絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

千早と真美の共同生活。1

千早と真美のお話。しばらく続きます。
 アイドル活動も軌道に乗って来た頃、真美の心の中には一つの願いが生まれた。一人暮らしをしてみたい、と。
真美の年齢からして、憧れのようなものがあったのだろう。だがもちろん、両親には反対された。まだ中学生である娘の一人暮らしを簡単に許す親は、まずいない。当然の反応だった。
 けれども、真美は諦めなかった。それなりの時間をかけて交渉をし、三つの条件付きの元、認められることとなる。
 一つは、今までと変わらずお金は両親が管理するということ。二つ目は真美から提案をした条件、一人が心配なら信頼できる誰かに保護者代わりになってもらうこと、つまりは厳密には一人暮らしではなく誰かとともに暮らすことだ。そして三つ目は、もし何か支障が起きた場合は、すぐに家へと戻ってくること。
 二つ目の条件は、一人という時点で絶対に認めてくれないことは分かっていたからこそ、真美が考えた作戦だった。誰かと共に過ごすという時点で一人暮らしではないが、限りなく一人暮らしに近い状況を満喫できる人物を選べばいい。そう考えたところ、ピックアップされた人物は限られてくる。
 まず信頼できるという時点で、真美には同じ事務所の仲間たちが浮かんでいた。そこから消去法で選んでいくと、やがて一人の人物に辿り着く。あとはその人物を説得できるかどうかが、鍵なわけである。





「というわけで、お願い! 千早お姉ちゃん、真美と一緒に住もう!」
「この曲……プラームスのロ短調に似ている。けど、抑揚の付け方と振り幅が、やや大きい」
「せめて話を聞いてよっ!?」
「あまりにも馬鹿なことだったから、聞かなかったことにしてあげたのよ、察しなさい」
「真美は本気だもん!」
「なおさらタチが悪いわ」

 真美が選んだ相手は、千早だった。理由はとても単純で、一人暮らしであることと、あまり積極的に他人に干渉しない千早なら、疑似的な一人暮らしができると考えたからだ。
 ただし、説得の難易度はその分ハード級。真美からすれば、普段からプレイしているゲームの中にある、一度のミスが致命的になるくらいの難易度を誇るミッションのようなものだった。
 そして案の定、千早は露骨なくらいにしかめ面を返したのである。
 やや威圧感さえ覚えるその表情に、真美は思わず一歩下がりそうになる。だが、ここで退いたらもうチャンスはないことは、直感的に感じていた。

「言っておくけど、思いつきや我儘で巻き込まれたくはないわよ? 何か漫画やアニメに憧れたとか、そんな理由だったら頷く気はないわ」
「そんなんじゃないよ! いや、確かにそういった憧れみたいなものも、少しはあるかもしれないけどさ。けどね、それ以上に目的がちゃんとあってこその考えだもん!」
「考え?」
「真美ね、アイドル続けててさ、いろんなことを考えるようになったんだ。ステージを作ってくれる人、応援してくれてるみんな、お仕事取ってきてくれる兄ちゃん……なんか思ったよりもたくさんの人に支えられてるなって」
「……それは、確かにそうね」
「今まで視えてなかったものが視えてきたっていうか、なんて言うんだろう。視野が広がった、って言うのかな? 真美ね、もっともっと、視野を広げたいって思ったんだ。そうしたら、今まで以上にすっごいパフォーマンスができるようになる気がするし、それが支えてくれているみんなに対する恩返しだとも思うから!」
「……そう、ちゃんと考えてのことだったのね。思いつきだなんて言って悪かったわ。ごめんなさい、真美」

 申し訳なさそうに頭を下げる千早に対し、真美は心の中でグッとガッツポーズをした。
 今の言葉はもちろん、全てが全て嘘と言うわけではない。だが、真面目でストイックなところもある千早なら、これで納得してくれるだろうという作戦の部分もある。
 千早は今、素直に感心している。そしてこのチャンスを逃す真美ではない。

「ま、結局はさ、今よりももっと楽しくアイドル活動したいだけなんだけどねー」
「ふふっ、真美らしいわね」
「うん、けど真剣だよ。だからお願い、千早お姉ちゃん! それに真美との楽しいラブラブ同棲生活で、千早お姉ちゃんも新しい何かが視えてくるかもしれないよ?」
「どこでそんな言葉を覚えてくるのかしら……。まぁ確かに、視野が広がる可能性はあるわね。経験も歌に活かせるかもしれない」
「うんうん!」
「でもやっぱり、ダメよ」
「うえええぇぇぇぇ!? な、なんでぇ!?」

 千早は苦笑いのような、どこか複雑な笑みを浮かべて言った。真美の予想では、ここで千早が折れて、一緒に過ごす生活が始まる予定だった。
 そのためこの展開は予想外すぎて、何も次の言葉を用意していなかった。ただ理由を訊くことしか、できない。

