絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

ラバート2

みらしず。
もうちょっとだけ続くんじゃよ。


 最近、何故か未来が逃げる。
 最初はたまたま間が悪かったのかと思ったけど、ここ一週間は目が合うことすらほとんどない。目が合ったかと思えば、顔を真っ赤にしてその場からダッシュで逃げていく。
 原因がはっきりしているなら、まだ良いのだけど。あいにくと私には、心当たりが一切ない。怒っている様子でもないし、何かを言いたそうにしているわけでもない。普段わかりやすいくらい態度に出る未来だからこそ、顔を真っ赤にして逃げるというのはきっとそのままの意味があるのだろう。
 けれどやっぱり、どれだけ考えても、わからないものはわからない。
 誰もいないシアターの観客席、その最前列の一席に腰をおろす。ぽふんとした良くも悪くもない感触が、お尻に返ってきた。

「はぁ、どうしたものかしら……」
「静香はいつも何かに悩んでいるような気がするけど、そんなに毎日悩んでて疲れないわけ」
「放っておいてよ。これが私なんだから、仕方ないでしょう。それにできれば、もちろん悩みたくなんてないわよ――って、志保!?」

 独り言のはずが、何故か会話になっていた。驚いて声のした方を振り向くと、そこにはもっと驚くべき要素、志保が真後ろに突っ立っていた。
 なんか少し、呆れ顔だけど。ちょっと腹立つ、その表情。馬鹿にされている感じがする。

「なんで志保が、ここに居るのよ」
「居たら悪い? それにその言葉は、静香にも言えることだわ」
「っ……なんでそう、毎回喧嘩腰で……いや、やめるわ。そうね、私はまぁなんとなくよ」

 正直、志保とここで口喧嘩する元気も余裕もなかった。
 思わず、大きなため息が漏れてしまう。
 すると私の反応が予想外だったのか、志保が大きく目を見開いて驚いていた。志保のこんな表情、珍しいわね。余裕があれば、スマホで撮影してもいいくらいだったわ。

「で、今度は何を悩んでいるわけ?」
「何よ、聞いてくれるの? 珍しいこともあるものね」
「今の静香を見て、年少組が心配している。と言えば、わかる?」
「……ごめんなさい」

 悩むにしても、せめて表情や態度に出すべきではない。わかってはいるのに、上手くできない。これじゃあ未来を単純だとか、言えないわね。
 志保はなんだかんだで、面倒見が良い部分がある。もし年少組がどうしたのと訊いてきても、私は誤魔化すだろう。解決しない。それがわかっているからこそ、志保が来たんだ。

「別に、謝罪を求めているわけじゃないのよ」

 ああ、志保は厳しい。相変わらずだ。
 だから、私は志保を頼りにできる。それでいい。
 でも少し悔しいから、志保の方は一切見ない。どうせ志保は私の背後にいて、私が後ろを向かなきゃ顔なんて見えないのだから。

「とは言ってもね、私自身よくわからないのよ」
「何、仕事の話? それとも、ご家族の?」
「どちらかというと、親友の話かな」
「未来?」
「ちょ、なんでそこで速攻で未来の名前が出てくるのよ!」
「あなたの親友と言えば、真っ先に出てくる名前でしょう? それにここ最近の未来の態度を見れば、未来がおかしいことくらいわかるわ」

 何かおかしいことでも言ったかしらといったような顔の志保に、思わず言葉に詰まる。た、確かに未来と一緒に行動することは多いし、未来とはプライベートも仲良くしていると思うけど。
 なんとなく、気恥ずかしさがある。
 だけど、間違ってはいない。未来のことで悩んでいるのだから。
 だからいっそ、志保に正直に話してみることにする。未来がまともに会話どころか、目も合わせてくれないこと。顔を赤くして逃げられること。怒っているとかそういうわけでは、決してなさそうなこと。そして私自身に、何も心当たりがないということ。
 時間にしては数分も喋ってはいないけど、全部ぶちまけたからか、少し気持ちが軽くなった。
 話を聴いている間、黙ったままの志保。今も黙ったまま。ちょっと、せめて何か言ってくれないと、なんか嫌なんだけど。

