頑張れ小さな女の子~番外編ラスト.ルーミアの日常2010-03-21 Sun 01:37
ルーミアシリーズ、完結です。
思い入れの深い作品となりました。 それでは、どうぞ。 「霊夢、朝だよー雪だよー!」 「んー……雪? どうりで寒いわけね」 くぁ、と欠伸をしながら、目を擦る霊夢。 いつもより肌寒く、思わずこのまま布団にくるまっていたくなる。寒い日の布団は、何か魔力的なものを帯びているのではないのかと疑ってしまうくらい、魅力が尋常ではない。 霊夢は、もう少し眠っていたいなどと思っていた。 そんな霊夢とは対照的に、ルーミアは元気一杯だ。雪のせいか、テンションが高い。寒さなど関係ない、そんな感じである。 「ほら、雪だよ!」 「ぶはっ!?」 ルーミアは外から持って来た手のひらいっぱいの雪を、霊夢の顔に落とした。雪を見た時に、霊夢にも見せたいと思って持ってきていたものだ。 見事なまでに顔が真っ白になる霊夢。ある意味、とても斬新な化粧ともいえる。それくらい、真っ白だ。そして強烈な冷たさが、顔全体に染み渡る。 少ししてから、霊夢は無言で立ち上がる。 「きゃぅっ!? な、何!?」 そして、ルーミアの襟を掴んだ。 ぷらーんと持ち上げられている姿は、まるで小動物のようだ。 ルーミアは何をされるのか分からず、頭に疑問符を浮かべている。 霊夢は、ただただ無言で歩く。顔は雪で白いままだ。廊下に、顔の雪が少ず つ落ちる。何も事情を知らない者が見たら、恐怖する光景だ。 寝間着のまま外に出ると、ルーミアの言うとおり雪が積もっていた。辺り一面、眩しいくらいに真っ白だ。霊夢が一歩を踏み出す度、足元の白い世界に確かな跡が残される。霊夢は、あまりの寒さに思わず体を震わせた。 そして次の瞬間、持っていたルーミアを―― 「ふぇぐっ!?」 積もった雪に押し付けた。 ばたばたと手足を動かして暴れるルーミア。 少ししてから霊夢が手を放すと、ルーミアはぷはぁっと雪から顔を出した。そして、顔についた雪を払うため、小犬のようにぷるぷると顔を横に振る。 ルーミアが埋まっていたその部分の雪だけ、見事に小さな顔の形が出来上がった。 「いきなり何するの!」 「やかましいっ! こっちの台詞よ! 寝起きの顔に雪なんて!」 「霊夢に見せたいと思ったから。それに、眠気覚ましに良いかと思って」 「強烈すぎよ! 目が覚めても風邪引くわ!」 朝からぎゃあぎゃあと騒がしい二人の声が、そのまましばらく神社に響いていた。 ◇◇◇ 「ごちそーさま」 「でしたー!」 きちんと手を合わせて、朝ご飯を終えた。 ルーミアはすぐに食器を重ねて、台所へと運ぶ。霊夢もそれに続くようにゆっくりと立ち上がって、自分の分の食器を持ち、台所へと向かった。 台所では、相変わらず食器を洗うときは口数が極端に減るくらいに集中している状態のルーミアがいた。 ルーミアの小さな体では、洗い場には少し背伸びしなくてはならない。これを解消するために、霊夢がつい最近作ってくれた木製の踏み台に乗っている。 「ルーミア、ちょっとそっち詰めて」 「んー分かった。これくらいで良い?」 「うん、十分よ」 ルーミアが踏み台から降りて、少し横にずれた。その空いたスペースに霊夢が入る。台所の洗い場は決して広いわけではない。少し、肩が触れるか触れないか、そんな距離で、二人は食器を洗う。 少し暖かくなってきたと言っても、まだ冬だ。水は酷く冷たく、手の感覚がなくなってくる。 「ルーミア、あとは私がやるから、あんたは掃除してきなさい」 「うーん、いや、私も最後までやるよ」 「寒いでしょう? 無理しない方が良いわよ?」 「でも、出来ないわけじゃあないからね。最後までやるよ」 「ん、ならこの後、熱いお茶でも入れて一休みしましょうか」 「わーい!」 えへ~、と笑うルーミアに、霊夢も軽く笑った。 しばらくして食器を洗い終えると、霊夢はお茶を入れた。 お盆に乗せて、二人分のお茶を運ぶ。零さないように、しっかりと。そして、それを卓袱台に乗せた。何故か正座のルーミアに、手渡す。 「熱いから気をつけなさいよ」 「うん――って熱い!?」 