絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

知ること

プチ投稿作品『知ること』
フランとパチェの出会い話。微シリアスでいつもどおり短編です。





「貴女は、とても愚か者ね」

 今でもたまに思い出す。
 私が初めてパチュリーに会った時、言われた言葉。
 腹が立つくらいに澄した表情で私に言ったパチュリーを、私は衝動的に壊そうとしたのを覚えている。
 そう、昔のお話。





◇◇◇





「あーあ、つまんない」

 地下はつまらない。妖精メイドも、すぐ壊れる。私にとっては、無生物も生物も脆くてつまらない。
 そんな毎日。
 閉じ込められて何年経ったかは、もう覚えていない。別に出たくも無い。
 ただ、呼吸をして、食事をして、それを繰り返す。
 お姉様と遊ぶのは楽しいけれど、滅多に来てくれない。

「世界を、壊せないかな……」

 いっそ、全てを無に返したら面白いかもしれない。
 そんな馬鹿なことを考えながら、暇を潰す。
 そこで、気付いた。

「なんだろ?」

 館内に膨大な魔力を感じた。お姉様が新しく雇ったりしたのだろうか。それにしても、この魔力は面白そうだ。ちっとやそっとじゃ、破れそうにない。遊んでみたいなぁ。でもそんなことしたら、お姉様に叱られそうだ。

「う~ん……今日は諦めよう」

 楽しみはとっておこう。
 もし簡単に壊れちゃったら、あまりのつまらなさに苛ついて八つ当たりしちゃいそうだし。



「ねぇ、お姉様」
「んー?」

 あの魔力を感じた日から、一ヵ月くらいは経っただろうか。
 お姉様が珍しく、私の部屋に来た。

「今は大人しい感じがするけど、ちょっと前に凄い魔力を感じたの。あれは何?」
「魔力? あぁ、パチェね」

 お姉様がそう言った。
 パチェ? 私の知らない名前だ。やはり新しく来た者か。

「使用人?」
「違うわよ。私の親友」
「え!?」

 驚いた。
 プライドが高いお姉様が、親友という対等な関係を認めた人物。
 私は、抑え切れない好奇心を自分の中で感じた。

「強いの?」
「あぁ、強いね。私が認めた強さよ」
「どんな人?」
「魔女よ。知識の魔女、パチュリー・ノーレッジ」
「ふーん」

 自分で訊いておいて、わざと素っ気無い返事をする。私がそのパチュリーとやらに興味を持ったということを、お姉様に知られては厄介だからだ。

「駄目よフラン」
「何が?」
「誤魔化しても無駄」

 あっさりとバレてしまった。お姉様が本気で睨んでいる。

「いいでしょ。ちょっと遊んでもらうだけだから」
「駄目よ」
「……煩いなぁ、いちいち。それともお姉様が遊んでくれるの?」

 狂っている。
 そう、私は多分狂っているんだ。今だって、大好きなお姉様に凶悪な殺気をあてている。
 お姉様は、鋭い目付きで私を睨む。こういうお姉様の表情、嫌いだなぁ。いっそ壊してあげようかな。

「フラン」
「何?」

 お姉様は、続きの言葉を発しない。
 狂気と緊張に包まれた空気が、肌に痛い。

「戻るわ」
「あれ? お姉様遊んでくれないの?」

 お姉様が遊んでくれないのなんて分かっていた。私たちが本気でやりあったなら、紅魔館は半壊レベルじゃすまないだろう。

「パチュリーとかいう人、壊しちゃうよ?」

 私の脅迫に近い言葉に、お姉様は一瞬だけ足を止めた。そして、少しだけ顔を振り向かせ、

「貴女にパチェが壊せるかしら?」
「私は例外無く壊すよ」
「膨大な知識の前では、フラン、貴女が壊されてしまうかもしれないわよ?」
「つまらない冗談だね」

 お姉様は、それ以上何も言わずに、重い扉を開けて、戻って行った。
 私が壊される? くだらない冗談だ。
 けれど、お姉様はパチュリーをそんなに評価してるとなると、

「久し振りに、楽しめそうだねぇ」

 私は、嬉しかった。
 今の私はきっと、歪んだ笑みを浮かべている。
 とても、楽しそうに。





 一応、お姉様の邪魔が入らないように、夜は避けた。
 陽が昇る直前くらいの時間を狙って、部屋を脱出した。
 だけれど、一つ盲点。

「場所……分かんない」

 廊下を歩きながら、考える。
 暴れまくれば、出て来てくれるかな。それとも、一つ一つ部屋を破壊しようかな。
 そんなことを考えながら歩いていると、見慣れない場所に辿り着く。

