絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

小悪魔とパチュリー

創想話投稿作品。内容はタイトルを見たまんまです。タイトル、思い付かなかったんです……




「パチュリー様~」
「……うっとうしい」
「みゃうー!?」

 読書中のパチュリーに勢いよく抱き付く小悪魔。それを約1800ページに渡る分厚さの幻想郷辞書で殴り飛ばす。
 そんな2人のやりとりを見てたフランドールは、ふと疑問に思う。

「小悪魔って何でパチュリーに仕えてるの?」
「愛ゆえに! です!」
「何が愛よ。妹様は知らないだろうけど、小悪魔は最初私を見下してたようなタイプよ」
「え!? 小悪魔が!?」
「ちょ、パチュリー様! そんな昔のこと……」

 フランドールにはパチュリーの言葉が信じられなかった。
 いつも目の前でパチュリーにベタベタしている小悪魔を見ていたから、最初から仲が良かったものだと思っていたのだ。
 しかし、小悪魔の慌てぶりからするに、事実なのだろう。
 慌てる小悪魔を見て、パチュリーは意地悪く笑っている。

「そうね、妹様。私と小悪魔が出会った時の話、聞きたい?」
「うん!」
「パチュリー様、過去のことなんて忘れましょうよぉ……」

 嫌がる小悪魔を無視して、パチュリーはフランドールの方へ向く。
 読んでいた本を机の上に置いた。
 そして、語り始めた。





◇◇◇





「レミィ、ちょっと良いかしら?」
「パチェが私の部屋に来るなんて珍しい。何かあったの?」

 紅魔館に住み始めてからまだ日が浅いパチュリーだが、レミリアの部屋へと来ることは珍しいことだった。普段なら図書館から一歩も出ないようなタイプだ。

「図書館に誰か居るわ」
「誰かって?」
「さぁ? 確認してないわ。最初はすぐ居なくなると思ってたんだけど、ずっと気配がするから館の主であるレミィに一応報告しに来たの」
「ふーん……面白いね。無断で私の館内に住み着いてるなんて、礼儀も常識もないやつだな」

 レミリアは笑いながら言った。そして、立ち上がる。

「行くの?」
「もちろん」
「わざわざレミィが出なくても良いような相手だとは思うけど……」
「親友のためよ」
「自分が暴れたいだけでしょうに」

 楽しそうに笑うレミリアに対して、大きく溜め息を吐くパチュリー。
 例え、潜んでいる者が凶悪でも、レミリアに勝てるやつなどまずいない。パチュリーだけで十分だろう。レミリア自ら確認しに行こうとしているのは、恐らくただの気まぐれだ。

「さぁ案内して、パチェ」
「はぁ……分かったわ」

 こうなったレミリアは何を言っても無駄だと分かっているパチュリーは、再び大きな溜め息をわざとらしく吐いて、図書館へと連れて行った。



「ふーん……」
「だから言ったでしょう。レミィがわざわざ出てまで確認する相手じゃ無いって」

 図書館内に足を踏み入れた瞬間、レミリアは凄くつまらなさそうな表情をした。
 気配すら隠せていない。その上、空気で分かるが、戦ってもつまらないような相手。レミリアの興味はほとんど無くなっていた。

「おい、出てきな」
「あら、帰らないの?」
「せっかく来たんだから姿くらいは見てくわ」

 しかし、出てこない。
 苛々するレミリア。

「ねぇ、パチェ」
「何かしら?」
「ココごと吹っ飛ばしてやって良いかしら?」
「そんなことしたら私泣くわよ。割りと本気で。そして毎晩レミィの耳に水入れたり嫌がらせするわ」
「むぅ……おい、隠れてるやつ。今素直に出て来るなら言い訳を聞いてやろう。だけど、出て来ないなら捜して潰す」

 声を低くして言うレミリアに怯えてか、とある本棚の影から、震えた声が上がった。
 それを聞いたレミリアは、口の端をつり上げて笑い、一瞬でそこへ移動した。
 その後をパチュリーがゆっくりと追う。