「言ったそばから……馬鹿ね、本当に」 「むぅ……意地悪霊夢」 じぃっと睨むが、霊夢は軽く無視。 しばらくそのまま睨んでいたが、このままではせっかくの温かいお茶が冷めてしまうということに気づき、睨むのをやめた。 霊夢に影響を受けたのか、ルーミアもかなりお茶が好きになっていた。紅茶も飲めるが、お茶派か紅茶派かと訊かれたら、迷わずお茶と答えられる自信が、ルーミアにはあった。 静かな空間に、ただお茶を啜る音だけが響く。一口飲んで、ほぅっとため息を吐いた。こういう落ち着いた空気が、二人は嫌いじゃあなかった。 「ねえ、ルーミア」 「なにー?」 「あんた、なんで正座なの?」 「お茶って正座するイメージない? なんとなく、そんなイメージなんだ」 「あー分からないでもないけど、足痺れちゃうわよ?」 「……実はー」 「もう痺れている、とか?」 「うっ……」 ルーミアは誤魔化すように、あははーと笑っている。 それを見た霊夢は、お茶を置いて立ち上がった。 そして、向い側のルーミアの方へ、近寄る。 「れ、霊夢……物凄く悪い顔してるよ?」 「いや、ちょっと愉快なことをしてあげようかなーと」 「や、やだ……やめて」 霊夢の妖しい笑みに、なんとなく何をされるか想像がつく。 しかし、足の痺れているルーミアには、逃げられない。動こうとしても、ぴりぴりとした小さな電流のような感覚が、ルーミアを襲う。 そして、いつの間にか霊夢はルーミアの真後ろへと来ていた。 「や、やめ――」 「ほりゃ!」 「~っ!?」 霊夢がルーミアの足の裏をつついた。 ルーミアは、声にならないようで、両手をぱたつかせながら、そのまま横に倒れてしまった。お茶をとっさに卓袱台の上に置いて正解だった。もし置いていなかったら、完全に零していただろう。 「あはは、あんたそんなに痺れてたの?」 「だから言ったでしょ! 霊夢の馬鹿! くたばれいむ!」 「ふむ、まだつつき足りないみたいね」 「え、や、うみゃあああああああ!?」 その後、しばらくはつつかれ続けたという。 ◇◇◇ 「今日の仕事をー」 「言い渡ーす! と、ちょっと待って」 「んー?」 いつも通り、境内で掃除を言い渡そうとしたが、ルーミアからストップがかかった。こんなことは初めてで、一体なんだろうかと首を傾げる。 ルーミアはえへへ、と笑っている。 「雪合戦しよう!」 「は?」 「せっかくの雪だよ? やろうよ! どっちにしろ掃除はするんだし、それなら掃除前に暴れた方が良いと思うんだ」 「あー……雪合戦ねえ」 目を瞑って、昔を思い出す。幼い頃に、魔理沙とよく雪合戦や雪だるまを作ったりして、よく遊んだものだ、と。霊夢は、雪合戦という単語自体、久し振りに聞いた気がした。 たまには良いかもしれない、そんなことを思う。 「やってもいいけど、二人だけの雪合戦ってどうなのよ?」 「えー楽しいよ、多分」 「……仕方ないわね。それじゃあ、やりますか」 「うん! えいっ!」 「ぶふぁ!?」 霊夢がやる、と言った次の瞬間、雪玉が顔面を襲った。どうやらルーミアは、あらかじめ作っておいて、隠し持っていたようだ。手をずっと後ろに隠し、ばれないようにしていた。 完全な不意打ちを食らった霊夢は、ぷるぷると震えている。 ルーミアは、慌てて距離をとる。 「ふふ……やるじゃない。さすがの私もこれは読めなかったわ」 「れ、霊夢、顔が怖いよ?」 「誰のせいだと思う?」 「えーと、もしかしなくても、私かな」 「正解。ルーミアは賢い良い子ね。ご褒美に、とっておきの雪玉プレゼントよ」 霊夢がしゃがみ、手のひらサイズの雪玉を作った。見た感じ、誰もが作れそうな普通の雪玉だ。 しかしルーミアは、絶対に何かある、と予想して警戒モードに入る。 「そーれっ! 避けられるものなら避けてみなさい!」 「あれ、案外楽に避けられ――って、えぇぇぇぇ!?」 ルーミアがふわりと空中に浮かび、避けた。と思ったら、ストレートに来ていた雪玉が、突然方向を変えてルーミアを襲ってきた。驚きつつも、なんとか避けるが、雪玉はそれでもなお追ってくる。 「ホーミング機能付き雪玉よ。当たるまで追い続けるわ」 「ずるい! ずるっこ!」 