絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

カワラナイモノ、カエタイカンケイ

ISFにて頒布したSS本『Catch my future』の番外編、7年後の杏奈と百合子のあんゆりです。



「杏奈ちゃん、泊まっていくよね?」
「……うん、百合子さんさえ…よければ。お願い、します……」

 もう既に眠そうな様子だった杏奈ちゃんに、一応確認。ソファの上に膝を抱えて、眠たそうに目を擦っている。こういうところは、未だに幼さが残っていて可愛いなって思う。
 今日はお酒も飲んだし、散々騒いだし、疲れもあるんだろうな。私も疲労感に、ドッと襲われている。
 それにしても……煽ったのは私たちだし明らかに両想いなのはわかっていたけど、まさか本当に静香ちゃんと未来が付き合うなんてね。むしろ遅すぎたくらいだって思いもするし、素直に羨ましいなとも思う。
 今日の飲み会でそのことを報告してきたときの、照れ臭そうに、けれども幸せそうだった未来と静香ちゃんの姿が今でも頭から離れない。
 それはきっと、二人の関係が羨ましいから。

「お風呂はどうする?」
「ん、大丈夫……明日の朝、シャワる…」
「えぇ……私は明日オフだけど、杏奈ちゃんは明日お昼からお仕事じゃなかった? 本当に大丈夫?」
「予定変わって、明後日になったから………それでもどうしても入れって言うなら、百合子さんが…洗ってくれるなら、入る……よ?」
「あはは、そんなこと言ってると、本当に洗っちゃうよ?」

 杏奈ちゃんの甘えるような声と提案を、いつものように笑い流す。ほんとにこの子は、どこまでが本気かわからないよ。
 こっちとしては、毎回こういう言動にどきどきさせられる。今日だって飲み会のとき、好きだよなんて言ってくるもんだから、わざと大袈裟さにギャグっぽく抱き締めたけど。
 そうなんだよね、静香ちゃんを散々未来のことで弄ったりしたけど、結局は私も似たようなもので。
 この七年間、ずっと杏奈ちゃんとの関係は『一番の友達』でしかない。別に未来たちと違って、私と杏奈ちゃんは同棲してるわけでもないし、周囲からいちゃついているとか煽られたりもしない。それもあってか、いまいち杏奈ちゃんとの距離感が難しい。嫌われていることは、ないのはわかるけど。
 未来と静香ちゃんが一歩を踏み出したのを見習って、私もなんて思っちゃったりもした。でもやっぱり、怖いものは怖い。しかも未来たちと違って、確信が持てない。あの二人は見るからに、誰がどう見ても両想いだったわけだし。杏奈ちゃんはただ私を姉のように慕って、甘えてくれているだけのように見える。
 私も最初は、可愛い妹みたいな感覚だった。人から慕われるなんてこと、珍しいことだったし、同じようにゲームが趣味で一緒に居て楽しいし。
 いつから、だろう。そんな風に意識し始めたのって。

「百合子さん、百合子さんってば」
「はっ! ご、ごめんね? つい、その、えーっと……妄想の世界に」
「……百合子さん、そういうとこ変わってないよね」

 なんとか誤魔化せたけど、杏奈ちゃんは何故か嬉しそうにそんなことを言って微笑む。
 変わらない……そうだ、ツアーライブで杏奈ちゃんと二人で初めてリーダーをやったとき。リーダー曲として『カワラナイモノ』を歌ったとき。
 今思うと、あのときがきっかけだったのかも。
 何もかもが変化していかざるをえない世界で、それでも変わって欲しくないものがあって……。
 今こうして、あの歌詞のように大人になっても杏奈ちゃんと一緒に居られている、それがどれだけ奇跡的なことか。幸せなことか。

「杏奈、百合子さんのそういうとこ……好き、だよ?」
「っ! もうっ、からかわないで。ほら、寝るならパジャマ貸すよ? 着替えて」
「百合子さん、着替えさせて…くれないの?」
「杏奈ちゃんは変わったね、前より甘えん坊になった」
「……迷惑?」
「迷惑だったら、こうして家に泊まらせたりしないよ」
「えへへ…」

 ふにゃぁって緩んだ笑みを浮かべる杏奈ちゃん、可愛すぎる。いやいやいや、落ち着け私!
 もういい、さっさと杏奈ちゃんを要望通り着替えさせて、そのまま寝てもらおう。
 きっとお酒を飲み過ぎたせいだ、いつもよりずっと思考がハイテンションだ。調子の良い方向に、考えようとしてしまう。
 たとえば、今の杏奈ちゃんなら抱き締めても良いんじゃないかとか。ほっぺにちゅーくらいなら、冗談で済ませられるんじゃないかとか。何しても、拒否されないんじゃないかとか。
 元から好意的には思ってくれてるだろうし、お酒も入っていて、未来と静香ちゃんの惚気にあてられた今日なら。もしかして――
「なんて、ね」
「ん? どうしたの、百合子さん」
「ううん、なんでもないよ。杏奈ちゃん、せめて立ってくれないと着替えさせ辛いから立って?」

 大切な杏奈ちゃんに、そんなことできるもんかって話だ。ダメだね、私。本当に今日は、頭がちょっとよろしくないかも。
 杏奈ちゃんは素直にソファから立ち上がって、ばんざーいってしてくれる。ちゃちゃっと服を脱がすと、あっという間に下着だけの状態だ。上下ともに可愛らしいレースがポイントの、ピンク色の下着。そういえば私だけ胸がちょっと成長したとき、杏奈ちゃんに恨めしそうにされたな。なんてことを、目の前の杏奈ちゃんの膨らみを見て思い出す。
 あんまり見ているのもアレなので、もう用意していたウサ耳フード付きのパジャマに着替えさせた。杏奈ちゃんお気に入りの、杏奈ちゃん専用パジャマ。よく泊まりに来るもんだから、杏奈ちゃんのパジャマだけは置いてある。それ以外のものは、さすがにおいてないけど。

「はい、できた。ベッドは使っちゃっていいからね」
「……百合子さんは、まだ寝ないの?」
「うん、別に今日じゃなくても明日でもいいんだけど、ちょっとお仕事でね」

 今度ゲストで行く番組『北沢志保の正直しんどい』での事前アンケートみたいなものだけど、それをさらっと書いてしまいたい。そう伝えると、杏奈ちゃんは私の手をぎゅって掴んできた。両手で包み込むように。
 えーっと、どうしたんだろうか。

「今日じゃなくてもいいなら、寝よ?」
「え、いや……」
「……疲れてる状態で考えても…仕方ないと思う」
「でもそんなに頭使う内容でもないし」
「一緒に、寝よ?」
「ごふぁっ!?」
「え?」

 なんですか今の、あざとい王道台詞ですか。そんな台詞にこの私がやられるわけはいめっちゃやられましたけど何か問題でもありますか。
 誰に責められてるわけでもないのに、頭の中でそんな逆切れをする。
 いやだって、小首を傾げてちょっと上目遣いっぽい感じで、しかも両手で手を握られてる状態でそんなこと言われるとか、破壊力高すぎでしょう。

「だ、大丈夫?」
「う、うん大丈夫、ちょっと妄想が暴走して夢色トレインしちゃっただけだから」
「百合子さんの言っている意味がわからないけど……それ、疲れてるってこと………だと思う。だからね、寝よ?」

 杏奈ちゃんの言う通り……確かに、これはまずい気がする。
 こんな発言、放送でしたら放送事故レベルだし。天使な星梨花ちゃんはともかく、星梨花ちゃんファンと作詞作曲家の人との敗北確定の裁判に備えなきゃいけないレベルだ。
 仕方ない、ここは杏奈ちゃんの提案通り、一緒に寝ちゃうとしよう。アンケートは明日にでも、済ませればいいし。

「そうだね、それじゃ一緒に寝よっか」
「うんっ……!」

 頷く杏奈ちゃんの手を引きながら、寝室へと向かう。ベッドは一つしかないから、本当に一緒に寝るような形になっちゃうけど、今更だ。何度も一緒に寝てきてるし。
 前にお客さん用として、布団を買おうと思ったときもあった。でも私の家は、一人暮らしにしてはそれなりに広いお部屋を借りてるけど、そのスペースのほとんどが本で埋まっていて。トップアイドルとしてそれなりの稼ぎはあるとはいえ、そのためだけに新しく大きな部屋に引っ越すのも嫌だし、正直なところ、布団を一式おいておくくらいなら、新しい本を買いたいという欲が勝った。泊まりになっちゃう人には、申し訳ないがソファかベッドを使ってもらうということで。

「杏奈ちゃん、寒くない? 狭くない?」
「ん、大丈夫…です。百合子さんは?」
「私も大丈夫」

 一人用のベッドだから、二人だと相変わらずちょっと狭い。お互いに背中をぴったりくっつけあって、横になっている。この体勢、毎回『成長chu→lover』の振り付けを思い出して、少しにやっとしちゃう。
 もう何年も前の曲とはいえ、杏奈ちゃんと初めて一緒に組んで歌った曲だ。歌う機会こそ減ったものの、今でも大好きな楽曲。振り付けだって、全部覚えてるもん。
 背中からじんわり伝わる温かさが、この寒い季節には心地良い。きっと杏奈ちゃんの体温だからっていうのも、あるかも。
 目を瞑ると、すぐ眠ってしまいそうなくらい、心地良さと疲労感が入り混じる。

「百合子さん……未来たち、幸せそうだったね」

 そのまま眠りに落ちるかと思ったとき、杏奈ちゃんの声がした。
 あれだけ眠そうにしてたのに、まだお喋りしたいのかな? でもそれなら、私だってお喋りしたいって気持ちはあるし、眠気の限界まで付き合うのも悪くない。

