絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

フォーチュン・フォーチュン前編

お嬢静香、子分未来、風来坊志保、悪徳組長エミリー、用心棒まつり、特別出演他。そんなノリで、みらしずです。
「何があっても、私が絶対に静香ちゃんを護るから」

 にへらっと笑いながら、けれども少し震えた体で、力強く紡いだ言葉。部屋の外では争う声と、銃声が鳴り響いている。
 まだ二桁にも達していない年齢で、武器も何も持たない子どもが一体何をできようか。そんなことは、幼いながらに未来にもわかっていた。わかってはいたものの、今この瞬間にも静香に危険が迫っている状況で、動かずにはいられなかった。
 危ないからダメ、行かないで。そういう思いが静香の中にはあったが、恐怖のせいか、声が出なかった。震える静香をぎゅっと抱きしめて、また笑う。またね、と言って部屋の外へと飛び出す未来。
 その背中を、静香はただただ見送ることしかできなかった。



◇◇◇




「ん、ぅ……夢、か」

 やや気だるげに目を開ける。目覚めはあまり、よろしくない。
 久しく見ていなかった、幼い頃の夢が原因だ。そんな夢を見てしまったのは、きっと魅梨音組を継いでから日が浅いせいかもしれない。静香にとっては、あまり仲が良いわけではなかったが、父親が最期に継いでくれと残したのだ。静香自身、組に興味があるわけではなかったが、最期の頼みを見捨てるわけにもいかなかった。一応幼い頃からそういった教育は受けてはいたものの、まだまだ十代前半。不安でいっぱいになるのは、弱気になってしまうのは当然のことだろう。
 だからこそ、幼い頃の夢を見てしまったのだろう。
 今も昔も変わらない、静香にとっての一番の信頼できる人物、未来を無意識に頼っている部分が現れたわけだ。

「お嬢、少しよろしいですか?」
「未来? いいわよ、入って」
「失礼します」

 障子を開けて入ってきたのは、今まさに思考の中に居た相手である未来だった。未来は若いながらも、組の中でトップレベルの実力を持っている。そして静香と幼馴染なこともあって、静香の右腕としてサポートをしてやってくれという先代組長の遺言から、常に傍で働いている。未来自身はただの一子分だと言うが、周囲は未来の実力を認めているからそうは思わない。
 中には一人娘だからといって組を継いだ静香を、快く思っていない者も組にはいる。それでも反乱のようなものが起きたりしないのは、みんな少なからず静香の父親に恩があるのと、傍に居る未来の存在が大きい。

「もしかして、起こしてしまいましたか?」
「ううん、今ちょうど起きたところなの。気にしないで。それで? 何かあったの?」
「はい、実は最近町中に怪しい者が居るとの噂で」
「怪しい者?」
「人数は一人だけらしいのですが、何やらいろんな人に聞き込みを繰り返してはその場から去りを続けているみたいで。もしかしたら、別の組が何かよからぬことをしようとしているのではないかと。町の人たちも、少し不安を抱いているようです」
「……一般市民を巻き込むような真似は、見過ごせないわね」
「なので、私自ら今日は調査に出ようかと。午前で終わらせるつもりですけど、念のためお嬢の傍には、ジュリアさんがついておきます」
「ん、わかったわ。……ねぇ、未来」

 一礼をし、その場を去ろうとする未来の背中に、声を投げかける。

「二人きりのときくらい、せめて昔みたいに接してはくれない?」
「お嬢が組を継いで、ただでさえごたごたしている状況です。周囲の者に、示しがつきませんよ」
「周りなんて関係ない。私は――」
「申し訳ございません、失礼します」

 未来は振り向くことなく、部屋を去った。
 静香の伸ばした手は、何も掴むことなく、目的を失ったまま宙にさまよう。項垂れて、深いため息を一つ。

「未来……」

 ぽつりと零した言葉は、誰に届くこともなく消えた。





◆◆◆





「おや、未来さん? スーツ姿ってことは、何かあったのかい?」
「あー、ここ最近何か、不審な人が町中をうろついていると噂があったから」

 未来が商店街を歩いていると、いつもの八百屋のおばちゃんに話しかけられた。魅梨音組の未来、は町の中で知らない人はいないレベルだ。といっても、何か問題を起こすからとかではなく、未来の本来の人柄からか誰とでも仲良くなれるのもあって、割と気さくに話しかけられる。
 ちなみにスーツ姿なら仕事、私服ならプライベートと町の人は判断をする。
 未来はせっかくだからと思い、周囲に不審な人物を見かけなかったか訊ねることにした。

