絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

影、二つ――前編

プチ東方創想話投稿作品『影、二つ』の前編。
創想話投稿作品は全てこちらに掲載しましたが、プチ投稿作品は多すぎですから、適当に掲載します。
紫と天子のお話。






「はぁい(はぁと」

 ゆっくりと扉閉めた。
 私はその場で深呼吸をする。目の前にうさんくさい笑みを浮かべた隙間妖怪が見えたが、ここは天界だ。しかもこの扉の向こうは私の部屋だ。
 うん、ありえない。
 気を取り直して、私はもう一度扉を開ける。

「はぁい(はぁとぶれいく」

 ゆっくりと扉閉めた。
 しかもなんかさっきと違っている。私のベッドの上に寝転んで、手を振っていた気がした。
 ちくしょう、なんなのよ。

「さっきから入るか入らないかハッキリしなさいな」
「ひゃぅん!?」

 隙間で部分だけ移動して来たのか、私の目の前に隙間妖怪の顔だけ出てきた。
 私は突然の出来事に変な声をあげてしまった。この隙間妖怪は顔だけを隙間から出した状態で、それを笑う。

「くっ……笑うなぁ!」
「ふふふ」

 笑い方まで妖しい。
 そして、不愉快だ。

「何しに来たのよ!? やる気!?」
「あらあら、天人は欲求不満なのかしら? ベッドで戦いたいなんて」
「何の話よ!?」

 全力で蹴りを入れるが、こいつが隙間に引っ込んだため、空振りした。
 私は、全力の蹴りが空振ったことにより勢いが止まらず体勢を崩し、その場に倒れこんだ。痛い。

「きゃぅ!」
「あらあら、真っ白い布が見えてるわよ。はしたないわね」
「誰のせいよ!?」
「さぁ? それは自業自得ですわ」

 目の前のうさんくさいやつは、今度はちゃんと扉を開けている。転んで某部分にある白い布が見えてしまっている私を見ていた。
 私は慌てて捲れているスカートを元に戻す。そして睨むが、紫は涼しい顔して、作り笑いかと思えるくらいの妖しい笑みを浮かべ、流した。

「……何の用よ」
「まぁまぁ、とりあえず部屋に入りましょう。散らかってて汚い部屋だけどどうぞ」
「それ私の部屋よ!」
「もちろん存じてますわ」
「くっ……こいつ」

 掴めない性格。
 こいつは私が異変を起こした時に戦ったメンバーの中でも、群を抜いて恐ろしい程に強く、掴み所の無いやつだった。

「で、あんたは何しに来たのよ」

 私は部屋に入ると、お気に入りのクッションにお尻を預ける。ふんわりした感覚が返ってきた。
 隙間妖怪は私のベッドに腰掛けている。自然と少しだけ私より目線が高くなり、私を見下ろすかのような視線が癪に触る。

「ちょっと気になってね」
「何を?」
「あなたを」
「は?」

 何を言い出すんだろうか、この隙間妖怪は。

「私の想像ではあの異変後、貴女の性格上、地上に頻繁に来るんじゃないかと思ってたのよ」

 あの異変、私が起こした地震のことだろう。

「でも貴女はあれ以来一度も地上に来ていない」

 あぁ、確かに私は地上に降りて無い。

「またよからぬことでも企てているんじゃないかと思って様子見に来た次第ですわ」
「……別に何も無いわよ」
「本当に?」
「お父様に謹慎をくらったのよ」

 そう。私はあの異変を起こしたことにより、こっぴどく叱られた。
 周りからは前以上に不良天人と罵られ、さらにお父様からは謹慎を命じられた。
 別にそんな命令守ってやる必要は無いのだが、監視がつけられている場合もある。
 迂闊に行動は起こせないのだ。

「いつ謹慎は解けるのかしら?」
「知らないわよ」
「嘘はいけませんわ」
「本当よ!」

 実際、私は謹慎が解けるのすら怪しいと思っている。
 もしかしたら今後一切、天界からは出られないかもしれない。

「ふぅ、仕方無いわね。明日また来るわ」
「何でよ!?」
「貴女の謹慎が解ける日がいつか分からないから、これからほぼ毎日来るわ」
「二度と来るな!」

 隙間に消える直前に枕を投げ付けたが、あいつはもう居なかった。
 これから毎日? 冗談じゃない。
 あんなのに毎日来られたら、地獄だ。

「はぁ……最悪」

 ベッドに寝転がる。
 さっきまであいつがここにいたせいか、あいつの匂いを感じた。
 不快だ。



◇◇◇



「ん、うぅ……」

 目を覚ます。
 昨日はあのまま寝てしまったんだっけ。あぁ、服に皺ついちゃってるかも。

「はぁい、お目覚め?」

 ゆっくりと瞳を閉じる。
 流石に今のは見間違いだろう。
 超至近距離、目の前にあの隙間妖怪が添い寝していた気がするけれど、気のせいだ。絶対に、気のせいだ。
 よし、もう一度!