「あんたも工夫すればいいじゃない。ほらほら、止まっていると被弾するわよ!」 「っ! とりゃ!」 ルーミアは、襲ってくる雪玉をぎりぎりまで引きつけてから、自分の持っていた雪玉で相殺した。雪は玉の形を失い、そのまま散った。 霊夢はその隙に、新たな雪玉を作る。 ルーミアも急いで地上へと戻り、雪玉補給へと向かう。空を飛ぶと、一見有利そうではあるが、いちいち戻らなきゃいけないので雪玉補給に時間がかかる。 「隙あり!」 「ひゃわっ!?」 雪玉を作っている最中の、無防備なところを狙われた。避けようと思った時には、既に肩に被弾していた。 当たってしまったものは仕方がない、次が大切だ。そう考えたルーミアは、作り終えた雪玉をたくさん抱えて、霊夢から距離をとる。 「背中ががら空きよ!」 「えへ、そう簡単にはいかないよ!」 背中を見せて走るルーミアに雪玉を投げつけようとしたその時、霊夢を中心に闇が展開された。霊夢の周りは、さっきまでの真っ白い雪景色とは真逆の、真っ黒で純粋な闇に染まった。 これではルーミアが何処に居るのか、分からない。 「っ……やるわね。でも、ホーミング機能なら見えなくても関係ないわ!」 「うわ、やっぱりそれずるい!」 闇のせいでルーミアの姿を確認することは出来ないが、ホーミング雪玉を必死に避けている声が聞こえる。 「うわ、ひゃあ!? みゃ、わわわ!」 「くっ……あはは」 目に見えなくても、その声だけで、ルーミアがどんな顔をしているのか、どんな動きをしているのかが想像できた。それがおかしくて、霊夢は思わず笑ってしまう。 笑いながらも、次々と雪玉を投げるのは忘れない。その全てにホーミング機能が付いているため、ルーミアは忙しく避けるしかないだろう。まさに、反撃の隙さえ与えない。見る人によっては、物凄く大人気のない光景かもしれない。 「霊夢! 私今気付いた!」 「は? 何が?」 「この状況、霊夢から私を見ることは出来ないけど、私から霊夢を見ることも出来ない!」 「それに加えて、私はホーミングであんたの姿確認する必要はないわね」 「……これ、私凄く不利だ!」 「いまさらね」 ルーミアからすれば、円型の闇が目の前にある。そこに向かって雪玉を投げればいいのだが、霊夢の姿をはっきりと確認出来るわけではないので、多少狙いがぶれてしまうだろう。雪玉は決して大きくはない。命中率は、下がる。 だが、霊夢は相手の姿が見えようが関係ない。 大きい雪玉でも作ればいいのかもしれないが、作る暇がない。何度も避けて、時には投げて、それの繰り返し。 「うー……どうしよう」 「面白そうじゃないか。手を貸すぜ」 「へ?」 「恋符『マスタースパーク(雪仕様)』だ!」 「は、え、ちょ、まさか魔理沙!?」 ルーミアの肩をぽんと叩き、現れたのは魔理沙だった。 そして、箒でホーミング雪玉を叩き落としてから、突然のスペルカード宣言。 霊夢は、その宣言の声を聞いて、嫌な予感がした。 マスタースパーク(雪仕様)は、大量の雪を纏い、まるで雪崩のように霊夢の方向へと走る。普段の霊夢なら、あっさりと避けられただろう。しかし、今は闇のせいで何が起こっているのか分からない。 とりあえず、どの方向でもいいから動くべきだ。そう思った時には、既にマスタースパークにのまれていた。 「っあ……く!」 そのあまりの重い衝撃に、吹っ飛ばされる。あぁ、結界を張れば良かったのかも、と思ったが、既に遅い。 ルーミアは、予想外すぎる展開にぽかんとしている。 「うっし! 完全勝利!」 「完全勝利、じゃないよ! やりすぎだよ! 霊夢吹き飛ばされたよ!?」 「あー? いや、あいつならこれくらいでくたばらんだろう。これしきのことで霊夢がやられるなら、異変の一つも解決出来ないさ」 「そう、さすが魔理沙ね。私のこと、よく理解してくれているわ」 「ひゃい!?」 ふらりふらりと、あちこちぼろぼろになった霊夢が立ちあがる。 髪も乱れていて、顔が隠れてしまっていた。そのせいで、今どんな表情をしているのか分からない。そう、分からないのだが、身に纏うなんともいえないオーラが、ただ見ただけのルーミアを怯えさせた。 「出たな妖怪ハクレイノミコレイム!」 「誰が妖怪だ!」 箒を構えて、ふざけた口調で言う魔理沙。 霊夢は割と本気で怒っている。 「さて、覚悟はいいかしら? 魔理沙、ルーミア」 「ええ、私も!?」 「あっはっは、旅は道連れ世はしゃけって言うだろ?」 「それ、旅は道連れ世は情け、だよね?」 「お喋りはそれくらいにして、とりあえず――」 ルーミアと魔理沙が喋るのを止めて、霊夢の方へ向くと、そこには明らかに陰陽玉が複数。よくみると、表面を薄くだが、雪で包んである。 これを見た魔理沙は冷や汗を、ルーミアは両手をぱたつかせ慌てる。 「くたばりなさい」 「ちょ、霊夢、それは明らかに反則だろう!」 「そ、そうだよ! それはダメだよ!」 「大丈夫、雪で包んであるから。痛くないわ。多分」 「いやいやいや!」 「というか、私じゃなくて魔理沙でしょう! なんで私までー」 「私はお前を助けようと思ってだな――」 「うん、どうでもいいからとりあえず二人とも、何発耐えられるかしらね?」 笑顔の霊夢。 境内に、惨劇が起こった。 ◇◇◇ 「ふいーさっぱりしたぜ」 「ったく、あんたは毎回毎回……」 「あ、あはは。でも、なんだかんだで私は楽しかったよ」 雪合戦の後、汚れた服や冷え切った体をなんとかするため、お風呂へ入ることになった。 服はとりあえず、洗濯かごの中に入れておいた。 魔理沙は、タオルで髪をごしごしと拭いている。霊夢から借りたドロワーズに、薄い白い半袖のシャツという格好だ。ちなみに、ルーミアも霊夢もお風呂上がりなので、似たような格好である。 「よし、風呂上がりだし一杯やるか」 「ダメ。ルーミアが酔っちゃうと大変なのよ?」 「んー? 酒癖悪いのか?」 「泣き上戸になったり、いろいろ大変だったのよ。というか、あんた何しに来たの?」 「遊びに来たんだぜ!」 「よし、帰れ」 「酷いな!?」 「あはは、相変わらず仲良いね」 ルーミアは麦茶を飲みながら、そんな二人のやりとりを見ていた。 「はぁ、今日は魔理沙のせいでいつも以上に疲れたわ」 「なんでもかんでも人のせいにするのはよくないぜ」 「いや、明らかに魔理沙のせいでしょう」 「うん、魔理沙のせいだね」 「む、助けてやったというのに、ルーミアまで……なんだ、ここはみんな敵か?」 「ルーミアは常に私の味方よ」 「その味方に陰陽玉ぶつけたのは誰よ」 「ルーミア、細かいこと気にしていると大きくなれないわよ」 ルーミアがジト目で睨んだので、霊夢は逃げるように視線を外した。 「さて、遊びに来たはいいが、あれだな。することが全くないな」 「言っておくけど、うちに遊び道具なんてないわよ」 「んーじゃあルーミアで遊ぶか」 「どういうこと!?」 突然矛先が自分に向いて、ルーミアは思わず麦茶を噴き出しそうになった。 魔理沙が意地悪い笑みを浮かべて、両手をわきわきと動かしている。 「霊夢、お前の昔の巫女服ってまだあるか?」 「あるけど……何に使うのよ?」 「あいつに着せてみる」 「霊夢の昔の巫女服?」 少し興味があるのか、ルーミアはぴくりと反応した。 「あーでも、どこにしまっていたかしら」 「お前のことだから、普通に箪笥に入ってそうだぞ。霊夢、そんなに服多くないしな」 「あ、そうかも……ちょっと待って」 霊夢が立ち上がり、箪笥の方へ行く。そして、一番下の段を開けて、探し出した。 魔理沙もルーミアも、大人しく待つことにする。 どれくらい経ったか。おそらく数分だろう。それくらいして、霊夢がぴたりと動きを止めた。 「あった!」 「おお! あったか!」 「うわ、懐かしい……捨てるのも勿体ないから、なんとなく捨てきれずに持っていたのだけど……ルーミア、着てみる?」 ルーミアは、少し悩む。 霊夢の手にある小さな巫女服が目に入る。着てみたいという欲求が、少しだけある。 「うん、霊夢がよければ、着てみたいかも」 「私はもう着ないし、どうぞ」 「私、ルーミアがいつもの服以外を着ているのって、見たことないな」 霊夢から巫女服を受け取る。 そして、ルーミアは着ようとするが―― 「な、なんか着替えをジッと見られるの、恥ずかしいんだけど……」 「おーおー気にするな」 「気にしない気にしない」 「うー……」 少し赤くなりながらも、巫女服を着る。 慣れない服のため、着るのに少し手間取ってしまった。 それでも、ちゃんと時間をかけて、着ることが出来た。 「ど、どうかな?」 「おお、幼い頃の霊夢より可愛いな」 「失礼ね! いや、まあ可愛いけど。うん、似合ってるわね」 幼い頃の霊夢よりは今のルーミアの方が少し大きいようで、スカートの部分が膝より少し上だった。上半身もそのせいで、おへそが見えてしまっている。ちなみに、巫女服のデザイン自体は、霊夢が普段着ているものとなんら変わりはない。 霊夢も魔理沙も、素直に可愛いと思った。 「ちょっと小さかったわね」 「あーそうだな。ちょうどかと思ってたんだが」 「なんか、不思議な感じ。霊夢って、昔はこんなに小さかったんだね」 「そりゃあね。随分と昔だし」 「えへへ~良いね、この服」 どうやらルーミアは気に入ったようだ。 上機嫌で、その場で一回転してみせた。やっぱり、少しだけ小さいが、それでも似合っていた。 「ルーミア、気に入ったならそれあげるわよ?」 「え!?」 「あー良いかもな。これで博麗神社に巫女二人だな」 「でも、それは悪いよ」 「服は誰かに着てもらうためにあるのよ。私はもう着ないし、もしよかったら、あんたが着てあげて。別に毎日着ろってわけじゃあないわ。たまに、気分転換にでも着てくれればいいわ」 「……うん! ありがとう!」 「どういたしまして」 満面の笑みで頷いたルーミアに、霊夢も魔理沙も自然と笑みが零れた。 しばらくの間、ルーミアは上機嫌で巫女服を着たままでいた。 ◇◇◇ 「悪かったな、こんな遅くまで」 「別に良いけど……本当に泊まっていかなくて良いの?」 「ああ、別に大丈夫さ」 「それじゃあ、またね。気をつけて帰りなさいよ」 「おう、それじゃあ! ルーミアも、またな!」 「うん! またね、魔理沙!」 結局、魔理沙は晩御飯を食べた後、帰って行った。お風呂まで入ったのに、泊まるのだけは断って帰ってしまった。魔理沙には魔理沙の生活がある、とちゃんと理解している霊夢は、あまり引き止めなかった。 二人は見送ってから、部屋へと戻る。 お風呂には入ったし、晩御飯も食べた。 「ルーミア、お布団敷いといて」 「りょーかいっ!」 ルーミアに布団を敷かせている間、霊夢は軽く伸びをする。今日は朝から晩まで、騒がしい日だったから、疲れたのだろう。 布団を敷き終わると、寝巻に着替える。 「ふぁ……眠い」 「今日も楽しかったね」 「そうね……今日も、楽しかったわね。朝から誰かさんのせいで疲れたけど」 「むぅ……霊夢の意地悪」 「あんたがいけないんでしょうが」 「痛っ!」 霊夢が軽くデコピンをした。いつものデコピンとは違って、そんなに痛くはなかった。 それでも、ルーミアはうぅ~と唸って霊夢を睨んでいた。 もちろん、それを霊夢はいつも通りそれを無視する。 「ほら、寝るわよ」 「んー」 布団に入ると、やっぱりひんやりとしていて冷たかった。 こればっかりは、仕方がない。春が来れば、この布団の冷たさからも解放されるだろう。それまでは、自分の体温で温めるしかない。 「霊夢、今日結局掃除してないね」 「あんたが明日やれば良いでしょう」 「霊夢は?」 「仕方ないから、私も手伝ってあげるわ」 「あは、ありがとー」 「はいはい、どういたしまして」 「ねえ、霊夢」 「んー?」 「おやすみなさい」 「ええ、おやすみなさい、ルーミア」 そう言った後、目を瞑った。 ルーミアもやっぱり疲れていたようで、すぐに穏やかな寝息が聞こえてきた。 霊夢はそれを聞いて、くすりと笑う。 そして、ゆっくりと瞼を閉じた。 穏やかな寝息が、二人分に増えた。 あとがき 番外編含め全15話、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました! とってもとっても楽しかったです! |
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