絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

千早と真美の共同生活。4

亜美との仲直り編。
 
「亜美と仲直りしようと思うんだ」
「むしろまだしてなかったの?」

 千早が午前で仕事を終えて事務所に戻ってきたら、真美に会議室へと引っ張られ、一言。
 真美と千早の同居生活が始まって、既に一ヶ月が経とうとしていた。それなのに、まだ仲直りしていないかったという事実に、千早は少しだけ呆れた。そんな千早の感情を読み取ったのか、真美は俯き気味に目を逸らす。

「だ、だって仕方ないっしょー。オフが中々合わないし、お仕事でもあっちは竜宮があるからあんまり合わないし」
「それでも全くなし、ってわけではないでしょう? 何度か顔を合わせることもあっただろうに」
「……いざ顔を合わすと露骨にそっぽ向かれて、思ったよりダメージが」

 引き攣った笑みを浮かべながら言う真美を見ると、思っているよりもきついのだろう。千早はそう思うと同時に、一つ疑問に思った。何故、今日仲直りをしようなんて思ったのかということだ。
 千早がそのことを訊ねると、真美はこのままじゃいけないと思うんだと返す。

「いつまでも逃げてちゃ、ダメだって思ったんだ。それにこの一ヶ月、亜美と離れてみて、なんか思っていたよりも……」
「寂しかった?」
「ち、ちがっ!? ちが……わない。うん、やっぱり寂しかった。当たり前だよね、あれだけ毎日一緒に居たんだもん。あ、もちろん千早お姉ちゃんが居るから、楽しいよ?」
「まぁ、仲直りすることはいいことだと思うわ。それで? 私にわざわざ言うってことは、家に呼んで話し合うって感じなのかしら?」
「あーうん……そう、なんだけど」

 真美の言葉の切れが、突然悪くなった。わざとらしく頬を人差し指でかいて、貼り付けただけの笑みを浮かべている。
 なんとなく、嫌な予感がする。千早は踵を翻して、会議室のドアに手をかけた。だが、後ろから真美が抱き付いてきてそれを止める。

「ちょ、ちょっと千早お姉ちゃん! なんで出て行こうとするのさ!?」
「いえ、少し用事を思い出したの」
「嘘だ! 千早お姉ちゃんのスケジュールは、仕事もプライベートも把握してるもん! 何もなかったはずだ!」
「急遽、予定が入ったのよ。一人カラオケに行くっていう用事が」
「それ優先度低いよね!? 真美の話を最後まで聞く方が、大切だって!」

 以前雪歩と会う約束を知らなかった真美が、千早と一つ約束事を決めた。それはお互いの予定を、仕事のこともプライベートのことも、できる限り全て話しておくこと。そうすることによって、お互いの予定が立て易くなるから。という建前で、実際は真美が寂しくて、勢いで決めたことである。
 千早は真美を振り払って会議室を出ようとするが、腹部に力強く回された腕は中々振り解けない。
 これ以上の抵抗をして暴れても、自宅ならともかく事務所の会議室なわけで、あまり騒ぎすぎたら迷惑がかかることは明らかだ。千早はそのあたりを理解しているし、真美は真美で千早のそういうことを気にするであろう性格を把握しているから、結局は千早が折れる結果に落ち着いた。

「で、私にどうしろと言うの?」
「いや、別にどうしろってことじゃないんだけどね。実は今日この後、亜美を家に呼んでじっくり話し合うんだ。あ、もちろん亜美にはメールで連絡済みだよん。分かった、の一言しか返ってこなかったけどねー……」

 自分で話していて凹んでいる真美のことよりも、千早は気になったことがあった。真美が千早の予定を把握しているように、千早も真美の予定を把握している。
 記憶では、真美は午後から仕事だったはずだ。
 そこまで考えて、千早はなんとなく察した。真美の先程の態度と、午後から仕事という事実で。

「……言っておくけれど、私は喧嘩の仲裁なんてできないわよ」
「ち、違うよ! 千早お姉ちゃんに全部押し付けようなんて、思ってない! ただ、その、傍に居て欲しくって。真美は今、亜美が何を思っているのか分からないんだ……。前までは何も言わなくても、なんでもお互いのことを分かっていたと思うんだけど。亜美がなんでここまで怒っているのか、ただ単に不貞腐れてるとかそういうのじゃないと思うんだけど……」
「怖い、というわけね。分からないから」
「……うん。だから千早お姉ちゃんも居て、真美も亜美も大丈夫な日ってことで今日だったんだ。お仕事終わりに、夜でもいいからって思って」

