絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

ファンとして、アイドルとして

春香さんと美希ではるみきなお話。
「そう思うなら、一度徹底的に分析してみたらいいんじゃない? 美希に足りない何かが、見えてくるかもしれないわよ」

 美希が律子に愚痴を零した際、言われた言葉。この言葉が、きっかけだった。
 そもそも愚痴を零したのは美希が最近行き詰まり、美希より少しデビューが早い春香は順調に活動を進めてランクも上げているという事実があったからだ。最初こそ美希は、春香に追いつけないのは単純にデビュー時期が遅れたからであって、実力的に見ればすぐに追いつけるだろうと思っていた。しかし実際は、一度も追いつけなかった。大差があるわけでもないが、それでもその背中に触れたことは一度もない。



「むぅー……いくつか借りてきたけど」

 春香のCDや毎週単独でやっているラジオ、それに加えて今まで出演した番組映像の入ったDVDなど。美希は律子から少しだけ借りて、帰宅した。
 実際、分析と言われても何をどうすればいいのか分かっていない。けれども、ただ視たり聴いたりするだけでも、何かが掴めるかもしれない。美希はそう思い、とりあえず再生してみることにした。
 ベッドに寝転がり、ノートパソコンの電源を起動させる。ヘッドフォンを接続し、まずはCDを一枚。それを聴き終えると、続いてもう一枚。
 そしてCDを聴き終えたら、次はライブ映像だ。もちろん、一日だけで全て消化できる量ではない。時間の許す限り、借りてきたものを一つ一つ消化していく。





 そんな生活を続けた結果、一ヶ月後――





「はる、は、春香ああああああああぁぁぁぁぁ!」

 結果、めっさファンになった。
 DVD映像の春香に向かって、全力で悶える美希。

「なんてこったなの……春香を研究していたつもりが、逆に春香の魅力にやられちゃうなんて」

 けど、後悔はしていない。むしろ、誇らしく思う。誰も訊いていないのに、美希はやや開き直り気味にそう心の中で主張した。
 美希の部屋には、一ヶ月前にはなかった春香のグッズで埋め尽くされている。初回限定版のCDやDVDは勿論のこと、ライブ会場限定生写真やタオルまで揃えている。現在入手困難なものは、春香を研究したいという名目で、律子から事務所に余っているものなどをいただいて集めた。
 これだけ熱狂的なファンになっても、事務所や仕事で一緒のときは普段通り接している。内心では「やばい春香良い匂いする近い近い近いの!」とかなっていたりするのだが、そこは表情に出さない。あふぅあふぅ言って、なんとか誤魔化している。まさにプロである。

「ふっふっふ、ついに明日なの……」

 そう零す美希の右手には、一枚のチケットが握られている。それは律子に頼むことなく、自力で入手した春香の緊急単独ライブチケットである。
 残念ながら、座席は後ろから数えた方が断然早いレベルの座席ではあるが、それでも美希にとっては取れただけ満足だった。
 自力で取れたことに、意味がある。それに今回は、そこまで大きくない会場だ。

「明日が楽しみすぎるの……!」

 楽しみすぎて睡眠不足なんかにならないよう、早めにベッドへダイブする。
 変装用の伊達眼鏡と帽子は勿論のこと、サイリウムもばっちり用意した。明日のライブの予習も、ばっちりである。準備万端だ。何も不安なことはない。
 それなのに――

「全然眠れないの!」

 まるで『Do-Dai』の歌詞のようだ、なんて思いながら美希はにやにやした頬を抑えきれない。
 結局寝付けたのは、ベッドに入ってから一時間以上が経過してからだった。


◇◇◇





「みんなー! ありがとうー!」

 春香の言葉に、会場全体がわぁっと声とともに震える。
 数曲歌い終わり、春香のMCが始まった。それは感謝の言葉だったり、最近あったちょっとした出来事だったり、ファンにとってはどれも嬉しい内容だろう。
熱気に包まれた会場で、多くのファンが「春香ちゃーん!」と声を飛ばす。掛け声に、春香はその声がした方向へと笑顔で手を振り返す。

「後ろの席まで、ちゃーんと見えてるからねー!」

 春香がライブで必ず言う台詞だ。ウインクをしつつ、人差し指をびしっと客席へと向ける。その瞬間、今まで以上に会場が盛り上がった。ファンのみんながみんな、それぞれに春香へと言葉を投げ掛ける。
 わぁっと盛り上がる会場。漂う空気が、ファンの一人一人が、全て一体化したかのような、そんな錯覚に陥りそうになる。ボルテージは最高潮だ。
 もちろん美希も例外ではない。感極まった美希は、他のファン同様、声を投げる。

