絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

こちら片道通行につき

あやれいむの日にピクシブさんへ投稿したSSでしたっ。
私がいつも書くあやれいむとは、ちょいと毛色が違う感じの珍しいあやれいむでした。


「あんたさ、今度の土曜日、暇だったりする?」

 珍しく、霊夢からそんな言葉を貰った。
 その日は、人里で夏祭りが行われる日だ。新聞のネタにしようと思っていたから、事前に調べてあった。霊夢がわざわざそんな日を指定してきたということは、直接言葉にしてはいないがそういうことなのだろう。
 よく見ると、霊夢の頬が少し赤く見えた。慣れない誘いに、気恥ずかしさがあるのだろう。きっとそうに違いない。そんな霊夢に思わず笑ってしまいそうになるけど、機嫌を損ねるのも面倒なので堪える。
 えっとその日は、なんて言いながら手帳を広げる。実際は予定なんて調べるまでもなく、フリーなわけだが。そもそも、霊夢からの誘いを受けた時点で、たとえ予定があったとしても、そんなものは知ったことではない。

「えぇ、空いてますよ」
「そう、よかった。ならさ、その日一日、付き合ってくれない?」
「ん、分かりました」

 さらっと、なんてことないように返す。本当は「よっしゃああああああああああ霊夢からのお誘いとかレアなんですけどおおおおおおおおお!?」と叫びながら幻想風靡でもしたい気分だったが、ここはあえて冷静。こういうのは駆け引きが重要なのだ。
あなたのことなんてなんとも思っていない。そんな態度を示すことで、相手の心を揺さぶるわけだ。
 もうあれね、さすが私としか言いようがない。とっさにここまでの判断および行動を起こせるなんて、ね。





 そんなやりとりがあったのが、つい先日。
 そして約束の土曜日、今、私は――

「こらぁ文! 焼きそば八つとわたあめ二つ、早く仕上げなさいよ! お客さん待ってるのよ! 幻想郷最速でしょうがぁ!」
「そういう意味で最速を名乗ったことは、これまで一度もないですよ!」

 夏祭りの屋台で、汗を流している。
 うん、分かっていた。薄々感付いていた。霊夢が私を遊びに誘うなんて、ありえないって。実際は、屋台の仕事手伝えごらぁってことだった。
 確かに、霊夢はあのとき「その日付き合って」としか言ってない。何をするかは言わなかったし、私も訊かなかった。
 けどそれでも、やっぱり期待しちゃうものでしょう! 仕方ないでしょう! 女の子だもん!
 気合い入れて浴衣で来たのが、滑稽に思えてきた。霊夢の格好は普段と変わらない、見慣れた赤のままだし。
 そんなことを思いながら、せっせと手を動かす。ちらりと目の前を見ると、まだまだ行列が続いている。他の屋台よりも、明らかに数倍は客がいる。
それもそのはずだ。なんてったって、この屋台は他と違う。

「文! 射的二人分、用意して!」
「無理ですって! 今やっと、焼きそば作り終えたところですよ! 霊夢さんがやってくださいよ!」
「こっちはりんご飴と輪投げで忙しいのよ!」
「こっちだって、お面とわたあめで対応中ですよ!」

 そう、いろんなものが混ざった屋台なのだ。焼きそば、わたあめ、射的、輪投げ、りんご飴、お面、他にもかき氷や型抜きまで幅広い。わけが分からない。他の似たような屋台の営業妨害もいいところだ。
 ついさっき、慧音がやってきたけど、この屋台を見て「う、うわぁ……」って小さく呟いていた。多くの人でいっぱいだから喧しい空気だけど、それでも慧音のその言葉は耳に届いた。それくらい、衝撃的だった。一度も見たことないくらい、思いっきり引き攣った笑みを浮かべていたもの。
 霊夢曰く「他との差別化を考えた結果。反省はしてない」とのことだった。
 うん、反省しろ。

「ちょっと! わたあめにイチゴシロップかけてるんじゃないわよ!」
「あぁっ!? 間違えたっ!」
「考え事してる暇があったら、手を動かしなさい!」
「分かってますってばぁ! けどこれ、捌き切れるんですか!?」
「捌くしかないでしょう!」
「って霊夢さん! 型抜きで集中しているお客さんの頭に、輪投げ輪乗っけちゃダメでしょ!? どんな間違い方ですか!?」
「あぁもうしんどい!」

 ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、客を捌く。
 夜とはいえ、夏だ。じんわりとした暑さが、体を蝕む。浴衣のせいで、足首近くまで隠れてしまうから、より暑い。汗がつぅっと、太股あたりを伝うのが感じた。気持ちが悪い。
 霊夢の方を見ると、黒髪が汗で額にくっついていた。彼女の必死な表情は、珍しい。それが見れたというだけでも、今日は来れてよかったかな。なんて甘いこと考えてしまっている自分が、少しだけ恥ずかしい。
 もしカメラを今持っていたら、今の霊夢を撮りたい。けど、今日は残念ながら持ってきていない。手帳もカメラも、今日は自宅の机の上だ。仕事モードは完全にお休み。そういう意味を込めて。
 そのはずだったんだけど、何故か仕事しているのよね、今。いや、いつもの仕事ではないけども。これもある種、仕事なわけで。

