絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

頑張れ小さな女の子~7.都会派魔法使いとルーミア

『頑張れ小さな女の子』7話。アリスが登場します。








「う……んぁ?」

 目を覚ました霊夢は、右手に違和感を感じた。

「んー?」

 右手がしっかりとルーミアに握られていた。両手で包み込むようにして。
 首だけを右に動かすと、息がかかる距離にルーミアがいた。
 穏やかな表情で眠っているルーミアを見ていると、霊夢自身も頬が緩くなる。

「でも朝ご飯作らなきゃならないし……ゴメンね」

 そっと、右手を包んでいるルーミアの両手を離す。
 そして霊夢は、起き上がろうとするが、

「やぅ~」
「え、ちょ!?」

 温かさを失った為か、ルーミアが新しい温もりを求めて霊夢の右腕にしがみついてきた。
 霊夢は再び仰向けに戻されてしまう。
 右腕には、がっちりと全身を使いしがみつくルーミア。
 片腕の自由を失った霊夢は、もはやこの状況を抜け出すことは出来なくなった。

「ルーミア~ご飯抜きになるわよ?」

 やはりルーミアは熟睡していて反応が無い。
 霊夢は溜め息を吐く。

「仕方無い、二度寝するか」

 とりあえず二度寝という選択肢を選ぶ。
 ルーミアはまだ幸せそうな笑みを浮かべていた。



◇◇◇



 再び霊夢が目を覚ましたとき、ルーミアは居なかった。
 一体何処へ行ったのかと、寝ぼけながら辺りを見渡す。が、やはりルーミアの姿は無い。
 しばらくすると、足音が近付いてくるのが分かった。

「あ、霊夢おはよ!」
「んーおはよう。何してたのルーミア?」
「これ~!」

 霊夢の目の前にルーミアがおにぎりを差し出した。
 霊夢には突然のことで、何が何だか分からない。

「え、と」
「朝ご飯作ったんだよ! 霊夢みたいに料理は出来ないけど、おにぎりくらいなら作れるから」
「あ、ありがとうルーミア」

 ルーミアから差し出されたおにぎりを手に取る。おにぎりがまだ熱いことから、今握ってきたばかりということが分かる。
 食べるよう急かすルーミアに従い、霊夢は一口食べてみた。

「んぐっ!?」

 その瞬間、口の中に何とも言えない刺激が走る。霊夢は思わず吐き出しそうになったが、

「どうかな?」

 ルーミアの不安そうな眼を見て、吐き出すに吐き出せなかった。
 死ぬわけではない、と言い聞かせてなんとか飲み込む。

「お、美味しかったわ」
「ホント!? よかったぁ、隠し味に蛇とヤモリの尻尾を具に入れたのが正解だったかしら」
「死ぬわっ!」

 ルーミアの頭部を思い切り叩く霊夢。

「あうっ! 美味しくなかったの?」
「そんな物入れるな! 殺す気!?」
「あはは~」

 久し振りに、このにへらとした表情を、霊夢は割と本気で泣き顔に変えてやろうかと思った。

「そういえばルーミア、足首は大丈夫なの?」

 ふと、思い出して尋ねる。
 ルーミアは足を見せて言う。

「ほら、もう大丈夫だよ」

 確かに赤い腫れは、いつの間にか治っていた。こういう異常な回復力は、流石妖怪といったところだろう。

「そう、よかったわね。ルーミア」
「うん!」



◇◇◇



「今日の仕事を言い渡ーす!」
「おおー!」

 わざとふざけた口調で言う二人。
 正座をしているルーミアの前に、霊夢は腕を組み、足を肩幅くらいまで開いて立っている。
 はたから見たら、実に滑稽だろう。

「今日の仕事は宴会にアリスを出席させること!」
「おおー!」
「別に強制では無いんだけど、アリス最近は研究研究で来ようとしないから。少しは息抜きさせないと、ね」
「おおー!」
「アリスは魔理沙と同じ森に住んでるわ」
「おおー!」

 しばし、沈黙する。

「ルーミア、一人で行ける?」
「おおー!」
「私の名前は?」
「おおー!」

 ルーミアの頭部を思い切り叩く霊夢。本日二度目だ。

「痛い!」
「はぁ、話聞いてんの?」
「聞いてるよ!」
「じゃあ私は何て言ってたかしら?」
「おにぎりをもう一回食べたいって」
「言ってない! 誰が食うか!」

 ルーミアの額に八連デコピンをする霊夢。

「はぅあぃあっ!?」

 意外に痛かったらしく、目を見開き驚く。
 そんなルーミアを見て、霊夢は笑う。

「ほら、本当はちゃんと聞いてたんでしょ。行ってきて」
「みゅ~霊夢、分かってたのにデコピンするなんて、意地悪よ」
「あんたのおふざけに付き合ってあげたのよ」

 ルーミアは、頬を膨らませながらも、ちゃんと出かける準備をしている。とは言っても、麦藁帽子を被るだけなのだが。

「えへ~」

 麦藁帽子を被る度にルーミアは頬を緩める。さっきまで膨らませて頬が、今じゃ緩んでにへらとした笑顔になっていた。

「何笑ってんのよ」
「ううん、何でもないよ」
「そ、行ってらっしゃいルーミア」
「行って来ます!」

 ルーミアは境内を飛び出した。



◇◇◇



 森の中は、晴れている筈なのに境内に居た時よりも多少薄暗く、じめりとしている。
 森独特の匂い、落ちている小枝を踏む度に鳴る板チョコを割ったような音、虫の鳴き声など、ルーミアはその一つ一つを楽しんでいた。
 しばらくすると、洋風の一軒家が視界に入る。その家の周りだけは、木々なども無く、少し寂しい広場に見えた。

「ここかな?」

 扉の前まで来て、二回ノックをする。
 室内にノックの音が飛び込んだのは、ルーミアにも分かった。

「どなた?」

 扉越しに声が聞こえた。
 淡々とした声だ。

「ルーミアだよ!」
「……誰? 用件は何かしら?」
「霊夢からの伝言」

 扉が開く。
 金髪に大きな瞳、他人を射ぬくような視線、霊夢とは違い和で無く洋といった感じが当て嵌まる人物、アリス・マーガトロイド。

「で、何の話かしら? 私は忙しいの」
「今日宴会あるから来るようにってさ」
「話を聞いていたかしら? 私は忙しいの。大体あんた誰よ?」
「ルーミアだよ」

 アリスは己の額に手をやり、溜め息を吐く。

「まぁいいわ。とりあえず帰ってくれない?」
「宴会は?」
「出ないわよ」
「じゃあ帰らない。霊夢がアリスのこと心配してたよ? 研究研究で息抜きが出来て無いって」
「好きでやってるのよ。帰りなさい」
「帰らないわよ」

 しつこいルーミアに、アリスは苛立ちを覚える。

「ならずっとそうしてるといいわ」

 扉を閉める。
 ルーミアは何も言わなかった。

 どれくらい経っただろうか。
 アリスは研究室に籠り、集中していた。そこでふと、ルーミアを思い出す。流石に帰ってくれただろうと、扉を開けると、

「あ、行く気になった?」
「な!?」

 ルーミアはまだ居た。
 しかも笑顔で尋ねてくる。
 アリスには理解出来なかった。

「入りなさい」
「え?」
「入りなさいって言ってるのよ。ほら」
「わわっ!?」

 ルーミアの手を引いて部屋に入れる。
 ルーミアの手は冷えていて、それはアリスの手のひらに伝わった。

「あなた馬鹿? 帰ればいいのに」
「あはは~」

 ルーミアは笑う。
 そんなルーミアの笑顔を見ると、何だか先程の苛立ちが嘘のように消え去った。

「不思議な子ね」
「何が?」
「何でもないわ」

 霊夢がルーミアをわざわざアリスの元へ仕向けたのは、これが狙いだったのではないかと、アリスは思った。
 負の感情も、ルーミアの笑顔を見ていると、消え去る。
 出会って間もないのに、アリスはルーミアに興味を持った。
 アリス自身と正反対のルーミアに、憧れに似た感情を持ったのだ。

「で、宴会来てくれるの?」
「そうねぇ……」
「霊夢心配してたよ」
「それはさっき聞いたわよ」
「じゃあ来てよ~」

 少し困った表情のルーミアを見ていると、微妙な罪悪感が沸く。
 訴えるような視線に、アリスは根負けした。

「はぁ、分かったわ。行けばいいんでしょ」
「やったー! じゃあ早速行こう!」
「え、ちょ、まだ早すぎでしょ!?」

 引っ張るルーミアは、意外に力強く、アリスは仕方無く上海蓬莱だけを手早く連れて、博麗神社へ向かって行った。



◇◇◇



「宴会に出るようにとは言ったけど、こんなに早く来ても何も無いわよ」
「私だってこんなに早く来る気無かったわよ!」

 空はまだ青い。
 ルーミアは、約束通り連れて来たと得意気な表情だ。
 そのルーミアを手招きする霊夢。
 霊夢に近寄るルーミア。
 八連デコピンをかます霊夢。

「へぁふぁいぁ!?」
「まぁアリスを説得したことは褒めてあげる」
「ならデコピンしないでよ! 地味に痛いんだから!」

 ルーミアと霊夢のやりとりを見て、アリスは小さく笑う。

「あ、何笑ってんのよアリス。アリスもデコピンくらいたい?」
「いや、私は……」
「アリスもやられてみなよ。痛いから」
「え、ちょ!?」

 ルーミアがアリスを捕まえ、霊夢が妖しい笑みを浮かべながら近寄る。

「れ、霊夢!? 私は何もしてないじゃない!?」
「いいえ、したわよ」
「何を!?」

 じわりじわりと迫る霊夢。慌てるアリス。笑うルーミア。

「心配させた罰、よ」

 霊夢はそう言って、優しくアリスの額を弾く。

「ふぇ……?」

 予想と違った優しい衝撃に、アリスは思わず間抜けな声を上げた。

「あー! 霊夢酷い! 私には全力だったのに!」
「よし、じゃあルーミアにも優しくデコピンしてあげる」
「本当に? やったー!」
「いくわよ、そりゃあ!」

 再びルーミアに八連デコピンをくらわす。割と本気で。

「ほにゃふぁやぁ!?」

 そんなルーミアと霊夢のやりとりを、アリスはほうけながら見ている。

「えと、霊夢?」
「アリス、研究もいいけどたまには顔見せないとダメよ? みんな心配してたんだからね」

 そう言われてアリスは、

「ごめんなさい……ありがとう」

 とだけ言った。
 その言葉だけで、霊夢には全てが伝わった。

「よし、それじゃあ宴会まで時間はあるし、三人でおやつの時間にしましょう」
「やったー!」
「あ、準備手伝うわ」

 霊夢とルーミアとアリスは、縁側でお茶と羊羹を食べていた。
 軽い雑談を交えながら。
 霊夢がルーミアをからかい、ルーミアもたまに霊夢をからかう。が、その後は大体ルーミアが霊夢に叩かれたりする。
 そんな二人の滑稽なやりとりを見て、アリスは笑っていた。
 そしてアリスの楽しそうな笑顔を見て、ルーミアと霊夢も柔らかい笑みを浮かべている。
 縁側は冷たい風が吹いてはいたが、それ以上に、今だけは温かかった。
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