絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

春、出会い

創想話投稿作品。
アリスとリリーでほんわかほのぼの。






 目の前に少女が倒れていた場合、あなたならどうする。
 しかもただの少女じゃなくて、妖精だったら。
 あえて見て見ぬふりをする? いや、そんな酷いことは出来ない。
 でも助ける義理はある? 特には無い。
 というわけで、

「ちょっと、貴女大丈夫?」

 とりあえずは声を掛けてみよう。それで大丈夫、と返ってきたら放っておけばいい。
 返事が無ければ、助けよう。

「う……ぅぅ」

 呻くだけでしっかりした返事は無い。
 仕方無い、助けよう。

「よいしょっ、と」

 目の前の少女を背負う。
 地面に倒れていたからだろう、少女の真っ白い服装は土に汚れていた。
 もしかしたら私の服にも付いてしまうかもしれないが、別にどうでも良かった。汚れたら洗えばいい、それだけだ。

「上海、私両手が塞がってるから扉を開けて」

 上海が開けてくれたお陰で無事に入れた。
 とりあえずは、この背負っている少女をベッドに寝かすことにする。

「ふぅ、大きな怪我は無いようね」

 少女の症状を見てみたが、特に目立った外傷は見られなかったし、恐らくそろそろ目覚めるだろう。ただ気絶しているだけのようだし。

「う、ぁ」
「目が覚めた?」

 少女はぼーっとした表情で、部屋をキョロキョロ見渡している。まだ完全には覚めて無いのかもしれない。

「え、と……」
「私はアリス・マーガトロイド。貴女が家の前に倒れてたからとりあえず救助したわ。気分は悪くない?」
「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます」

 少女は慌てて頭を下げた。
 そういえば、

「貴女、名前は?」

 名前をまだ訊いていなかった。

「あ、リリーホワイトです」

 リリーホワイト、春が訪れたことを知らせる妖精。
 噂には聞いたことがあったけれど、生で見るのは初めてだ。なるほど、こんな小さい少女なのね。

「貴女があのリリーホワイトさんね」
「あ、リリーでいいですよ。みなさんそう呼びますから」
「そう。じゃあリリーで」

 リリーは緊張してるのか、私と目を合わせようとしない。第一印象で速攻嫌われたのだとしたら、ちょっとショックだ。そんなにヤバイ顔はしていないと……思う。

「で、リリーは何で倒れていたの?」
「多分撃ち落とされたんだと思います」
「え?」
「私、春を伝える間は興奮しすぎて見境なく弾幕を放ってしまうんです。それで毎回魔理沙さんや霊夢さんに迷惑だ、と撃ち落とされてます」

 私の家の前で倒れてたということは、距離的に魔理沙が撃ち落としたのだろう。

「突然撃ち落とされて怒ったりはしないのね」
「私が悪いのですから、仕方無いです。みなさんに迷惑をかけてると分かっているのに、自制がきかない私が全て悪いんです」

 少し落ち込んだ様子で、リリーは言った。
 あぁ、こんな良い子を問答無用で撃ち落とした挙句、放っておく魔理沙が信じられない。私にはリリーみたいな子を撃ち落とすなんて出来ない。

「とりあえず、紅茶でいいかしら?」
「ふぇ? い、いえ! 私もう出発しますから!」
「なーに言ってるのよ。その汚れた服も洗わなきゃ駄目よ」
「い、いえ! 本当にいいですから!」
「あのねぇ……」

 わたわたとしているリリーの額を、グーで軽く小突く。

「あうっ」
「私は貴女を助けちゃったの。その時点でもう無関係じゃないから、私は中途半端に貴女をここで帰したりしないわ。全て世話し終えたら解放してあげる」

 それまで大人しく世話されなさい、とリリーに言う。
 リリーはあぅあぅと戸惑っていたが、しばらくして申し訳無さそうに私を見る。

「えと、あ、その……ありがとうございます」

 ベッドから降りて礼儀正しくお辞儀をするリリーを見て、少しキョトンとしてしまった。
 あぁ、良い子だなぁ。私の知り合いじゃあ、こんな礼儀のしっかりした良い子なんてほとんどいない。
 なんというか、撫でてあげたくなるようなタイプね。

「じゃあとりあえず、服を脱いで」
「ふぇっ!?」
「いつまでも汚いままじゃあ駄目でしょう。ほら」
「わわ、自分で脱げますよぉ」

 リリーは、んしょんしょと言いながら服を脱ぐ。その服を私が受け取り、洗いに持って行く。
 おっと、忘れてた。

「貴女に合うサイズの服、あるか分からないのだけれど、とりあえずはワイシャツだけでも着ておいて」

 ワイシャツならば、大きくてもぶかっとだが、着ることは出来るだろう。
 私がワイシャツを投げると、リリーは慌てて受け取る。珍しそうに、見つめていた。ただのワイシャツなのに。

「それじゃあ、ちょっと待っててね」

 そう言ったが、リリーは私の声が聞こえていないのか、ただワイシャツを興味津津に見つめていた。





◇◇◇





 私が部屋へと戻ると、リリーはワイシャツを着てベッドに座っていた。

「はい、紅茶よ。それとリリー、貴女に合うか微妙だけど私の昔のスカート持って来たわ」
「あ、私このままで大丈夫ですよ」
「いや、下着とワイシャツだけじゃあ、寒いでしょう」
「暖かいです」
「でも風邪引いちゃうわよ」
「暖かいです」

 意外に頑固だ。このギャップはちょっと面白い。
 リリーは凄く嬉しそうにぶかぶかのワイシャツを着ている。袖は手が出ていないし、裾は太腿をギリギリ隠すくらいの大きさだった。

「実は、ワイシャツって着たこと無くて、少し嬉しいんです」
「あぁ、なるほどね」

 私もワイシャツを着ることは滅多に無い。予備の服として持っていたくらいだ。
 なるほど。だからリリーはワイシャツでこんなにも嬉しそうなのか。
 風邪を引いてしまうかもしれないけれど、本人がかたくなに拒むから仕方無い。スカートはしまっておこう。

「あ……美味しいです」
「そう、ありがとう」

 ティーカップを両手で持ち、小さな口にそっと運ぶリリーは、どこか小動物のように見えた。
 私がそれを言うと、

「私、そんなに小さく無いです!」

 不貞腐れたように、頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
 子どもっぽいとこもあるわね。何か和む。

「リリー」
「……」
「そんな不貞腐れないの」
「不貞腐れてません……」

 どうやら意外に根に持つタイプのようで。
 さて、こんな時はどうしようか。子どもの機嫌を回復させる物って言ったら、やっぱりアレかしらね。

「ちょっと待ってて」
「……?」

 何だろう、と首を傾げるリリーを後にして、私は別の部屋へと向かう。
 棚を開く。確かこの辺に……うん、あった。
 すぐに戻って来た私と目が合って、ワイシャツでまた喜んでいたリリーは、慌ててまた不貞腐れたように頬を膨らませる。
 そんな様子に、クスッと笑ってしまう。

「はい、リリー」
「何ですか? これ」
「今朝焼いたクッキーよ。お口に合うかは分からないけれど、良かったらいかが?」

 リリーはお皿に盛られてあるクッキーを、恐る恐る手に取った。
 そして、クッキーを口に運ぶ。様子を見るに、これもワイシャツ同様に初めてなのだろう。
 リリーのドキドキが私にも伝わってくる。けれども、私も内心ドキドキだ。妖精の口に合うのだろうか、不安。

「うわぁ……!」

 表情を綻ばせて、そう呟くリリーに私はホッとした。

「アリスさん! 美味しいですよ! こんな物を食べたのは初めてです!」
「お口に合って良かったわ。全部食べて良いからね」
「えと、その……」
「ん?」

 リリーは俯いて、どこか視線も落ち着きが無い。
 どうしたのだろうか。

「さ、さっき本当は、少し不貞腐れてました。す、すみません……」

 申し訳無さそうにそんなことを言うリリー。
 私は思わずきょとんとしてしまった。
 リリーはそんな無言の私が、怒っていると思ったのか、涙目で私の様子をちらちらとうかがう。

「リリー」
「っ!?」

 私が手を伸ばすと、リリーは目を強く瞑ってしまった。
 そんな様子に苦笑いを浮かべながら、私はリリーの頭に手を置いた。
 そしてわしゃわしゃと綺麗な髪を撫でてやる。

「ぁう~!?」
「馬鹿ね。そんなこと気にしなくて良いのに」

 笑いながらそう言ってやった。本当、いちいちそんなことを気にしなくて良いのに。面白い子だ。
 私がわしゃわしゃと撫で続けたせいで、リリーは、ぅーと目を回していた。

「大丈夫リリー?」
「あ、アリスさんがやったんじゃないですかぁ!」
「あはは、そうね」

 リリーがクッキーを食べながら、そう訴える。
 私もクッキーを一つ、ひょいとつまんで、口に運ぶ。
 うん、我ながら良い出来だ。





◇◇◇





 窓から差し込む陽が、赤に染まる頃、リリーは立ち上がった。

「アリスさん、私もう行きます」
「泊まっていっても良いのに」
「いえ、そこまで迷惑はかけられませんから」

 別に迷惑では無いのだけれど。リリーにはリリーの生活もあるだろう。私が強く引き止めても、それはリリーに迷惑をかけてしまう。
 だから、素直に見送ってあげることにした。
 もう服も乾いた頃だろう。人形たちに取りに行かせると、予想通り、服は乾いていた。泥も落ちて綺麗になっている。帽子も同様だ。

「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」

 リリーにそれらを手渡す。するとリリーは名残惜しそうにワイシャツを脱ぐ。
 そこで、ふと思った。

「ねぇ、リリー。そんなに好きならワイシャツいる?」
「良いんですか!?」
「えぇ、何着もあるし」
「でも、迷惑じゃあ……」
「別に高い物でも無いから持って行きなさい」
「……ありがとうございます」

 リリーは笑顔でそう言った。
 着替え終えたリリーは、ワイシャツを懐にしまった。何処にしまってるんだか、と少し笑ってしまう。

「それではアリスさん。本当にありがとうございました」
「えぇ、またいらっしゃい」
「えぇ!?」

 いきなりリリーが大声を上げたから、ちょっとびっくりしてしまった。

「ま、また来ても良いんですか!?」

 そんなことに驚いていたのか。
 本当に愉快な子だ。

「もちろん。私、今日は楽しかったわ。またいつでもいらっしゃい。クッキーを焼いて待ってるわ」
「クッキー……」

 ほわぁっ、と幸せそうな表情を浮かべてぼーっとするリリー。そんなにクッキーを気に入ってくれたのだろうか。純粋に嬉しい。
 しばらくして、ハッと我に帰り、私を見つめる。

「では、また会いましょう。本当にありがとうございました」
「えぇ、またね」

 リリーは空へと飛び上がり、いつまでも私の方向へ手を振っていた。
 私も小さく、手を振ってあげる。
 本当にありがとうございましたー、とリリーがいつまでも大声で言っていた。やっぱり、そんなリリーに笑ってしまう。
 姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。

「さて、と」

 家へと戻ろうとした瞬間、柔らかな風が私の頬を撫でる。
 それは、どこまでも温かくて、どこか優しい、春の風だった。


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