絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

甘くて柔らかい

ハルシュタイン閣下やマコトやイオリやヤヨイでバレンタイン! 寝るまでがバレンタインだから、セーフの時間です! キサラギに対して妄想捏造設定から公式設定まで混じってごちゃっとしています注意。

「裏切りと策謀の闇の天使と呼ばれるヤヨイが、随分と可愛らしいことをしているじゃないの」
「そういうハルシュタイン閣下も、闇の総統にして天才科学者らしくないものをお作りのようなじゃないですか」

 ハルシュタインの言葉に怯むことなく、むしろ簡単に言葉で斬り返す。しかしハルシュタインはそれを反逆だとは、思わない。ヤヨイとはもう、長い付き合いだ。この程度のやりとり、日常の範囲内である。
 ヤヨイはハルシュタインの手にある固形物を見て、ああやっぱり同じ目的だと認識した。ハルシュタインも同様で、ヤヨイの目の前に置かれている物体の存在だけで、全てを理解した。

「……ふむ、ヤヨイ」
「なんですか」
「そこ少し、崩れていない?」
「あ、ほんとだ、ありがとうございます。でも閣下も……ちょっと失礼、うん予想通り、それちょっと甘すぎるんじゃないかなーって」
「やっぱり? 甘いもの好きでも、やりすぎの甘さよねこれきっと」

 さっきまでの黒い空気はどこへやら、ハルシュタインはがっくりと肩を落とす。まぁまだ時間はありますし、とそれを慰めるヤヨイ。
 二人の手元には、お互いチョコ菓子がある。なんてことない、ハルシュタインもヤヨイも目的はバレンタインのチョコ作りだった。
 といっても、既にほぼ完成しつつあった。冷蔵庫で固めていたものを取りに来たところを、たまたま会ったのだ。
 ヤヨイが作ったものは、チョコケーキ。特別装飾に凝っているわけでもなく、どこにでも売っていそうなシンプルなチョコケーキだ。それに対しハルシュタインは、チョコチップクッキー。手のひらサイズの大きくはない袋に、何枚かのチョコチップクッキーがある。一枚はヤヨイが試しに今つまんで食べたので、そこまで枚数に余裕はない。

「マコトさん、そこまで甘いもの好きでしたっけ? 普段コーヒー飲んでいるイメージが強いせいか、甘いもの得意そうなイメージはないんですけど」
「あれは見栄張っているのよ。本当は休日に、こっそりと変装をしてスイーツ食べに行ったりするくらいよ」
「マジですかー……にしても、甘過ぎじゃないですか?」
「せっかくだし作り直して完璧を追及するのもいいけど、もう時間も材料もないのよ。って、私、マコトに対して作っているって言ったかしら?」
「はぁ……ハルシュタイン閣下がわざわざ自らお菓子を作って、しかも特別な日にプレゼントする相手なんて、マコトさん以外ありえないじゃないですか」

 今更何を言っているんだか、とヤヨイは呆れたようにため息を零す。その態度が少し癪に障ったが、ハルシュタインはそれでいちいち罰を与えるほど心狭くない。寛大な心を持って、ヤヨイの頭に手を置き、ぐしゃぐしゃわしゃわしゃー。

「はわっ、ちょやめ、やめてくださいー」
「ふっふっふ、ほらほらーこれからイオリに渡しに行くんだろう? そんな髪で、大丈夫?」
「う、な、何故イオリちゃんだと……!」
「裏切りと策謀の闇の天使様が心を開いているのなんて、私やマコトを除けばイオリくらいだろう? あぁでも、イオリの最も信頼する部下である、エージェントスノーとも最近は打ち解けたんだって? それとアミとマミにも――」
「アミとマミは違う! あんな、仮初の人格のときに接した相手なんて、なんとも……なんとも思ってない!」
「ふふ、口調が崩れているわよ、ヤヨイ。別に良いじゃない、認めてしまっても。私はそれくらい、咎めたりしないわよ」
「っ~! い、イオリちゃんのところ行ってきます!」

 その場から逃げるように去るヤヨイの背中を、にやにやとした笑みで見送るハルシュタイン。
 昔は視線も鋭く、全てを捻じ伏せるかのような威圧感と、けれどもそれと同時に今にも壊れてしまいそうな脆い雰囲気を纏っていた。誰も信じないし、信じてくれなくてもいい。そんな態度のヤヨイだった。
 そのことをふと思い出して、ハルシュタインは声を出して笑う。

