絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

ラバート~おまけ~

未来と静香のみらしず。
『ラバート』シリーズの後日談のようなもの。蛇足的おまけ。です。

 1.理由


 未来と恋人同士になって、しかも、その……えっちなことまでしてしまってから一週間以上が経過していた。
 勢いとかその場の空気とか、そういうのも勿論あったとは思う。それでも、中途半端な気持ちだったわけではない。そんな半端な気持ちだったら、あんなことはしない。だからこそ、ふと思い返してみると、気になることがある。

「ねぇ……未来はどうして、私を好きになったの?」
「ふぇ?」

 さすがに唐突すぎた質問だったか。目の前で冷蔵庫から取り出した牛乳を飲んでいた未来が、ぽかんとした表情で気の抜けた声を漏らした。
 一応、周囲に誰もいないことは確認したしシアターの給湯室だし、大丈夫かなと思ったけど。大丈夫云々の前に、いきなり脈絡もなさすぎた。

「突然どうしたの?」
「どうしたっていうか、純粋な疑問よ。だって私よりも魅力的な人はたくさんいるし、特にここはトップアイドルの先輩たちだっている中、なんで私なんだろうって」
「……それ、そっくりそのまま静香ちゃんにお返ししたい質問だよ。今でも夢みたいって思うもん、静香ちゃんが私とその、えっと……こ、恋人同士なんて。でへへ~」

 未来は嬉しそうに、けどちょっぴり照れ臭そうに笑う。
 あぁもう、いちいち可愛いわね。なんだろう、未来のことはもちろん可愛いとは前から思っていたけど、恋人になってからというものの今までの可愛いとは少し違う感覚だ。上手く言葉で言い表せないけど、とにかく可愛いことは確かだ。星梨花のような存在とは、また違った可愛さ。
 でもそうか、そう言われると私もどうして未来を好きになったのか。そういう対象として意識したのは、もちろん未来の告白からだけど。そもそもある程度の好意を持っていなければ、その場で拒絶していただろう。
 改めて考えると、不思議なもので。
 未来と私は、まったくタイプが違う。以前、奈緒さんや志保にも面白いとか不思議だとか言われたことがある。性格も考え方も、何もかもが違っていて。似ているところなんて、正直何一つないんじゃないかっていうくらい。それなのに、いつの間にか一番近いところにいて。未来がばかをするたびに、私はため息を零して。手のかかる存在なのに、放っておけなくて。

「でも改めて言われると、難しいなぁ。静香ちゃんの好きなところを挙げ出したらきりがないけど、どうしてって言われると……うーん。でも、きっかけは最初だったんだと思う」
「最初?」
「うん、静香ちゃんと初めて出会ったとき。覚えてる?」
「そんな何年も前の出来事とかでもないし、そりゃ覚えてるわよ」

 学校の屋上でダンスの自主練習をしていた私と、部活の洗濯物を干していた未来。今でも忘れないし、今後もずっと忘れないと思う。

「あのとき、静香ちゃんの踊っている姿を見て、今までの人生で一番衝撃だったくらい心が掴まれちゃったんだ。だからきっと、気付いてなかっただけで、あの時点で私は静香ちゃんに一目惚れしちゃってたのかもね。だからどうしてかって訊かれると難しいけど、静香ちゃんと出会ったから! それが一番の理由かなっ」
「……それ、理由になっているのかしら」
「えーそんなこと言ったら、静香ちゃんはどうなのー?」
「私は……」