「あぁ、それならついさっき、倒れてるのが見つかったって聞いたよ」
「倒れてる!? ど、どこで!?」
「詳しくはわからないけど、公園に人が集まってたからそのあたりじゃないかなぁ」
「ありがとう、おばちゃん! 今度大量に買うから!」

 おばちゃんに背を向けて、公園へと駆け出す。
 そう遠くない距離だ。鍛え上げた未来の脚なら、数分もかからない。
 公園には、おばちゃんの言った通り、人だかりができていた。一体何があったのかと問うと、人が倒れているだのここ最近よく見かけた怪しい人だの。つまりはこの人だかりの中心に倒れている人物が、目的の人物であって。思ったよりもずっと早く、目的を達成だ。
 周囲の人物に、ここは私に任せて欲しいと告げる未来。未来の空気から、触れてはいけない領域だと判断した人々はすぐさまその場から立ち去る。
 未来の目の前には、黒いフード付きコートを被ったままうつ伏せに倒れている人物。ぴくりとも動かない。

「私が来る前に誰かに始末された、か」

 けどそれにしては、死体を残したままなんてあまりにも下手すぎる。不審に思いつつも、未来は両手を合わせて目を瞑る。何があったのか、どういう立場の者だったのかはわからない。けれども、せめて少しくらいは安らかに眠って欲しい。そういう気持ちを、込めて。

「う、ぐ……」
「うわっ!?」

 すると、倒れていた人物が声を漏らす。
 まだ息がある。見かけと状況だけで、確認もせず生死を判断する未熟さに反省しつつも、未来はその人物を仰向けにする。何か言いたいことがあるのなら、うつ伏せよりは話しやすいだろう。
 そこで、気付いた。

「女の子……?」

 パッと見、未来とあまり大差ない年齢のように見える、少し幼さを覚える顔。

「大丈夫? どこか痛む?」
「ぁ、お……お腹空いた」
「……はい?」

 くどぅるるるるという独特な空腹音とともに、少女は意識を失った。
 未来は数秒、ぽかんとしたまま固まっていた。が、放置するわけにもいかない。どうしたものかと悩んだ末に――
「連れて帰るしかないかぁ」



◆◆◆



「すげーなこいつ……」
「よっぽどお腹空いてたんだろうね。空腹で倒れている人なんて、初めて見たよ」

 目の前で大量に用意された料理を、物凄い勢いで平らげていく少女。それをやや呆れ気味に、ジュリアは見る。
 未来よりも古株で、未来が組の中で信頼を置いている人物、それがジュリアだ。不審人物を捕らえた……というよりは拾ってきた、と報告をするために一応ジュリアを呼んだのだった。

「ジュリアさん、どうしよう?」
「んー? うちに危害を加えなさそうだったら、見逃しちゃっても良いんじゃないか?」
「危害を加えそうだった場合は?」
「未来に任せる」
「りょーかい。それじゃ私はこの子の対応するんで、呼んでおいてすみませんけどジュリアさんはまた、お嬢の方へ」
「おう! 任せておきな!」

 ジュリアはにかっと笑いながら手をひらひらと振り、未来の部屋から出ていく。
 室内には、未来の少女の二人だけとなった。

「えっとそうだね、まずは名前を教えてもらえるかな?」
「……北沢志保です。すみません、助けていただいて」
「いいよいいよ、見た感じ年齢も近そうだし、そんなかしこまらなくても」
「いや、でも……」
「ちなみに、私は春日未来。未来って呼んでくれて、構わないから。あ、でもその代わり、私も志保って呼んでもいいかな?」
「……その、えと、どうぞお好きに」

 志保は戸惑いを隠せないでいるが、未来の柔らかい空気、人柄に、少しだけ気が楽になる。
 そもそも志保からしたら、行き倒れだったところを拾ってもらって、しかもご馳走までしてもらっている立場。恐縮してしまうのは、当然のことでもある。
 だが未来は、そういう堅苦しいことは本来好まない主義だ。もちろん、お嬢である静香は別として。

「それで志保、早速で悪いんだけど、いろいろ訊いてもいい? 食べながらで構わないからさ」
「未来さんは命の――」
「未来、で」
「……未来は命の恩人ですから――」
「敬語いらないって」
「…………未来は命の恩人だから、なんでも訊いてちょうだい」

 未来の不満ですオーラに圧された志保は、速攻折れた。

「ありがとう、それじゃあまずは倒れていたのは、空腹が原因? 誰かにやられたとかじゃなくて?」
「情けない話だけど、資金も尽きちゃってね。日雇いで仕事も探していたけど、何故かどこ行っても断られたし」
「いやそりゃあ、あんまり広くもない町で見かけたことない人が、黒いフード付きのコートで日雇いさせてくれって言ったら大体は警戒されそうだけど……」
「それに罰金、入場料? だとかでほとんど全財産取られるなんて、想像もしてなかったから」
「え、なんの?」
「勝手に敷地内に足を踏み入れたとのことで、よくわからない黒服たちに絡まれてね。明らかに怪しかったけど、変に抵抗して返り討ちとかにでもしたら、問題になりそうだったし」
「それって……エミリー組かなぁ」

 昔からこの辺りには魅梨音組しかそういう世界の者たちはいなかったが、最近になって妙な団体がこそこそしているという話は耳にしていた。エミリー組とか言う名前で組長が異国の者、そして組員は少人数ながらも曲者揃いだということ。
 魅梨音組としては見過ごせない存在ではあるが、静香が組を継ぐことになったりとごたついている現状では、下手に手を出しては不味いことになる。そのせいで、中々調査すらできずにいた。

「エミリー組?」
「うん、このあたりの、まぁそっちの筋の団体。そういう意味じゃウチと変わらないけど、エミリー組の厄介なのは、ウチと違って志保みたいな一般人にも手を出すってところかな。だからまぁやっていることは、不良とかチンピラと変わらないよ」
「え、ちょ、ウチと変わらないって……そういえばこの屋敷は?」
「あ、そっか、志保は知らなくても仕方ないか。ウチは魅梨音組、私は静香お嬢の子分」
「……私がここに連れてこられたのは、もしかして」
「今のところ、志保に危害を加える気はないから安心して。ウチへの害になる存在だったら、残念なことに話が変わってきちゃうけど」

 頭を掻きながら笑う未来に、志保は引き攣った笑みを返した。志保からすれば、笑えねえよという状況である。助かったかと思いきや、ライオンの檻の中にでも放り投げられていた気分だ。
 つまりはこの質問、もし何か一歩間違えれば一気にピンチである。

「志保がここ数日、何か聞き込みをしているって噂があったわけで。例えば、もしそれがウチを探っているとかだったら、申し訳ないけどしばらく拘束させてもらうことになるかな」
「拷問、とか?」
「うえぇ!? そんなこと私はしないよ。あぁいうのは、するのもされるのも辛いんだから」
「どちらにしろ、私は魅梨音組やエミリー組の存在すら知らなったのだから、あなたたちに害をなす存在ではないことを主張するわ」
「うん、それはなんとなくわかってた。まぁでも、志保を拾ったのが私で良かったよ。ウチにも一部過激派はいるし、エミリー組に拾われたらどうなってたかわからないし」
「私も今、助けてくれたのが未来で良かったって心の底から思っているわ」

 なんとも物騒な町だろうか。志保自身、自分の身は自分で守れるくらいには鍛えているが、それでも空腹時で動けないところを襲われてはひとたまりもないことは容易く想像できる。
 その筋の者とは思えないくらい、穏やかで柔らかい空気を纏う未来に拾われたことは、不幸中の幸いだったと言えるだろう。

「でもね、それなら何を聞き込みしていたのか、そこも一応聞いておきたいかな。他の人からしたら、目的の人物を無駄に逃がしたってことになりかねないし。まぁ実際聞き込みされた人たちに訊いても良いんだけど、せっかく本人が居るんだしね」

 未来の言葉は、無理矢理言わせようとするものではなかった。拒否をされたらされたで、後々聞き込みを受けた人物から訊こうという感じだ。
 聞き込みをしていた内容、理由、それは志保の核に関わること。聞き込みの際でさえ、詳しく事情は話してもいない。
 けれどもそれは、隠しているわけでもない。それに命を救われた未来に、恩を抱いている事実もある。
 志保は少しだけ間を置いて、コートのポケットから一枚の写真を取り出した。

「人を探しているのよ」
「人探し?」
「えぇ、この写真の男性。私の父親なの。もうずっと前から行方不明で、正直諦めているのもある。だからせめて、この人がどこでどんな最期だったのか、それを知りたくてあちこち旅みたいなものをしているのよ」
「……そっか、ごめんね」
「謝らなくていいわ。町の人に聞き込みをしていたのは、この人物を見たことはないかっていうこと。だから、改めて言うけれど、あなたたち魅梨音組に何かしようっていうわけじゃない」
「うん、うん……よし! 志保、今日泊まっていっていいよ!」
「は?」

 唐突に立ち上がり、そうだそれが良いと目をキラキラ輝かせる未来。
 何がどうなってそういう思考になったのか、志保は口を開けたまま一瞬ストップ。

「いやさすがに、そこまでお世話になる気は……」
「さっきお金ないって言ってたでしょ? ここ数日食事もまともにしてなかったんなら、お風呂もじゃない? それで次の町まで持つ?」
「ぐっ……でも、同情は――」
「同情とかじゃなくて、私がそうしたいって思ったからそうするの。私の我侭だよ。それにできれば、志保にお願いしてみたいこともあるし」
「そんなこと言われても……って、お願い?」
「うん、実は――」





◇◇◇





「シズ、元気ないな」
「ジュリアさん……」
「未来のことか?」

 ジュリアの問いに、静香は俯いたまま無言を返す。何も言わないということは、そういうことなのだろうと察した。
 やや重苦しい空気が、今はジュリアと静香しかしないこの静香の部屋を包んでいる。
 静香は何をするわけでもなく、ただ座ったまま。

「あたしで良ければ、話くらいは聞いてやれるぜ? シズにしろ未来にしろ、短い付き合いじゃないんだ。何か思うことがあるなら、あたしにぶつけてみろよ」
「……昔みたいに接して欲しいって言ったら、断られました。他の者に示しがつかないって」
「そんなこと言っちゃ、あたしは未だにシズのことシズって呼んでるし。お嬢って呼んだ方が良いか?」
「いえ、そのままで構いません。そもそも、突然こんなことになって、継ぐことになって、ただでさえ混乱しているのに。それなのにジュリアさんまで未来みたいな態度になったら、正直辛いです」
「ん、まぁ他のみんなの前じゃ一応気を付けるとしよう。でも、未来も頑なだなぁ」

 普段の未来からは想像できないことではあるものの、静香に関わることには全力以上の未来だからこそでもある。ジュリアはそんなことを思いながら、目の前で落ち込む静香を見つめた。
 他の者に示しが~というものの、未来の態度がお堅いのは今に始まったことではない。もう随分前からだ。

「いつからだっけ、未来がシズに敬語とか使うようになったの」
「それは多分……」

 静香は今朝の夢を思い出す。
 あの出来事以降、未来は静香に対して大きく変わった。態度も言葉遣いも、何もかも。

「私が悪いんです。きっと未来は、恨んでいると思うから。ううん、恨まれても仕方ない」
「……は? 未来がシズを? なんだそのありえない話は」
「ありえないって――」

 話を遮るように、障子の外から「失礼します」との声。まさに今話題にあがっていた、未来の声だ。
 ジュリアも静香も、どうぞと声をかけると未来が志保を連れて入ってくる。

「えっと、どちら様?」
「お、さっきの子じゃん」
「北沢志保です、先ほどはどうも」
「お嬢、ジュリアさん、ご相談なんですけど……志保を一週間くらいウチで雇おうかと。住み込みで」
「はぁ? なんでだよ未来?」
「聞けばエミリー組にお金を取られて、働き口にも困っているとのことで」
「あのなぁ、ウチは就職先を案内する場所じゃないんだぞ? それにこの子、志保って言ったっけ? ウチがどういうところか、わかってるのか?」

 ジュリアが未来を睨むと、未来は何も言わずにジッと見つめ返す。
 数秒して、ジュリアが大きなため息を零した。

「シズ、いいか?」
「え!? わ、私はその、よくわからないけど、未来とジュリアさんが決めたのなら別に」
「だってよ未来、志保。他のやつらには、あたしから説明しとく」
「いえ、私が後で説明します。今から志保に、いろいろと教えるんで。その後にでも、紹介してこうかなと」
「ん、わかった」
「はい、それでは失礼しました」

 一礼をする未来につられるように、志保も軽く頭を下げて、部屋から出て行った。

「……なんだったんでしょうか」
「いくら未来でも、何の考えもなしにあんなことはしないだろう。後であたしが訊いておくよ」

 万が一ただ厄介事持ち込んだだけって言うのならぶん殴っておく、と冗談交じりに言うジュリア。
 静香は思わず、苦笑いを零した。
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