「さぁて、どうしてくれようか」
「あ……ぅ」
「レミィは酷いわね。出て来る時間さえ与えないなんて」
「最初から出て来ないこいつが悪いでしょ」

 レミリアの鋭い目付きに腰を抜かしたのか、隠れていた者はぺたりと床にお尻をついて動けないでいる。

「で、こいつの正体は何かしら、パチェ?」
「見たら分かるわ。力の弱い悪魔といったトコね」

 黒を基調とした服に黒い尻尾、微かに感じる魔力。まさに典型的な悪魔だった。
 怯えているため、今はその大きな瞳が涙で潤んでいる。長い赤髪も、乱れていた。

「ま、悪魔というよりは小悪魔に近い」
「じゃあ戦っても……」
「えぇ、レミィの暇潰しにもなりはしないわ」

 パチュリーの淡々とした説明に、レミリアはがっくりといった感じに肩を落とす。
 そして、レミリアは踵を翻した。

「姿も確認したから戻る」
「あら、この子はどうするの?」
「パチェの好きにして良いわよ。実験材料なりペットなり、なんなら魔法の的にでも使ったら」
「さらりと酷いわね」
「はぁ、つまらない。パチェ、後で一緒に飲みましょう」
「私、本を読みたいのだけれど」
「本より友人を選びなさい。ほら、私がパチェのために小悪魔を確認してあげたのだから」
「よくいうわね……分かった。後でね」
「うん。それで良いのよ」

 パチュリーが飲みに付き合うことは滅多に無い。
 レミリアにとっては、今回その約束が出来ただけでかなりの儲け物だった。
 もはや小悪魔のことなんか忘れているかのように、上機嫌で去って行った。

「さて、と」

 パチュリーは小悪魔の方へ向き直る。
 小悪魔は先程まで怯えていた様子だったが、今は――

「ふん、魔女か」
「あらあら……それが本当の貴女ね?」

 ぶすっとした表情で、胡座をかいていた。
 しかし、別にパチュリーは驚いていなかった。というか無表情だ。

「言っておくけど、さっきの吸血鬼は怖かったよ。けどあんたみたいな魔女は怖くないんだからね。これでも悪魔よ。あんたみたいな魔女なら今までたくさん見てきたわ」

 赤い舌を出してベーッとする小悪魔だが、パチュリーはまだ無表情。

「貴女、頭が弱いの?」
「……んなぁっ!?」

 パチュリーの言葉に、小悪魔はおかしな声を上げた。

「ば、馬鹿にしてるの!?」
「ええ。今貴女の命は私が握っているも当然な状況。それなのにその相手を挑発するような言動。実に愚か」
「あ、あんたが怖くないからって言ってんじゃん」
「私が怖くなくとも、私は今からまたレミィを呼んで来ることは出来る」
「あ……」
「愚かね。小悪魔とはいえ、一応悪魔ともあろう存在が」

 見下しているようなパチュリーの口調と態度、しかし正論のため言い返せない小悪魔。
 ただ、悔しいから睨むことだけは止めなかった。

「ま、レミィは呼ばないから安心して。そうね、貴女の処分は……ここの司書」
「…………はぁっ!?」
「頑張ってね」
「ちょ、ちょっと待って!」

 完全に殺されると思っていた小悪魔にとって、それは予想外の展開だった。
 慌ててパチュリーに声を掛ける。

「なんでそうなるのよ!?」
「ココを見なさい。たくさんの本があるでしょう」
「え、うん」
「それじゃあ頑張ってね」
「ちょ、説明足りない! いや、それ説明にもなってないから!」

 なんなんだこの魔女は。そう小悪魔は思った。

「私を消さないの?」
「あら、消されたいの?」
「なっ!? あんたみたいなやつに消されるほど弱くない!」
「……私は貴女視点では雑魚扱いなのね。まぁ、いいわ」
「いいの!?」

 やはりおかしい。再び小悪魔は思う。
 小悪魔が今まで見てきた魔法使いは、必ず自分中心の考えを持つ、それでいてプライドが高い者ばかりだった。
 そんなプライドだけの薄っぺらい魔法使いたちを、小悪魔は傍から見て笑っていた。馬鹿なやつだと。
 自分中心の考えやプライドだけでは、必ず魔法研究に行き詰まることを知っていたからだ。時には客観的に物事を考え、薄っぺらいプライドなんて捨ててしまわないといけないこともあるのに、それに気付かない。

