絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

千早と真美の共同生活。2

ちはまみ共同生活2話目。3話目から他のアイドルたちも登場。
「千早お姉ちゃん、ちょっとお話あるからそこに座ろうか」
「私はこれから、晩御飯を食べに行くの。何の用か分からないけど、手短にお願いするわ」
「それだよ! そこだよ! もう逃がさないからね! 千早お姉ちゃん、ずっと自炊してないでしょ?」
「……真美が何を言っているのか、ちょっと理解できないわ」

 真美の言葉に、千早は露骨に目を逸らす。
 そもそも真美が千早を呼び止めた理由が、千早が明らかに嘘をついていることが分かったからである。
 一緒に住んでいるからといって、食事をともにする必要はない。好きな時間に好きなものを食べれば良い、自ら食事を考え作ることも立派な経験になるからだ。私もそうしてきた。のようなことを真美は事前に、千早から言われていた。その言葉に、真美は納得もしていたし、好きなものを食べて良いなんて最高だーとか思っていた。それが三日前、つまり真美が千早と住み始めた初日である。
 しかしこの三日間、真美は千早が台所に立ったところを一度も見たことがなかった。千早は、今日は忙しい、食材を買い忘れたなどと言い訳をしては、程良い時間になると外出をする。そして真美が自らの食事を作った際に感じた、台所の違和感。綺麗なままの調理器具、一部のものはビニールに包まれたまま開けられた形跡すらなかった。
 ここまでくれば、答えは一つしかないわけで。今、千早は強制的に座布団の上に正座させられ、それを真美が立ったままじぃっと睨んでいるという状況だ。なんとも珍しい光景である。千早自身、あんなことを言った手前、自らに非があるのは分かっている。だからこそ、おとなしく従っているのだ。

「真美ね、これでも千早お姉ちゃんのあのときの言葉、結構感動したんだよ? 甘やかしたりしないで、しっかり真美のこと考えてくれてるんだなって。それなのにさぁ、毎日外食っていうのはさぁ……」
「あの、真美」
「ん、何?」
「ちゃんと栄養バランスは考えて、ファーストフードとかではないから。体調管理は基本中の基本だもの」
「うん、自炊しよ?」
「……真美、人には得手不得手というものがあるの。ふふっ、面白いわよね、完璧な人間なんていないってことかしら?」
「変に深い話に持っていこうとして、誤魔化さない! とにかく、千早お姉ちゃんは真美と一緒に自炊すること!」
「何故そうなるの?」
「これも立派な経験、なんだよね? 千早お姉ちゃん?」
「ぐ……」

 自らが言ったことをこれ以上曲げることは、よろしくない。真美を任された身としても、年上としても。千早はそれが分かっているからこそ、真美の言葉に渋々だが頷くしかなかった。
 千早が頷いたのを確認し、真美はジト目をやめて笑顔になる。

「そんじゃー、一緒に作ろうか! ダイジョーブ、初心者の千早お姉ちゃんに真美が手とり足とり、丁寧におちえてあげるから」
「……なんだかイラッとするけど、お願いするわ」



 少しして、準備を終えた真美と千早が台所に立つ。お揃いの黄色いエプロンを着ている。一つは真美の予備のものだ。台所に並ぶ姿は、どちらかというと千早が真美に料理を教えるような雰囲気がある。実際はもちろん、真美の方が先生という立場なのだが。
 二人が一緒に入っても狭くないくらいには広さがあるため、台所で同時に動いていても動きにくいことはない。

「千早お姉ちゃん、卵は割れる?」
「失礼ね、それくらいできるわよ」
「おぉ……意外に器用。てっきりお約束で、卵無駄にしちゃうパターンかと思ったよ」
「真美が私をどういう目で見ているか、よく分かったわ」
「自炊している姿を、一度も見せてない方が悪いと思う」
「くっ……」