「随分と生きている瞳をするようになったじゃない、ヤヨイ」

 イオリの話をするときのヤヨイは柔らかい、アミとマミの話をするときはひたすらムキになって否定をする。
 そのヤヨイの態度が、昔のヤヨイを知っているハルシュタインからすれば、とても嬉しく思えた。
 未だに笑い続けるハルシュタイン。
 まるでこの部屋に一人かのようだが、実際は共同キッチンなため、普通に周囲には多くの部下がいる。というより、最初からいた。ただヤヨイもハルシュタインも、まったく気にしてはいなかっただけで。
 その場に居た部下たちは、皆心から思う。
 なんだかよく分からないけど訊いてもダメだと思うしとにかくこの空間から早く消えたい、と。





◇◇◇





「はぁ、疲れた……とりあえず休憩」

 ぼすんと音を立てて、自室のソファに顔を埋める。本来ならばさっさと着替えてシャワーも浴びてしまいたいところだったが、今のイオリにそんな余裕はなかった。今すぐにでも、眠ってしまいたい衝動に駆られるくらいには、疲れていた。
 アミとマミに敗れてから、常勝の令嬢という称号は崩れ去った。それはプライドの高いイオリにとっては、耐え難い屈辱である。そのため、日々の訓練を、自らを追い詰めるかのように増やしていた。
 毎日体は悲鳴を上げるが、それでも成長を実感できることは嬉しかった。何より、再度チャンスをくれたハルシュタインに報いたかった。
 ハルシュタインの軍は、実力主義の面が強い。実際、イオリも一度敗れただけで、軍法会議で死刑を求められかけた。しかしハルシュタインは、それを許さなかった。次目的を達成させるなら、それでよしとしたのだ。

「次はない、わよね……」

 そうぽつりと零したイオリの部屋に、こんこんとノックが響く。

「誰?」
「イオリちゃん、私。入ってもいいかな?」
「や、ヤヨイ様!? ど、どうぞ!」

 イオリはびくっと体を震わせて、すぐさま起き上がり扉を開ける。
するとそこには、ヤヨイが可愛らしい笑顔で立っていた。お邪魔するね、とそのまま部屋に入る。イオリはこんなことならもっと部屋の掃除をしておけばよかったとか、シャワー浴びておくべきだった失礼になる、なんてことを考えながらどうしようという思いでいっぱいだった。
 さっきまでイオリが顔を埋めていたソファーに、ぽふんと小さなお尻を預ける。安物と違い、しっかりと柔らかく包み込んでくれるかのような感触。

「そ、それでヤヨイ様、一体何の用でしょうか」
「うぅーイオリちゃん、ヤヨイって呼び捨てで良いってばぁ。敬語もいらないよぅ」
「で、でも……」
「ほら、ここはイオリちゃんの部屋だし、誰も見てないよ? だから、ね?」

 数秒、悩んだ後、ヤヨイの寂しそうな表情に押し負けた。

「じゃあ……ヤヨイ。これでいい?」
「うんっ! えへへー」
「もう、満足そうな笑顔しちゃって。こっちからすれば、ヤヨイの名前を呼ぶだけでハラハラドキドキなのに」
「でもイオリちゃん、初対面のとき私に誰よあんたって言ったし、ここはあんたみたいな子どもが来るところじゃないとも言ってたし――」
「あーもうやめてよ! 今思い出しても、心臓止まりそうになるんだから!」

 ヤヨイはハルシュタインとかなり長い付き合いで、なおかつその見た目から想像もできないくらいの腕力も持っている。今でこそ諜報任務に向かうことが多いヤヨイだが、昔は宇宙海賊時代のマコトを腕力だけで捻じ伏せたほどの実力を持っている。それに加えて、神出鬼没な存在から、軍のジョーカーと言われるほどである。ハルシュタインが信頼し、傍に置くレベルだ。
 そのヤヨイに、知らなかったとはいえ、イオリは初対面のときに軽く喧嘩を売った。それは軍をざわつかせるほどの事件になったが、過去のことである。
 今ではヤヨイとイオリは、お互いに親友の仲だ。
 ちょっと意地悪言っちゃったかなと笑うヤヨイと、拗ねたように顔を背けるイオリ。

「で、本当に何の用なのよ、ヤヨイ。あなたが私の部屋に来るなんて、珍し……くもないか」
「大体二日三日に一回は来てるよねー。えっとね、イオリちゃん疲れてそうだし、簡単に言うと……はいこれ!」
「……これ、チョコケーキ?」

 ヤヨイが入って来たときから、イオリは気にはなっていた。手に持っている、白い箱を。ヤヨイが楽しそうにその箱の中身を取り出すと、フォークとチョコケーキがご丁寧にお皿に乗ってあった。
 イオリはきょとんとしたまま、首を傾げている。

「私別に、誕生日じゃないわよ?」
「それくらい知ってるかなーって。今日はバレンタインだよ」
「バレンタイン……あぁっ!? ご、ごめんなさいヤヨイ、私何も用意していないわ……」
「ううん、私が勝手にイオリちゃんにあげたいって思っただけだから。気にしないでいいよ。それより、最近訓練ばっかりしているでしょ? 疲れたときには甘いものだし、これで少しでも元気つけてくれたら嬉しいな」
「ヤヨイ、ありがとう……」
「それじゃ私、行くね。実はまだ、お仕事の途中だったりしちゃうんだ」

 舌をちょろっと出して笑うヤヨイに、イオリは胸の奥が熱くなった。
 ヤヨイは、訓練を控えろともやめろとも言わなかった。それはイオリを信じているからであり、イオリのことを理解しているからだ。何も知らない者からしたら、体を壊すから無茶はだめと一言言ってもおかしくない。
 そしてヤヨイがぱたぱたと部屋を出て行った後、フォークで一切れチョコケーキを口に運ぶ。
 今のイオリには、今まで食べたどのチョコケーキよりも甘くて、優しい味がした。





◇◇◇





「ハルシュタイン閣下、とても光栄だと思います。心の底から、歓喜のあまりに震えを抑えることのも難しいくらいです。ですが――」
「はい、あーんして、マコト」
「せめて人の話を聞いてください!」

 突然ハルシュタインの部屋に拉致られて、しかも椅子に縄でぐるぐる巻きに縛られた。動けないマコトの目の前には、チョコチップクッキーを持っている楽しそうなハルシュタインの笑み。
 よくハルシュタインの考えは誰にも読めないし分からないと言われるが、マコトにとってこの状況は今までで一番謎だった。
 ジトッとした目で睨んでみるものの、ハルシュタインの笑みはその程度では一切崩れない。

「何よぅ、マコト。せっかくのバレンタインなのよ、もっと嬉しそうな顔をしてもいいんじゃない?」
「拉致られて強制的にチョコチップクッキーを食べさせられそうになっている状況、喜べるのはいじめられるのが好きな性癖を持った者くらいでしょう」
「ならマコトじゃない。よく私にもっともっとって――」
「うわーうわーうわー!? 何言ってるの何言っちゃっているのハルカ!?」
「よかったわねぇ、ここが私の部屋で。他の誰かにそんな口調と態度、見せられないでしょう? 私はそれでも構わないけど、あなたの心構え的に」
「っ~!?」

 マコトは、かぁっと顔が赤くなる。
 そして数度、すぅはぁすぅはぁと深呼吸を繰り返す。

「……ハルシュタイン閣下、戯れはほどほどに」
「いや、今更取り繕っても、意味ないわよ」
「取り繕ってなど」
「さっきのマコト、私の科学力を費やした超小型映像記録装置で録画してあるわよ」
「もーもーなんなの何してくれちゃってるの!?」
「いやぁ、マコトがいじめて欲しそうだったからね、つい」
「どのあたりが!?」
「そうね、例えば――」

 ハルシュタインはわざとらしく少しだけ考える素振りを見せて、その後とても意地悪い笑みを浮かべた。

「マコトならその程度の縄、本当は数秒もかからずに脱出できるのに、それをしないところとか?」
「~っ!」
「けどそうね、今はこれを食べて欲しいわ。マコトのために作ったんだから、ね」
「……今はって、食べ終わった後は」
「ふふっ、さぁ? ほらマコト、食べてみて。ヤヨイには甘すぎるって言われちゃったから、もしかしたらあなたの口に合わないかもしれないけど」
「……ありえないよ、ハルカがボクのために作ってくれたんだ。それだけで最高の調味料で、ボクにとって一番美味しい味付けだから」
「マコト、たまにそういうこと言うから、反則」
「本音だからね、二人きりだし」

 互いに一瞬、目を逸らす。少しだけある、気恥ずかしさから。
 そしてすぐにまた視線を交え、笑い合う。
 ハルシュタインがマコトの口にチョコチップクッキーを運ぶと、マコトはそれを一口食べた。
 あぁ、甘いな、思ったよりずっと。そうマコトは思いながら、確かな幸せを感じた。
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