case6:『日記』2013-10-15 Tue 01:10
文さんと霊夢さん。
『日記』 「んー」 「何やら悩んでいる様子だけど、霊夢が悩みなんて珍しいわね。しかも、紙やペンまで持って……さらに珍しい」 「あんたの失礼さにはもはや構ってられないからそこは無視するとして、これは日記帳よ。阿求にこの前、勧められてね」 開いたページをぺらぺらっと見せる霊夢に、文は「ん?」と声を出す。そのページが、真っ白だったから。 そして霊夢からその日記帳を受け取り、全体をざらっと見るようにぱらぱらと捲る。しかし、どのページも同じように、雪のように真っ白い。いっそ清々しいレベルだ。 「何も書いてないじゃない」 「これがねえ、案外難しいのよ。何をどんな風に書けばいいのか、よく分からなくてね」 「……ふむ。別に変に気負う必要はないと思うけど? 霊夢が思ったことを、思ったままに綴ればそれで。その日あったことを箇条書きでもいいし、その日に抱いた感情を書き連ねても。誰に見せるわけでもないんだから」 「そんなもん、かしらねぇ。まぁ、参考にさせてもらうわ。ありがと」 「お? 本当に今日は珍しい。霊夢が素直にお礼を言うなんて」 「うっさいくたばれ。つーか、そろそろ帰れ。もうそろそろ暗くなるわよ」 「はいはい、それじゃ退散するとしますよー。あ、日記ある程度埋まったら、読ませてね?」 「誰が読ますか! さっきあんた、誰に見せるわけでもないって言ったでしょうが!」 「とか言いつつ、実は他人に読んでもらいたい霊夢なのであった」 「変なモノローグ入れるな! 帰れ!」 くははーと笑いながら逃げ去る文の背中に向かって、子どもみたいに赤くて小さい舌をべーっと出した。 そして一人だけになった部屋で、霊夢はゆっくりと筆を進める。白い世界を、黒で埋めていく。 記念すべき一ページ目には、文のことについて書かれたそうな。 |
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