絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

千早と真美の共同生活。3

3話目です。雪歩も登場。

「およ? 千早お姉ちゃん、今日は真美と一緒でオフじゃなかったっけ?」

 昼食を食べ終え少しして、どこかへと出かける準備をし始めた千早に真美は首を傾げた。

「今日は萩原さんと、約束をしているのよ」
「えぇっ、何それ真美聞いてないよ~」
「特別言うようなことでもないでしょう。ちなみに、夕方過ぎには戻れると思うわ」

 せっかく千早と遊ぼうと思っていた真美は、露骨に不満気な顔を見せる。予定が崩れただけでなく、自らに一言もなかったのもまた面白くなかった。
 だが千早は、そんな真美に気付いていないのか気付いたうえでスルーをしているのか、準備を進める手を止めることはない。数枚の楽譜と手帳などを鞄に纏めて、あとは軽めのコートを着て家を出るだけだ。
 しかし、いざ家を出ようと玄関の扉に手をやるが、ぐいっと引っ張られる感触。千早が振り返ると、そこにはコートの裾を掴んで離さない真美がいた。ジトっとした目つきで、恨めしそうに千早を見ている。
 さすがにこれでは、無視して出ていくわけにも行かない。千早はため息交じりに、さてどうしたものかと考える。
 真美を連れていくか、もしくはいっそ雪歩を家に招待してしまうか。元から外出して雪歩に会うのは、家に真美がいるからという理由があった。一人暮らしを望んでいた真美なのだから、たまのオフくらい一日をほぼフルで一人を体験させてあげようと考えたのだ。
 だが、真美自身がそれを拒否しているわけで。それならば、別に外で会う必要はない。

「行ってくるわ」
「ぅー……」
「萩原さんを迎えに、ね。さすがに萩原さんに、急遽変更私の家に来てなんて失礼でしょう。せめて迎えに行かないと。だから戻ってくるまで、おとなしく待っていなさい」
「っ! うん! さっすが千早お姉ちゃん! 愛ちてるぜぃ!」

 さっきまでの不機嫌が嘘のように、ぱぁっと眩しい笑顔で千早に手を振り見送る真美。
まるで大きく尻尾を振る子犬みたいね、なんて思いながら千早は携帯電話を取り出す。そして慣れない手つきで、雪歩へとメールを作成し始めた。



◇◇◇



「お邪魔しますぅ」
「ただいま、真美」
「おかえりー千早お姉ちゃん! そしていらっしゃい、ゆきぴょん! ようこそ、千早お姉ちゃんと真美のあだるてぃーな愛の巣へ!」
「あ、愛の巣!? 千早ちゃん、なんで言ってくれなかったの! それなら私、お祝いの品買ってきたのに……」
「こら真美、馬鹿なこと言っていると萩原さんを連れて出ていくわよ。それと萩原さん、その反応はいろいろとおかしいと思うわ」
「さーさー早く!」

 千早のツッコミはさらりと流され、待ちくたびれていたのか、真美は千早と雪歩の手を引っ張って急かす。
 二人は慌てて靴を脱ぎ、真美に連れられるまま足を運ぶ。見慣れたリビングに案内をされ、千早も雪歩もハンガーにコートをかけてから、ゆっくりと腰をおろした。

「ごめんなさいね、萩原さん。今日は急に予定を変更してしまって」
「ううん、大丈夫だよ。えへへ、千早ちゃんのお家、久し振りな気がする」
「そういえばそうかもしれないわね。一緒にinfernoを歌うことになったときは、泊まっていくことも多かったけど」
「あのときはどれだけ打ち合わせしても、したりないっていう気持ちがあったから。だって私、千早ちゃんの歌唱力についていくのもやっとってレベルだったし」
「萩原さん、一緒に歌ったときも言ったけど、萩原さんは卑下しすぎよ。萩原さんの歌には、私にない魅力がある。それを素直に尊敬するし、正直嫉妬してしまうこともあったのよ?」
「うぅ、千早ちゃん……」
「あなたはもっと自信を持つべきだわ。私が言うべきことじゃ、ないかもしれないけど……」
「……ふふっ、ありがとう千早ちゃん」
「ストップすとぉーっぷ! 真美を無視して良い雰囲気作ってるとか、ちょっと見逃せないよ!」

 互いに見つめ合い、穏やかに微笑み合ったところで真美の大声。驚いてびくりと体を震わせる雪歩だが、千早は動じることなく真美にチョップをした。そこそこ力の入ったその攻撃は、真美の額を見事に打ち抜いた。
 おうふっという謎の声を上げて、真美は後ろに倒れる。

