絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

頑張れ小さな女の子~8.これからも、笑って……

『頑張れ小さな女の子』8話。
一番の山場で、悩みに悩んだお話。文が登場。
このお話のこの場面のために、私の書いた今までのルーミアは「そーなのかー」を一度も言わせませんでした。このお話に、ずっととっておきました。





 ルーミアはいつもと同じように博麗神社に向かう。
 明るい陽射しも麦藁帽子で遮っているため、闇を纏わなくとも大丈夫だ。
 境内に入ると、いつもは迎えてくれる霊夢が居なかった。

「あれ? 縁側かな?」

 ルーミアは、霊夢といつもお茶を飲む縁側へと行ってみる。
 すると、予想通りそこには霊夢が座っていた。がしかし、その状況はいつもと違っていた。霊夢の隣りにもう一人、ある人物が居る。

「霊夢おはよ」

 とりあえずルーミアは霊夢に声をかけた。
 すると霊夢は話かけられて初めてルーミアの存在に気付いた様子で、

「あ、ルーミアおはよう」

 と言った。
 霊夢の隣りに座っていた人物も、ルーミアの方向へ向く。

「あなたがルーミアさん、ですか?」
「え、あ、うん」

 突然話しかけられ、少し戸惑うルーミア。

「私、射命丸文です。よろしく」
「え、はい、よろしく射命丸さん」
「文でいいですよ」
「あ、文?」
「はい、それでいいです」

 ルーミアに対して笑顔を浮かべながら接する文だが、ルーミアとしては戸惑いを隠せない。普段のルーミアなら初対面でも無邪気に接するだろう。
 がしかし、ルーミアは本能的に、感じていた。文の笑顔が、ただ貼り付けただけの偽物の笑顔だと。

「えと……」
「私たちを取材したいんだって」
「ふぇ?」

 どうしていいか分からず、おどおどしているルーミアに、説明をする霊夢。

「一日私たちを取材するそうよ」
「取材?」
「私生活の様子をただ写真に撮ったりするだけらしいから、いつもどおりで良いそうよ」
「そんな突然……」
「どうせ言ってもきかない相手よ」

 はぁ、と大きな溜め息を吐く霊夢。その様子には、諦めやら、他にも何か違う感情が詰まっているように見えた。

「任せて下さい。邪魔はしませんから、ネ」
「存在が邪魔なんだけどね」
「酷いですよ!」
「あははくたばれくたばれ」
「笑顔で何さらっと怖いこと言ってるんですか!?」

 霊夢の毒舌に文が涙目でツッコミを入れている。結構酷いことを言っているようにも見えるが、よくみると2人とも少し楽しそうな雰囲気だ。それを敏感に感じ取ったルーミアは、警戒を緩める。

「えと、文は普段何してるの?」
「おや? 取材する立場の私が逆に取材されてしまってます?」
「ルーミア、この天狗は食べていい天狗よ」
「ちょ!?」
「食べていいの?」
「駄目に決まってます!」
「冗談だよ~食べないよ」

 笑いあう3人。
 この時、文の笑顔を凝視したルーミアだったが、最初に感じ取った、ただ貼り付けただけの偽物の笑顔は、まだ少しだけ残っているように見えた。
 文は何かおかしい。そう、ルーミアは思った。

「ねぇ、文」
「はい?」
「文はどうして笑わないの?」
「は?」

 ぴたり、と笑い声が止まった。静寂な時間が訪れる。誰もが沈黙をしている中、やけに虫の鳴き声だけが喧しく聞こえた。風が木々を揺るがす音も、この妙な沈黙を、さらに加速させているように思える。

「ルーミアさん、どういう意味ですか?」

 文が、沈黙を破った。文は笑顔で、そう、とても笑顔で言った。
 霊夢は、ただ何も言わずに目を瞑っている。

「だって、文おかしいよ? 笑顔が、なんていうか、上手く言い表せないけど……その……」
「簡単に言えば、嘘っぽいってことでしょ」
「そうそれ! そのせいで、何を考えているかよく分からないよ」