「ザメハ!」
「きゃあ!?」

 いきなり大声を出されて驚く。というか残念ながら見間違いじゃなかった。

「何よ突然!」
「相手の眠りを覚ます外の世界のおまじないですわ。効果抜群だったようね」
「あんたの大声に驚いたのよ!」
「ちょっと、至近距離で怒らないの。煩いわよ」
「元はあんたでしょうが!?」

 あぁ、話が通じない。
 本気で殴りたいが、返り討ちに遭いそうだ。

「で、謹慎はいつ解けるの?」

 ていうか近い近い! 息かかってるから!

「き、昨日言ったばかりでしょ。分からないって」
「……そ」

 つまらなそうな顔して、あいつは隙間を作る。

「じゃあまた明日来るわ」
「もう来ないでよ……」

 あいつは相変わらず妖しい笑みを浮かべて、私を見てきた。
 何となく視線に耐えられなくて、目を逸らす。

「ふふっ」
「何笑ってるのよ気持ち悪い……」

 不快感しか感じない笑み。

「貴女、寝てるときは大人しくて可愛い寝顔してたわよ」
「なっ!?」
「それじゃあ、また明日」
「っ……二度と来るな!」

 隙間に消えたあいつには私の拳は届かなかった。
 顔が熱い。あんなことを言われたのは初めてだ。
 顔に血が集まってるのは、怒りすぎたからだ。決して照れや恥ずかしさからじゃあない。それは絶対に、違う。

「はぁ……」

 朝から最悪な気分だ。
 つまらないけれど、外に出ようかな。こんな部屋に閉じ籠っているよりはマシだし。
 というかあいつは本当にまた明日来るのだろうか。



◇◇◇



「今日は現れなかったわね」

 昨日、来ると宣言していた隙間妖怪は今日結局来なかった。
 一安心して、お風呂に入るために衣服を脱ぐ。
 布の擦れる音だけが、脱衣所で聞こえる。
 生まれたままの姿になった私は自分の体を見て、

「はぁ……」

 溜め息を吐いた。
 凸凹の少ない体は、いつ見ても少し悲しい。
 この悲しい気持ちも綺麗に洗い流そう。
 そう思って、お風呂への扉を開く。
 まずは最初にシャワーを浴びて軽く流す。熱くも温くもない程度のお湯が体を伝う。
 そして、広い湯船に浸かる。
 総領娘である最高の利点は、お風呂が広いことだけだ。これは唯一最高。あと10人は軽く入れるだろう広さだ。

「ふぃ~」

 ぽかぽかする。
 暇も、苛立ちも、何もかもをぬくぬく包んでくれる。
 あぁ、一日の中で今が一番の幸せ。

「広いわねぇ」
「えぇ、最高よ」
「天人は贅沢ね」
「煩いわねぇ……って」

 嫌な予感だ。背後から、声が聞こえた。嫌いな声だ。
 ゆっくりと振り返ると――

「何? 背中流して欲しいのかしら?」
「違うわよっ! 何でいるのよ!」
「乙女の秘密よ」
「あぁぁぁぁ本当にウザい!」

 私が立ち上がって暴れたせいでお湯が思いっきりあいつにかかった。ざまあみろ。
 でも、あいつは物凄く私を真剣に見ていた。怒っているとかそういうのじゃなくて、ただ真剣に見ていた。

「な、何よ?」

 妙な緊張感のせいで、発した声が震えている。情けない。

「貴女、その傷は?」
「へ?」

 あいつは私の身体を見ていた。
 いや、正しくは私の身体にある痣や傷を見ていたのだろう。
 あぁ、うっかりしてしまった。誰にも見せたこと無かったのになぁ。よりにもよってこんなやつに見られるなんて。

「あんたには関係無いでしょ」
「天人の身体は丈夫。その身体に傷を残すということは同じ天人にやられたのかしら?」
「人の話聞いてるの? あんたには関係無いって言ってるのよ」