「志保、なんで黙ってるのよ。何か言ってよ」
「なら言わせてもらうけど、あなたたち仲良いのよね? 素直に訊けばいいじゃない、本人に」
「でも、未来にとって言いたくないことかもしれないし」
「言いたくないことなら、訊いたときに黙るでしょ? それに訊かれたくもないのなら、せめて訊かれないよう隠す努力をするべきだわ」
「未来は素直だから、態度に出ちゃってるのよ」
「どのみち、その状況が一週間も続いているなら、何か行動しないと変わらない可能性高いわよ」
「そう、よね……うん、そうね。ありがとう、志保。もし私と顔を合わせるのが嫌なら、メールでも電話でもいいし、訊いてみるわ」
「まぁ無事に解決することを祈っておいてあげる。それじゃ」

 早めに解決しなさいよ、と言い残して志保の去っていく足音をそのまま聞いていた。
 うん、ありがとう、志保。
 さてと、こういうのは勢いが大切だ。時間が経つと、決心が鈍ってしまう。だから携帯電話を取り出して……電話は出てくれるかわからないし、メールにしましょう。できれば会って直接話すのが一番だから、未来の次の休みを聞きましょう。そして私のオフと重なれば、それで。



◇◇◇



「こっち、ここが私の部屋だよ」
「へぇ、意外に綺麗にしてあるのね」
「私これでも綺麗好きだもーん。あ、てきとーに座っちゃって大丈夫だから」

 私がそう言うと、静香ちゃんはベッドに背中を預けて床に置いてあるクッションに腰かけた。
 あぁもう、なんでこうなっちゃったんだろう。
 静香ちゃんからメールが来たのが、五日前。たまたま今日、オフが重なっていたのもあって、会いたいと言われたわけで。正直今の状態の私からしたら、断りたくて仕方なかった。けど、馬鹿だって言われる私でも、最近の周囲の空気は感じている。みんな私の静香ちゃんへの態度に、心配している。
 このままじゃいけない、って思った。
 それまではよかったのだけど……実際にこうして会ってみると、以前まではどうやって話していたんだっけといった感じになってしまう。
 なんとなく、普通に会話できているようにも思えるけど、あたりさわりのない会話しかしていない。
 正面に座ると恥ずかしいから、とりあえずベッドに腰かける。こうすれば距離としては近いけど、床に座っている静香ちゃんとベッドに座っている私では、目線がそう合うことはない。

「……ねぇ、未来。訊きたいことがあるのだけど、いい?」
「え、ぇっと、何かな?」
「そのね、最近の未来、なんだか私を避けているように思えるのだけど。私、何か未来を困らせるようなこと、したかしら? ごめんなさい、もし何かしたのであれば、それは本当なら自分で気付かなきゃいけないって思うんだけど。どうしても、心当たりがなくて……」
「うえぇぇぇっ!? ち、違うよ! 静香ちゃんは何もしてないしむしろ私がしちゃったっていうかあああああ違うの何もしてないよ本当だよ!?」

 静香ちゃんがあまりにも真剣な声色で言うものだから、慌てて訂正。するつもりが、思わずするっと口が滑っちゃった。
 まずいまずいこれはまずい、静香ちゃんならきっと――
「え? どういうこと? 私、未来に何かされたような覚えもないけど」

 ですよねーそう訊き返してくるよねぇ。
 きょとんとした表情で、こちらを見上げる静香ちゃん。反射的に、顔をそらしてしまう。

「ほん、ほんとっ、なんでもないから!」
「なんでもないってこと、ないでしょう。その態度、未来は嘘がつけないもの」
「うぐぅ……」
「だからこそ、わからないのよ。嫌っているとか怒っているとかだったら、そもそも嘘がつけないから家に呼んでくれたりもしないでしょうし。それに未来の態度的に、なんていうか、そういう雰囲気でもないし」

 そりゃあ嫌ってなんかない。むしろ、真逆だからこそなわけで。
 けどきっと、静香ちゃんはそんなこと、思いもしてないだろうな。静香ちゃんは、そういう子だ。
 うぅ~どうしよう、なんとかしなくちゃいけないとは思っていたけど、どうすればいいのかわからない。
 よっし試しに静香ちゃんの方を、背けていた顔をゆっくり動かして、見てみよう。