「そうだね、二人とも幸せそうだったね」
「百合子さんは、あのとき羨ましいって言ってたけど……その、そういう人…」
「ふふっ、杏奈ちゃんが好きだよって言ってくれただけで、私は充分だったよ」

 お笑いみたいな流れだったとは言え、素直にあれは嬉しかった。
 あれ? 杏奈ちゃん、黙っちゃった。いや、寝ちゃったのかな? やっぱり眠気には勝てなかったのかな。それなら仕方ない。私も――
「…………百合子さん、杏奈は…本音を伝えただけ……だよ?」
「え?」

 眠ったと思っていた杏奈ちゃんが、ゆっくりと、けれどもしっかりとした声で、言葉を紡いだ。
 本音を伝えた? それは、そりゃ私と杏奈ちゃんは仲が良いし、好きって気持ちは嘘じゃないんだろうけど……。

「……杏奈はもう、伝えたから。あとは百合子さんが…踏み込んでくれたら、一歩を踏み込んでくれたら………それだけで」
「ぇ、や、その……」

 待った、待って、杏奈ちゃん。
 その言い方、まるで……全部見透かされているみたいで。杏奈ちゃんも、私と同じ思いを抱いてくれているって、勘違いしちゃう。
 思わず、くるりと体を回転させて、杏奈ちゃんの方向へ体を向ける。すると同時に、杏奈ちゃんもこちら側へ体を向けていた。
 薄暗い中、それでも至近距離にいる杏奈ちゃんの表情はよくわかって。瞳が少し、潤んでいる。ちょっとだけ、不安そうな顔で。でもどこか、私を信じてくれてもいるって感じで。なんだろう、上手く言葉に言い表せない。
 でも、確信は持てた。情けないことに、杏奈ちゃんから言わせてしまったようなものだけど。
 杏奈ちゃんは勇気を出して、踏み込んできてくれたんだ。

「杏奈ちゃん、私――」

 誰かに聞かれてるわけでもないのに、部屋に二人っきりなのに、杏奈ちゃんの耳元で小さく一言。
 杏奈ちゃんへの想いを、言葉に乗せた。
 いろんな本を読んできたから、それこそこういうときに想いを伝える洒落た言葉や言い回しなんて溢れるほど知っている。
 でもやっぱり、私には一言で充分だった。だってそれだけで、全部伝わるって信じてるから。
 杏奈ちゃんが私の背中に腕を回してきて、ぎゅうっと抱き付いてきた。私の胸に、ぐりぐり~って顔を埋めて、うぅ~って唸ってる。何この可愛い生き物。

「…百合子さんが鈍いから……杏奈、ちょっと不安だったんだよ」
「私からしたら、杏奈ちゃんがいつも通りすぎて……」
「えー…杏奈のせい?」
「うぐっ、そういうわけじゃ……っ!?」

 唇に、柔らかい感触。
 それは多分、一秒くらい。たったそれだけの時間だった。それでも何をされたかは、目の前の杏奈ちゃんを見ればわかる。
 羞恥で頬がほんのり赤くなっていて、照れたように笑う杏奈ちゃん。しちゃった、なんて悪戯っぽく零す。
 あぁなんていうか、本当にもう……!
「杏奈ちゃん、ずるい。私だって――」
「ゆ、ゆりこさふぐぅっ!? んっ! ふ、ぁ……」

 杏奈ちゃんの頭に手を回して、ぐいっと引き寄せた。
 正直恥ずかしさでいっぱいだったけど、もうなんとでもなれといった感じだ。
 勢いよくやった割には、唇は震えてしまって。きっとそれは杏奈ちゃんにも伝わってしまっているから、それを誤魔化すように杏奈ちゃんの唇をぺろりと一舐めして離れた。その瞬間、杏奈ちゃんが私の背中に回している腕に、きゅうって力を込めた。

「…百合子さんだって、ずるい。杏奈、舐めたりなんて……してないのに…」
「杏奈ちゃんも、してみたいの?」

 お互いの吐息と吐息が混じり合うくらい、近い距離で、杏奈ちゃんはか細く「したい」と漏らした。
 そして私の返事を待つよりも先に、ぺろっと、まるで子犬がじゃれてくるみたいに唇を舐めてきた。ぞくりとしたものが、背中を走った気がした。
 潤んだ瞳で何度も何度も唇を重ねて、時折舐めてを繰り返す杏奈ちゃんが愛おしすぎて、私も杏奈ちゃんの背に腕を回して強く抱き締める。
 お互いの胸がパジャマ越しに形を変えて重なり合って、どちらのものかわからないくらい鼓動がうるさくて。

「杏奈ちゃん、可愛い」
「っ、ゆり…こ、さん……」

 さっきまであんなにお互い眠かったのに、どうやらまだしばらく眠れそうになかった。
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