 不服そうな千早だが、手先は実に器用だった。千早が料理をするのは不得意だと思っていた真美だが、そのあまりにも手慣れた手つきに「なにこれ思ってたのと違う! せっかく千早お姉ちゃんに面白おかしく教えようと思ったのに!」などと叫ぶ。もちろん、声には出さずに心の中で。
 その間にも千早の手は、淡々と進む。サラダ油をペーパーで卵焼き器の全体に薄く伸ばし、既に解きほぐした卵液を流し入れる。やや渋い表情をしつつ、火加減に気を使う。
 横で真美が、じーっとその様子を眺めている。卵焼きを提案したのは、真美だった。まだレパートリーが少ない真美にとって、教えやすいものだったからだ。けれど、実際は何も教えることなく、千早の手は進んでいる。

「ねー千早お姉ちゃん、もしかして料理したことあるの?」
「ちょっとは、ね……もう長いことしてなかったけど」
「むむー真美が教えることないじゃーん」
「そうは言っても、ブランクはあるものよ。料理をちゃんとできる人が横に居るっていうだけで、心強いわ」
「くっそぅ……ビーフストロガノフとか、いかにも難しいところを提案すればよかった」
「それは逆に、真美ちゃんと教えられるの?」
「た、確か牛、牛を使う……!」
「そういえば真美は卵焼き、塩と砂糖どっち派? もう砂糖で作っちゃっている最中だから、変えられないけど」
「スルーしないでよぅ! それに甘い方が好きだからいいけど、決定した後に訊かないでよ!」

 真美は抗議の声を上げながらも、しっかりと自らの役割を果たす。レタスを一枚ずつ剥がして、食べやすい大きさにちぎっていく。塩でさっぱり決めるか、はたまたマヨネーズで無難に決めるか。ちらりと隣に立っている千早に目をやると、真剣な表情をしていることがよく分かる。
 声をかけることを一瞬、ためらってしまうくらいに。

「千早お姉ちゃん、そんなに肩に力入れてちゃダメだよ」
「何事もやるからには全力でやらないと」
「そんなんじゃ毎日疲れちゃうじゃん。別に失敗したって、それで終わりなわけじゃないんだし。もっと気楽にやらないとー」
「……失敗して不味いものを作ったとしても、真美が全て処理してくれるっていうなら考えるわ」
「それは遠慮しておくよ!」
「ほら、口を動かしている暇があれば手を動かさないと、いつまでも仕上がらないわよ」
「うぅ、ごめんなさーい……って、もう完全に立場が入れ替わっちゃっている気がするよ」

 不満げな真美を軽く流しつつ、千早は目の前の料理をすることに集中。
 これ以上は何を言ってもあしらわれそうな気がした真美は、仕方なく手を進めることにした。



 ◇◇◇



「一緒にお風呂入ろう」

 ご飯も食べ終わり、しばらく休憩した後に真美がそう言った。千早はイヤホンをしているからか、無反応である。
 一緒に住み始めてから三日間、食事も別だったがお風呂も別々だった。もちろん、寝るのも別だ。ただ就寝に関しては、元からあったベッドを譲って新たに購入した布団を使おうとする千早に対し、真美がそれを拒否したため、妥協案として一日ずつ交替でベッドを使うことにしている。

「ちょいと千早おねーちゃんや、聞いているかね? 真美の声が届いているかね?」
「……」
「アイドルがアイドリング!」
「……」
「コンニチハ、シャチョサーン!」
「……」
「……びよ~ん!」
「っぷ、く、くふふ、はは、ふふふっ!」
「やっぱり聞こえてるんじゃん! というか、これで笑う千早お姉ちゃんのセンスって……」

 真美それ反則よ無理それで笑うなっていう方が難しいわ、と未だに笑い続ける千早を見て、やっておいてむしろ逆に若干冷めつつある真美。
 結局、反応を得られたものの、ちゃんと話ができるようになるまで数分を要した。千早の笑いが収まらないせいで。
 イヤホンを外し、わざとらしく咳払いを一つする。少しだけ頬が赤いのは、笑いすぎたためか羞恥のせいか。取り繕ったような真面目な顔に、今更感が漂う。けど、真美は何もツッコミを入れない。真美なりの優しさである。