 千早お姉ちゃんには迷惑かけちゃうけど、と少し沈んだ声で話す。それに伴い千早の腹部にホールドしていた腕の力が、緩む。
 千早から背中にぴったりくっついている真美の表情を窺うことはできないが、どんな表情をしているかくらい想像がつく。
 随分と自分勝手だとは思う。そもそも仲がギクシャクしている原因は、真美の行動だ。それに巻き込まれているだけである。だが、最初から拒否することもできた。それをせずに結局、受け入れた自分の意思もある以上、全て真美の責任にすることもできない。千早はそう思った。
 そこまで考えたなら、千早の出す結論は一つしかない。

「……せめてそういうことは、事前に相談をしておいて欲しいわ」
「っ! ご、ごめんなさい……」
「その言葉は今夜、亜美のためにとっておきなさい。夜ってことは、亜美は今日泊まっていく予定? だとしたら、真美が何時に終わるかにもよるけど、先にご飯は作っておくわね」
「ち、千早お姉ちゃんっ! ありがとう!」

 さっきよりもずっとずっと、腕に力が籠められる。千早の鍛え抜かれた腹筋では痛くはないが、少しだけ苦しい。
 千早が振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた真美の顔が見えた。
 千早はまったくもう、と零して苦笑いを返した。





◇◇◇





 今この空間の空気を一言で表すのならば、気まずいという言葉がぴったり当てはまるだろう。
 千早は適当に寛いでもらって構わないと言ったものの、亜美はベッドに腰掛けたままつーんとした態度を崩さない。これには千早も困ったもので、何せ事務所から家まで連れてくる間も、会話らしい会話は一切していない。
 千早からすればどうすればいいか分からず、そもそも真美が戻るまで余計なことを言わない方がいいのかもしれないと思うと、何も話すことができなかった。
 千早がちらりとベッドの方へと視線を向けると、ちょうど亜美もこちらを向いていたのか、目が合った。

「……何も、言わないの?」
「え?」

 先に沈黙を破ったのは、亜美の方だった。

「てっきり、真美から何か言われてるんだと思ったんだけど」
「……私は何も、言われていないわ。ただ真美が帰ってくるまで、亜美をよろしくって」
「ふぅん」
「それに私には、向いていないもの。喧嘩の仲裁みたいな真似。私自身が、できていないのに」
「え?」

 千早の言葉に、首を傾げる亜美。
 一瞬、千早は何かを考え込んでいたようだが、すぐにハッと我に返った。

「ごめんなさい、なんでもないわ」
「千早お姉ちゃん、誰かと喧嘩してるの?」
「……そう、ね。もうずっと、長いこと」
「仲直り、しようとは思わないの?」
「今更ね。そんなことができる時間はもう過ぎてしまったし、どれだけ手を伸ばしても届かないのよ」

 諦めたように笑う千早に、亜美は少し震えた。なんで震えたのかは、亜美自身よく分かっていなかった。
 千早はベッドに腰掛ける亜美の横に歩み寄り、同じように腰掛ける。そしてさっきとは違う、穏やかな笑みを浮かべて、亜美の頭に手を置いた。

「だからね、仲直りはできるうちにしておいた方がいいわ。私がこんなこと言っていいのか、分からないけどね。亜美は真美と、仲直りしたい?」
「……うん、そりゃそーだよ。今までずっと、一緒に居たんだもん。ずっと一緒だったから、お互いに考えていることだって、言葉にしなくたって分かってるって思ってたんだ。けど、今回は……」

 亜美の声が小さく、弱々しいものに変わっていく。千早はこんなに元気のない亜美は、初めて見た。
 それでもゆっくりと、ゆっくりと言葉を紡ごうとする亜美に、千早はただ何も喋らず言葉を待つ。

「分からないんだ、真美の考えていること。何で真美が家を離れようと思ったのか、ただ面白そうだからって理由だけだったら、きっとすぐに飽きちゃって戻ってきただろうし。真美の考えが分からないって思ったら、急に真美が知らない人になっちゃったみたいに感じて……」
「もしかして、そっけない態度を取っていたのは、どう接したらいいか分からなかったとか?」
「……うん」