「あんた、面白いね」

 小悪魔は笑った。
 パチュリーが、普通の魔法使いとは違うということに少し興味がわいたのだ。

「でも、司書なんてやらないよ。私は自由に生きる」
「私が貴女を逃がすと思う?」
「逃げ足だけは速いよ。私」
「そう」

 パチュリーはそう呟くと、小悪魔に背を向けて歩き出す。そして、木製の椅子に腰掛け、読書を開始した。

「な、何してんの?」
「見て分からないの? 本を読んでいる」
「私、逃げるよ?」
「勝手にすればいい」

 興味無い。そんな感じで本を読み続けるパチュリーを見て、なんとなくさっきのレミリアと似ていると考える小悪魔。
 パチュリーから離れ、図書館を去ろうとする。
 やはりパチュリーは追って来ない。

「……やっぱりまだココに居させてもらうよ。別に出てったところで行く宛も無いからね」
「そう」
「だけど、司書の仕事なんてやらないよ。私は私の好きなようにさせてもらう」
「好きにすればいいわ」

 小悪魔の言葉に、パチュリーは目線すら合わせない。本に夢中だ。なんとなく、小悪魔は腹が立った。
 こうして、図書館に小悪魔が住み着くようになった。

 翌日、小悪魔は驚くことになる。

「これ、貴女のベッドね」

 パチュリーが指を指す方向には、白いベッド。それは図書館の一室に置かれた。
 小悪魔は驚きのあまりぽかんとしていた。
 しばらくして、正気に戻った小悪魔はパチュリーに言う。

「えーと、どうして?」
「小悪魔でも眠るでしょう。だから」
「いや、なんで私に? 私はあんたに何もしてやって無いよ?」
「いらなかった?」
「……ありがたいけど」
「そう。なら良かった。あ、ちなみに今日から貴女の分の食事も用意する」
「ぅー……こんなことしてもあんたに恩返しなんかしないよ」
「そんなこと興味無いわ。あと私はあんた、じゃなくてパチュリー。パチュリー・ノーレッジ」
「べ、別にどうせ名前なんて呼ばない。私はあんたをあんたと呼ぶ」
「そう。好きにしなさい」

 やっぱり小悪魔の方は全く見ないで、読書をしながらそう言うパチュリー。
 そんなに本が面白いのか、それとも私は本以下なのか、と考える小悪魔。

「ねぇ、そんなに本読んでると目悪くなるよ」
「魔女だから大丈夫よ」
「いや、関係ないでしょ。目悪くなって本読めなくなったらどうするの?」
「もしも、の話に興味は無いわ」

 目線は合わせないけれど、話しかければ返事はする。
 特にすることのない小悪魔にとっては、良い暇潰しだった。

 それから、毎日そんなやりとりを繰り返した。

「あんたさ、何で本を読むの?」
「知ることを知るためよ。例えば、貴女は空が何故青いか知っている?」
「はぁ? それくらい知ってるわよ」
「そう。なら、何故空が青いことを知っているの?」
「え?」

 空が青い理由、幼い頃に誰もが疑問に思うような、なんてことのないこと。
 その疑問はいずれ解消される。
 しかし、パチュリーはさらに疑問を問う。

「空が青いということを誰に教わったの? 空が青いということ、何故それが常識であるかのように思うの? それは本当に青? そもそも青とは何?」
「……わけわかんない。答えは?」
「私も知らない」
「ちょっと!?」
「こんなくだらないことも知らない。けれども、興味もわかない」
「……あんた頭大丈夫?」
「実は今日はちょっと風邪気味なの」

 小悪魔は溜め息を吐いた。

「寝てなさいよ」
「嫌よ」
「悪化するでしょ。寝てなさい!」
「いちいちうるさいわねぇ」

 渋々と本を置いて、素直に従うパチュリー。


 そんな、やりとりが日常になりつつあった。

 ある日、パチュリーは本の整理をしていた。
 小悪魔は手伝ってやってもいいと思ったが、最初の頃にあれだけ拒否して、今さら手伝うなんてこと、気恥ずかしくて出来なかった。
 ただ、見ている。