「私と過ごしたところで、真美に良い意味での影響を与えるとは思えないもの」
「そ、そんなこと――」
「むしろ私じゃ、悪い方向に影響を与えてしまうかもしれないわ。ううん、その可能性の方が高いと思う。きっと真美にとって、私との時間は酷く退屈だと思うもの」
「……千早お姉ちゃん、悪いスパイラル入ってない?」
「ただ事実を述べているだけよ。もし毎日を今より楽しいものにしたいというのなら、春香や真のような明るくてどこまでも前向きに頑張るタイプと一緒の方が、絶対に良いと思うわ。だから――」
「うーあーもうっ! 今ははるるんやまこちんのお話なんて、してないでしょ! 真美は千早お姉ちゃんと一緒に住みたいの! 千早お姉ちゃんじゃなきゃ、ダメなんだよ!」
「真美……」

 だからお願い千早お姉ちゃん、と真美は頭を下げた。気付いたら、感情が昂っていた。千早の言う通り、春香や真と一緒の時間は楽しいことだろう。だが、だからと言って、真美は今まで千早と過ごした時間を、退屈だなんて思ったことはなかった。
 ゆえに真美は、今の千早の発言が許せなかった。たとえ本人が自らを否定したとしても、仲間が否定されているのは気分が良いものではない。
 頭を下げているため、真美から千早の表情は窺えない。
 お互いに、無言の時間が続く。
 真美からすれば、まるでオーディション結果を待っているときかのような、そんな緊張感があった。
 しばらくして、はぁと大きめのため息が聞こえた。千早のものだ。それにつられて、真美が顔を上げる。そこには、困ったような笑みを浮かべている千早がいた。

「物好きね、まったくもう」
「っ! じゃ、じゃあ!」
「私の負けよ。ただし、ちゃんとご両親に挨拶は行かせてもらうわ。あとは荷物とか具体的にいつからか、そのあたりの話も済ませてからね。だから、すぐにというわけにはいかないけど、それでもいいかしら?」
「うんっ! うんっ! わぁいやったー! ありがとー千早お姉ちゃん!」
「きゃっ!? も、もう……急に抱き付かないの、危ないでしょう?」

 これは早まってしまったかしらと零す千早に、いつもの悪戯成功時のような笑顔で「もう遅いよー」と笑う真美。

 決まってしまうと、そこからはもう全てが早かった。
 まずは千早が真美の家へと挨拶。落ち着いた態度としっかりとした雰囲気に、これには両親も納得をした。学校にも通えないような距離ではないので、そのあたりも特に大きな問題にはならなかった。亜美だけが最後まで、少し不服そうにしていたが。
 そして荷物を纏めたり、千早の家のスペース決めをしたりと、事を進めていった。内容的には数日で終わりそうな内容ではあったが、実際はアイドル活動の合間を縫ってのことだったので、思ったより時間を費やした。それでも一ヶ月以内に全て済み、一ヶ月以上はかかるであろうと考えていた真美からすれば、随分とスムーズに感じた。
 もちろん、プロデューサーや社長にも話をつけている。もし困ったことがあったら、頼って構わないと言われている。その言葉だけで、千早にとっては身が軽くなるものだった。





「千早お姉ちゃん、どうしよ……」
「何が?」
「真美柄にもなく、ドキドキしちゃってるよ!」

 千早の家の前、真美は楽しみにしていたゲームをプレイする直前のような、そんな雰囲気だ。別に千早の家に来るのは初めてではないし、むしろ一緒に住むための準備として何度ももう訪れている状態だ。それでも真美の鼓動は、とくんとくんと高鳴っていた。
 それは真美だけではなく、千早にとっても同じことである。家族以外の誰かと一緒に過ごすことなんて初めてだし、上手くやっていけるのかの不安もあるだろう。
 そんな千早の不安とは真逆に、今日の陽射しはやけに明るい。
千早も真美も、お互い一日丸々オフの日を調整した。必要なものも、全て揃え終えている。準備は万端だ。あとはいつも通り、鍵を使って家の扉を開くだけ。やり慣れているはずのその作業が、今の千早にとっては苦手なバラエティ番組へ出演するときと同じくらい、難しいものに感じられた。
 だからといって、いつまでも突っ立っているわけにはいかない。
 千早は一度だけ、真横の真美をちらりと見る。すると同時に真美も千早を見ていたのか、目が合った。真美の瞳からは、期待と不安が入り混じったような、そんなものを感じ取れた。