「真美ちゃん大丈夫!? ち、千早ちゃん、手をあげるのはダメだよぉ!」
「これも真美の演技みたいなものよ、大袈裟なね。実際は力をほとんど込めてないし、痛くもなんともないはずよ」
「へ? そうなの?」
「ぬおぉぉぉぉふぅぅぅぅ……!」
「ほら、いつもの真美でしょう?」
「私あんな額抑えて猫みたいに丸まっている真美ちゃん初めて見たよ!?」
「そうだよ千早お姉ちゃん! もうちょっとゆきぴょんを見習って、真美を心配してくれてもいいっしょ!」
「って、ええぇっ!? 真美ちゃん、大丈夫なの?」
「んっふっふ~これくらいじゃ、真美は倒せないよ! さあゆきぴょん、共に千早大魔王を倒そう!」

 倒れたかと思いきや、がばっと勢いよく起き上がった。そしてそのまま雪歩の肩を引き寄せ、千早の方へと人差し指をびしっと伸ばす。真美のその様子はまるで、お姫様を守る勇者か何かのようだったが、生憎そんなロマンチックな状況ではない。
 現に千早は、物凄く冷めた目で真美を見つめている。ただ、無言で。ジトッとした、目つきで。
 雪歩にとっては、完全に巻き込まれ事故だ。どうすれば分からず、真美の腕の中でおろおろと千早と真美に視線をいったりきたり。

「もー千早お姉ちゃんがノリ悪いから、ゆきぴょんめちゃ困ってるじゃん!」
「これはあれね、滑ったことを押し付けられた芸人の気分ね」
「うぅ、私はどうすればいいの……」
「ほら真美、萩原さんをあまり困らせないの。それに今日は、萩原さんと真面目な話をする予定だったんだから、あまり茶々を入れないで」

 またふざけた返しをしようかと思った真美だが、千早の声のトーンが本気であったことと、目が笑っていないことから、渋々おとなしくすることにした。
 再び座り、ふぅと一呼吸。
 千早が「ごめんなさいね萩原さん」と言うと「ううん、大丈夫だよ。それであれの相談だよね?」と雪歩は続けた。
 二人の会話の中身が分からない真美は、少しつまらなそうにする。けれど、またちょっかいを出したら、千早に怒られることが分かっている。仕方なく、二人の会話を黙って聞く。好きなゲームをやっていてもいいのだが、せっかく千早と雪歩がいるというのに、一人だけゲームをやっているのは真美にとってなんとなく寂しく思えたのだ。
 千早が数枚の紙を広げ、その内の何枚かを雪歩に渡す。

「……ど、どうかしら?」
「私はもう少し、素直になっても良いって思うよ? 千早ちゃん、多分これ、歌詞ってことを意識しすぎちゃったんじゃないかな。硬い感じがあるというか……」
「どうすればいいのか、よく分からなくて」
「難しく考えちゃうのも無理ないけど、それでもやっぱり、力を抜くことが大切だって私は思うよ」
「えっ、千早お姉ちゃん歌詞書いているの?」
「えぇ、ちょっと仕事で」
「ふーん、どれどれ」

 それはなんとも面白そうな、と真美が身を少しだけ乗り出して二人の間に置いてある紙を覗き込んだ。
 だが、すぐさま千早が机に覆いかぶさるようにして、それを隠した。

「えーと、何やってんの、千早お姉ちゃん。中々にシュールな光景だけど」
「いえ、その、自分で書いた歌詞を見られるなんて、恥ずかしいじゃない……」
「いやいや、ゆきぴょんには自ら見せにいってるじゃん」
「萩原さんはほら、詩を書いているから。素敵な詩を書ける人だから」
「そ、そんなことないよぅ」
「とても素敵な詩を書き慣れている人だから」
「なんで追い打ちかけるの!?」
「でもほら、真美だって何かアディオスできるかもしれないし! 別の視点からの意見って、大切だと思うよん?」
「アドバイス、ね。確かにそうだけど……」
「千早お姉ちゃん、真美を信頼してないんだね……」
「確かに別に信頼してないけど」
「そこは否定してよ!」

 また少しだけ騒がしくなる。
 結局、真美の意見も一理あるということと、絶対に笑わないことを条件に、千早は真美にも自らが書いた歌詞を見せることになった。
 真美にしては珍しく、真面目な表情。思わず雪歩も千早も、黙って反応を待ってしまう。
 少ししてから、真美が沈黙を破る。

