絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

惚れ薬騒動~烏天狗と河童

プチ投稿作品『惚れ薬騒動』シリーズの4番目。
内容は文とにとりで、あやにと。マイナーですよね、はい。





「こ、コッペパンが迫って来る!?」

 そう叫びながら、勢いよく布団から起き上がるにとり。
 最初はぼーっとしていたが、しばらくして先程まで見ていたものが夢だと認識する。意識がハッキリとしてきた証拠だ。
 軽く欠伸をしながら、布団から出る。首を回し、骨を鳴らす。両腕を頭上に伸ばして、体の怠さをとる。

「う~ん、今日は何しようかな」
「私とにゃんにゃんしましょう」
「………………気のせいか、幻聴が」
「あやややや、あなたの大好きな射命丸お姉さんですよ?」
「大嫌いの間違いでしょ?」
「幻聴相手に会話ですか?」
「目の前に面倒な烏天狗様がいらっしゃいますからねぇ」

 にとりの目の前には、確かに文がいる。つまり幻覚でも幻聴でもない。
 確認しよう、ここはにとりの家だ。決して広くは無い、けれども一人で暮らすには十分な広さ。周りには、一般人には理解出来ないであろう機材や、どこにでもある簡素な箪笥、丸い卓袱台がある。天井には、今は灯が付いてはいないがランプが吊るしてある。よく見ると、コードが壁沿いに繋がってあり、コードの先にはスイッチがあった。おそらくは、使い易いように自分で改造したのだろう。

「とりあえず帰ってくれませんか? 烏天狗様」
「何故敬語?」
「烏天狗様にタメ口なんて使えませんよ」
「いつもはタメ口じゃないですか」
「そうでしたっけ? 最近物忘れが激しいんで」
「むむむ……」

 文は不満そうに、表情をしかめる。いつもなら身分など関係無く、軽い口調、なんだかんだで親しげに会話をしてくれるのがにとりだった。
 しかし、それが今は敬語。しかもわざとらしい。にとりの文に対する嫌がらせということが、分かる。

「にーとーりっ!」
「わひゃっ!?」

 正面からにとりに勢いよく抱き付く文。その勢いのせいで、足元がふらつき、布団に倒れこむ。倒れた衝撃は、背中の布団がクッションとなってくれたため、あまり無かった。
 抱き締めながら、未だに不満そうな表情を、にとりの顔に近付ける。

「にとりは私のこと嫌いですか?」
「え、あ、えと」

 息がかかる程に、近い距離。胸と胸が密着していて、互いに心音が聞こえる。
 正直、文は人気者だ。一見ふざけているような態度が目立つが、その実は部下思いであり、さらに戦闘においては他の者とは比べものにならない。滅多に本気を出すことは無いが、同じ天狗たちの中でもトップレベルだろう。そして人気は無い新聞も、一部には好評だ。裏がしっかりととれないものは記事にしないし、記事内容は読者に近い客観的に描かれている。他の天狗が作る面白おかしく誇大するような新聞とは、また違う魅力があった。加えて、容姿も良いとなれば、それは男女問わず人気者にもなるだろう。
 そんな人気者の文が、今ほぼ零距離にいる。
 にとりは、なんとなく、恥ずかしくなって顔を背けたくなる。

「私の目をちゃんと見て下さい」
「あー……いや、なんていうか」
「目を合わせないと、その可愛いパジャマを脱がしにかかりますよ?」
「~っ!?」

 にとりは今の服装に気付く。起きたばかりで、まだ着替えてすらいない今の服装は、淡いピンク色の可愛らしいパジャマだ。サイズは少し大きいのか、袖の部分が手のひらの半分以上を隠してしまっている。たぶっとした感じで着ているため、少しだけ鎖骨部分が見える。それがまた魅力的だ。

「さぁ、脱がされたいですか?」
「理不尽ですよ。烏天狗様」
「む……いつもどおり接してくれないんですか?」
「いつもこんな感じでしたと思いますが」
「反抗期ですか?」
「敬語使ってるんですから反抗はしてませんよ、えぇ」
「……私のこと、嫌いですか?」
「とりあえず、もう少し離れて下さい」
「むむむ……」

 どちらも譲らない。
 文は抱き締めたまま離れる気が無いし、にとりはわざとらしい敬語を続ける。
 睨み合う二人。

「じゃあパジャマ脱がします」
「やめてください、射命丸様」
「あややややっ!?」
「やめてくださーい、射命丸様」

 射命丸様と呼ばれ、ぴたりと止まる。
 にとりが文のことを射命丸様と呼ぶのは、初対面の時以来だ。それ以降はいつも親しげに文と呼んでくれていた。

「今日のにとりは本当に反抗期ですね」
「そうですかねぇ? ていうか結局何で私の家に居たんです?」
「教えてあげません」
「それはまた何でです?」
「一つだけハッキリしていることを教えてあげます」
「ほぅ、何です?」
「これから、にとりはお仕置タイム突入ということです」
「へ? ちょ!?」

 ぶすっと不貞腐れたような表情を顔に貼り付けた様子の文が行動を起こした。
 抱き締めるために、にとりの背中に回していた両腕を解く。そして、にとりの両頬をそっと手のひらで包む。少しくすぐったいやら文の視線が恥ずかしいやらで、にとりは思わず変な声を上げてしまう。

「な、ななな何する気さ!?」
「お、敬語やめましたね。でも、もう駄目です。許してあげません」
「だから、何する気だ!?」

 喚くにとりを無視し、手を進める文。淡いピンク色のパジャマのボタンを一つ一つ外そうとするのを、にとりが必死に止める。

「こら変態!」
「今の言葉でさらに不愉快になった私は手を進めるのであった」
「変な実況すんなぁ!」

 下から二つ、三つ程のボタンを開けると、残りのボタンは面倒になったのか、無視して開いた部分から手を進入させた。外部の空気で少し冷えていた文の手が、先程まで布団にいたせいか、温いにとりの素肌に、へその部分に触れる。

「ひゃぅ!?」
「んーすべすべ~」

 お腹の辺り撫で、その感触、伝わる温度を楽しそうに感じている。にとりは、ただただ微妙な刺激のくすぐったさに、溢れそうな笑いを堪えるのに必死だった。
 文の手が次第に腹部より上へと進むのを、肌で感じるにとり。

「っていい加減にしろー!」
「ごふぁっ!」

 にとりは思い切り、膝を突き上げた。にとりに密着していた文の腹部を狙ったその攻撃は、見事狙い通りに入った。全く予想していなかった突然の攻撃に、文はまともにくらい、変な声を上げて悶える。

「痛い痛い!」
「痛いのは文の行動だ!」
「酷い! にとりが冷たい!」

 文が腹部を押さえながら訴えるが、にとりは怒る。頬が赤く、息が少し荒いのは、怒りのせいだけではなさそうだが。
 にとりは、パジャマの開けられたボタンを付け直す。露になっていた白い肌が、再び隠れた。

「あぁ……せっかくの白い肌が」
「何残念そうな声出してるのさ!?」
「私はにとりが大好きです! つまり、にとりの体も大好きなんですよ!」
「最低な発言にも聞こえるんだけど」
「自分に正直なんです」
「いや、ただの変態」
「むぅ……」

 文の言葉を全て軽く受け流すにとり。文としては、面白くない。
 さて、どうしたものかと考える文。某有名な考えているポーズをとる銅像と同じポーズで、文も考える。

「やっぱりにとりは私のこと……嫌いなんですね」
「ん?」
「そう、ですよね……勝手に家に入ってきたり、いつもからかったりしてますし……嫌われて当然です」
「え、ちょ!?」

 突然文が悲しそうに、そう言うから、にとりは戸惑う。実は文の作戦なのだが、にとりは気付かない。文は嘘の涙を浮かべながら、続ける。

「すみません、にとり。帰りますね。もう二度と姿を見せませんから」

 立ち上がり、歩み、扉に手をかける文。

「ま、待ってよ!」

 にとりは、それを後ろから抱き付き、止める。

「だ、誰も嫌いだなんて言ってないだろ!」
「でもにとり、好きって言ってくれないし」
「そ、それは恥ずかしいから……」
「私は結構好きって言ってますよ? その度に殴られたり蹴られたりしますし……私のこと、嫌いなんでしょう?」
「き、嫌いなわけないっ! いつも文に好きって言われて殴ったりするのは……その、恥ずかしいから……でも! 本当は嬉しいんだぞ! そ、それに私だって文のことが、す、す?」

 にとりは、あと一文字を言おうとしたトコで、文の体が何故か震えていることに気付いた。

「あ、文?」
「くっ……あはは!」
「ふひゃ?」

 突然笑い出す文。どうやら笑うのを堪えていたようだ。にとりは、突然笑い出した文に、呆然としている。

「あーもう! にとり可愛すぎです!」
「わふぁっ!? もしかして、騙した?」

 振り返った文に、抱き締められたにとりは、未だに理解出来ていないような、そんな声で尋ねる。それに対して文は、笑顔で、そう凄い笑顔で、

「にとり、好きですよ」
「な!?」

 抱き締める力を強くして、言う。

「ということで、布団に行きましょうね」
「馬鹿っ! は、離せ!」

 文は、左腕でにとりの膝を抱えこみ、右腕は首付近を支える。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
 恥ずかしさのあまりに暴れるにとりだが、天狗の力は鬼程ではないが、かなり強く、にとりでは抜け出せなかった。

「やめろ! 離せって馬鹿文!」
「はいはい、好きですよ」
「会話になってなーい!」





◇◇◇





「こんの、馬鹿阿呆変態……」
「酷い言われようですね」

 少し涙目で睨まれ、苦笑いを浮かべる文。

「なぁ、結局何しに来たのさ?」
「あぁ、そろそろ教えてあげましょう。これを見せに来たのですよ」

 文が、持ってきていた小さなポーチへと手を伸ばす。中をまさぐり、取り出したのは透明の瓶だ。中には色とりどりの星型に似た、小さな粒が大量に入っている。

「金平糖?」
「に見えますが、実は違います。永遠亭の某悪戯兎さんがくれました、金平糖型惚れ薬です」
「ほ、惚れ薬ぃ?」

 あまりにも信じられないような単語に、にとりはすっとんきょうな声を上げた。

「あ、信じてませんね?」
「まぁそりゃあねぇ」
「結構強力らしいですよ。神様や天人にも効いたそうです。ただ効果は半日らしいですが」
「ふーん……ってかまさかそれを私に!?」
「いいえ、これはただ話のネタに持って来ただけです」

 それを聞いて、安堵の溜め息を漏らすにとり。
 文は惚れ薬の入った瓶をポーチに手を伸ばして、しまう。

「それに私たちには必要ないでしょう」
「え?」
「あんな物は無くても私はにとりに超ラブですし」
「なんだその変な表現」
「にとりも私に超ラブですしね」
「ちょっと待って! 誰がさ!?」
「あれ? にとりは私のこと嫌いでしたか? さっきまであんなに可愛らしい声で私の名前を呼んで――」
「うゎぁぁぁぁ馬鹿! 言うな!」

 あははと笑う文を、ポカポカと殴るにとり。
 この二人には、惚れ薬という『きっかけ』の薬は要らないだろう。

「あはは、にとり大好きですよ」
「気安く好きって言うなー!」
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