「っ!」
「あれ、どうしたんだろう?」

 突然、止まったまま動かないパチュリーを見て、首を傾げる小悪魔。
 しばらく見ていたが、パチュリーが倒れたのを見て、小悪魔は動いた。

「ちょ、大丈夫!?」
「ぅ……」
「あんた、どうしたのさ!?」

 肩を掴んで声を掛けるが、パチュリーはせき込んで返事が出来ていない。
 連続するせきのせいで、呼吸が困難になっているのが、小悪魔には分かった。

「あんた、何かの病気なの?」

 そう問うが、もちろん返事は無い。ただずっとせきをして苦しそうな様子が続くだけ。
 小悪魔はそこでふと気付いた。自分がパチュリーを助けようと考えていることに。最初あれだけ見下していた相手を、今は助けたいと思っていた。

「あぁもう……どうすれば良いのよ」

 でも、助ける方法が見つからない。
 何の病気か分からない小悪魔には、一体何の薬が効くか分からない。助けを呼んで来ようにも、今パチュリーを一人にしてはマズいと考える。
 なら、どうすればいいか。

「……あった。一つ方法が」

 そう呟き、小悪魔がそっとパチュリーの肩を抱き抱えた。

「失礼するわね」
「んっ……」

 唇を重ねた。
 しばらく、そうして動かない。
 すると、パチュリーの不安定だった呼吸が次第に安定していく。
 それを確認して、そっと唇を離した。

「はぁ……あ、貴女」
「魔力をあんたに流したの。私の少ない魔力をね。おかげで今は私、全く動けない」

 パチュリーが小悪魔を見ると、たった数十秒の間の出来事だったのに、小悪魔は酷く汗をかいて、へたりと座り込んでしまっていた。
 そんな小悪魔をベッドに移してやろうとするが、

「はは、あんた体力無いんだね……」
「ごめんなさい。助けてくれたのに……」

 パチュリーの力では持ち上がらなかった。

「いいよ、別に。それよりさ」
「何?」
「さっきの。あんたに魔力を流し込んだじゃない?」
「ええ、助かったわ」
「あれ、一応簡易契約になっちゃうのよ」
「……は?」
「悪魔との契約。本契約では無いけど、悪魔から魔力を貰ったら仮契約の証」

 小悪魔が笑いながら言うが、パチュリーは突然の展開に少し戸惑っている。

「ま、そんなわけだから」
「えと……つまり私は貴女の」
「そう、ご主人様。よろしくね、パチュリー様」

 わざとらしくパチュリーに様を付けて、にははと笑う小悪魔。
 パチュリーはしばらくしてから、溜め息を吐いた後、軽く笑った。

「よろしく、小悪魔」





◇◇◇





「とまぁ、それから長い年月が経って今に至るのよ」
「パチュリー様が喘息と知ってからは、私は司書の仕事を本格的にやり始めましたね。埃っぽいトコにはパチュリー様を近寄らせないよう頑張りましたよ」

 昔の話をされたせいか、少し頬を赤くして、照れくさそうに笑う小悪魔。
 フランドールは、信じられないといった感じだったが、小悪魔が否定をしないから、仕方無く本当なのだと無理矢理納得した。

「でも小悪魔、変わりすぎじゃない?」
「この子がこんな風になったのは、本契約交わした時からかしらね」
「あの時から、パチュリー様への愛に目覚めました! 愛は人を変えます! というわけでパチュリー様、抱き付いて良いですか?」
「ロイヤルフレアと賢者の石どっちが良いかしらね」
「私、殺される!?」
「安心して。半殺しを十回で許してあげる」
「五回死んでるじゃないですか!?」

 それでも抱き付く小悪魔を、パチュリーが軽く殴る。
 そんな二人のやりとりを見て、フランドールは笑っていた。
 静かな筈の図書館は、少し騒がしくも楽しそうだった。

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