「ここは?」

 大きな扉を開いて、中に入ると、そこには見たこともない本が、尋常じゃないくらい大量に本が並んでいた。
 紙特有の匂い、灯に使われている古びたランプ、静寂を帯びた空間が、そこにはあった。

「もしかして……ここに」

 一歩、また一歩と中に足を踏み入れる。
 感じる。魔力の流れを。
 私は確信した。ここにパチュリーがいる、と。
 わくわくする。胸が高鳴る。頬が緩むのが抑えられない。
 私の歩く音が、静寂を破っていた。
 ただの足音が、ここではやけに煩く聞こえる。
 けれど、今の私はそんなことをいちいち気にしない。
 ただ、遊ぶことだけを目的にしている。
 薄暗い灯が、一ヵ所だけをぼんやりと包んでいるのを見つけた。

「貴女がパチュリー・ノーレッジ?」

 そこには、本を読んでいるせいか、私には一切顔を向けない人が居た。
 魔力を、感じる。
 恐らくは、当たり。
 だけど、返事が無い。何でだろう。

「ねぇ、聞いてるの?」
「……」

 読書に集中すると周りが見えなくなるタイプなのだろうか。
 苛々するなぁ。
 あの本さえ無ければ、私に気付くのだろうか。
 なら、壊してしまえばいい。
 パチュリーの読んでいる本を簡単に壊してやった。
 粉々になった本を無表情で見つめている。
 一体何をしてるんだろう。驚くとか何かしら反応が無いとよくわからない。
 感情が無いのだろうか。

「ねぇ、もう一度訊くよ。答えなきゃ貴女を壊しちゃうかも。貴女がパチュリー?」
「貴女は、とても愚か者ね」

 やっと目を合わせたかと思ったら、いきなり何を言うんだろう。
 透き通るような瞳が、何故か私を馬鹿にしてるように思えた。
 腹が立つ。何だろう。いいや、壊しちゃえ。

「壊すことしかしらない貴女は、何のために生きてるの?」
「え?」

 壊そうとした手を止める。
 本当に、何を言ってるだろう。

「壊して、壊して、自分を不幸な者だと自分自身で慰めて、長い時を空虚とも言えるような生活で刻み、一体貴女は何をしているの?」

 わけが分からない。
 無表情で淡々とした口調のパチュリー。

「貴女、妹様、フランドール・スカーレットでしょう? 貴女の姉、レミィから聞いてるわ」
「うん、そうだよ」
「貴女は、何をしているの?」
「何がさ?」
「何をしているのかと、訊いている」
「別に何もしてないよ」

 本を壊した以外、別に今は何もしていない。

「そう、やっぱり貴女は駄目ね」
「な!?」

 いきなり何なんだ。
 初めて会った相手をいきなり否定するやつがいるだろうか。まぁ、私は会った途端に壊すことがあるけど。

「何もしないで悲劇のヒロイン気取り?」
「な!? そんなもの気取ってない!」
「ならただの子どもね。遊びたいから遊ぶ、相手の意思を無視して。そして壊す。本当に、頭の悪い」
「っ!?」

 もう我慢出来ない。壊してやろう。
 そう思ったけれど、そうしたらパチュリーの言っていることをしているのと同じだ。それは、何か嫌だ。
 ギリギリで、我慢する。

「あら? 攻撃をしてくるかと予想していたのだけど」
「私は、子どもなんかじゃない。パチュリーより年上だよ」

 パチュリーは全く表情を変えない。

「何なのさ、私のこと知らないくせに。知ったような口で、馬鹿にして」
「知らないし、興味もないわ」
「む!」
「ただ、貴女が嫌いなだけ」
「っ!?」

 なんとなく、パチュリーの態度で気付いてたけど、こうもハッキリ言われるとは思わなかった。

「私の何が嫌いなの?」
「知ることが出来るのに、知ろうとしないこと」
「知ること?」
「危険だからと地下に閉じ込められている間、貴女は知ろうとしなかったらしいじゃない」
「何をさ?」