「はぁ……」
「ため息ついてる暇があったら――」
「手を動かせ、ですよね。分かってますよーだ!」

 できる限り、この時間が早く終わることを祈ろう……。





◇◇◇





「まさか全商品売り切ることになるとは……」
「むしろそのつもりなんじゃないかって、思ってたんだけど。発想の時点で、なんかがめついし。巫女は汚いなって」
「その言い方やめろ。というか、あんた口調……」
「あー? もういいでしょ、仕事モード終わりってことで。だって、売るものないし」
「まぁ、そうね。さて、どうしよう……することなくなっちゃったわ」

 忙しい時間はあっという間、あれからたった一時間と少しで、出せるものは出し尽くしてしまった。
 することもなくなり、用意してあった簡易的な椅子へと腰掛ける。疲労から大きく息を吐くと、それと同時に横からも息を吐く音。どうやら、霊夢もやっぱり疲れていたようだ。同じようにもう一つの椅子に座り、やりきったというように息を吐いていた。
 私たちの出し物は終えてしまったが、祭りはまだまだ続いている。子どもが楽しそうに笑う声や、大人が談笑している声も聞こえる。耳を澄ませてみると、他にも足音、虫の鳴き声、風の音などがよく分かった。
 汗はまだひかないけど、少し落ち着いてきた。
 そういえば、この後どうするんだろう。霊夢自身、予想外だったみたいだけど。祭りはまだ続いているし、これは……一緒に回れる流れっ!

「後片付けは、勝手に人里の人たちが後でやってくれるらしいけど……元からみんなの借り物だしね。あとで売り上げ分配しに行かないと」
「あ、やっぱり借り物とかだったのね」
「そりゃあね。材料とか機材とか、私が用意できるわけないし」
「何故借りる段階で、みんな止めてくれなかったのか」
「何それ面白そうやってくれ是非巫女さん頑張れ、って」
「もうダメだこの里」

 まぁ実際、全部売れたわけだから、里のみんなには好評だったわけで。
 ほんの少し、人里の将来が不安になった。

「それじゃ、出せるものもないし、少し休んだら――」

 こ、これは霊夢からのお誘いっ!

「帰りましょうか。今日はお疲れ、ありがと。別に給金は出さないけど」
「はい違ったー! 分かってたよ! どうせこうだろうと思ったけどさぁ! 分かってたけどさぁ! こうなんていうか、もうちょっと期待を裏切って欲しいっていうかさ! 良い意味で期待を裏切る的な!」
「うぉう!? な、何よ突然……」

 おっと、思わず立ち上がって声を荒げてしまった。
 霊夢が割と本気でドン引きしているので、ここは冷静になろう。
 わざとらしく咳払いを、一つだけ。

「ごめん、ちょっと疲れちゃって、ついぽっくり」
「うっかりでしょうが、くたばるな。まぁそんなに疲れているなら、なおさら早く帰るべきね」

 しまった、墓穴を掘った。もう穴掘って埋まってますって気分だ。このままでは、一緒に回ることなんてできやしない。むしろ、帰るのが自然な流れになってしまった。
 落ち着け、射命丸文。私は誰だ? そう、千年以上生きてきた存在だ。この程度のことで、狼狽えるわけがない。今までどれだけのことを経験してきたか。タンスの角に小指を一秒間に十六回ぶつけることから、戦いにおける命のやりとりまで幅広く経験してきた。
 そんな私にとって、この程度のことはなんてことない。
 そう思い、霊夢をジッと見る。
 すると、何よ何か言いたいことでもあるの、といった様子で霊夢は小首を傾げる。

「~っ!」

 くっそ可愛いこんちくしょう。あっちにとっては無意識の仕草なんだろうけど、こちとら心臓ばっくばくだ。
 えぇそうです、恋愛とかそういう経験だけは一切ないですけど何か問題でも? うん、問題しかない。
 霊夢はもう汗がひいたようで、けれども暑さを感じているらしく、胸元をぱたぱたとしている。そのたびに、ちらちらっとさらしで包まれた胸が見え――見え?

「見えない……だと? 馬鹿な、小さいとは思っていたけど、これほどとは……」
「なんか、物凄く腹立つこと言われた気がするんだけど」
「あぁ霊夢には関係のない話だから、気にしないで」
「……なんかしっくりこないけど、見逃してやるわ。さて、それじゃあ帰りましょうか」

 よっこらせ、というなんとも年寄臭い言葉を言いながら、霊夢は立ち上がる。まずい、このままでは帰る流れになってしまう!
 なんとか、なんとかしなければ……!

「そうだ、せっかくだし晩御飯くらいならご馳走するわよ? 一応、お礼ってことで。私の手料理で良ければ、だけど」
「喜んでお言葉に甘えさせていただきます」
「……何その口調」

 霊夢の手料理。それだけで、今日働いた価値がある。え? 夏祭り? そんなもんより、手料理の方が比べ物にならんくらい価値がある!
 さようなら、夏祭り。こんにちは、霊夢の手料理。
 まるで体が羽のように軽くなった私は、霊夢を急かすように手を引いた。

「さあさあ、早く!」
「ちょ、な、何よ? そんなにお腹空いてたわけ?」

 そういうことに、しておいてもらおう。





◇◇◇





「ご馳走様でした」
「ん、口に合ったようなら何よりだわ。途中、何故泣き出したのかは分からないけど」

 焼き魚、卵焼き、お味噌汁、胡瓜の漬物、そしてほかほかの白米。たったそれだけの、ありふれた食事メニューだった。だが、今まで食べたもので一番美味しいと言いたいくらい、私にとってはご馳走だった。
 食べてる途中、思わず白米の味を噛み締めながら、これが霊夢の味かと思って涙があふれたレベルだ。霊夢が本日二度目のドン引きタイムに入ったけど、そこは気にしないで涙を流しつつ食べ続けた。
 ふぅっと一息吐くと、何やら霊夢がこちらをジッと見つめていることに気付く。なんだろう、顔にご飯粒でもつけてるっていうベタすぎるシチュエーションだろうか。

「あんたさ、そんなに食べるのに困ってるの?」
「……え?」
「いや、だってさっき泣いて食べてたし。久し振りの食事か何かなのかなって」

 可哀想なやつ認定された。
 霊夢の憐れんだ目が、どこぞのメイド長のナイフよりも突き刺さる。
 さすがにこれは誤解を解かないと、私の残念イメージがついてしまう。

「そういうわけじゃ――」
「もしあれだったら、またいつでも今回みたいな簡単な料理くらいならご馳走するわよ?」
「楽しみにしてるわね、約束よ」

 なんということだ、いつでも霊夢の手料理が食べられる権利を得ることができた。私のイメージという何か大切なものと引き換えに、だけど。
 過ぎてしまったことは仕方ない、私のイメージを犠牲に霊夢の手料理がいつでも食べられるのなら、安い対価だ。むしろありがたい。

「そういえばそろそろいい時間だけど、あんたどうするの?」
「どうするのって、何が?」
「今から帰るのも遅いだろうから、泊まってくかってこと」

 へいへいへい、まさかのお泊まりイベント! お泊まりってことは、一緒にお風呂とかそういうイベント発生もあったりなかったりするんじゃないか。裸の付き合いの後、一つ同じ屋根の下で寝るとか……いやいやちょっと待て、さすがにそこまでは早すぎるんじゃないだろうか。私と霊夢はもう少しゆっくり、じっくりと距離を詰めていくべきであるからして、決して私がヘタレだとかそういうことは一切なく、あくまで客観的常識視点から見て云々。

「いえ、今日は帰らせてもらうわ。明日は仕事もあるからね」

 はいヘタレ! ヘタレで悪いか! 気が付いたら、口が言葉を発していたのだから仕方ないでしょう!
 私の言葉に、霊夢は特に残念そうな表情を見せることもなく、いや当たり前だけど。
 たった一言「そう」とだけ返された。そして、何故か互いに無言。あ、あれ? なんだろう、この空気は。
 と、とりあえず、帰った方がいいわよね。言っちゃったし。

「それじゃあ、今日はありがとう。美味しかったわ」
「……別に、さっきも言ったけど、こんな簡単なのでよければいつでも食べさせてあげるわよ」

 いや、料理もなんだけど、それ以外にも霊夢の余裕ない表情とかその他諸々含めて美味しかったって意味で。あ、うん、これ口に出さない方がよさそうだから、黙っておこう。
 それと少しだけ、ほんの少しだけだけど、霊夢がさっきよりも不機嫌そうに見えるのは気のせいだろうか。
 うぅん、分からないし、かといってもう帰らなきゃならないから、考える時間はない。
 軽く一礼をし、手をふるふると振った。すると霊夢も、頬杖をつきながらだけど、空いてる方の手で軽く振り返してくれた。

「じゃ、また今度」
「ん、今日はありがと。またね」

 家に帰ったら、一人反省会だ。今回の議題は、ここぞというところでヘタレるのを改善するにはどうすればいいか、だ。
 よし、頑張ろう、いろいろと。
 そう思いながら、月が眩しい夜空の中を、風を纏って駆け抜けた。着てきた浴衣のせいで、やっぱりちょっと飛び辛かった。





◇◇◇





 おまけ





「はぁ……」

 一人残った部屋で、霊夢はそのまま背を畳に預ける。ごろんと横になり、天井を見上げる。頭に浮かぶのは、文の顔。

「素直になるのって、難しいわねぇ」

 思い返すのは、今日の一日。夏祭りにまともに誘うこともできず、結果的に一緒に過ごす時間は作れたけども、それも最後の最後で玉砕。お泊まりの誘いは、簡単に断られてしまった。

「慣れないこと、するもんじゃないわね……」

 思わず、苦笑いを零す。
 そして――

「……ばか、ヘタレー」

 ぽつりとそう呟いた言葉は、誰に届くわけでもなく、宙に浮いてそのまま消えた。
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