絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

あなたも、ドMになれる……

つい最近創想話に投稿した作品。
天子と衣玖で、ギャグ話。テンポや勢いをいつもとは違った感じで書いてみました。





「あーあ、つまんない」

 ふよふよ浮いた要石の上に胡座をかきながらそう呟くのは天子である。
 異変を起こした後、謹慎処分を受けてしまい、部屋から出られずにいた。
 何の面白味もない、簡素な部屋だ。中央に丸テーブル、壁際にはベッドがあり、それ以外は箪笥などといった、実に普通すぎる物しか置いていない。女の子らしいぬいぐるみなどは、一切無い。

「あー! 脱走してやろうかしら……」

 緋想の剣は没収されてしまったが、天人としての肉体的力と天子自身の体術ならば、見張りの使用人くらい軽く倒せるだろう。
 しかし、厄介なのが一人だけ居るだろうと天子は予想していた。それは、衣玖だ。もしも見張りの中にただの使用人だけでなく、衣玖までもがいたならば、それは最大の難関となるだろう。緋想の剣を持たない天子では、かなり厳しい相手だ。

「でも、いつまでもこうしていてもつまらない! 行動あるのみ!」

 天子は、決心した。
 戦うための決心では無い。見つからないように抜け出そうとする決心だ。

「そうと決まれば色々と準備しなくちゃ」

 箪笥から、八雲紫(21)の隙間通販で購入した様々な物を取り出す。
 交通安全と書かれたヘルメットに、博麗上等と書かれた白い体操着(上のみ)、そして生徒会係長補佐と書かれた腕章、虹色の軍手、四季映姫のスカート、さらに腕時計型麻酔銃と手裏剣。天子はこれらを全て装備した。

「よし! あの隙間妖怪曰く、外の世界の勝負服らしいし、気合いも入った!」

 全てを装備した天子は、非常に残念な格好だった。というか、目立って仕方が無い。

「そうね、脱走は……明日の朝方にしましょう」

 なら何故今装備したのだろう、それを突っ込む者は、誰もいない。
 天子は、綿密な作戦を練り始める。天子自身、無事に脱走出来るとは思っていないのだろう。見張りの数も、誰が見張っているのかも、不明な状況なのだから。何が起きても対応出来るようにしておかなければならない。

「普通に部屋の扉から出たら……見つかるのは当たり前。窓からは……駄目ね。小さすぎて出られない。窓を壊すか? いや、音でバレるのは必至。他に出られそうな場所は無いし……なら、やっぱり部屋の扉から出る以外は無い」

 ぶつぶつと小さく呟きながら、真剣に作戦を練る。
 そこで、やっぱり情報の少なさが欠点となる。

「まずは、最低限の情報を集める」

 天子は、普通に扉を開く。するとそこには、使用人が二人、立っていた。

「総領娘様、どちらへ?」
「トイレよトイレ。いちいちうっとうしいわね」

 不機嫌を装い、横を通り過ぎる。
 そしてわざと、少しだけ遠回りをしてトイレへと行く。

「ふ、ふふ……計画通り!」

 物凄く妖しい笑みを浮かべる。
 天子は、部屋を出てから今までの行動で、最低限の情報は得ることが出来た。
 まず、部屋の前に居る見張りは二人。

「まぁ、これはもしかしたら今日たまたまかもしれないわね。今までだって何度かトイレへ行く時に見たけれど、前は三人だった。でも、あの感じなら多くても五人かそこらね」

 次に家の様子。
 これは、わざと遠回りして、部屋の音や使用人の数、大体何処にどれだけの人数が居るのか、などを確認した。
 それによって、人の少ないルートを把握することが出来る。しかも脱走は明日の朝方だ。深夜なら気を張って見回りをしているが、朝方なら多少の油断や疲労もあるだろう。そう天子は考えていた。
 そして、最大の難関と考えていた、

「衣玖は、居なかったわね……やっぱり雲の中に居るのかしら」

 もし、家の中に衣玖が居なくても、脱走した後、そのまま地上へ逃げようと考えている天子にとっては、雲の中に居られる方が厄介だった。
 地上へ行くには雲の中を通らなくてはならない。そして雲の中は衣玖のテリトリーだ。慣れない者には動き難い雲の中、衣玖の場合は雷で遠距離も中距離も攻撃を仕掛けてくる。接近戦に持ち込もうとしても、雷がある時点でそれは難しい。

「地震を起こして衣玖を地上へと働かせる? いや、そうしたら私がまた目をつけられるし……あ、もしかしたら」

 そこで、ふと天子は思った。

「衣玖は私が謹慎状態って知らないかも!」

 もしも、衣玖が知らなかったならば、戦わずして通れるかもしれない。そう、考える。

「万が一のために緋想の剣を取り戻したいけれど、何処にあるか分からないし、探してたら時間ロスだし……うん、衣玖が知らないことを祈ろう」

 天子は、自室へと戻ることにした。
 得た情報で作戦を練り、それが終わると明日へ備えて早めに眠ることにした。
当日寝坊なんて残念なパターンにはなりたくないから。





◇◇◇





「よし、装備完了」

 脱走当日。
 音を立てないよう気をつけ、勝負服に着替える。

「まずは、見張りを仕留める」

 扉を開くと、そこには驚いた表情の見張りをしている使用人が、二人。

「そ、総領娘様!? その格好は一体!?」
「キモッ!?」
「朝から煩いわよ。それと見張りお疲れ様、眠りなさい」

 まずは使用人の腹部に一発拳を入れ、気絶させる。暴言を吐いた方の使用人は顎を十二発殴られ気絶した。
 天子はヘルメットを、少し目が隠れるように深く被り、

「第一関門、突破」

 と呟いた。格好良さそうで格好悪い。
 続いて、最善ルートへと向かう。
 天子の予想では、ほとんど障害は無いルートだ。現れる使用人は、見回り仲間を呼ばれる前に潰せば良い。
 息を潜め、忍び足で行動する。妙な汗が、頬を伝う。少しは緊張しているのだろう。廊下の軋む音だけが、やけに喧しく感じる。

「な!? 総領娘様!」
「見つかったか」
「おい! 誰か――」
「黙りなさい」

 一人の使用人が慌てて仲間を呼ぼうとした瞬間、天子は手裏剣を投げた。使用人の額にサクッと刺さり、倒れた。使用人と言えど、天人ではあるからこれくらいでは死なない。むしろ傷で気絶したというよりショックで気絶しているといった感じだ。

「便利ね、手裏剣。それに軍手してるから指紋も残らない。最高じゃない」

 色々と危ない天子の言葉にツッコミを入れる者はいない。

「予想外に時間かけちゃってるわ。急がなきゃ!」

 なるべく静かに、だけれど走る。長い長い廊下を走り抜けた。幸いにも、誰にも見つからないで行けた。
 そして――

「出れたっ!」

 裏から脱出。
 約二週間振りの外だ。

「んーやっぱり外の空気は美味しいわねぇ!」

 笑顔で、大きく深呼吸する。
 体中に、新鮮な朝の空気が、染み入るような感覚。

「あ、いけない! 脱走したことがいつバレるか分からないし、早く地上に行かなきゃ!」

 慌てて後ろを振り向くが、まだ誰かが追ってくる気配は無い。
 ホッと息を吐き、再び集中を高め、雲の中へと潜る。
 天子の予想が正しければ、恐らくここには最大の難関、衣玖が居る筈だ。
 雲の中はよくわからない。妙な感覚で、どこか少しだけだが、動き難い。
 なるべく全速力で、地上へと向かう。
 衣玖は現れる気配が、無い。

「もしかして、不在かしら」
「誰がですか?」
「きゃぁぁぁぁぁ!?」

 不意に背後から声がして、驚き振り向く。
 そこには、会いたくなかったけれど会うだろうと予想はしていた人物、衣玖が居た。

「珍しいですね、総領娘様がここに居るにゃんて」
「にゃんて? まぁいいわ。私は地上に行くの」
「はぁ……そうですか」
「止めないの?」
「何故です?」

 天子は心の中でガッツポーズをした。衣玖は天子が謹慎状態だと知らない様子だ。
 キョトンとして、首を傾げている衣玖。

「ううん。なんでもない。それじゃあ私行くから」
「あ、総領娘様! 忘れ物ですよ~」
「え? ってうわっ!?」

 呼び止められ、振り向くと、数発の弾幕が迫ってきていた。天子は慌ててそれを避ける。
 衣玖は笑顔で戦闘の構えをとっていた。

「私からのお仕置、忘れてますよ?」
「いらないわ、そんなもの。衣玖、知ってたわね?」
「はい。まぁ知っていなくても、その格好の総領娘様見たら、まず怪しみます」
「勝負服よ!」
「じゃあ、お望み通り勝負受けて差し上げます」

 腕を頭上にもっていき、人指し指を天に向け、雷を落とす構えをとる。

「ちょ、衣玖! それは無しにしない!?」
「総領様から総領娘様を懲らしめてくれと頼まれています」
「雷はやりすぎでしょ?」
「大丈夫ですよ。天人ですから」

 笑顔でそう言った次の瞬間、雷が天子に落ちる。が、それを予測していた天子は、既にその場所には居なかった。
 雷の速度に発生してからの対応など出来ない。ならば、予め落雷場所を予測し、素早く行動するのが良い。そして、同じ場所に止まっていてはいけない。それを天子は考えて、行動する。
 衣玖は攻撃をかわされたにも関わらず、平然と次のモーションへ移る。
 弾幕をばら蒔く。計算した弾幕で無くて良い。衣玖にとっては、ただ量が多ければそれで良い。

「っ!」
「総領娘様、諦めて下さい」

 弾幕が邪魔で、思うように動けない。別に弾幕の威力は、致命的な威力は無いからどうでもいい。ただ、膨大な量がうっとうしい。天子の動きが止まったところを、衣玖が落雷で狙う。接近戦にも持ち込めない。
 突破口を早めに見つけなければ、動き回っている天子の方は時間の問題だろう。それに対して衣玖は、始めの場所から一歩も動いていない。
 焦りが、天子の体力をより蝕む。

「残念、動きが鈍くなりましたね」
「きゃあっ!」

 その瞬間を、衣玖は逃さなかった。
 落雷が直撃した天子は、力を失い、倒れた。気絶は辛うじてしていない。ただ、痺れて動けないだけだ。もちろん、ダメージは尋常じゃないが。

「総領娘様、戻りましょう」
「……」

 天子は答えない。

「本来天人は地上にあまり関わってはいけません。それに地上の者の中には一部ですが、総領娘様をドMと馬鹿にしているような者までいます。何故、そんな場所に行くのですか。天界なら、平和ですよ」
「ねぇ……衣玖」
「はい」
「ドMのMは、何のMだか分かる?」
「は?」

 天子は、冷静になっていた。一度雷を受けたからか、焦りは消えた。
 そして、衣玖を倒す手段を、思い付いた。

「ドMのMはね……マゾのMじゃあないのよ……」
「な!?」

 天子は膝に力を入れて、立ち上がる。もう痺れがとれたのかと、衣玖は驚く。

「ドMのMは……ドMのMは……」
「そ、総領娘様?」

 未だに少しだけ震える体を、無理矢理起き上がらせ、しっかりと立った。
 そして、異常な程の気迫を含む大声で、

「ドMのMは! ミラクルのMよ!」

 叫んだ。
 あまりの気迫に、衣玖はぞくりと体が震えた。

「ふふ、ドMのMはミラクルのMですか……なら、ここでミラクルを起こせますか?」
「ミラクルを起こしてみようじゃないの!」

 自信満々、けれど油断は一切含まない天子の表情に、衣玖は小さく笑った。
 そして、衣玖は構える。

「なら、一撃で終わらせてあげす!」
「私は、ドM!」

 天子が、速攻で衣玖に突っ込んでくる。
 衣玖は弾幕を放っても、今の天子ならばそれを無理矢理押し退けて来ると判断し、弾幕を止め、雷のみに集中する。
 先程と違い、複数の雷を同時に発生させ、広範囲で天子を攻撃する。

「さぁ! この雷、避けられますか!」

 天子は、その刹那、頭上に持っていた手裏剣を全てばらまいた。
 雷は、その手裏剣に反応し、天子に落雷することは無かった。

「な!?」

 驚きの表情を浮かべる衣玖に、突っ込んでくる天子。
 衣玖は避けようとするが、明らかに天子より遅い。

「終わりよ!」
「っ!」

 天子が構えをと取ったのを見て、衣玖は自分を襲うであろう衝撃を覚悟する。

「えいっ!」
「へっ?」

 最終兵器、腕時計型麻酔銃によって、衣玖は負けた。
 殴られる痛みを予想していた衣玖にきたのは、チクッと針が刺さる小さな痛みだった。

「やった……最大の難関、突破ー!」

 眠っている衣玖を見て、大喜びする天子。
 その瞬間、頭上から先程投げた手裏剣が全て降ってきた。

「嘘っ!? きゃぁぁぁ……って、あれ?」

 当たる筈だった手裏剣は、天子の被っていたヘルメットによって全て防ぐことが出来た。
 まさに、

「ミラクル……」

 ドMのMは、ミラクルのMだった。


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