 あぁ、鬱陶しい。放っておいてよ。
 この隙間妖怪は相変わらずよく分からない。何でこんなことを訊くのか。

「関係無い……そうね、確かに私には関係無いわ」
「へぇ、意外」
「何が?」
「笑うなり、ざまあみろってけなすなりするかと思ってたわ」

 こいつは私のことが嫌いな筈だ。
 なのに何もリアクションしないなんて意外だった。

「笑うわけないでしょう。こんなに傷付いて」
「っ!?」

 突然こいつが私の脇腹辺りにある傷を指先でなぞった。
 くすぐったさと小さな痛みに、思わず体が震える。

「何するのよ!」
「天人にやられたのかしら?」

 また同じ質問をしてきた。本当に鬱陶しい。

「しつこいわよ」
「何故言わないの?」
「言ってどうなるのよ? 何かが変わるの?」

 こいつに言って何が変わる。
 確かにこの傷や痣は天人にやられたものだ。
 生意気で不良天人な私を嫌う天人はたくさんいる。
 一対一なら私だって易々やられないが、常に相手は複数だ。
 臆病で弱い馬鹿天人共は、目につかない箇所を殴ったりしてくる。だから腹部辺りに傷や痣が出来た。

「変わるかもしれないわよ?」
「変わらないわよ。私は不良天人。私自身それを認めてるわ」

 有頂天には、私の味方は誰もいない。
 もう慣れた。何も感じない。

「大体あんたも私のこと嫌いでしょう。地上には二度と行かないと約束するわ。だからもう来なくていいわよ。安心しなさい、約束は守るわ」

 あいつは珍しく、きょとんとした表情をした。何故だろう。

「私、別に貴女のこと嫌いじゃないわよ?」
「は?」

 耳を疑った。
 嫌いじゃないとかありえないだろう。

「何? 安っぽい同情なんていらないのよ」
「同情なんかじゃないわ」
「信じれるわけ無いじゃない」
「私が同情するように見えるかしら?」
「……見えない」

 こいつが誰かに同情……想像出来なかった。

「けど『天人を虐める祭』なんてやったじゃない。信用出来ないわよ」
「あれは萃香がやったことよ。大体私は参加していなかったでしょう?」
「それは……」

 確かにこいつは参加していなかった。

「でも、私が異変起こした時に、凄い怒ってたじゃない」
「もう過ぎたこと。異変が解決後は皆仲良く、よ。終わったことにいつまでも拘らないわ」

 こいつは、私を、嫌ってないの?
 いや――

「信じないわ」
「何故かしら?」
「私は自分以外は信じない主義なのよ」

 嘘だ。
 本当は、心のどこかで助けを求めている。
 だけど、臆病な私が、全てを拒絶する。
 傷付くのは嫌だから、信じない。
 変わるきっかけを掴むには、遅過ぎた。
 私はすっかり、弱くなってしまっていた。

「嘘はよくないわ」
「何を根拠に……」
「なら何でそんな辛そうな表情をしているのかしら?」

 辛そうな表情?
 今の私はどんな表情をしているのか分からない。

「分からないわよ……自分でも」

 本当に、何もかも分からない。頭の中がごちゃごちゃしている。
 身体が熱いのは、きっとお風呂のせい。
 視界が歪むのは、きっと湯気のせい。
 こいつに掻き乱されてなんか、絶対にない。

「帰ってよ……お願いだから」

 自分の声じゃないんじゃないかというくらい、か細い声だった。
 目の前が、見えない。
 あぁ、湯気が本当に鬱陶しい。
 肩が震える。
 おかしいな、寒くないのに。熱い筈なのに。

「天子」

 優しい声。
 そういえばこいつが私を名前で呼んだのは、おそらく初めてだ。

「貴女が手を伸ばせば、私はその手を受け入れるわ。全ては貴女次第よ」

 一歩。たった一歩が踏み出せない。
 簡単に見えて、実は難しい。
 他人を信じることは、私自身の弱い部分をさらけ出してしまう。
 だから私は、

「私は……あんたなんか信じない」

 手を伸ばさない。
 他人からすれば、くだらない意地にしか見えないだろう。
 私は、自身を不良天人と認めている。
 だから、私は独りでいい。
 今更、他人を望まない。

「そう……じゃあ今日は帰りますわ」
「……さっさと帰れ」

 あいつは脱衣所へ向かった。
 脱衣所に入る直前、あいつは私の方を見ないで、

「また来るわね」

 と言った。
 私は何も言わなかった。

「っ……」

 湯冷めしてしまった肌を温め直すため、再び肩まで浸かることにした。
 あぁ、熱いなぁ。だからきっと、頬を伝う水滴は汗だよね。
 視界が歪むのは、湯気のせい。
 身体が熱いのは、お風呂のせい。
 私が弱いのは、私のせい。
 だから、強くなろう。もっと、もっと。
 独りでも、大丈夫。
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