「……じゃあ、入りましょうか」
「う、うん」

 鍵を開けて、中に入る。千早の後に続いて、真美もやや遠慮がちにだが、足を踏み込んだ。
 既に何度も通い慣れたはずの部屋なのに、今日からここで過ごすということを思うと、真美にとっては今までとはまた違った感じに見えた。
 ぼぅっと立っている真美とは違い、千早はリビングへと向かう。そのことに気付いた真美が、ハッと我に返り、慌てたように後を追う。
 以前は、千早のベッドや小さな白テーブル、他にはコンポが置いてあったりCDが積んであった程度だった。一人では使うにはやや勿体ないくらい、スペースが余りに余っていたが、今では真美の荷物でそれも埋められている。
 ただ単に真美の私物が増えたわけでもなく、二人で暮らすのならばとわざわざ購入した小さな茶箪笥も置いてあったりする。お互いの下着や私服を入れておくものとして、活用することにしている。

「ふぃ~……とりあえず一息つきたいね。千早お姉ちゃん、お茶を一ついただけるかのぅ? できれば甘くておいちいお茶が」
「おとなしくジュースでも飲んでなさい」
「ってこの前ゆきぴょんにお願いしてみたら、泣きながらお茶に砂糖入れて持ってきた」
「やめてあげなさい」
「もうね、罪悪感マックスで思わず飲み干したよね」
「自業自得だけど無駄に律儀なのね」
「そして精一杯、男前な表情作って言ったよ。今までで最高のお茶だった、ありがとうゆきぴょんって」
「格好良いのかしら、それ」
「そしたらゆきぴょん、こんな酷いお茶に私の普段のお茶は負けちゃうんだって泣き始めた」
「もう本当やめてあげなさい」
「いやぁーあのときはさすがの真美も焦っちったよ」

 にはっと笑う真美。既に青い座布団に小さなお尻をふにゅっと預け、白テーブルに顎を乗せている。どうやら緊張したのは最初だけで、一度座ってしまえばなんてことなかったようだ。まるで元から我が家だったかのように、寛いでいる。
 そんな真美を見て、千早も肩の力がふっと抜ける。真美の対面に座りながら、音楽プレーヤーに手を伸ばす。

「ちょちょー! ちょっと千早お姉ちゃん! 真美が居るっていうのに、音楽聴いちゃうの!? しかもイヤホンで!?」
「えっと、何かおかしいかしら?」
「ここは二人楽しくお話に花を咲かせて、仲を深めるとこっしょ! せっかくこれから一緒に過ごすっていうのにー」
「そもそもあなた、一人暮らしを体験してみたいーっていうのが根本でしょう? それにお互い自室はない分、プライベートには気を使うという約束をしたでしょ。だから私はもし真美がゲームをしていても邪魔をしたりしないし、真美のプライベートを尊重する」
「うぐっ……」

 千早は元々一人暮らしをしていたのだから、もちろんそこに部屋の余裕があるわけない。つまり真美と千早はお互い常に同じ空間で、趣味の時間から寝食まで共にすることになるのだ。
 そこで千早は、真美に提案をしていた。
 お互いプライベートには、あまり干渉しないこと。一緒に暮らしてはいるが、食事や寝る時間などは好きにしていいこと。他にもいくつか、約束事を決めたのだ。これは千早が嫌だからというよりは、千早が真美のことを考えて提案をした。あまりうるさく口出しをされても、嫌がるだろうし自立にもならないからと。もちろん真美には、即了承した。全てが自由に近いという状況は、真美にとって願ったりかなったりだった。
 だが実際こうして同じ空間に居ると、声をかけたくなってくるわけで。
 音楽プレーヤーを聴いて楽譜を読んでいる千早を、ただひたすらじーっと見つめている真美。
 千早お姉ちゃーん。
 ……。
 さーびしーいよーう。
 …………。
 すすっ。すすすっ。ぺたっ。ぺたぺたっ。ぎゅ~っ。

「……はぁ、真美、怒るわよ?」
「これはあれだもん、真美のプライベート的に千早お姉ちゃんと触れ合いたいっていう行動だから、あくまで真美は真美のプライベートを満喫しているだけだもん」
「はた迷惑なプライベートね」

 真美の視線を無視してた千早だが、さすがに後ろからお腹に手を回されて抱き付かれては、無視できるものではなかった。
 ため息を零しながら、腹部に回されている真美の手に、そっと手を重ねる。思っていたよりも小さな手ね、なんてこと考えながら千早はふと思い出した。

「ねぇ真美、言い忘れていたことがあるわ」
「えっ?」
「これからよろしくね、真美」
「~っ! うん、こちらこそだよ! よろしく千早お姉ちゃん!」

 こうして千早と真美の、共同生活が始まった。





 第1話『プライマリー』
アイマス小ネタ+SS | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<体調を崩しやすい季節に+拍手レス | ホーム | 資格試験再び>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |