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絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

『流れ星』

sirokumaさんから、SS1周年記念にいただきましたー。
一輪と船長希望したら、もう甘くて、綺麗に纏まっていて、とにかく素晴らしいSSをいただきました!
ありがとうございます!





空を見上げれば満天の星。
舟から聞こえてくる笑い声。
春の風が気持ちいい。幻想郷の夜空をどこまでも飛んでいく。

今日は宴会。
大切な人が帰ってきた、大切な日だから。
いつもはお酒なんて口にしない私も、この日に限っては別で。
つい顔が火照るぐらい飲んでしまっていた。

私たちの舟。
私たちの宝物。
どこまでもどこまでも飛んでいける気がした。

「いっちゃーん」
「なあに」
「ふへへっ、なんでもない」

そして今、私の膝の上に頭を乗っけて、笑っているいる幽霊。
1000年以上一緒にいた、私の大事な親友。
にへらにへらと普段じゃ絶対考えられないような顔をしていた。
憎らしい、でも思わずこっちまでつられてしまうような笑顔で。

「飲みすぎなんじゃない?」
「いいじゃん、今日ぐらいさ」
「まあそうかもだけど」
「いっちゃんこそなんでそんなに普通な顔なの? 平気なの?」

普通じゃない、平気でもない。
顔が火照って熱い。頭だってぐらぐらしている。

「だって、私までつぶれたら、あなたをどうにかする人がいなくなっちゃうでしょう」
「えー」

ごろごろ、ごろごろ。
膝にふわふわとした髪が落ちる。
嬉しそうにごろごろと。ああなんだか犬みたいだ。

「ぷっ」
「何笑っているの」
「笑ってないわよ」
「笑った! 絶対! こうしてやる!」
「きゃあっ!ちょ、こら!ばか!胸触るなって言ってるでしょ!」

上を向いて手を出したかと思えば、思わぬところに手が伸びていた。
慌てて体制を変えようとする。この酔っ払いめ。

「更に大きくしてあげよっか」
「余計なお世話よ」
「まあそう言わずにさあ」
「酔っ払いの言うことなんて聞いてられない」

懲りもせず、手を出してわきわきとさせている彼女。
酔っ払いの言うことはこれだから。
いたずらっぽく笑う仕草に少しだけどきりとしてしまったのは、きっと気のせいだ。
全部、お酒のせいなのだ。

「あ」

じゃれあっていると、足が甲板に引っかかってしまう。
視界が回転して、どこにいるかわからなくなる。
目の前には彼女が居て、そのまま重力に引っ張られて。

「――っ! 」

大きな音がひとつ。
慌てて彼女の頭の後ろに手を置く。もう片方の手で地面に手をつく。
どうやら間に合ったみたいだ。手に衝撃が走っているけれど。

「大丈夫?」
「……っ」

驚きながら、彼女に話しかける。
彼女の方も驚いている。
私と目を合わせるとすぐに、そっぽを向いてしまった。

「こら、ふざけているからでしょ、全く」
「ごめん」
「大丈夫?痛くない?」
「そっちこそ」
「私は平気よ。どっか打ってない?」
「……大丈夫」

先ほどの勢いはどこへやら。
やけにしおらしくなってしまった。

「いっちゃん、あの」
「ん?」
「その……」

何顔赤くしてるんだか。自分で撒いた種でしょうに。
私は悪くない、絶対に。

髪に手を置くと彼女が私のほうを向く。
視線が交わる。
そのまま撫でてあげると、ふわふわして気持ち良い感触が残る。
当の本人は更に顔を赤くしていたけれど。

「水蜜」
「な、に」

そしてそのまま。
何かを言うより早く、彼女の方に近付いた。
互いの距離がゼロになる。

「――ッ!」

だから、顔赤くしすぎだってば。
人のことは言えないけどね。

「いいいいっちゃん」
「何?」
「酔ってるでしょぜったいー!!」

あはは。
そうかもしれない、そうでないかもしれない。
いつもよりもふわふわ浮いている気分だ。
でも、だってさ。

「私をここに呼んだのは貴方でしょ」
「うっ」
「ここには誰も来ないってわかってたでしょ」
「うぅっ」
「ね、だから」
「……」


しおらしいのをいいことに。
私はまた、彼女との距離をゼロにした。


赤く火照った体を抱きしめて。
今度は逃げられなかった。


「いっちゃん」
「なあに?」
「傷だらけ」
「そっちこそ」
「強かったね」
「うん」
「人間なのに」
「そうね」
「強かったなあ」
「うん」

夜風が冷たい。体が熱い。
お酒のせいか、それとも目の前の彼女のせいか。

「やっとさ、恩返しできたよ」

そう、肩ごしに呟かれた。

「うん」

私はただ、短く返す。

「もう何もかも嫌になって、悲しくて、逃げようとして、それでも、それでもあの暗い地底で立っていられたのは」
「うん」
「全部、あなたが側に居てくれたからだったんだよ」
「私こそ」
「ありがとね、いっちゃん」

千年。
千年もの間、私たちは封印されていた。
その時間はあまりに長すぎた。もう二度と仲間には会えないと思っていた。

絶望に染まらずにいられたのはきっと、この子が側にいたからだ。
一緒に泣いてくれたから。
一緒に慰めあったから。
そして一緒に、大切な人を救うことが出来た。

「ねえ」
「うん」

春の夜に風が吹く。
互いに視線が交わって。
そうしてまた、距離がゼロになる。
体中が熱い。けれど心地が良い。



こんな風になるなんて、千年前は思ってもみなかったんだけどね。


「あ」
「え」
「今、流れ星が流れた」
「へ」

後ろを振り向き、空を見る。
その瞬間だった。ぐらりと体が傾いて、

「――っ!」

バタン。
大きな音とともに、衝撃が背中を走る。

「へへへ!形勢逆転!」
「いっ……たぁ!!み、水蜜!!」
「油断大敵ってやつよ!」
「ああもう、あんたって奴は!」

じゃれあってじゃれあって。
自動操縦な船の甲板で。
春の風に吹かれて、私たちは夜空を眺める。
――千年分、見てこなかった夜空を。

「ってこら!どこ触っているの!?」
「よいではないか、よいではないか!」
「水蜜のばか! ちょっ、こら脱がそうとするなぁ!」
「ぶれーこー、ぶれーこー!」

そして、彼女は笑う。
千年分見てこなかった、楽しそうな笑顔で。
夜空に向かって笑う。いつまでもいつまでも。
そんな姿を見て、私も一緒に笑うのだった。








☆素敵ないただきもの☆ | コメント:0 | トラックバック:0 |
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