「春香ぁあぁぁぁぁぁぁぁ! 最高ぉぉぉぉぉぉぉ!」

 美希の渾身の掛け声は、他のファンの声援に混じり合って消えた。

「……それじゃあ、次の曲いっくよー!」

 一瞬、春香の言葉に間があった。そんな些細なことには誰も気が付かない。だが、美希だけは気付いた。いや、気付いたというよりは、目が合った気がしたのだ。実際は結構な距離があるわけで、よくファンの間であるような「今こっち見た!」と同じような錯覚だろう。
 美希はそう思って、ライブへと再度意識を向けた。全力でライブを楽しむために。
 明日は仕事が入っている。けどそんなことは、今の美希にとって些細なことだった。
体が熱い。気持ちが昂る。瞬きするのも惜しい。一分一秒でも、この時間が長く続けばいいのに。美希だけではなく、この場にいるファン全員が同じ気持ちを抱いていることだろう。
 汗で額に貼りつく前髪の煩わしさも忘れるほどに、美希は今の時間へと夢中になった。





◇◇◇





「おふぁようなのぉ~……」
「いやいや、美希半分寝てるでしょ、それ」

 美希が事務所に入ると、その寝ぼけ声にツッコミが入った。その声に美希は、ぴくりと体を震わせる。それもそのはずで、まだ昨日の熱い感覚が冷め切ってないからだ。熱くなった原因が、まさにその声の持ち主なわけで。
 眠い目を擦りながら、声のした方へと目をやる。美希がいつも眠り慣れているソファーのところに、春香はいた。
 あまりにも眠そうな美希の様子に、苦笑いを浮かべている。
 美希はきょろきょろと事務所内を見渡したが、春香以外には電話応対中の小鳥しかいなかった。美希と目が合った小鳥は、目線とジェスチャーだけでおはようと言う。小鳥の邪魔をするわけにもいかず、美希はソファーに腰掛けている春香の隣へと向かった。
 ソファーに腰をおろすと、ぽふん、と美希のお尻をふんわり支えてくれる。その心地良い感覚に、美希の眠気はより加速する。欠伸が止まらない。

「美希、なんだかいつもより眠そうじゃない?」
「んー……ちょっとね」
「あんまり寝てないの? 今日これからお仕事あったよね、大丈夫?」

 心配そうに美希を覗き込む春香だが、大丈夫だからと顔を背けられた。傍から見るとそっけない態度で返したように見えるが、美希の内心は「ちかちっか! 近い! 眠気も吹っ飛ぶレベルなの!」と大騒ぎだった。
 それでもなお心配そうにする春香に、美希はへらっと笑って見せた。

「もぅ……春香ったら、そんなにミキのことが気になるの?」
「え? いや、気になるっていうか心配というか」
「ミキの心配をする前に、春香は自分の心配した方がいいよ。春香だって、今日お仕事でしょ? しかも有名なCMのお仕事だったよね? 大丈夫?」
「う、ぐぅ……まさかカウンターを喰らうとは思わなかったよ」
「……まぁ心配なんてしてないけど。春香なら大丈夫だって思ってるし」
「え?」
「っ! あ、あー……なんでもないの。とにかく、ミキは大丈夫なの!」

 疲れのせいか、美希は思わず口を滑らせてしまった。春香なら大丈夫だって、信じている。そんな思いが零れてしまったが、とうの春香はジーッと美希を見つめるだけで、何も言わない。
 そんな視線から逃れるように、わざとあくびをする仕草をしながら目を逸らす。

「……ねぇ美希、もし今時間があったらちょっと付き合ってくれる?」
「コンビニか何処か行くの?」
「ううん、ちょっと風にでもあたりに行こうかなって。美希も外の空気を吸えば、少しくらい眠気も軽くなるかもよ?」
「仕方ないから寂しがり屋の春香に付き合ってあげるの」
「はいはい、ありがとうございますー」