「なんで一緒に入るのか、意味が分からないわ」
「真美は亜美と一緒に入れるときは、よく一緒に入ってたよ」
「なるほど、寂しいのね。思ったより早かったわね、ホームシック」
「違うよぅ! ほらあれだよ、節約! 二人一緒に済ませちゃえば、節約に繋がるって!」
「間違ってはいないけれど……」
「お金のやりくりもしっかり初めのうちにやっておかないと、今後もダメになっちゃうっしょ?」
「……仕方ないわね」

 はぁとため息を零す千早と、心の中でガッツポーズをする真美。
 もちろん、節約云々の気持ちはある。だが、一緒に入りたい思いの大半は、千早の言った通りだった。今まで亜美と騒がしくお風呂に入っていたこともあって、一人で入る静かさに寂しさを感じていたのだ。亜美も真美も仕事がある分、毎日一緒に入っていたわけではない。それでも、入れるときは一緒に入っていたのは事実だ。

「それじゃあもう、入ってしまいましょう。今日は料理なんて慣れないことをしたせいで、疲れたし」
「お、いいねーお背中流しますぜ旦那ぁ!」
「馬鹿なこと言っていると、さっさと一人で入ってしまうわよ」
「あぁん、待ってよぉ!」

 先に脱衣所へと向かう千早に、追いかけるようについていく。ちゃんと下着や着替えも用意して。
 だが実際、一緒に入るにはやや難点があった。一つは、脱衣所の広さである。決して狭くはないが、二人が同時に着かえて動けるほど広いかと言われると、そうでもない。できなくはないが、余裕があるわけではないので、互いに気を使いながら着替えなければならない。
 おぉ千早お姉ちゃん、意外に可愛いブラしてる。何見てるのよ、さっさと脱ぎなさい。そのセリフだけ聞くと、なんかドロドロしたドラマみたいだね。追い出すわよ、脱衣所からじゃなくて家から。でもほら真美も結構可愛い下着してるっしょ、最近はこういうところにも気を使うお年頃なのだよ~。知りたくもないし、知らなくてもよかった情報ね。
 そんなやりとりをしつつ、全て脱ぎ去る。
 そして続いての難点、脱衣所が広くなければもちろんのこと、お風呂も広くない。二人同時に入れないこともないが、必然的に肌が触れ合ってしまうことは避けられない。
 千早が思ったことは、これだと窮屈で疲れが取れないんじゃないかということだった。

「ねぇ真美、先に体洗うのと湯船に浸かるの、どっちがいい?」
「一緒に体洗って一緒に湯船浸かろう!」
「人の話を聞きなさい……」
「まぁまぁ、ほら千早お姉ちゃん座って座って」
「あ、ちょ、こら」

 もわっとした湯気と熱いシャワー、そしていつもと違ってこの空間に二人ということもあり、普段よりも熱気を感じる。
 真美は渋々座った千早の背後に器用に回り込み、右手には既に青いボディタオルを泡立てている。最初はくすぐったりしてやろうと悪戯心を持っていたが、すぅっと透き通るような白い肌、細い細いとは思っていたが思ったよりも華奢な背中を見て、真美のその考えは消え失せた。
 下手に悪戯を仕掛けてしまえば、傷付けてしまいそうだったから。そっと割れ物を扱うかのように、触れる。それが逆にくすぐったかったのか、千早は少し身動ぎをした。

「真美、もうちょっと力入れてくれないと、洗っているっていう感じがしないわ」
「うぅん、だって千早お姉ちゃんの肌、傷付けちゃいそうだなって思ってさ」
「さっきまでお背中流しますとか言っていたじゃないの」
「……これくらいなら、大丈夫?」
「えぇ、ちょうどいいわ」

 力を込めつつ、けれどもゆっくりと背中を洗う。背中が終わると、ありがとうと一言だけ言って千早はボディタオルを真美から受け取り、首や胸を洗う。少し調子を取り戻した真美が冗談交じりに「前も洗ってあげよっか?」と言うと、反論すらされず無視された。
 そして洗い流すと、次は真美の番だった。真美は洗う気はあったものの、洗われるとは思っていなかったのか、千早に「ほら、交代よ」と言われて「うぇ?」と変な声で返すしかできなかった。

「意外と大きい背中しているのね、真美」
「真美、千早お姉ちゃんより身長小さいよ?」
「そういうことじゃないわ。なんて言えばいいのかしら……思ったよりしっかりしている、とか」
「うえぇ~ごついってこと?」
「違うわ、ごめんなさい、上手く伝えられない」

 それは千早の素直な感想だった。もっと幼いと思っていたが、思ったよりもしっかりとした背中をしている。成長期、というのもあるのだろう。千早は真美の体を、思わず目で追ってしまう。
 背中からお尻、そして少しだけ顔を前にやって、決して大きいわけではないが自らのそれよりは膨らんでいる胸。

「……真美は将来、素敵な女性になりそうね」
「いやなんで唐突に、ちょっと切なそうな声でそんなことを言うの。もちろん真美はこれから、魅力溢れるぷりちーできゅーとな大人になる予定だけど」

 洗い終えて、二人で湯船に浸かる。向かい合って、狭い空間をなんとか工夫して。足を伸ばす真美とは対照的に、千早は膝を抱えて小さくなっている。足と足が触れ合うが、互いにそこまで気にはしない。
 何が楽しいのか、真美はえへへと笑いつつ満足そうな様子である。

「いやぁ、千早お姉ちゃんと二人っきりでお風呂とかレアですなぁ。全世界の千早お姉ちゃんファンからしたら、即興するくらいに羨ましいだろうねこの状況」
「卒倒、のことかしら」
「そうそれ! なんかもうあれだね、千早お姉ちゃんとお風呂入っているっていうこの状況が、既に面白い」
「褒められているのか貶されているのか、分からないわね」
「めちゃ褒めてるよ! んっふっふ~亜美、羨ましがるだろうなー……あっ」

 真美は笑顔から一変、呆けたような顔になる。

「真美には今、千早お姉ちゃんがいるけど……亜美は」
「真美?」
「亜美は今、寂しがってないかなぁ……」

 真美が千早の家で暮らすと言ったとき、親以上に反対したのが亜美だった。最終的には渋々認めたものの、未だに事務所や仕事でも一緒になる機会がほとんどなく、気まずい関係になってしまった。
 もちろん千早も、そのことを知っている。

「まだ亜美とは、仲直りできていないの?」
「……別に喧嘩したわけじゃあないもん」
「それでも、よ。ちょっとしたすれ違いでも、しっかりと話すべきだと思うわ。話せるうちに話しておかないと、話し方を忘れてしまうわよ」
「……うん」

 千早が手を伸ばして、真美の頭にぽんと触れる。さっき背中を見たときは大きいと思っていたけれど、こうしてみるとまるで空気の抜けた風船のように、酷くしぼんで小さく見えた。
 本来なら元気付けてあげる一言や、行動をとるべきなのだろう。けれども、千早にはどうすればいいのか分からなかった。過去に自分より幼い者をあやすような行動をした記憶はあるが、もはや昔過ぎて何をどうすればいいのかなんて忘れてしまった。
 だから今の千早にできる精一杯は、項垂れる真美の頭に、そっと手を置くことだけだ。撫でるわけでもなければ、触れて気の利いた言葉をかけるわけでもない。
 けれどその拙いながらも真美を思う行動は、ちゃんと伝わる。

「……えへへ、ありがと千早お姉ちゃんっ!」

 顔を上げ、にかっと笑う真美。それを見て、千早もホッとする。
 真美の頬が朱に染まっているのは、湯船に浸かっているせいかそれとも照れからか。
 突如ざばぁっと音を立てて立ち上がり、よぉしと声を上げる。いきなりのことに千早がぽかんとしていると、真美は「次は髪を洗いっこしよう!」と元気よく言った。無駄に良い声と、良い笑顔でそう言った。千早は数秒遅れて、笑った。少し呆れたような、けれども穏やかな笑みである。

「仕方ないわね、もう」
「んっふっふ~今日はとことん真美に付き合ってもらうよ!」
「あなたが言っていた一人暮らしとは、ほど遠い状況よ、これ」
「細かいことは言いっこなしっしょー!」

 楽しそうな真美に、千早はわざとらしくため息を零して見せた。





 第2話『ボタン』
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