 可愛らしく頬を膨らませて、そう訊ねてくる未来。
 出会ったから、か。
 思えば初対面の人にお説教をした相手なんて、今までで未来くらいかもしれない。多くの部活を掛け持ちして雑用をこなしている未来は、なんだろう……そのときから放っておけない空気があったのかも。
 最初は春日さんって呼んでて、でもすぐに未来って呼びたくなって。
 私が悩みに悩んだアイドルへの道を、未来は即決までして。しかも、今まで入っていた部活を全て辞めてきて。
 そんな私とは全く違う未来に、もしかしたら私も、割と早い段階から魅かれていたのかもしれない。
 未来と出会ってから、振り回されることが多くなった。ため息を何度零したかわからないし、何度お説教をしたことか。
 けれども、それ以上に……楽しいって思えるようになった。
 まるでモノクロの世界にいろんな色のペンキが入ったバケツをぶちまけたかのように、私の視界は明るくなった。
 レッスンは楽しんでいいことだなんて、考えたこともなかった。帰りに寄り道をして食べるコロッケが美味しいだなんて、知らなかった。
 いつだったか志保に、未来が他の人と楽しそうにしている姿を遠くから眺めているときの私の顔は、捨てられた犬みたいな顔だと言われたことがあった。
 あぁ、今思うと、そのときにはもう私は惚れちゃってたのかもしれない。

「静香ちゃん? どうしたの?」
「えっ、あ、ごめんなさい」

 考え込み過ぎていたせいか、未来が小首を傾げて見せる。
 えっと、なんだっけ。いつから未来を好きになった、だっけ。って、違う。元は、どうして好きになったかだった。
 考えすぎて、途中から少しずれちゃってた。
 どうして好きになった……そんなの、難しい。言葉に言い表すには、どういう言葉をチョイスすればいいかわからないし。単純に好きなところを挙げるなら、多すぎるし。
 だから、少しずるいかもしれないけど。

「未来を好きになったのはね」
「うん! なになに~?」
「……ふふっ、秘密」

 悪戯っぽく笑って見せて、誤魔化した。

「えぇ~!? 酷いよそれはっ! 私はちゃんと言ったのにぃ!」
「ほらほら、そんなことより未来。口の周りに牛乳つきっぱなしよ。とってあげるから、動かないで」
「ぇ、うん――~っ!?」

 話を逸らすついでに、口の周りについた牛乳をぺろりと舐めとってやった。
 ちょっとキザったらしいかもしれないけど、以前に真さんが少女漫画片手にこういうシチュを熱弁していたからアリではあるはず。きっと。
 未来は顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えている。
 きっと今の私も、慣れないことやっちゃった分、未来に負けず劣らず赤いことだろう。
 舌に残るほんのりとした甘さが、とても牛乳の甘さとは思えないくらい、甘く感じられた。



 2.もやもや


 静香ちゃんが他のみんなにも優しいのもわかっていたし、そういうところも好きだって思っている。そのはずなのに、思ったよりもずっと心がもやもやーってしていることに気付いた。
 静香ちゃん曰く演技だし頼まれたからということだったが、それでも瑞希ちゃんに告白しているシーンを目の前でされてしまったのだから、そりゃあ私だってもやもやしちゃうもの。

「えっと未来、怒ってる?」
「怒ってないもーん。ジュリアさんに壁ドン告白やってもらったし、別にいいもーん」
「明らかに不貞腐れてるじゃない……」
「え、何? 夫婦喧嘩?」
「おいこら翼、人にやらせておいて放置すんな」

 私と静香ちゃんの様子を嗅ぎ取った翼が、楽しそうに寄ってきた。翼に壁ドン告白を何度もやらされていたジュリアさんは、明らかに疲労がたまった様子だ。いや、私も一度やってもらったけど。静香ちゃんももやもやしてくれないかなとか思ったりしたけど、まったく動じてなかったように見えた。むぅ、恋人ならもうちょっとこう、なんか。

「夫婦喧嘩なんかじゃないわよ」
「え~? じゃあなんで未来、不貞腐れてるの?」
「別に~不貞腐れてなんかないよ。静香ちゃんが瑞希ちゃんに告白してたからとか、別にそんなことはないもん」
「いや、それほぼ言ってるじゃない……」
「じゃあ未来も、静香ちゃんに告白してもらえば良いんじゃない? ついでにジュリアーノみたいに、壁ドンも!」
「何言ってんだ、翼。あとジュリアーノはやめろってば」