「って、わひゃあ!? し、静香ちゃん!?」
「ちょっ!? 突然大声で何よ?」
「近い近い近いよ!」

 いつの間にか、静香ちゃんまでベッドに腰掛けていた。少し動けば肩と肩が触れ合っちゃう、そんな距離。
 今の私に、耐えられるはずもない距離で。

「顔が赤いけど、本当何なの? 私が近付くとダメなの?」
「ダメだけど嬉しいのだけどやっぱりダメ!」
「えぇー……よくわからないのだけど」
「うぅ~、恥ずかしい」
「ねぇ未来、何かあるのならはっきり言って欲しい。私は、その……未来のこと大切な友人だって思ってる」
「静香ちゃん……」
「未来が悩んでいるのなら、相談に乗りたいし力になりたい。未来が私に不満か何かあるのなら、遠慮しないで言って欲しい。大丈夫、怒ったり茶化したりしないから、ね?」

 静香ちゃんの声が、目が、あまりにも真剣だから。私のことを本当に思ってくれているんだっていうのが、伝わってきて。
 だからかな、恥ずかしいはずなのに、今でも顔は熱くて仕方ないのに、それでも静香ちゃんから目を逸らすことができなかった。
 いつだって優しい静香ちゃんだから、きっとどんな私でも受け入れてくれるような気がして――
「あのね、静香ちゃん」
「うん、何?」
「私、実はね――って、言えないよおおおぉぉぉ!?」
「きゃあ!?」

 あっぶない、空気に流されて言っちゃうところだった!
 いやいやだって、いくら静香ちゃんでも「実は静香ちゃんのことが大好きで静香ちゃんのことを考えて一人でえっちなことしてました」なんて、言えるか! 絶対嫌われるよ、ドン引きされちゃうよきっと!
 慌てる私とは対照的に、静香ちゃんの表情はどこか沈んだ様子。あ、あれ? なんでだろ?
「そう、わかったわ……どうしても私には言えないっていうのなら、きっと言えないだけの理由があるのよね。今日はごめんなさい、時間をもらっちゃって」

 そう言って、立ち上がる静香ちゃん。
 待った、これ明らかにバッドコミュニケーションだよね。そう思うと、考えるよりも勝手に体が動いていた。いつの間にか、静香ちゃんの腕を掴んでいた。静香ちゃんは驚いた様子で、けれど何も言ってこなくて。ただ私をジッと見ている。
 そうだよね、今まで避けるようにしていたのに、いきなり腕を掴んだり。静香ちゃんからしたら、本当にわけわからないと思う。きっと私が思っているよりも、ずっと困らせちゃっているだろうな。

「ごめんね、本当にごめん、静香ちゃん」
「未来、別に無理に言おうとしなくてもいいのよ?」
「ねぇ静香ちゃん、さっき私のことを大切な友人だって言ってくれたよね。だとしたら、私はきっと静香ちゃんを裏切ることになる。傷付けちゃうかもしれない」
「どういうこと? 未来……たとえ何があったとしても、私じゃ力になれないかもしれないけど、私は未来の友人よ」

 友人、か。とってもとっても嬉しいけど、ちょっぴり複雑だなぁ。静香ちゃんは私が何かに巻き込まれているとでも思っているのか、心配そうな目をしている。本当、優しいよね。だからかな、いつからなんてわからないけど、やっぱり静香ちゃんのことが好きなんだなぁって思う。
 思わず、でへへって笑っちゃう。

「ありがとう、静香ちゃん。そしてやっぱりごめんなさい、私は静香ちゃんのこと、大好きなんだ」
「……えっと、何がごめんなさいなの?」

 あぁそっか、私結構普段から静香ちゃんに大好きーって抱き着いたりしていた気がする。

「好きの意味が、違うことかな」

 そうだ、別に静香ちゃんのことが好きで一人でえっちなことしてましたってこと伝えるんじゃなくて、大好きって思いだけ伝えればいいんだ。
 それで嫌われちゃったら、うん、しょうがないかな。悲しいけど、辛いけど。絶対泣いちゃうと思うけど。
 思いを伝えるくらいしないと、きっと今のこの悪い状況を変えられないと思うから。

「意味が違うって、私と未来で?」
「うん、私はね、静香ちゃんのことが大好き。親友としてじゃなくて、それ以上の意味で」
「え、ちょ、えっ、えぇっ!? み、未来!? じょ、冗談とか、じゃなくて?」
「冗談ならここ最近こんなに悩んだりしないよぅ」

 いつになく、落ち着きを失っている静香ちゃん。そのおかげもあってか、私は逆に妙に落ち着いていた。もちろん恥ずかしさはあるけれど、言ってしまってすっきりしたのもあって、いくらか気が楽になった。
 今ならちゃんと、静香ちゃんの目を見て話をすることもできる。
 しばらく静香ちゃんは視線を泳がせたり、俯いたり、片手をわたわたと振ったり。ここまで落ち着きのない静香ちゃんを見るのは初めてで、どうすれば落ち着いてくれるだろうかと考える。

「えーっと静香ちゃん、お茶でも飲む?」
「このタイミングで、のんびり飲むわけないでしょうバカ未来!」
「ご、ごめんなさい」
「あー……もう、予想外すぎてどうすればいいのよ」
「私もどうすればいいのかわからなくて、ごめんね静香ちゃん」
「本当、未来はいっつも私を振り回してばっかり」
「……嫌いに、なった?」
「ならないわよ、別に。けど、そうね、未来のことはす、す、好きだけど、正直そういう目でみたことはないというか、考えたこともなかったもの。今は戸惑いの方が、大きいの。その、未来はやっぱり、私とつ、付き合いたいとか?」
「ぅ、ぁ、はい……」

 頭を抱えて、ベッドに座る静香ちゃん。私もそれにつられて、横に座る。
 ホント、優しすぎると思う。普通なら、速攻断るとか突き放されても文句は言えないのに。静香ちゃんは優しい上に、真面目だから、今私のために悩んでくれているんだろう。
 静香ちゃんには申し訳ないけど、そのことがとても嬉しい。私のことを考えて、本気で時間を使ってくれていることが、嬉しかった。ちょっと前の自分なら、こんなこと思わなかったし、こんな感情を知ることもなかっただろうなぁ。
 急かすことなく、ただ静香ちゃんの方を見る。ここで何か声を掛けようものなら、もっと悩みに悩ませちゃいそうだから。静香ちゃんから何か、言ってくれることを待つ。

「……その、ごめんなさい」

 ぽつりと、静香ちゃんがそう零した。頭を抱えていた手を離し、私の方へ向き直って。ハの字眉で、申し訳なさそうな表情とともに。
 うん、わかってた。そりゃあちょっぴり期待をしていなかったと言えば、嘘になるけど。でも当然の返答でもある気もするし、覚悟もあった。よっし、静香ちゃんを送っていかないと。そして一人部屋に戻ってから、うんと泣いちゃえばいい。ここで泣くのだけは、よくない。これ以上静香ちゃんを、困らせちゃだめだ。
 だめだ、ってわかっているけど。

「そ、だ、よね……ごめ、ね」

 わかっているのだけど、上手く声が出ない。
 私がすべきことは、笑って、もう一回謝って、それで次はえっと、えっと。

「あ、違うの未来! ごめんなさいって言うのは、そういうことじゃなくて。あぁもう! ややこしくてごめんなさい」
「ふぇ?」

 両肩に手を置かれ、まっすぐ見つめてきてそんなことを言われる。
 一体何がどう違うのか、今の私にはよくわからなくて思わずはてなマークだ。静香ちゃんの目は力強くて、けどちょっとまだほっぺたが赤くて、こんなときになんだけど可愛いなぁなんて思ってしまう。

「ごめんなさいというのは、この場での返答はできないという意味で……。未来のことが大切だからこそ、軽々しく答えは出せない。考える時間が欲しいの」
「静香ちゃん……ううん、私の方こそごめんね。私は静香ちゃんがそこまでちゃんと考えてくれるってだけで、凄く嬉しい! うれ、し、い……よぉ~うぇ~ん!」
「子ども泣き!?」

 あぁもう結局泣いちゃう。
 嬉し泣きだけど。
 泣いてしまった私を、静香ちゃんが両肩に置いていた手に力を込めてぐっと抱き寄せた。呆れたように、笑いながら。それは反則だよ、そんなことされたらもっと好きになっちゃうし、もっと泣いちゃうよ。

「ほんと、未来はバカなんだから……」

 断られる現実が先延ばしになっただけかもしれないけど、今はこれで充分だよね。
 そう思って、私は甘えるように静香ちゃんのつつましい胸へと顔を埋めることにした。
 
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