笑顔でさらに私も笑顔になる。
「あんたたち、お茶くらい飲んでく? まだ分社の話しをしてないしね」
「あ、はい」
「じゃあ私たちも」
「そうだね。一緒に」
 霊夢さんが中に入るのに続き、八坂様と諏訪子様も靴を脱いで入る。
 私もそれに続いて、入ろうとする。
 入る前に、ふと空を見上げると――
「ほら早苗、早くいらっしゃい」
「あ、はい」
 もう泣き出す様子は見られない、快晴だった。
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