「ゆきぴょんの言う通り、ちょーっち硬いねえ」
「くっ……やっぱり――」
「けど、これはこれでアリなんじゃない?」
「へ?」
「ほえ?」

 予想外の言葉に、千早も雪歩も気の抜けたような声が出た。いい加減なことを言っているわけでも、投げやり気味に言っているわけでもないことは、真美の目からよく分かった。だからこそ、何故真美がそう言ったのかよく分からなかった。
 逆に真美は何故千早たちが分からないのか分からない、といったように首を傾げて疑問符を浮かべている。

「どういうこと、真美?」
「んー? だってさ、これいかにも千早お姉ちゃんって感じじゃん。真面目で、まっすぐだけど、どっか不器用っぽい感じ。この歌詞、確かに硬いと思うよ。でもだからこそ、千早お姉ちゃんの性格っぽくて、千早お姉ちゃんらしい歌詞の形になっているように思えるけど」
「け、けど……」
「……うん、真美ちゃんの言うことも、言われると確かにって思うね」
「萩原さん!?」
「真美はこんな感じで良いと思うけどねー。どうせこれがそのまま歌詞になる、ってわけでもないんでしょ?」
「そ、それはもちろん、プロの作詞家の人や作曲家の人と相談して手直しも入るだろうけど」

 本当にこれでいいのかと戸惑う千早だが、真美の言うことは説得力があった。雪歩も納得をしている。
 もちろん、明らかに表現としておかしい部分は直す必要があるだろう。けれど、必要以上に修正をする必要はない。そういう結論に、決まった。真美の言葉で。
 千早は少しだけ納得いかない部分もあったが、真美に「変にいいものをつくろうとか思いすぎちゃったら、それこそ千早お姉ちゃんの本当の言葉じゃなくなっちゃうよ」と言われて、結局納得せざるを得なかった。

「それじゃ、お仕事の相談終わったんだし、みんなで遊ぼっか!」
「まだ終えてないというか、細かい部分の修正くらいはしたいのだけど」
「ふふっ、真美ちゃんはなんていうか、凄いね」
「おぉーゆきぴょんも真美の魅力にメロメロになっちゃった?」
「それを言うならヘロヘロになる、じゃないかしら? 真美と一緒だといろいろと疲れてしまうという意味で」
「んな!?」
「ふ、ふふっ、あはは」

 雪歩は口元を手で少しだけ覆って、笑う。
 そして目の前でじゃれ合う真美と千早を見て、二人の変化を再認識する。今日のやりとりで感じていたことだが、二人は少しだけ変わったように見えたのだ。真美は先程のように、思いもつかなかった視点からの意見や時折真面目な表情を見せるようになった。千早は以前まで、こんな風に自ら冗談を交えて話したりしなかったし、やや表情も姿勢も柔らかくなったように見える。
 二人が一緒に暮らし始めてから、もう二週間ほどが経過していた。
 雪歩はそんな二人を、好ましく思えた。今まで以上に。素敵だと思った。それと同時に、自らももっともっと魅力的になれるよう頑張ろう、なんて心の中で零した。

「そうだよね? ゆきぴょん?」
「ふぇ? あ、あれごめん、ちょっとぼーっとしちゃってたかも。何の話?」
「もう、ぼーっとしすぎだよぅ! ほら、外見れば分かるけど、全ての草木は枯れて乾いた大地が唸りを上げちゃってるねーって話」
「私どれだけぼーっとしてたの!? というか、どれだけの年月が経てばそうなるの!?」
「違うでしょ、真美。萩原さんがもしよければだけど、今日泊まっていくかってお話よ」
「えーっと、それじゃあお言葉に甘えて」
「おー、ゆきぴょんがいれば川の字作って寝れるね! んっふっふ~、真美と千早お姉ちゃんに挟まれて眠るがいい、ゆきぴょん!」
「うちにはそんな、三人一緒に寝れるような寝具はないでしょう」
「限りなくゆきぴょんに密着することによって、可能に!」

 馬鹿言ってるんじゃないのと言う千早と、次々に一緒に寝る案を捻りだしていく真美。途切れることなく発想が飛び出すのは、柔軟な思考を持つ真美だからこそといったところである。
 以前千早の家に泊まったときとは違い、随分と賑やかな夜になりそうだ。これはちょっと、いろいろと覚悟が必要かもしれない。目の前の千早と真美を見て、雪歩はそう思った。

「あ、あはは……」

 そして雪歩は思わず、疲れたような笑みを一つ零した。





 第3話『もっともっと』
アイマス小ネタ+SS | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<千早誕生日おめでとう! | ホーム | 蒼い歌姫おつかれさまでした!>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |