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絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

幸連鎖

小鳥さんと美咲ちゃんで緩めのことみさ話です。ミリシタやってると、美咲ちゃん本当頑張ってるなぁ良い子だなぁって思いますね!

「うぅ~……数字が合わないぃ」

 既に外は真っ暗、劇場内にも明かりがついているのは事務室だけ。そんな中、一人頭を抱えてパソコンと睨めっこをしている。
 別に必ずしも今日やらなければならない仕事ではないのに、どうしても計算が合わなくてもやもやしたまま帰るのは嫌だ。美咲がそう思って、少しだけ残業をなんて考えてから、もう結構な時間が経ってしまっていた。
 せめて日付が変わる前には、終わらせないと。と思いつつも、ここまで来たら解決をして帰りたい。でも時間ももう、そんなに残っていない。その焦りがより、美咲の頭を固くさせて解決から遠ざける原因になっていることに、本人は気付けない。疲労もあるせいで、柔軟な思考も奪われる。

「っ! え? い、今何か……」

 突然、遠くから物音がした。劇場内は自分しかもういないはず、と考えたところで美咲はハッとする。ちゃんと施錠をしているか、その記憶があやふやなことに。
 もし今のが劇場のどこかから誰かが入ってきた音だとするならば、それなりに危険な状況なのではないか。美咲はデスクの上に置いていたスマートフォンに、そっと手を伸ばす。いざとなったら、すぐ通報できるように。
 明らかに聞こえる、廊下を歩く足音。それが徐々に近付いてきていることが、嫌でもわかった。疲れ切った思考では、一度もう通報という手段を思いついてはそこでストップしてしまい、身を隠すや自ら様子をこっそり見に行くという方法を導き出せない。

「……ッ!」

 ぷるぷる震える手で、スマートフォンの画面を操作する。あとはワンタッチ、通話発信を押せば即警察へと繋がる。そしてそのまま、待機。
 呼吸をするのも忘れてしまうのではないかというくらい、長い時間。ゆっくりと確実に近づいていた足音が、事務室の扉の前でぴたりと止まった。
 けれど、それ以上何もない。

「あ……あれっ?」

 一秒、十秒と経っても、扉は開かない。事務室の出入り口に、鍵などかけていない。入ってこようと思えば、ドアノブを回すだけで入れるはずだった。
 それなのに、明らかに扉の前には誰かがいるはずなのに、開かない。
 そのことが逆に不気味で、美咲をより緊張状態に追い込んだ。
 もうそろそろ、一分以上が経過する。一秒でも早くこの嫌な空気から抜け出したい美咲は、耐え切れなくなった。痺れを切らし、立ち上がり、声を出そうとした瞬間――

「あ、あの――」
「こらぁ、美咲ちゃんっ! こんなに遅くまで残ってちゃ、ダメじゃない!」
「なんとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」
「え、ちょ、何どうしたの!?」

 大きな声とともに、突然勢いよく開かれた扉。
 その正体が誰かを脳が認識するよりも先に、驚きのあまり、美咲は手に握っていたスマートフォンの画面を連打していた。よくわからないことを叫びながら、めちゃくちゃ連打した。割れるんじゃないかってくらいに、連打しまくっていた。
 その異常な様子に、ちょっと驚かせてみようなんて思っていた劇場侵入者――もとい、音無小鳥は逆に驚くハメになった。

「……って、お、音無先輩?」

 数秒してやっと、目の前の人物が不審者ではなく、先輩である小鳥だと気付いた美咲は手を止める。
 そして認識した頃には、手元のスマートフォンから「叫び声がしましたが!? もしもし!」という声。
 警察へ電話が、繋がった後だった。





『幸連鎖』





「ごめんなさい、まさかあんなに驚くと思ってなくて」
「い、いえ……私こそ、みっともない姿をお見せしてしまって」

 警察には間違ってかけてしまったことを謝罪し、なんとか大事にはならなかった。
 小鳥は最近ただでさえ残業のし過ぎで帰りが遅くなっている美咲を心配し、そして注意をするためにわざわざ劇場の方まで足を運びにきた。小鳥なら、劇場の合鍵を持っているのも当たり前だった。また、扉の前で止まったのは、なんて注意をしようか悩んで止まっていただけだとか。
 誤解も解けて、ついでに美咲の悩みの種だった合わない計算を小鳥が手伝い解決し、落ち着いたころにはすっかり零時を回ってしまっていた。

