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絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

星が降る夜だから

未来と静香で緩く一つ。みらしず!
星が降る夜だから、少し素直になれる。

「はぁっ、はぁっ……ごめん、待たせちゃったわよね?」
「ううん、大丈夫。えへへ……お疲れ様、静香ちゃん」

 見慣れた、行き慣れたシアターの屋上。そこに一人、未来が笑顔で迎えてくれる。
 走ってきたから、まだ呼吸が上手くできない。一分一秒でも長く、時間を大切にしたいから。話したいことはいっぱいあるのに、乱れた呼吸のせいで言葉を紡げない。喉がからからだ。むしろ走ったせいで、今こうして話せる時間をロスしている気がする。
 上手くいかないわね、いろいろと。
 いくら季節が夏といっても、さすがに夜遅めの時間だ。あんまり夜風を浴びすぎるのも、よくないんじゃないかしら。今の未来は結構薄着だし、少し心配なところはある。

「それじゃあ、今日は何から話そっか?」
「そうね、それなら――」

 よし、少しは呼吸も戻ってきた。大丈夫そうね。
 未来はまるで嬉しくてたまらない子犬みたいに、それこそぶんぶん振ってる尻尾の幻が視えるくらいの勢いで、駆け寄ってきて。
 いつもの約束の時間が、大切な時間が始まる。



『星が降る夜だから』





「あははっ、静香ちゃんそれ絶対おかしいって!」
「えぇっ!? 未来まで、そんなこと言うの!? 確かに番組で、誰にも共感されなかったけど……」

 別に中身が濃い話をしているわけじゃあないのに、未来は無邪気に笑顔を見せてくれる。そんな未来の笑顔を見て、こっちまで頬が緩んでしまう。
 いつからか、いつだったかしら。未来も私も、アイドルとして忙しくなってきて。最初の頃は会えなくても、ほとんど毎日電話で連絡を欠かさなかった。でもそれも難しくなってからは、毎日メッセージアプリで連絡をし合っていた。
 けどやっぱり本音は、会いたかった。
 それは私の我侭だって思ってたけど、未来もそう思ってくれていて。いつの間にか、約束ができあがっていた。仕事を終えた日は、こうしてシアターの屋上で待ち合わせして、お話をするっていう。ただそれだけの、大切な約束。もちろん毎日毎回、合わせられるわけじゃないけれど。
 それでもまったく会えないよりは、ずっと良い。以前はどうしてもお互い忙しさに気を遣って、会おうなんてことすら言えなくなってしまっていたから。

「ねぇ、未来。今度は未来が何か、話してよ」
「うーん、いざそう言われると、何を話していいかわからないよね。何がいいかな?」
「なんでもいいから」
「なんでもいいって、それ一番困るよぅ」

 未来は拗ねたみたいに、ぷくぅって頬を膨らませてみせた。その様子がおかしくて、くすくす笑ってしまう。
 ごめんなさいね、未来。別に意地悪してるわけじゃないし、ただ本当に未来の話が、声が、表情をころころ変えて話す未来の姿が見たいから。
 この約束の時間は、決して長いものじゃないから。体調とか、帰る時間とか、その他諸々ちゃんと考えての短い時間。長くても、十数分程度。だからこそプロデューサーも許可をくれて、約束の日だけは屋上の鍵を預けてくれる。
 あら? 未来の表情が、変わった。これは何か思いついたような、そんな感じね。話すことが決まったのかしら。

「そうだ! この前ね、共演者の人に静香ちゃんの良いところを熱弁する流れになったんだけどね?」
「どんな流れよ!? 何それ、放送とかされるの!?」
「されないよ? 楽屋だったから」

 よかった、そんなものが放送されたら、恥ずかしいなんてもんじゃない。ちょ……ちょっとだけ聴いてみたい気もするけど。

「それでね、その人に意外だねって言われたの」
「意外?」
「うん。テレビとかで見てると二人ともまったく違うタイプに見えるけど、そんなに嬉しそうに話せるくらい仲が良いんだねって」
「なるほどね。意外、かぁ……そうね」

 周囲から見れば、確かに私たちはそう見えるのかも。自分でも、未来と似ているなんて思ったことないし。
 初めて会ったときは、春日さんって呼んでて。でもすぐに、未来って呼びたくなって。未来の考え方、発言、行動……すべてが今までの私には無かったもので、きらきらして見えたから。そうだ、ちょうど今の星空みたいに、眩しかったんだ。

「でね? 私もちょっと、不思議に思ったんだぁ」
「不思議って、私たちの関係が?」
「私は静香ちゃんのこと、大好きだよ」
「~っ!?」

 夜風に髪を靡かせつつ、ふわっとした柔らかい笑みと温かい声で、そんなことを言われたから。
 言葉が、出なかった。
 な、なないきなり何を言い出すのよ、この子は! あぁもうまったく、毎回毎回突拍子もないんだから!
 未来はいつだって、出会った頃からずっとこうやって、ストレートに伝えてくれる。その素直さが、羨ましい。

「すっごく好き! 大好き! でもね、静香ちゃんはなんでこうやって、私と一緒に居てくれるんだろうって。改めて考えると、不思議に思っちゃった」
「一緒に居てくれることが不思議って、何よそれ」
「だってだって、静香ちゃんは凄いもん。綺麗だし可愛いし優しいし、歌っているときだけは格好良いし」
「……なんか、妙に引っかかる言い方をされた気がするけど」
「歌っているときだけは格好良いし」
「強調しなくていいから!」

 にやにやしながら、わざと繰り返して言う未来。そりゃ普段の私は、別に格好良いとかそういうタイプじゃないでしょうよ。それでもわざわざ強調されると、なんかイラッとする。
 だから笑顔で、そう、私の全力の笑顔を作って――

「痛いっ!?」

 でこぴんをしてやった。ぺちんって音と共に、未来の小さく短い悲鳴が上がった。もちろん手加減はしたから、痕が残ったりすることはないけど。
 それでも未来はおどけたように、大袈裟に痛い痛いって繰り返しながら、額をさすっている。わざとらしいけど、その茶番が嫌いじゃない。

「もうっ、そんなに強くやってないでしょ」
「うぅ~アイドルファイトで三位だったくらい力の強い静香ちゃんに、いじめられたー。テニスとピアノやってる静香ちゃんに、襲われたー」
「前者はともかく後者は関係ないでしょ!」
「罰として静香ちゃん! ほら、私の大好きなところ言って?」
「んなぇっ!? な、何を言ってるのよ!」
「だって静香ちゃん、でこぴんで話を逸らそうとしたんだもーん」

 うぐっ、ばれてる……。
 ジト目で睨んでくる未来に、思わず目を逸らしてしまう。

「それとも静香ちゃんは私のこと、嫌い? あーあ、悲しいなぁ。寂しいなぁー」
「うっ……」

 未来の声色は、明らかにわかっていて言っている。それを隠そうともしない。わかっていて当然のことだ。そうじゃなきゃ、こうして約束をしてまで、疲れた仕事終わりに会おうなんて約束はしていない。お互いに。
 でも……未来が不満に思うのも、正直わかるかも。だって私は、未来に大好きって言われたり抱き付かれたりされたことはあっても、私の方から未来にそういうことを言ったりやったりしたことはほぼない。ライブ後のテンションが上がっているときとか、そういうある程度テンションと勢いがないと。
 わかってる、ちゃんとわかってる。だって、大切な未来のことだから。だからわかっているのよ。今の未来がおどけた感じなのに、その瞳に一割以下だろうけど、不安が混じっているっていうのも。
 今の未来を抱き締めてあげたりできたのなら、どれだけ格好良いんだろうな。あぁ、ここでそういうことができないから、歌っているときだけ格好良いなんて言われるのかも。

「未来」
「え? し、静香ちゃん? あはは、冗談だよ?」

 真剣に見つめ返すと、慌てて冗談だからなんて。それは少し、ずるいんじゃないかしら。
 私がでこぴんして誤魔化そうとしたことが罰なら、未来がそうやって本心を誤魔化そうとするのだって罰を与えられるべきよ。
 だからこれは、罰として。

「~っ、しず、かちゃん?」

 未来の片手を奪って、私の手で繋いでやった。罰として、拘束。そう、あくまで罰としてだから。誰も訊いてないのに、そんな言い訳を心の中で一つ。
 ごめんなさい、未来。未来を抱き締めるなんて勇気は、私にはない。今の私には、これくらいが精一杯。
 未来は少しだけ困惑したような、けれどどこか嬉しそうで。手のひらから伝わる温度が、心地良くて。それに今日は、一段と星が綺麗だから。夜空の星と、星みたいな存在の未来が愛おしすぎたから。そうだ、そのきらきらに酔わされたんだ。お酒はまだ年齢的に飲んだことないけど、きっとお酒に酔うってこんな感じなんだって思う。だって今なら私の素直な言葉も、気持ちも全部、このきらきらがしっかり受け止めてくれる気がしたもの。

「私ね、私……」

 だから言える。
 改めて言葉にして伝えるのは、凄く勇気がいるし、気恥ずかしさだってある。
 それでも、未来はいつだって私に直球で想いを伝えてくれていた。あぁ、本当に凄いわね、未来って。私はこうやって言葉を紡ごうとするだけで、さっき走ってきたとき以上に口がからからに乾き始めているのに。
 繋いだ手に、ぎゅっと力を込める。すると未来も、ぎゅって握り返してくれた。

「未来のこと、大好きよ。いつもありがとう、未来」
「ッ!?」

 びくりって、未来の体が震えた。

「たしかに私と未来はタイプが全然違うけど、未来が私に言ってくれたみたいに、私だって未来のこと凄いって思ってるのよ。羨ましいって、思うことだってある。それに未来が一緒に居てくれたから、未来と出会えたから、今も私はこうやってアイドルとして夢を追い続けることができてるって思う。だから未来……えっと、なんていうかその」

 未来が目を大きく開いて固まっているから、今のうちに全部伝えてしまえって勢いで言ってしまったけど……言いたいことが多すぎて纏まらない。
 結局ごちゃごちゃして、何を言いたいのかわからなくなってきた。うぅ、顔が熱い。熱いけど、これは夏のせいよきっと。
 言いたいこと、伝えたいこと。大好きってことと、ありがとうってことと、あとは……あ、そうか。

「だから、これからもずっと傍に居て……ください」

 これからもよろしく、と想いを込めて。一回言葉が詰まっちゃった分、勢いを失って変に敬語みたいになっちゃったけど。
 言いたいことは、全部言えた。なんだ、言いきったら凄くすっきりしたわね。
 未来はまだ固まっているみたいだけど……って、顔がみるみる真っ赤になっていってる。動きだしたみたい。
 でもそこにはいつもの元気いっぱいって未来じゃなくて、今度は未来が私から目を逸らした。けどすぐにまた、潤んだ瞳で私を見つめてきて。また目を逸らして。それの繰り返し。
 うーうー小さく唸ったり、口をぱくぱくさせるけど言葉が出てきてなかったり。そんな未来を見ていると、恥ずかしさがあった私としては逆に冷静になれてくる。

「未来、顔真っ赤よ」
「し、静香ちゃんのせいだもん! だって、だって……本当に言ってくれるなんて、思ってなかったから。ねぇ、それ本音?」
「逆になんで嘘吐かなきゃいけないのよ」
「そっか、そっかぁ……でへへ~」

 ふにゃりと緩い笑みを浮かべる未来は、私の大好きな未来の笑顔で。

「ほ、ほら! そろそろもう帰らないと、明日が大変よ」

 そんな未来を見て、またちょっとだけ気恥ずかしさが復活してしまう。
 手を繋いだまま、引っ張るように屋上から出ていこうと促す。急に引っ張られた未来は、体勢を崩して転びそうになるけど、なんとかこらえたみたいだった。まぁ転びそうになったら、私が支えるつもりだったけどね。

「あ、ちょっと待って静香ちゃん! 一つだけ!」
「何よ、もうっ」
「私の方こそ、これからもずっとよろしくね!」
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