絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

影、二つ――後編

『影、二つ』後編。
天子と紫の組み合わせも、もっと流行ればいいのになぁ……







 天界には雨が降らない。当たり前だ、雲の上なんだし。
 なのに、何で、こんなに身体が重いんだろう。まるで、雨にうたれたかのように、重い。

「はぁ……」

 目覚めは最悪。
 理由は分かってる。でも、理解したくない。
 あいつが原因で私の心が掻き乱されたなんて、絶対に認めない。
 時計を見ると、時刻はお昼を過ぎた頃だった。

「どんだけ寝てんのよ……私」

 溜め息を吐きながら、着替える。
 別に出掛ける予定は無いけれど、いつもの服に手を掛ける。

「はぁ~い」

 私は今着替えている途中、何故この隙間妖怪は空気読まないのだろう。

「せめて空気読みなさいよ!」
「そんなものは龍宮の使いに任せなさいな」

 昨日あんなことがあったのに、こいつは前と同じ態度だ。
 本当に理解出来ない。

「で、何の用件よ?」

 着替えを終えて、こいつを睨む。
 わざと敵意をむきだしにして。

「んー今日は特にないかしら」
「は?」
「強いて言うなら貴女をもっと知ってみようかな、と」

 意味が分からない。
 普通なら、拒絶した次の日にこんなことを言ってくるやつは、まずいないだろう。

「よく、意味が分からないわ」
「私は貴女のこと、あまり詳しくは知らないじゃない? 桃と貧乳とわがままってことくらいしか知らないわ」
「忘れろ! 特に胸は忘れろ!」

 そういえば、お風呂場で見られたんだった。ちくしょう、人が気にしていることを。

「帰れ! 本気で!」
「そんなにナリナリすると体に悪いわよ」
「カ~リ~カ~リ~してんのよ!」

 私の蹴りも拳もこいつには全く効かない。易々と避けられる。しかも平然とした様子なのがいちいち腹が立つ。

「あんた……本当に腹が立つわね……」

 少し息切れ状態になる私。

「えぇ、よく言われますわ」
 こいつは薄い笑いを浮かべて私を見る。見下されているようで、さらにふつふつと怒りがわく。

「あんた……私を馬鹿にしに来ただけならさっさと帰ってくれない?」

 自然と口調が怒り口調になるのが自分でも分かった。
 また平然と馬鹿にしたように流すだろうと思っていたけれど、意外にもあいつはあたふたした様子。

「あ、別に馬鹿にしたわけじゃないのよ! ごめんなさいねぇ、こういうタイプなのよ」
「え、や、こっちこそ、言い過ぎた? かな、ゴメン」

 沈黙が続く。
 ていうか何この状況。こいつがこんな態度だから、私もなんていうか、調子が狂う。
 チラチラ私の様子を伺うあいつ。
 え、何この気まずさ。

「えと、何か喋りなさいよ」

 あぁ、私何言ってんだろう。帰れ、と言えばいいのに。

「何を喋れと言うのよ」
「あんたが考えなさいよ」
「何で私が」
「あんたが勝手に来たんだから」
「……仕方無いわね」

 良かった、とりあえず何か喋ってくれるようだ。

「今日は帰るわ」
「って帰るの!?」

 こいつ、都合悪くなると逃げるのかしら。

「何? 私にまだ居て欲しかったかしら?」
「っ!? 帰れ! 二度と来るな!」

 あいつはいつもの笑みを浮かべて、また来るわ、と帰った。
 くそぅ、最後の最後でペースをまた握られてしまった。
 次こそはギャフンと言わせてやる、じゃなかった、もう来ないことを願おう。

「ま、また来るんでしょうけど、ね」

 はぁ、と溜め息を吐く。悩ましいけど、何故か頬が緩んでいた。



◇◇◇



 下衆天人共が私を殴る。下衆とはいえ、腐っても天人だ。それなりのダメージが私に残る。
 緋想の剣を持っていない今の私じゃあ、複数相手の天人に私は太刀打ち出来ない。
 下衆が私を見下す。私は睨み、くたばれ下衆天人と罵る。
 それに腹を立てた下衆天人共は、さらに蹴りを加えてきた。
 蹲る私の腹部に、痛みが走る。胃液が逆流するかのような錯覚に陥る。
 だけれど、私はこいつらを罵る言葉を止めない。
 心までは、屈しない。
 痛みが膨らむ。嫌われ者の私を助けようなんてやつは、いない。
 視界が霞む。痛みが次第に和らぎ、温かい光に包まれる。
 何だろう、この柔らかい、温かい感じ。
 あぁ、こんなの忘れていた温もりだ。



