絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

小さな手のひら

プチ投稿作品。『影、二つ』の番外編。
内容は後日談的なもの。天子と紫。





この作品は『影、二つ』の番外編作品となっております。






「今日の夕方から博麗神社で宴会やるから。お酒持って来ること」
「は?」
「それじゃ、待ってるわ」
「ちょ!? 待ちなさい!」

 自室で着替えている最中、紫が現れた。
 前の私なら、紫のこんな突然の行動に慌てていただろうが、今では慣れた。
 けれども、流石に今回は意味が分からない。というより、突然すぎ。

「あら? 聞こえなかった? 博麗神社にて夕方から宴会をやるの。貴女も出席なさい」
「いや、無理だから」
「拒否権はありませんわ」
「だって謹慎中だし……」

 そう。私はまだ謹慎が解けてはいなかった。
 しかも、前回まだ謹慎が解けていないのに、紫と一緒に、私に傷を付けた天人たちをボコボコにしに行ったから、より厳重な謹慎を命じられた。
 今回、また抜け出すことがあったなら、術を施した部屋に幽閉をすると脅されている。
 だから、今回は大人しくしとくのが賢いだろう。
 宴会に出られないのは、ちょっと悔しいけど。

「とりあえず着替え済ましたいから出てってよ」
「いいじゃない、女同士でしょう。大丈夫、私は貴女の胸を哀れみの目で見たりはしないわ」
「胸のことは言うな! いいから出てけ!」

 私は、部屋中にある物を投げまくる。紫は笑いながら隙間に消えた。胸のことは禁句だ。
 紫がいなくなったことを確認し、着替えを再開する。素早くいつもの服に着替える。うん、やっぱりしっくりくるわね。

「着替えは終わった? 胸が可哀相な子」
「くたばれ! 訂正しなさい!」
「ああごめんなさい。胸に残念な障害を抱えている子、だったわね」
「なお悪いわ!」

 拳を突き出すが、紫はひらひらと軽く避ける。こんなふざけたやつなのに、凄く強いから余計に腹が立つ。

「で、謹慎中だって?」
「そ、しばらくは出れないでしょうね。もしかしたら出す気無いかもしれないし」
「貴女が大人しくするなんて、似合いませんわ」
「さすがに今回はヤバイのよ。よく分かんない術の施された部屋に幽閉なんかされたくないわけ」

 私がそう言うと、紫は黙ってしまった。
 どうしたのだろうか。
 俯く紫を覗き込むように、顔を近付ける。

「謹慎命令を出してるのは貴女の父親?」
「うわっ!?」

 突然顔を上げないで欲しい。びっくりする。そして近い。いや、私から近寄ったんだけどさ。

「そうよ。前に言ったでしょう?」
「つまり、天子の父親を説得すればいいわけね」
「……はい?」

 あ、なんか凄い嫌な予感がする。
 あ、あ、紫が笑ってる。気持ち悪い、というかなんか企んでる目だ。
 止めなきゃマズい気がする。

「ちょ、ちょっと待って! 一体何をする気!?」
「あら、別に何も。ただ、お友達の親に挨拶をしに行くだけですわ」
「そ、その友達って誰よ!?」

 もうこの話の流れからして、分からないわけがないけど。
 紫は何も答えずに、ニッコリと笑顔で目の前に隙間を作る。

「ってちょっと待ったぁ!」
「何よ騒がしいわね。私は今から貴女の父親を叩き潰しに……じゃなかった。挨拶しに行くのよ」
「今本音が出た!?」
「あ、違う違う。ア・ナータって名前の友人の父親をすりつぶして来るだけ。貴女の父親じゃないわ」
「何そのありえない名前の友人!?」

 平然とありえない嘘を吐く紫。
 こんなことで騙されるやつなんていないだろう。

「あら、バレちゃった? 妖夢は騙されたのに」

 うわぁ、騙された人いたのか。なんていうか、どんな人か気になる。
 さて、紫をどうやって止めようか。
 紫を行かせてしまったら、お父様は天に滅せられてしまう。
 悩んでる私の頭に、突然紫が手を乗せた。

「ちょ、何よ?」
「そんなに悩まないで。大丈夫、私は無事に帰って来るわ」
「あんたの心配してるわけじゃないわよ! むしろお父様が心配よ!」
「あら、私の勝ちを確信してるのね」

 当たり前だろう。
 紫の強さは、戦った私がよく知っている。
 もっとも、私のときは特別に本気だったらしいけど。紫はふざけていて、あまり本気を出すことは無いから珍しい、と子鬼が言っていた。

「隙あり!」
「え? きゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 気がついたら、スカートが下ろされていた。
 何だ、この嫌がらせ。
 紫が目の前でニヤニヤ笑っていて、腹が立つ。
 急いでスカートを着た瞬間、