「美咲ちゃん、頑張ってくれるのは嬉しいけど、あんまり根を詰め過ぎて体調を崩しちゃったら大変だからね」
「はい……すみません」
「あぁ別に怒ってるわけじゃなくてね? えぇっと……美咲ちゃんが倒れちゃったりでもしたら、みんなも心配しちゃうから。どうしてもやらなきゃいけないお仕事だって、もちろんあるときはあるでしょうけど。次の日に回せる仕事は、回しちゃっていいのよ」
「そ、そうですよね……うぅ」
「そう、私みたいに一日かけて作ったデータを間違えて削除しちゃって、その日までにまた作らなくちゃいけないなんてミスをしたりしなければ! あぁ、今日もやってしまったわ……なんでちゃんと小まめなデータの保存をしておかないのかしら、私は。何度同じことをすれば、学ぶのかしら……ううぅう~」
「あ、あの? 音無先輩?」

 そもそもこんな時間まで、美咲と同じ時間まで小鳥も仕事をしていたという時点で、あまり説得力はないのかもしれない。もしここに第三者が居たのなら、小鳥に対してツッコミを入れるところだろう。
 しかし今ここには、小鳥以外には美咲のみだ。美咲はそんな小鳥の背景には、気付かない。ただ憧れの先輩からの、ありがたいお言葉を受けたと感じる程度だ。今の、自らが犯した今日のミスを唐突に自白し始める小鳥の失敗にさえ、気付かない。
 きょとんとした表情で、美咲は小首を傾げるだけだ。

「はっ! んっ、な、なんでもないわ。それより、今日はもう帰りましょう? 美咲ちゃん、終電大丈夫?」
「はいっ、まだ多分大丈夫です。もしかしたら、寝過ごしちゃうかもしれないですけど……えへへ」

 美咲は苦笑い気味に、そう零す。実際、落ち着いたらドッと疲れが襲ってきた。自覚していなかった分の疲労も重なり、既に美咲はふらふらだった。少しでも気を抜いたら、眠ってしまうと感じるくらいに。
 それは小鳥の目から見ても、わかるレベルで。

「うぅん……美咲ちゃん、もしよかったら私の家にくる?」
「ふぇ?」
「美咲ちゃんの住んでいるところより近いし、正直今の美咲ちゃんを放っておくのも危ない気がするし」
「お、音無先輩の家に? そんな、ご迷惑をかけちゃ」
「いいからいいから、そこは先輩に甘えちゃって。美咲ちゃんは頑張り屋さんなんだし、こんなときくらいは頼って、ね?」

 謎の親指をグッと立てて、ウインクをしながら言う小鳥。
 今の美咲にその誘いを断るだけの気力もなければ、むしろ一度は行ってみたいと思っていた小鳥の家という提案に、頷いた。数秒悩んだものの、結局は受け入れることにしたのだった。

「よし、それじゃあ私は戸締り確認をしてきちゃうから。その間に美咲ちゃんは、忘れ物しないように帰る準備、よろしくね」
「はいっ、その、音無先輩……ありがとうございますっ」

 ぺこりと頭を下げる美咲に、小鳥は思わずその下がった頭を撫でたい衝動に駆られたが、なんとか堪えた。



◇◇◇



「コートとマフラー、ハンガーにかけておくわね」
「ありがとうございます。えぇっと……」
「適当に寛いで、って言ってもいきなり難しいわよね。って、だ、大丈夫!?」
「あ、あはは……すみません」

 小鳥の住むマンションへ、部屋に足を踏み入れてすぐに、美咲は足元がふらりとなった。ここまで来るのに相当、眠気や疲労を我慢していたのだろう。
 慌てて小鳥が手を貸すと申し訳なさそうに、けれどどこか嬉しそうに笑った。

「お風呂は朝の方がいいかもしれないわね。今の美咲ちゃんだと、湯船で眠っちゃいそうで危ないし。私服のまま寝ちゃうと服に皺ついちゃうから、これよかったら使ってちょうだい?」
「音無先輩……何から何まで、ありがとうございます」

 小鳥がタンスから取り出したのは、予備のパジャマだ。淡いピンク色を基調とし、ところどころに小さなデフォルメされた鳥のイラストが散りばめられている。幼さを感じるデザインではあるが、それゆえに普段はほとんど着ていない。あくまでも安売りしていたものを、何かあったとき用として購入していたものだった。
 美咲はそれを手に取るものの、動作が極端に遅くなっていた。目はもはや閉じかけては開きを何度も繰り返し、頭はかくかくと揺れる。その様子は、まるで幼い子どものようで。二十歳といっても、元から童顔なこともあるせいか、小鳥にとっては可愛い妹のように感じられた。
 だからだろう、そんな美咲を見て思わずくすっと笑って。

「なんなら私が着替えさせてあげましょうか?」

 なんて、言ってしまった。ただの冗談のつもりだった。普段の美咲なら、顔を赤くして恥ずかしそうにからかわないでくださいと返しただろう。
 けれども、今の美咲にそんな余裕はない。ただ先輩である小鳥から提案をされた、それなら受け入れちゃおうという思考だけ。