「よしよし」
「…………」

 目を開くと、隙間妖怪さんが居ました。
 とりあえず、

「きゃあぁぁぁぁ!?」

 絶叫。

「ちょ、煩いわよ」

 さっきまでのは夢だったようだ。嫌な夢だったけれど、最後は何か温かかった気がする。
 って――

「は、離しなさいよ!」

 抱き締められていた。

「はいはい、それだけ元気ならもう良いわね」
「ん? どういうことよ?」
「あなた凄くうなされていたからね。子どもをあやすには抱き締めるのが一番よ」

 もしかして、途中から温かい光に包まれていたように感じたのは、こいつが私を抱き締めてくれたからなのだろうか。
 そう考えると、今すぐ拒絶しろと思考が告げる。

「もう関わらないでよ……」

 こんな心地良いことを知ってしまったなら、私は弱くなってしまうから。その優しさに、頼ってしまいそうになる。

「あら、子ども扱いされたのが気に食わなかったかしら?」

 もう認めよう。もちろん認めたく無いけれど。
 こいつのせいで、私の心は掻き乱されている。
 短い間しか関わって無いけれど、人とほとんど関わらない私にとっては、十分の時間だった。
 忘れていた温もりを、思い出すのに、十分な時間だったんだ。
 思えば、こいつと居る時は怒ってばかりいた気がする。そこまで感情をハッキリと表すのも、久し振りだったて思う。

「ちょっと、聞いてるの?」

 無言の私に、こいつは怪訝な顔で私を覗き込む。

「あんたはさ」
「ん?」
「何で、私にそんな関わるのよ?」

 それは純粋な疑問。
 不良天人、異変を起こした張本人、そんな私に関わるなんて普通はありえない。

「何でって言われてもねぇ……」

 あいつは少し言葉に困ったような表情をしている。
 私は言葉を待つ。

「ただ、気になったから、かしらね」
「……それだけ?」

 ただそれだけで、私と関わっていたのか。

「そう……もう迷惑なのよ。私に関わらないで!」

 なるべく、怒気を含んだ声で言う。
 この前のお風呂場のときみたいに、声が震えてることは無い。

「何を、怖がっているの?」

 あいつが、言った。
 ふと目が合うと、透き通るような深い瞳が、私の心まで見通しているようで、思わず私はとっさに目を逸らしてしまった。

「別に……何も怖がってないわよ」

 目を逸らしてこんなことを言ったら、誰だって嘘だと分かってしまう。あぁ、馬鹿だ私。

「嘘」

 ほら、やっぱりバレる。当たり前だよね。

「ねぇ天子」

 名前を呼ばれる。ずるいやつだ、こんなときに名前を呼ぶなんて。

「私はやっぱり、信用出来ないかしら?」

 二度目。こいつが私に手を差しのべたのは、二度目だ。
 私は前回、自分から手を伸ばさなかった。手をとろうとは、しなかった。
 そしてそれは――

「信用、出来ないに決まってるでしょ」

 今も変わらない。
 やっぱり、信じることは怖いから。いや、怖いというより、もう私は信じるということ自体、忘れてしまったのかもしれない。

「どうしたら、私は信用されるかしら?」

 こいつもしつこいなぁ。私なんか放っておけばいいのに。

「無理よ。信じることを忘れた私には、ね」

 ハッキリと言ってやる。
 もうどうしようもないのだということを。
 これならこいつも諦めてくれるだろう。

「信じることを忘れた、ですって?」

 でも予想に反して、こいつは退かない。

「なら簡単なことよ」

 優しい声が、柔らかい笑みが、私に向けられている。

「忘れたなら、また初めから覚え直せばいいだけよ」

 そして、こいつは簡単に私の心の鎖を壊した。

「だから、ね? 私を信じてみないかしら?」

 でも、まだ私には一歩が踏み出せない。
 くだらない意地だ。今まで築きあげてきたプライド。それが、一歩を邪魔する。

「私には、他人なんて必要無いのよ……私は一人でも、強いのよ」
「えぇ、そうね。あなたは強いわ。だから」

 ふわりと、私は抱き締められる。

「だからこそ、そろそろ少し休みなさい」
「え?」
「泣きたいときに泣きなさい。そしてたまには人を頼りなさい。でないと、いつかあなたは抱え込みすぎて壊れてしまうわ」

 そんなこと言われたの初めてだ。
 私が壊れるだって?

「天子、休みなさい」

 その言葉をきっかけにか、急に身体が重くなった。さらに、視界が歪む。
 あれ、なんでだろうな。みっともないなぁ。涙が止まらないや。

「うっ……くっ、ぁ……」
「お疲れ様……天子」

 静かに、泣く。
 泣き顔を見られるのは嫌だから、こいつの胸に顔を押し付けるようにして泣く。
 こいつの服が私の涙で濡れるだろうが、知ったことか。泣かしたのはこいつだ。責任をとってもらおう。
 こいつは何も言わずに、抱き締め続けてくれた。
 久し振りに感じる温もりは、ちょうど良いくらいの温かさをもった人肌だった。



◇◇◇



「もう大丈夫?」
「うん、ありがと」
「急に素直ねぇ」
「う、煩い!」

 泣きやんだ途端、すぐからかうこいつ。せっかく素直にお礼を言ったというのに。

「大体あんたは、そうやっていつもすぐからかうから中々信用出来なかったのよ!」
「あら、じゃあ今は信用してくれてるのね?」
「~っ!?」

 信用してよかったのだろうか。こんなやつとで、覚え直せるだろうか。凄く不安になった。

「あ、あと紫ね」
「え?」
「私は、あんた、じゃなくて八雲紫よ」

 悪戯っぽく笑うこいつ……じゃなかった紫。

「……紫」
「そうそう、それで良いのよ」

 名前を呼ぶと、いつもの妖しい笑みじゃなくて、本当の笑みを浮かべる紫。
 私も何故か自然と笑顔になる。他人の名前をしっかりと呼んだのは、久し振りだ。心がぽかぽかする。

「さぁ、それじゃあ行きましょうか」
「え、ちょ、何処へ?」

 紫が突然私の手を引っ張っり、歩き出す。

「もちろん、天子に傷を付けた屑天人たちをボコボコにしに行くに決まってるでしょう?」

 天人の回復力は高い。
 なので私の傷は大分回復し、もう跡も残っては無い。

「うん!」

 私は頷き笑った。
 繋いでいる手からは、確かに感じる温もり。
 もう、私は独りじゃなかった。
 ほら、その証拠に、一つだった影は、今では二つ、仲良く寄り添うように並んでいる。
 私と紫の、影、二つ。







東方SS | コメント:2 | トラックバック:0 |
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コメント

天子をいじめた天人の皆さん逃げてー!!かなり自業自得だとは思いますが、天子&紫に攻められたら天界が全滅しそうです。

それはさておき、頑なな天子の心が読んでいて悲しいです。素直に紫に助けを求めればいいのに、と安易に思ってしまいますが、天子は今までずっと一人だっただけに、ホイホイと他人を頼ることも出来ないのですよね。
それだけに、紫のまっすぐな思いが天子に届いた時は見ているこちらが号泣しそうでした、嬉し涙で。
うおおおおおお天子良かったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
明るく陽気なノリの話も好きですが、こういう張り詰めた感じのトーン暗めなシリアスゆかてん話も好きです。

天子に怒り口調で言われた後、あたふたしている紫がすごく素の状態が出ていて可愛いです。

ラストシーンの、影が二つ並んでいるところを想像するとすごくニヨニヨできます。ゆかてんもっと流行ってほしいですね!
2010-06-01 Tue 03:36 | URL | 兎と亀マスク [ 編集 ]
天子と紫が協力すれば、そんじゃそこいらの実力者じゃ無理でしょうねw
シリアスを書くのも好きでして。もちろん最後はハッピーエンドですけどね!

ゆかてんはもっと流行るべきですね!
2010-06-01 Tue 12:51 | URL | 喉飴 [ 編集 ]

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