 美希がわざとおどけたように言うと、春香もそれに乗っかる。
 そして作業中の小鳥の邪魔にならないように、そっと事務所を出た。



「ごめんね、美希。時間貰っちゃって」
「ううん、別にいいの。どうせまだまだ時間に余裕はあるし」

 春香にだったら、むしろ喜んで時間を捧げてもいい。そんなことを思いながらも、しかし表情や態度に出すことなく、美希はわざとらしく欠伸を一つしながら返した。
 普段なら間に千早や真がいるものだが、今は春香と美希だけだ。珍しいツーショットである。
まだ秋前とはいえ、屋上で吹く風は思っていたりも冷たい。
 美希は思わず、ぶるっと体を震わせる。せめて何か一つくらい、羽織ってくれば良かったか。なんてことを思いながら、目の前の春香の様子を窺う。
 春香は口を開くかと思えば、結局口を閉じてしまったり。かと思えば、ちらちらっと美希の方を見たかと思えば、すぐ目を逸らす。珍しく、落ち着きのない様子だ。

「なんなの? ミキに何か言いたいことがあるの?」
「言いたい、というか訊きたいことがあるというか……」
「はっきりしてくれないと、分かんないな。ミキそういうはっきりしないの、苦手なの」
「う、うん。ごめんね」

 しゅんとした春香を見て、美希の心の中は大荒れである。「ぬふおおおおおおごめんね春香ごめんねけどこうでもしないとこういうときの春香は言いたいことを我慢しがちになっちゃうから!」と、大騒ぎだ。心の中で、だが。
 少しして、春香は意を決したような表情になった。それはライブのときやお仕事のときの、真面目な表情。

「あのね、美希。今からちょっと変なこと訊くけど、許してね」
「……えっちな質問はヤだよ?」
「な!? す、するわけないでしょっ!?」
「あはっ、冗談なの。それで? 何?」
「うん……美希、昨日オフだったよね。どこか出掛けた?」
「き、昨日は久し振りのお休みだもん。家でずーっとお昼寝してたよ」

 一瞬、昨日のことを思い出して反応が遅れてしまった。夢のような時間だったのだ、忘れられるわけもなく、まだ記憶にも新しい。
 美希からすれば、あくまで自然に返したつもりだった。だが、その一瞬を、普通なら気に留めない程度の反応を、春香は見逃さなかった。

「美希、嘘ついてない?」
「な、なんで嘘をつく必要があるのか、わかんないの」
「私の勘違いだったら、ごめんね。私自身、まだ確信が持てないの。けどね、昨日私、美希を見たような気がしたんだ」
「世の中には似たような人が何人かいるって話なの」
「あはは、美希みたいなキラキラしている子が何人もいたら、大騒ぎになるよ?」
「突然の不意打ちはやめて欲しいな。いくらミキでも照れちゃうの」

 美希はなんとなく、春香がもう確信をもって話していると感じた。口では確信を持っていないと言いつつも、春香からは力強さを感じる。それでもひらりひらりと、いつもの調子でかわし続ける。
もう逃れるのは難しいと思いつつも、かわし続けることを選んだのだ。
 春香の目は、ジッと美希を捉えたまま離さない。

「昨日ね、私ライブがあったんだ」
「ふーん、大変だね」
「そこでね、ファンのみんなの声援の中に、聞き慣れた声がしたの」
「幻聴なんじゃないかな?」
「ううん、聞き間違えるはずがないよ。だってそれは、私にとって大切な存在の人の声だったから」
「……え?」
「家族のような、そんな存在に近い765プロのメンバーの声だったんだ」

 一瞬、大切な存在と言われてどきりとした美希だった。が、それはすぐ765プロダクションのみんなという括りだと分かって、少しだけがっくり。
 だがそんな様子を少しも見せることなく、美希は切り返す。

「別にそれなら、不思議なことじゃないんじゃないかな。たまたま応援しに来てた、っていうだけだよきっと」
「でもそれなら、観客席の方から聞こえるのはおかしいかなって思ったんだ。しかも結構、遠くのところからだったから」
「そんな細かいところまで、聞き取れるはずがないの。春香、疲れてるんだよ、きっと」
「うぅん、だってその方向を見たら、はっきり目があったもん。だよね、美希?」
「っ!」

 目が合ったような気がしたのは、錯覚じゃなかった。遠いとは言っても美希の方から春香の姿が確認できる距離なら、その逆もまた同じであるわけで。
 見間違いでしょ、と返せばそれで済む。だが、春香の目がそれを許さなかった。これ以上逃げることは許さない、そういった意思を持った目をしていた。
 さてどう答えるべきかと悩む美希よりも先に、春香は言葉を続ける。

「えっとね、怒ってるとかそういうわけじゃないんだよ? 応援してくれるっていうのは、すっごく嬉しかったし。ただね、やっぱり、どうして美希が……っていう思いがあったんだ」
「……仮にそれがミキだとして、なんでそう思ったの?」
「だって美希にとって私は、見向きもされてないって思ってたから。いっつもキラキラしている美希に比べたら、私なんてまだまだ――」
「そんなことないの!」
「ふぃあっ!?」

 突然、美希が大声を出したことによって、場の空気が大きく変わった。美希は「あーあーやっちまったの」という思いでいっぱいになったが、それでも目の前で春香が自分を卑下するのは我慢がならなかった。
 春香は春香で、ぽかんとしたまま固まっている。
 もうばれているならば、と美希は勢いに任せて喋り続ける。

「春香は凄いの! 確かにミキは最初、春香のことをちゃんと見てなかったかもしれない。けど、今は違うの! 春香の声が、動きが、ファンへのサービスが、もういっそ春香の存在そのものが好きになっちゃったの! だからライブだって全力で楽しんだし、こうやって春香と会話しているだけでも胸がどきどきしちゃってるの!」
「え、えーと……」
「悪い!? ミキが春香のライブ楽しんでちゃ悪いの!?」
「えぇっ!? い、いや、そういうことじゃ……むしろ嬉しいよ。私ね、ずっと美希のこと意識してたから」
「……え? えぇぇぇぇぇ!? 何、愛の告白!?」
「違うからね!? ほら、美希って本当凄いからさ。キラキラしてて、格好良くて、可愛くて……そんな美希を見ていると、私も負けないぞー頑張るぞーって気持ちになって。一人のファンとしても、同じアイドルとしてもエネルギーを貰っているっていうか」

 照れ臭そうに笑いながら言う春香に、今度は美希がぽかんとする番だった。美希からすれば春香がそんなことを思っていたなんて、考えもしなかったことだ。
 そこでふと、当初の目的を思い出す。なんで春香に追いつけそうで追いつけないのか。春香はしっかりと美希を見て、意識して、より頑張っていた。それに対して美希は、春香を見てはいたものの、それはちゃんと意識していたわけではなく、何故追い越せないのかと躍起になっていた部分があった。もしかするとそこで差がついていたのではないか、と美希は今更ながらにそう思った。
 だが今となっては、そんなことはさほど重要ではなくなっていた。
 今美希の心にあるのは、純粋な嬉しさ。

「だから美希が私のことを見てくれていたっていうのは、とっても嬉しくて――」
「春香ぁあぁぁぁぁあああぁぁぁんっ!」
「うひゃあ!? え、ちょ、み、美希ぃ!?」

 美希に全力で抱き付かれた春香は、バランスを崩して転びそうになる。だが、なんとか堪えた。
 そんな春香にはお構いなしに、美希は春香の胸の中で頬ずりを繰り返す。くすぐったさやら恥ずかしさやらが、春香を襲った。反射的に美希の肩を掴み、ぐいっと引き離そうとする。
 ちょっと離して美希。
 嫌なの無理なの離さないの。
 いやいやホントちょっとだけ離れてお願い。
 ごめん春香無理なの抑えきれないの。
 ぐいぐい。
 じたばた。
 ぎゅ~。
 ぐぐぐっ……。

「……はぁっ、はぁっ、もう、なにこれぇ。美希、明らかにキャラおかしくなってるってばぁ」
「どうせもうばれたんだから、気にしないの。いっそ曝け出した方が、楽だって気付いたんだ、あはっ」
「いや、そんな素敵な笑顔見せられても……」

 引き剥がそうと数分奮闘したが、結局美希の勝利に終わった。
 諦めてため息交じりに、けれども穏やかな笑みを浮かべて抱き締められるがままになっている春香。まるで猫のように、じゃれつく美希。

「ミキね、これからも春香のファンとしてライブ行ったりするからね」
「じゃあ私も、美希のファンとしてライブ行ったりしていい?」
「それはダメなの」
「なんで!?」

 理不尽だよーと言う春香に、美希はあははと笑い返す。

「あのね、春香」
「うん?」
「今はね、春香の方がアイドルとしてもアイドルランクとしても上なの。けどね、いつか絶対に追いつくから、そのときは一つお願いを聞いて欲しいの」
「いいけど……一体何を?」
「ミキと一緒のステージで、ミキと二人でライブして欲しいの!」

 にぱっとした無邪気な笑顔で言う美希に、春香は思わず一瞬見惚れてしまう。幼さがやや残る笑顔だったが、瞳の奥に決意を感じさせる力強さを感じたから。
 だから春香も、すぐに頷き返す。

「うんっ、約束!」
「えへへ、約束なのっ!」

 目を合わせて、笑いあった。
 その約束はきっと遠くないうちに、果たされる。二人はなんとなく、そう思った。
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