 霊夢の嘘っぽいという言葉は、ルーミアが言い表せないことを簡単に表現し、まさに的を得た言葉だった。

「私はルーミアさんを少し見誤ってましたかもしれませんね」
「ま、普通は気付かないわよね」
「霊夢さんも気付いていたのですか?」
「まぁね。別に言わなくても良いことっぽかったから言わなかったけど」
「あ、あはは……敵いませんね」

 苦笑いをし、両手を上げて、降参といったポーズを取る。
 霊夢は、特に動く様子も無く、ただ文とルーミアを見ていた。
 ルーミアも、動く様子は無い。

「私が笑わない理由、聞きたいですか?」
「別にどうでもいいから。さっさと取材したら帰れ」
「あはは、酷いですねぇ」
「私も、いいよ」
「おや? 私に尋ねたのに、やっぱり聞かないと?」
「うん。だって、文が隠してたことでしょ? 無理に話さなくていいよ。今の文、なんか苦しいよ」
「苦しい?」

 ルーミアの言葉に、文は意味が分からず繰り返す。
 ルーミアは、何故か少し暗い表情だった。

「うん。苦しい。何か、無理してるのか、少し、苦しいよ」
「霊夢さん、この子面白いこと言いますね」
「ルーミアは面白いわよ? あんたも今日一日接すれば分かるわ。はい、というわけで暗い雰囲気しゅーりょー!」
「痛っ!?」
「はぅわぁ!?」

 霊夢が立ち上がり、文とルーミアの間に割って入った。そして2人の額に4連デコピンをかました。突然の刺激に、2人は目を大きく開いて驚く。

「な、ななな何するんですか!?」
「何するのさ霊夢!?」
「うっさい、神社じゃあ私がルールよ。文句ある?」

 鋭い目付きで睨み、そう言う霊夢にルーミアと文は、

「すみませんでした! なんかよくわかりませんが、すみませんでした!」
「ごめんなさいごめんなさい!」

 即、謝った。



◇◇◇



「霊夢さん」
「んー?」

 文と霊夢は、縁側でお茶を啜っていた。あの後、軽く朝食を食べ、ルーミアは境内の掃除へ行かされ、今この場には居ない。

「さっき、私の笑顔が嘘っぽいって言いましたけど、何故です?」
「そんな話?」
「私としては、何故見破られたのかが気になって仕方ありませんよ」

 文は、割と真剣な表情で言うが、霊夢は足をぷらぷらさせて、全く真剣味が無い。
 お茶を啜っている音が、さらに脱力感を誘う。

「ただ単純に不自然だったからよ。私は本当の笑顔を見ているからね。あんたのあんな笑顔は笑顔と言えなかった。ただ、それだけよ」
「本当の笑顔って、ルーミアさんのことですか?」
「さぁ? どうかしらね」

 文の追及を、霊夢は軽く流す。

「霊夢さん」
「何よ?」
「私、無理なんですよ」
「何がよ?」
「笑えないんですよ」

 冷たい風が、髪を撫でる。霊夢は、文の方向へ向く。文は、なんだかよくわからない表情を浮かべていた。

「強い者には愛想を振り撒き、記者としての時も相手の機嫌を損ねぬよう、ただ愛想を適当に振り撒いて、そんな生き方を続けていたら」

 霊夢は分かった。ルーミアがさっき言っていた「苦しい」という言葉の意味が。

「いつの間にか、自分の本当の笑顔、忘れちゃってました」

 そう言う文の表情は、笑顔なのにどこか脆そうに見えて、それでいて確かに苦しそうにも見えた。

「じゃあ思い出しなさいよ」
「無理ですよ」
「無理じゃないわよ。今日一日、ルーミアを観察してみなさい」
「あの子を?」
「えぇ、あんたも思い出すかもよ? 忘れてたもの」
「あんたも……って霊夢さんも何かを忘れてたんですか?」
「さぁね……ほら、取材なんでしょう。行って来なさいよ。私のお茶啜ってる姿を記事にしてもつまんないわよ」
「それもそうですね」

 その言葉に、文は立ち上がる。

「では、行ってきます」
「はいはい」



◇◇◇



「あ、文ー手伝ってくれるの?」
「いえ、取材です」
「そっか。手伝いたくなったら言ってね?」
「なりません」
「むぅ……」

 今日は風が強いせいか、落ち葉が多い。ルーミアは少し苦戦しているようだ。

「ま、頑張って下さい」
「おー!」

 走りながら、箒を使っているルーミア。

「何が楽しいだか……」

 しばらく見ていると、ルーミアは何故か笑顔で、

「何をそんなに一生懸命なんだか……」

 何故か一生懸命で、

「何で……」

 文には、理解出来なかった。
 一生懸命で、笑顔を絶やさずにいるルーミアが、分からなかった。
 文とは違う、本当の笑顔。自分を誤魔化さない、様子。


「終わった!」

 それなりに時間が経った頃、ルーミアが大声でそう言った。

「っ……!」

 そんなルーミアの、眩しすぎる笑顔から、思わず顔を背けた。
 文は、昔を思い出す。
 小さな命令にも一生懸命頑張っていた過去、間違いと思うことには例え上司や己より力の強い者でも、容赦無く感情を表していた。
 いつからだろうか、世の中を知った時からか、文は変わった。周りに合わせ、強い者には逆らわずにいることが、楽に思え、文は楽な道を選んだ。

「あぁ……思い出しましたよ。色々と……」

 目の前の、小さな妖怪の女の子を見ていて、文は懐かしく思えた。

「文、終わったし霊夢のトコ行こう!」

 無邪気なルーミアが、文に歩み寄ってくる。
 その瞬間、異常な程に強い風が吹いた。

「あ……」

 集めただけの状態にあった落ち葉は、虚しく散っていった。

「また最初からですね」
「……なんでー!?」

 叫び、涙目になっているルーミア。
 実は文が能力で風を起こしたのだが、ルーミアは気付いていない。

「頑張って下さいね」
「にゃぅ~!」

 少し自棄になったように落ち葉に突っ込んでいくルーミア。

「確かに思い出させて貰いましたけど、何かちょっと癪ですから、ごめんなさいルーミアさん」

 少し悪戯っぽく笑う文を見た者はいなかったが、その笑顔は、嘘を一切含んでいない、笑みだった。



◇◇◇



「今日はありがとうございました。良い新聞が書けそうです」

 結局、夜になるまで取材をしていた。

「泊まっていく?」

 霊夢の言葉に、文は首を横に振る。

「いえ、すぐにでも新聞を書き上げたいですから」

 どこか、清々しい笑顔で言う文。
 それを見て、霊夢は軽く笑って、「そう」とだけ言った。

「それじゃあ、ルーミアさんも、またいつか会いましょうね」
「うん!」
「それと霊夢さん、あの話はルーミアさんにしましたか?」
「……まだよ」
「そうですか……」
「あの話?」

 ルーミアが首を傾げて、疑問符を浮かべる。

「私が今日取材しに来た理由の一つでもありますが……」
「いいわよ、私が話しとくから。文は帰りなさい」
「分かりました。では」

 文は、ふわりと浮き上がり、風を纏いながら帰って行った。
 境内には、ルーミアと霊夢だけが残った。

「ルーミア、話があるわ」
「うん」
「あいつが、文が今日来た理由、それは最近噂になってることを確かめに来たのよ」
「噂?」
「そう……ここ博麗神社のね」

 星と月だけが灯の役割を果たす時間。
 空気は、どこまでも冷えていた。

「最近人里にも噂らしいけど、私が、博麗の巫女が妖怪を雇っているということ」
「……え?」
「本来、妖怪退治をする者が妖怪を雇っているという事実。今までも、妖怪が集まる神社って言われたりしていたけれど、それは妖怪が勝手に寄ってくるだけだろうと、周りは思っていた。けれど、雇ったとなると……」

 今までなら、妖怪が勝手に集まるということだったため、そんな酷い噂にはならなかったが、雇ったとなると話は変わる。
 印象も悪くなるだろうし、参拝客は減るだろう。
 その噂を耳にした文が、今日やって来たのだった。

「じゃあ……私は、もうクビ?」
「いや、これをあんたに話したのは、いずれ近いうちにこの噂を耳にした時、あんたがショックを受けないように今話しただけ。別に気にしないでいいわよ」
「気にしないでいいなんて……無理だよ!」

 大声で、ルーミアは言った。少し、肩を震わせながら。
 普段とは違うルーミアに、霊夢は少し驚いた。

「だって! それじゃあ霊夢が……」
「私は気にしないって」
「それでも! それでも私は」

 震える声で、ルーミアは言う。霊夢はじっと、ルーミアを見つめる。

「私は……迷惑をかけるのは、嫌だな」

 昼間鳴いていた筈の虫すら、今は鳴いていない静かな夜。
 優しく吹いている風すらも、煩く感じる。
 まんまるお月様が、やけに明るい。

「迷惑だなんて言ってないでしょ」
「でも……」
「それに今更じゃない。あんたから雇ってとか言って来たんじゃない」
「そうだけど……」

 最初のルーミアなら、霊夢にかかる迷惑なんて無視していたかもしれない。けれど、今のルーミアは変わった。迷惑をかけるのを嫌がっている。

「それに、私一応人を食べる妖怪だよ?」
「あんたが私を食べるってこと? やれるもんならやってみなさい」

 両腕を広げ、無抵抗を見せる霊夢。

「私、本気で食べるよ?」
「やってみなさいよ」

 ルーミアは歩み寄る。そして、霊夢の両肩を掴み、首と肩の間に口を近付ける。

「霊夢、私を今すぐ退治しなきゃ、食べられちゃうよ」
「だから、やってみなさいって言ってるでしょ。私はあんたを信じてる」

 大きく口を開き、歯を肌に軽く食い込ませる。
 霊夢は全く動じない。
 あとはルーミアが、顎に力を入れるだけで、霊夢は散る。博麗の巫女といえども、人間だ。そして、ルーミアは見た目は幼くとも、人を食べる妖怪だ。そう、立派に妖怪なのだ。
 少しだけ、そう、あと少しだけ力を込めるだけで。だけど――

「出来ないよ……」

 ルーミアは、出来なかった。
 大きな瞳から、涙を流して震える。肩に置いていた手から、力が抜ける。
 柔らかい笑みを浮かべて、霊夢はルーミアをそっと抱き締めた。

「あんたは、私のこと嫌い?」
「嫌いな……わけないよ。霊夢から、いろんな大切なもの貰ったよ? 麦藁帽子も食事も、それになにより……温かさを。感謝してもしきれないくらい」
「そう。ならそれでいいじゃない。周りが何て言おうと、気にしないでいつもどおりにしてればいいのよ」
「でも! それじゃあ霊夢が……」

 まだ涙を浮かべながら、言うルーミア。

「いいのよ、別にね。それに私も」

 優しくルーミアの髪を撫でながら、霊夢は笑顔で、言う。

「私もあんたのこと、嫌いじゃないからね」

 霊夢もまた、人の温もりを深くは知らなかった。だが、ルーミアと一緒に居て、それを知った。
 それを聞いたルーミアは、

「えへ~、そーなのかー」

 ふにゃりと、柔らかい笑顔を見せた。
 周りを明るくする、笑顔を。

「うん、やっぱりあんたは笑顔のが似合うわ」

 そう言って、霊夢も笑う。

「これからもビシバシ働いてもらうからね」
「うんっ!」



◇◇◇



 私は噂の真相を確かめに博麗神社へと赴いた。博麗の巫女が雇う妖怪とは一体どのような妖怪なのか、姿を写真に収めることが成功した。
 その写真は一面に掲載。
 なんと博麗の巫女が雇った妖怪は、見た目幼い少女にしか見えない妖怪だった。
 名をルーミアという。闇の妖怪だが、その無邪気で明るい様子からは、全く妖怪には見えない。
 今回の取材から私は、噂は噂でしかないということが分かった。恐らく噂を耳にした者たちは、恐ろしい妖怪を想像しただろう。しかし、どうだろうか。実際は、無邪気な妖怪だった。人を襲う妖怪ではあるが、博麗神社に雇われていることにより、人を襲うということは無いらしい。
 百聞は一見にしかず。皆さんも一度博麗神社に訪れてみては如何だろうか。博麗の巫女と、笑顔が似合う可愛らしい妖怪が、あなたを迎えてくれることでしょう。

 新刊の『文々。新聞』一部より抜粋。
東方SS | コメント:0 | トラックバック:0 |
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