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絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

呼んでみて?

去年の11月くらいにぷらいべったーの方で投げていた、ついったでやってた妄想小ネタ。
琴葉さんと恵美さんな小ネタです。


「ヤだよ、はずいじゃん!」

 頼まれたら断れないと自称するくらいの恵美が、珍しく拒絶の声を上げた。けれどそれは、怒っているとか不快だからとか、そういう感情からではない。
 視線は定まらず、目の前の琴葉と決して目を合わせないようにしている。その頬は少しだけ、朱に染まっていた。

「どうしてもダメ?」

 小首を傾げて訊ねる琴葉に、うぐっと言葉に詰まる。一体何故こんな状況になってしまったのかと後悔するが、既に遅い。そもそもきっかけを作ったのは、恵美からだった。あまりにも面倒見の良いみんなのお姉さんな琴葉に、「まるでみんなの姉って感じだね~」とちょっと拗ねたように言った。自分にももっと構ってよ、という意味合いを込めて。
 その言葉に、琴葉はそういえばと零した。

『恵美と私って、私の方が年上よね。ねぇ、試しに一回、琴葉お姉ちゃんって呼んでみて?』

 そんな琴葉らしくない発言に、恵美のいつもの調子が崩されて、今に至る。

「うぅ、こればっかりはいくら頼まれても……」

 ソファに胡坐をかいたまま、俯く恵美。
 いつもの琴葉なら、恵美が困っているとわかったら素直に身を引くだろう。けれど、今回ばかりは中々引かない。
 それは単純に好奇心からくるものも勿論あったが、それ以上にたまには恵美に甘えてもらいたいという思いがあった。琴葉からすればいつも自分が甘えてしまっている立場で、しかも恵美は人に構うくせに誰かに積極的に甘えてきたりはしない。少し無理矢理くらいじゃないと、弱いところを見せてくれない。そのことを、琴葉は知っていた。
 だから俯く恵美の顔を覗き込むようにして、「ダメ?」と追撃。

「ず、ずるいよ琴葉! その声、表情……!」
「翼ちゃんに教えてもらった、どうしても誰かにお願いを聞いてほしいときのお願いの仕方なんだけど……おかしかった?」
「……翼め、今度覚えてろぉ」

 琴葉に余計なことを吹き込んで、と恵美は苦い顔をする。どこかおかしかっただろうかとハの字眉になる琴葉だが、おかしなところは何もなかった。むしろ破壊力が高かったがゆえに、恵美の心を一切の遠慮なく削った。そりゃあもう、ゴリゴリと削りきった。
 大事な親友にここまでお願いされて、断れるだろうか。ただでさえ、人から頼まれると断れない性格だというのに。それに琴葉が何か我侭のようにお願いを言ってくるなんて、まずほとんどありえないことだ。できれば、叶えてあげたい。そうだ、失うものは羞恥心だけ。それも一瞬だ。恵美はぐるぐるぐるぐる思考を繰り返し、う~う~唸る。
 そして十数秒、覚悟を決めた恵美が自らの両頬を両手でぱちんと叩いた。

「よっしゃ! 覚悟きめたよ!」
「あ、ちょっと待って。今録音アプリ起動してるから」
「何録音する気でいるの!?」
「え? だってほら、貴重だし……」

 目の前でスマートフォンを弄る琴葉に、決めたはずの覚悟はあっさりとぼろぼろ崩れ落ちる。
 恵美からすれば、何の罰ゲームだと言わざるを得ない。だが琴葉は「むしろ録音するのは当然じゃないの?」みたいな態度で見つめてくるものだから、恵美はなんとも反論しづらい。

「あっ、もしかして動画の方が正解だったとか? ちょっと待ってね、今動画を――」
「よっし、アタシ今から言っちゃうよ! すぐ言っちゃうよ! だから動画はやめとこう!」

 慌てて琴葉の両肩を掴み、制止する。
 数回深呼吸、羞恥もあって目は合わせず少しだけ逸らしながら。恵美はゆっくりと、口を開いた。

「こ、とは……お姉ちゃん」

 消え入るようなか細く弱々しい声だったが、それは確かに琴葉の耳へと届いた。
 しばらくの間、沈黙が空間を包む。恵美からすれば目を逸らしているため、今琴葉がどういう表情をしているのかがわからず、不安と羞恥でじわじわ心が蝕まれていく。

「やっぱりお姉ちゃん呼びはないわね」
「人にやらせておいて第一声がそれ!?」

 沈黙を破ったのは、琴葉の遠慮なしな一言だった。
 思わず迫るように顔を近付けて、まるで怒った犬のように唸り声を上げて睨む恵美。

「ご、ごめんなさい。でもね、やっぱり恵美とは対等な関係がいいなって思ったから。お姉ちゃん扱いされるよりは、今の関係が好きだなって思ったの」
「ぐっ……そ、そんな真面目に返すのずるいっしょ」

 このまま冗談で噛み付いてやろうかと思っていた恵美だったが、琴葉からの真面目でまっすぐな言葉と視線に何もできなくなってしまう。
 そんな恵美の頭にぽんと右手を乗せて――

「でもね? もっと甘えて欲しいし、頼って欲しいかな。恵美はいっつも、優しいから」
「……その言葉は、そっくりそのまま琴葉にお返しするよ」
「ふふっ」
「うーあーもうっ! なんなのさぁ、今日の琴葉!」

 穏やかに笑う琴葉に抗議するものの、軽く流されてしまう。
 普段は振り回す立場の恵美だったが、今日は逆にずっと琴葉に振り回されっぱなしだった。
 けれど、それが不快だとは一切思わない。ただ、照れ臭くて。頭に乗せられた手のひらから、優しい温かさを感じて。
 恵美は自らの顔を見せないように、琴葉のその控えめな胸へと顔を埋めた。
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