 真美と気まずい感じになってしまったのを、ちゃんと解消したかった。けれども、真美の考えが分からないのもあって、亜美は酷く臆病になってしまっていた。一番親しい間柄だからこそ、怖かった。どうすればいいのか、分からなかった。
 千早は、そう、とだけ返す。
 そして今日の真美の言葉を思い出す。同じように、分からないと言っていた真美のことを。
 まったく、こんなところまで似ているのね。なんて心の中で、千早は零す。

「ねぇ千早お姉ちゃん、亜美はどうすればいいかな」
「さっきも言ったけれど、私は仲直りの仕方なんて分からないわ。……けど、いいんじゃないかしら」
「え?」
「亜美は真美の考えが分からないって言ったけど、亜美も真美もそれぞれ違いがあって当然でしょう? 全てが同じ人なんて、いくら双子だからってないでしょうし」
「けど、今までは!」
「今までだって、ちょっとした違いくらいあったんじゃない? 遅かれ早かれ、いずれは相手の考えていることが分からないなんてこと、起きていたと思うわ」
「そう、なのかな。でも、それじゃあ亜美はどうすれば……」
「あなたたち双子にとっては、それこそ簡単なことよ」

 その言葉にどういうことなのかと首を傾げる亜美に対し、むしろ何故思いつかないのかといった千早の表情。

「訊けばいいのよ、真美に直接」
「……へ?」

 返ってきたものは、亜美の期待した一発逆転満塁ホームランみたいな、そんな大層な答えではなかった。
 至ってシンプルで、それでいて思いつかなかったものだ。

「亜美と真美に限った話じゃないけど、心が読める人間なんて存在しないのだから、言葉を投げかけるしかないわ。何を考えているの、って」
「え、いや、それはそうだけど」
「きっと近すぎる存在だからこそ、見えてなかったんだと思うわ。普段の亜美や真美は、遠慮なんてしないくらいの勢いで、人に絡んでくるじゃない。それと同じような感じよ、きっと」
「……そっか、そう、だよね。ははっ! そうだよ、何をびくびくしてたんだろう、亜美!」
「いろいろ好き勝手言わせてもらったけど、これが本当に正解かどうかなんてわからないわよ?」
「いやいや、ありがとー千早お姉ちゃん! 亜美、真美にちゃんと訊いてみるよ! あ、あとちゃんと謝らないとねー。ちょっぴりまだ不安だけど……。真美、許してくれるかなぁ」
「ふふっ、ちなみにこれ言っちゃっていいのか分からないけれど、真美も同じような感じに悩んでたわよ。亜美のこと、分からないって」
「マジで!? なんだ、なーんだ、そっかぁ……んっふっふ~」
「だから、大丈夫よ。あなたたちなら、絶対に――きゃっ!?」

 突然ぎゅう~っと抱き付かれ、思わずそのまま倒れ込みそうになる。けれどそこは千早だ、真美との生活で飛びつかれることも慣れているのがあったおかげか、なんとか堪えた。
 すると亜美は顔を上げて、今日一番の笑顔で――

「えへへっ、ありがとう千早お姉ちゃんっ!」
「――っ!」
「よっしゃ、千早お姉ちゃん! 真美が帰ってくるまで、真美がどういう生活しているか、教えて!」
「えぇ、いいわよ」

 さっきまでとは真逆なくらい明るい亜美に、千早は思わず笑ってしまう。
 真美が帰ってくるまで、ずっと喋り続けることになった。



 恐る恐る真美が戻ったときには、予想と違って上機嫌の亜美にそれはもう驚いた。一体何があったのかを、全て聞いた真美。
 無事に仲直りすることはできたのだが、覚悟を決めてきた真美からすればこの覚悟を、想いをどうすればいいのか。

「千早お姉ちゃん、なんで真美が悩んでることまで言っちゃってるのさもうー!」
「……別に口止めはされていなかったし」
「あーもうっ、あーもうー! 千早お姉ちゃんのばかー! けど仲直りできたからありがとう! でもやっぱり、うあうあー!」
「えっと、亜美……私はどうすればいいと思う?」
「んっふっふ~千早お姉ちゃん、真美のご機嫌取り頑張ってね。」
「ええっ!? ちょ、亜美、今度はあなたが助けてくれても」
「ちょっと千早お姉ちゃん、真美の話はまだ終わってないんだかんね!」

 結局、真美と仲直りするために夜遅くまで遊び尽すことになった、千早だった。
 亜美が泊まっていることもあって、今までで一番騒がしい夜だった。





 第4話『ボタン2』
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