よろしくね!2010-01-06 Wed 21:05
去年の12月31日に仕上げた年越し作品。
「今年もあと一時間だね」 「あと一時間なのに、図書館で時間を費やすのかしら?」 「ぶぅ、だってお姉様は神社行っちゃうし、美鈴も咲夜もお仕事だし、一人じゃあつまらないし」 図書館には数自体は少ないが、小説や漫画といったジャンルも置いてある。一人、部屋で籠っているよりは、パチュリーが居る図書館で何か読んでいた方が楽しいという判断だった。 もう頻繁に訪れるため、パチュリーもいちいち出て行けとは言わない。 「ま、良いけどね。何か飲む? 紅茶くらいなら淹れてあげるけど」 「あれ? パチュリーが淹れてくれるの?」 いつもは小悪魔に任せっきりのパチュリーが、珍しく立ち上がり、フランドールにそう言った。 フランドールは、あまりの珍しさに少し驚く。 「小悪魔には休暇を出したわ。年末だから帰郷もしたいでしょうから」 「え!? 小悪魔帰郷したの?」 「えぇ、なんでも大変らしいわよ、小悪魔の故郷。なんか、第五次チラリズム大戦の真っ最中らしいわ」 「何その争い!?」 「チラリズムしながら弾幕勝負をするという戦いよ。負けた時は脱がされた時という、過酷なルール」 「それに小悪魔参戦しに行ったの!?」 「えぇ、そうよ。まぁそんなことより、何飲む?」 「え、や、じゃあ紅茶」 「分かったわ」 フランドールは、紅茶を淹れるパチュリーの様子を目で追う。正直なところ、パチュリーが自分で紅茶を淹れる場面など見たことが無かったため、不安があったのだ。 だが、それは無駄な心配に終わることとなる。 「ふぁ~……パチュリー、なんか格好良いね」 「そう? 普通に淹れているだけよ?」 雰囲気や姿勢で、なんとなく上手に淹れるだろうということが分かった。例えば、咲夜が紅茶を淹れる時のような、そんな空気。そういうものを、フランドールは感じとった。 そんなフランドールの目の前に、パチュリーが今淹れたばかりの紅茶が置かれる。 「いただきます」 「どうぞ」 それに手を伸ばして、ゆっくりと口に運ぶ。 一口含むと、思わず感嘆のため息が漏れるような、そんな味。 「パチュリー、美味しいよ」 「久し振りに淹れてみたけど、そう言ってもらえると安心だわ。まぁ、咲夜には敵わないけどね。ありがとう」 フランドールの言葉に、パチュリーは素直にありがとうと返す。 咲夜には敵わないと言うが、充分な味だった。 「まさかパチュリーにこんな特技があるなんて」 「特技って程でも無いわよ。知識で美味しい淹れ方というのを、学んだことがあるだけよ」 「良いなぁー私も何か学んでおこうかなー」 「知識は役に立つわよ。そうね、妹様には性の知識を……」 「いらないよ!?」 「じゃあ、吸血鬼の特殊な吸血プレイの知識を……」 「だからいらないってば!」 「我侭ねぇ。ならとっておきの知識、胸が大きくなる知識を」 「え? そ、それはちょっと知りたいかも……」 「ただし、一度膨らんだら止まらない。結果、爆発するわ」 「怖っ!? 絶対嫌だよ!」 「我侭すぎよ、妹様!」 「なんで私が怒られるパターン!?」 何故か怒られたフランドール。 紅魔館の知識人は、無駄な知識まで知っているようだった。 フランドールは、とりあえず落ち着くために、紅茶を口に運ぶ。相変わらず、紅茶は美味しかった。それにより、少し落ち着くことが出来た。 「そういえば妹様」 「んにー?」 「年越し蕎麦食べる?」 「あ、食べようかな」 「用意してないけどね!」 「なら言わないでよ」 図書館に紅茶はあっても、さすがに蕎麦までは無かった。 はぁ、とため息を吐くフランドール。 「そんなため息吐いても、蕎麦は出ないわよ」 「いや、いらないよ。紅茶だけで充分」 「そう。おかわりいる?」 「あ、いるー」 紅茶を飲んで、適当に会話して、本を読む。 ただそれを繰り返す。 残り少ない時間が、少しずつだが、確かに減っていた。 「ねぇ、パチュリー」 「ん?」 「一年、いろいろあったね」 「そうね」 「なんだかんだで、楽しかった」 「えぇ、私も同じ意見だわ」 二人とも、視線は本から離さずに、会話する。 別に仲が悪いわけでもない。 ただ、これが二人にとっては普通なだけ。 「あと何分で年明け?」 「一分も無いんじゃない?」 「アバウトだね」 「そりゃあそうよ。いちいち正確な時間なんて確認してられないわ。たかが一年に一度訪れる出来事、騒ぐこともない」 「むぅ……パチュリーは冷めてるなぁ」 「魔女だからね」 「意味が分からないよ」 そんなやりとりをしている内に、年は呆気なく明ける。 特に騒がしいこともなく、ただ静かに時が過ぎた。 「パチュリー」 「んー?」 本から目を離さなかったさっきとは違い、今度はパチュリーの方向へとしっかり向く。 パチュリーも、本を閉じてフランドールの方向へと向いた。 「明けましておめでとう! 今年もよろしくね!」 笑顔で、元気良くそう言った。 えへへ~、と可愛らしい笑顔だ。 「ん、こちらこそ。今年もよろしくね、妹様」 普段あまり笑わないパチュリーが、穏やかな笑みを浮かべながら、そう返した。 互いに、なんとなく握手を交わす。 新しい年が、始まった。 あとがき的ななにか~ とにかく間に合わせるのに必死でした。 タイトルとか10秒で考えましたw 内容をもうちっと増やしたかったです。 |
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