「すみません、よろしくお願いします」
「ふふっ、そうよね。冗談――って、え? い、いいの? いや、いいのって訊くのもおかしいけど……美咲ちゃん、本当に疲れちゃってるのね」
「ぉ、おとなしせんぱい?」
「あっ、ううん。なんでもないの、それじゃあ手伝うから、はい両手広げて」

 若干言葉も眠そうな美咲のボタンをぷちんぷちんと外し、まずは上を脱がせる。次にそのままスカートのチャックに手をかけると、重力に負けてするっと床に落ちた。あっという間に、上下ともに淡い水色の下着のみになる。その状態でも、美咲はふにゃふにゃした笑みを浮かべたまま。
 小鳥からすれば、無防備すぎる姿に心配になるレベルだ。一人で帰らせたりせずに家に招いて良かったと、改めて強く思う程だった。
 そこでふと気付く。ここに来るまでにコンビニで美咲が、替えのショーツを買っていたことに。突然の泊まりだ、用意もしてないのは当然だから仕方のないことだろう。
 だがさすがに、下着まで替えるのを手伝うのはまずい。

「美咲ちゃん、下着は自分で替えられるわよね」
「あ、えぇっと……あぁわかりました」

 ぼんやりとだが理解しているようで、のろのろとコンビニの袋から買っておいたショーツを取り出す。シンプルな無地、そしてピンク色だ。
 穿き替えている間は一応、あんまり見ないようにと目を逸らす小鳥。十数秒して、穿けましたと言う美咲に改めて、パジャマを着せた。

「ふぅ……何故だかドッと疲れた気がする」
「ぉ、音無先輩、私……?」
「あぁ、ベッド使っちゃって?」
「ぇっと、音無先輩は?」
「私は絨毯の上で毛布でも被るから、大丈夫」

 ほらほら今更遠慮なんてしないで、と無理矢理に美咲をベッドに寝かせる。それでもどこか申し訳なさそうな視線で訴えてくる美咲だが、今の疲労状態では一度ベッドに寝かされてしまっては動くに動けない。身体がこのまま、休息を訴えてくるから。
 この様子だと、すぐに眠ってしまうだろう。小鳥もそれがわかっていたから、優しく笑みを返す。
 つられたように、安心したようにほにゃほにゃ柔らかく笑う美咲。

「音無先輩……ありがとうございます」
「もうっ、お礼なんていいわよ。美咲ちゃんみたいな可愛い後輩のお世話なら、いくらでも焼きたいもの」
「ありがとう、ございます」
「だからいいってば――」
「ちがい、ます……ぜんぶです」
「え? 全部?」

 今日のことについて、だけじゃない。そんな美咲の言葉に、頭に疑問符を浮かべる小鳥。

「はい。私が入社してから、今まで……ぜんぶです。前にも言っちゃいましたけど、私やっぱり……えへへぇ」

 美咲は目が閉じてしまいそうなのを我慢して、今できる限りの思考を使って。

「おとなしせんぱいのこーはいで、しあわせです」
「~っ!?」

 本当ならもっとどこに感謝しているだとか、何を尊敬しているだとか。言葉巧みに伝えたいことは、たくさんあった。でも今の美咲には、これが精一杯だ。糸が切れたように、くぅくぅと可愛らしい寝息を立て始めてしまった。
 小鳥は以前も美咲に似たようなことを、『音無先輩の後輩になれてよかったです』ということを言われた。そのときは感動して、涙を流してしまいそうになった。そしてそれは今も変わらなくて、不覚にもうるうるっとしてしまいそうになっていた。

「私こそ、美咲ちゃんみたいな素敵な後輩を持てて、幸せなのよ?」

 眠っている美咲を起こさないように、そっと頭を撫でる。
 美咲は小鳥の後輩になれたことが幸せだと言ったが、それは小鳥も同じだった。初めてできた後輩でもあり、それでいてとても良い子だ。嫌いになるわけもなく、むしろ大切な存在だと思っている。そんな子が、慕ってくれている。幸せでないはずがない。

「ん、ふぁ~……さすがに私も、そろそろ寝ないとダメね」

 小鳥にしろ美咲にしろ、次の日――もう日付がとっくに変わっているので今日だが、仕事は普通にある。休日ではない。
 明日に備えて、早めに寝て早めに起きてシャワーを浴びなければならない。
 のそのそと一枚の毛布を持ってきて、ベッドの真横で寝転がる。その前に――

「おやすみなさい、美咲ちゃん。お疲れ様」

 そう言葉を投げた。もう眠りに入っている美咲からの返ってくるのは、心地良さそうな寝息だけ。
 小鳥も寝転がり、ゆっくりと眠りについた。「明日は美咲ちゃんよりも早く起きて、朝ご飯でも作ってあげよう」なんて、企みながら。





 翌日の朝、寝相のせいでベッドから転げ落ちた美咲が小鳥の上に覆い被さってきたせいで、同時に目覚めることになった。
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