 翼の提案に、ハッとなる。
 そうだ、私だってやってもらえばいいんだ! そうしたら、このもやもやも、晴れるかもしれない。
 うん、やってもらおう!
「静香ちゃん!」
「きらきらした目と希望に満ちた声で言っても、しないわよ?」
「えー静香ちゃん、やってあげなよー。ほら、未来ずっと不貞腐れたままになっちゃうよ? それでもいいの?」
「あーあーシズ、いっそ諦めは肝心だぞ」
「ぐっ……」
「だめ? 静香ちゃん?」
「くはっ!?」

 以前教えてもらった、翼直伝のおねだり方法。
 効果はどれくらいかわからないけど、何故か静香ちゃんは変な声を上げて少しだけのけぞった。あ、あれ? だめだったかな?
「わかった、わかったわ未来。ただし、一回だけよ?」

 と思ったら、大丈夫だったみたい。
 それじゃあ私は壁際に寄った方が良いから、えっと――
「未来」
「きゃっ!」

 一瞬だった。
 私が後ろに目をやって、壁に背中をくっつけないとなんて思った次の瞬間には、迫り寄った静香ちゃんに壁へと背を叩きつけられた。
 叩きつけられたはずなのに痛みがない。あれって思ったけど、すぐにその理由はわかった。背中に、静香ちゃんの右腕が回されていたからだ。
 そのせいか、思っていたよりもずっと近い。壁を背に、静香ちゃんに抱き締められているような感じ。
 翼とジュリアさんが「おぉっ」と声を上げていたけど、正直私はあまり余裕がなかった。翼とジュリアさんは静香ちゃんの後ろから私たちの様子を眺めている感じから、静香ちゃんの表情は見えないだろう。
 けど、もちろん私からは見えているわけで。
 ほんのりと頬がピンク色で、それでいて目が真剣で。歌っているときの静香ちゃんくらい、格好良い。思わず、言葉が何も出ないくらい。
 ど、どうしよう。
 あとたった数センチもない、お互いのどちらかが少しでも顔を動かせば鼻と鼻がぶつかってしまうくらいの距離。

「好きよ、未来。愛してる」
「っ!?」

 たった数文字の言葉に、体の熱が上昇していくのがわかる。静香ちゃんの目がまともに見れない。
 視線を外すと、まるでそれを許さないといったように、背中に回された腕にぎゅっと力が込められた。
 びくんって、体が震えた。
 自分でやって欲しいってお願いしたのに、恥ずかしくて嬉しくてでもやっぱり恥ずかしすぎて。そんな感情が、ぐるぐる胸の奥を暴れまわっている感じ。

「し、静香ちゃん」
「……未来」

 さっきから、名前を呼ばれるだけで体の芯が震える。大好きな人に名前を呼ばれることが、こんなにも嬉しいことなんて思いもしなかった。
 静香ちゃんが目を閉じるから、私もつられて目を閉じる。
 数秒もしないうちに、柔らかい感触が伝わるのは分かりきっていて――って!
「は、はい! ありがとう静香ちゃんもう大丈夫だから!」
「あっ、えーっと……そ、そう? それならよかったわ! ええ本当に!」

 寸前で、思い出す。翼とジュリアさんが見ているという事実を。
 あっぶない! 二人の前で、普通にちゅーしちゃうとこだったよ!
 静香ちゃんも明らかに今思い出しましたって顔してるし、あーもう本当危なかった。

「すごーい静香ちゃん! 格好良かったよ!」
「シズの演技、凄いな。歌だけじゃなくて、演技力もか……あたしも頑張らなきゃな」
「い、いえそんなことは」
「でへへ、ありがとう静香ちゃん」
「ねぇジュリアーノ、もう一回私に壁ドンして!」
「なんでだよ! もうやらないよ!」

 ぎゃあぎゃあ騒ぎ始めたジュリアさんと翼。
 それを苦笑い気味に見ている静香ちゃんの耳元へ、そっと一言だけ。

「また後でね」

 すると静香ちゃんは、何も言ってはくれなかったけど、少し気恥ずかしそうに顔を背けた。
 いつの間にか、私の中にあったはずのもやもやは、すっかり消えてなくなっていた。
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