「それでは、ごきげんよう」
「ふぇ?」

 目の前の隙間に紫は消えた。
 完璧に罠にハマってしまった。
 紫の服を掴んでいた手は、私のスカートを着た時に離してしまっていたのだ。
 こうなってしまっては仕方無い。
 私に出来ることは一つだけだ。

「寝よう!」

 現実逃避万歳。





◇◇◇





 何か、聞こえる。

「……ぺ……」

 ぺ、って何だろう。
 耳を澄ませると、段々と鮮明に聞こえてくる。

「ぜ……ぺ……」

 あぁ、あと少しで聞こえるのに。根性で何とか聞き取ろう。

「絶壁少女よ、起きなさい」

 最悪の言葉だった。
 何か、もう無視して再び眠ってやろうか。
 うん、そうしよう。

「あら、起きないわね。仕方無い」

 予想外に、あっさりと諦めた。
 よし、このまま寝たふり寝たふり。

「勝手に博麗神社へ運んじゃいましょう」

 ちょっとまて。

「何する気よ!?」
「おはよう天子」
「え、あ、おはよう」

 柔らかい笑みを浮かべる紫に、少し戸惑う。
 どれくらい寝てたのだろうか。ちょっぴり体がだるい。

「貴女の父親に会って来たわ」
「生きてる?」
「大丈夫、手は出して無いですわ」

 そっか、生きてるか。
 ということは紫が隙間に消える前に私に見せた言動は、いつもの冗談だったのね。
 でも、実際に会いに行ったのは本当みたいだ。

「本当に説得しに行ってたの?」
「貴女の父親、泣いて喜んでたわ」
「何で!?」
「私が貴女の友達だと告げると、泣きながら『娘に友達……今日は祝い酒だな』って」
「うわぁ……」

 そこまで私は孤独と思われていたのか。なんだかなぁ。
 紫が手をさし伸ばしてくれたあの日から、私は随分と変わったのだろう。
 この隙間妖怪は、うさんくさいし、悔しいくらいに強いし、たまに何考えているのか分からないようなやつだけど、私は本当に感謝している。
 なんとなく悔しいから、絶対に言わないけど。

「それで、天子の謹慎を解いてくれって言ったのよ」
「うん」
「駄目だって」
「駄目だったの!?」

 いや、今の流れ的には謹慎解けたっていう流れだったでしょう。

「なので仕方無いから奥の手を使うことにしたわ」
「奥の手?」

 妖しく笑う。
 あぁ、何か企んでいるのだろうなぁ。そして私に拒否権は無いのだろう。なんか慣れてきた。

「私は妖怪ですわ」
「そりゃあ知ってるわよ」
「だから、人をさらうことにします」
「……えーと」

 紫の考えていることが、分かってきた。
 なるほど、確かに私が無理矢理さらわれたとなれば、謹慎なんか関係無いだろう。

「紫……」
「何かしら?」
「私に拒否権は?」
「さらわれる人物に拒否権などあるわけが無いでしょう。何故なら一方的に私がさらうのだから」
「はぁ……ま、分かってたけどね」

 わざとらしく溜め息を吐いて、お気に入りの帽子を手に取る。
 いつもと同じように、それを被った。
 なんだかんだで、紫と居ると面白い。
 からかったりしてくるけれど、決して暇にならない。
 紫が手を差し出してきた。

「これは、どういう意味の手?」
「今から天子をさらいます、という手。隙間を使うから、私の手を握りなさい」
「しっかりエスコートする誘拐犯なんて普通は居ないわね」
「あら、じゃあ手荒くさらってあげましょうか?」

 私のふざけたような口調に、紫もそれに合わせて喋る。なんだかおかしくて、二人とも小さく笑った。

「私を誰だと思ってるの? 私は比那名居天子。手荒くしたら、後で酷いわよ」
「はいはい、分かったわよ。わがまま娘さん」
「ふん、分かれば良いのよ」

 冗談っぽいやりとりをして、紫の手をギュッと握った。
 それは優しくて、温かかった。柔らかい感触が心地良い。

「それでは、さらってしまいましょう」
「大人しくさらわれてあげるわ」

 目と目が合って、笑う。
 普段はうさんくさい笑い方しかしないくせに、こういうときの紫の笑顔は、本当に優しくて綺麗だ。
 目の前に隙間が現れる。

「拉致場所はもちろん博麗神社」

 そう言って、紫は私の手をひいて隙間へと入る。もちろん私も引っ張られて中に入る。

「ねぇ、紫」
「何かしら?」
「お酒持って来るの忘れたわ」
「今回は私が無理矢理連れて来たのですから持ち物などいりませんわ」
「そうね」

 なんだかんだで、楽しい宴会になりそうだ。
 いや、紫が居ればそれだけで楽しいのかもしれない。
 本人には絶対に言わないけどね。
 そんな想いを、ギュッと小さな手のひらに乗せる。紫もギュッと握り返してくれる。
 伝わる温もりは、やっぱり温かかった。

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