 知ろうとしないとか、パチュリーの言うことはどこかふわりとしていて、理解し辛い。

「能力の扱い方や力の制御法など、貴女は知ろうとすれば知ることが出来た筈。学び、普通に生活出来る運命だって、きっとあった。なのに、貴女は何もしていなかったですって? そんな長い年月を? 愚かすぎて笑えもしないね」

 あぁ、苛々する。
 壊したい壊したい壊したい。

「精神を安定させ、破壊衝動を抑える術も、知ろうとしない。狂っているから、と決め付け、最低限の努力もしない。実に愚か」

 うん、いいよね。
 やっちゃお。あはは。

「だから、私は今の貴女が大嫌いよ」
「もういいよ……」

 パチュリーを壊す構えを取る。パチュリーは全く動じない。

「壊れちゃえ」
「待て」

 私とパチュリーの間に、お姉様が降って来た。
 あーあ、邪魔が入ったよ。

「フラン、貴女の考えることなんて分かってるわ。だから朝方に頑張って起きてた」
「ふん……」

 うっとうしい。
 私の全てを分かったみたいな態度が、癪に触る。

「そして、パチェ。あんまり私の可愛い妹をいじめないで」
「いじめているつもりは無かったわ」
「それでも! 私が止めなきゃどうなっていたか……」
「親友の妹様を攻撃する趣味は無いから安心して」
「はぁ……ったく」

 私の時と違って、パチュリーはほんの僅かだけど表情に変化が表れている。
 なんだか、私だけピエロみたいだ。

「ほら、フラン戻りましょう」
「……ん」

 流石に館を半壊以上にさせるわけにはいかないから、ここは大人しくお姉様に従ってあげよう。
 だけど、戻る前に一つだけ。

「ねぇ、パチュリー」

 パチュリーは返事をしないけど、私は続ける。

「今からでも、知るべきことを知ることは出来る?」
「……決して遅すぎることはない」
「もし、私が長い時間をかけて学んだら、どうなるかな?」
「知らないわよ。だけど、もし貴女がそうなったら、私は貴女を見直すかもね」
「ふーん、そ。じゃあ絶対にその無表情を驚きに変えてあげるよ」
「じゃあ一つだけ、今貴女が知るべきことを教えてあげる」
「ん?」
「貴女は、どれだけ愛されているかを知るべき」
「へ?」

 愛されているか、だって?
 嫌われて、恐れられる存在の私が? 一体誰に?

「パチェ! よけいなこと言うな!」
「あら? 私はレミィのことだなんて言ってないわよ?」
「くっ……ハメたわねパチェ」
「自爆じゃない」

 お姉様が、私を?
 絶対に、嫌われてると思ってた。
 お姉様を見ると、顔を赤くしてパチュリーに怒っている。

「お姉様」
「い、いいから早く戻るわよフラン!」

 お姉様に強く手を引かれて、その場を後にした。
 お姉様が私を嫌っていないということを、知った。それだけで、心が温かくなる。嬉しかった。ただ、嬉しかったんだ。
 知るということは、こういうことなのだろう。
 もっと、私は知ろうと思う。
 別にパチュリーに言われたからじゃない。
 パチュリーの私を馬鹿にしたような目付き、私に対する無関心を、壊すために知るんだ。





◇◇◇





 そんなこんなで、私はあの日から長い時間をかけて色々知った。
 今じゃ別にパチュリーとだって普通に会話出来る。

「妹様、どうしたのぼーっとして」
「ん、ちょっとね」
「あぁ、ミートボールをどうやって勇者の剣に変えるかを悩んでいるのね」
「誰もそんなこと考えてないよ! パチュリーと初めて会った時のことを思い出してたの!」
「あぁ、懐かしいわね。私が雑草をひたすら千切っては投げの作業をしている時に、妹様がガスバーナーで私を殴ったのよね」
「そんなことしてない!」

 くだらない冗談も、やりあえる仲になった。
 最初はあれだけ壊してやりたかったのに。
 昔の私が主役を演じていた歪んだストーリーは、破壊されてもう無い。
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