絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

喧嘩して

ヤマパルなお話。




「そもそもあなたは、もう少し他人と接するべきであって――」
「あーあー聞こえませーん! 映姫の説教を耳にするくらいなら、蝉の鳴き声一日中聴いている方がまだマシでーす!」
「なっ!? あ、あなたねぇ! そんな性格だから、さとりは友達いないんですよ! 能力のせいでー能力のせいでーって言ってますけど、あなたの性格が一番の原因なんじゃないですかね!」
「っ! わ、私にだって友達くらい居ますし!」
「ほぅ、言ってみなさい! 言っておきますけど、私以外で、ですからね!」
「ちょ、それは反則じゃないですか!」

 ぎゃあぎゃあと騒ぐさとりと映姫。それを少し離れた所から、やや冷めた目で見つめるのはパルスィだ。その隣に、苦笑いを浮かべてヤマメも立っている。
 勇儀に宴会のことを伝えてくれと頼まれ、さとりの元へとやって来た。そして途中、ヤマメと遭遇して一緒に行くことに。そこまでは良かったのだが、パルスィが訪れてみれば目的の人物であるさとりは何故か喧嘩していた。しかも相手は、閻魔様である映姫だ。
 パルスィもヤマメも、思わず言葉を失って固まってしまった。喧嘩していることにも驚いたが、普段大人しいさとりが声を荒げてがうがう騒いでいるその様子は、ギャップが強すぎた。
 少し涙目で唸っているさとりに対して、映姫はわざとらしくため息を零している。

「さとり、あなたは少し他者に関心が無さ過ぎる。あなたに出来る善行は――」
「あ、映姫、後ろ」
「はい? あら、あなた方は……」

 さとりがふとパルスィたちに目をやると、映姫もそれにつられて後ろに視線を向けた。そこでやっと、パルスィとヤマメという存在を認識。
 すると映姫は、パルスィとヤマメの手をぎゅっと握った。突然のことに、びくっと震える二人。

「水橋パルスィと黒谷ヤマメ、ですね?」
「そ、そうだけど」
「えっと、はい」
「さとりとは、どういった仲です?」
「どういったって……まぁ友達?」
「そだねぇ、友達」
「そうですか! さとりは中々素直になれない子ですが、どうかこれからも仲良くしてやってくださいね」
「あなたは私のおかんですか!? 何勝手に恥ずかしいことしてるんですか!」

 映姫の頭部に、空中さとりチョップが炸裂した。しかし、さとりは非力な方なので、大したダメージは無かった。
 さとりは顔を赤くして、そのまま映姫を殴り続ける。殴るといっても、傍から見ればぽかぽかという擬音が似合いそうな、そんな力の緩さだった。

「えっと、いちゃついてるところ申し訳ないんだけど……本題入って良い?」
「あ、はい、すみません……って、いちゃついてないですから!」

 否定するさとりの言葉を軽く無視して、パルスィはここへ来た理由を説明する。明日宴会が開かれること、その日時や場所などを大まかに伝えた。
 用件はそれだけだから、とパルスィがその場を去ろうと踵を翻す。ヤマメも少し遅れて、そのままパルスィに続く。

「良かったですね、さとり。お友達からのお誘いじゃないですか」
「行きませんけどね。私がそんな人の多い所へ行ったら、空気が悪くなるのは目に見えてますし」
「なっ!?」
「それにほら? 映姫曰く、私は性格が悪いそうなんで。能力とかじゃなくて、性格が原因らしいので。ならもう、より行かない方が良いですしね」
「っ……」
「それに私は、よく知りもしない大勢の他人に囲まれているより、映姫と二人の方が楽しいです」
「さ、さとり……」

 背後から喧嘩なのかのろけなのかよく分からないやり取りが聞こえてきたが、パルスィもヤマメも無視してそのまま帰った。
 喧嘩にしろのろけにしろ、面倒臭いことには変わりないからである。



◇◇◇



「なんか、凄かったね。あんなアグレッシブなさとりん、初めて見たよ」
「いつもは澄ました表情で淡々とした口調だから、あんなに感情はっきり表してるのはギャップが凄かったわ」

 地霊殿からの帰り道、静かで人気のない道。
 ヤマメとパルスィは歩きながら、言葉を交わす。パルスィの方が少し歩くのが早いのか、ヤマメはとてとてとパルスィの斜め後ろを歩く。

「でもさ、ちょっと羨ましいかな」
「何言ってるのよ。確かにあんたは、さとりよりも胸が小さいけど、大差があるわけじゃないんだから。そんなに羨ましがるほどでもないでしょう」
「違うよ!? 今の流れでどうしてそっちにいくの!?」
「あぁごめん、ついイメージで」
「私にそこまで貧乳なイメージ持ってるの!? あるから! これでもちゃんとお胸ありますから!」

 わざわざパルスィの前に回り込んで、平べったい胸を張って、そう主張するヤマメ。
 パルスィは無言で手を伸ばし、そのままヤマメの胸を撫でた。ぺたぺた。なでなで。ひゃあっと、ヤマメが声を上げた。しかし、無視して触り続ける。服の上からでは、感触がよく分からなかった。
 しばらくして、胸から手を離す。そして親指をグッと立てて、良い笑顔で、そうとても良い笑顔で――

「どんまい」

 そう言った。

「そこはっ! そこは是非……妬ましいって言って欲しかった!」
「ごめん、妬ましさの欠片も無かった。で、ヤマメの胸の話は置いておくとして、何が羨ましいのよ?」
「うん、胸の話はそのまま、一生何処かに放置しておいてくれると嬉しいかな。羨ましいって言ったのは、あの二人の関係に対してさ」
「関係?」
「だってなんか、互いに何も遠慮してないような感じだったから。あぁいうのって、よっぽど信頼してないと難しいと思う。二人が言い合ってるの見て、あー仲良いんだなーって思ったもん」
「まぁ喧嘩するほどなんとやらって言うしね」

 パルスィの言葉に、ヤマメの足が止まった。
 一体どうしたのかと、パルスィも足を止める。そしてヤマメの方を向くと、きらきらとした表情を浮かべていた。

「そっか! それだ! パルスィ、喧嘩しよう!」
「……あんたのそーいう、唐突にわけ分からないこと言うところ、直した方が良いと思うわ」
「いやほら私もパルスィと、さとりんと閻魔様みたいな仲になりたいなって思って。こう、なんて言うの? もっと深い関係になりたいなーって」

 にへらっと笑うヤマメに対し、パルスィは不機嫌な表情だ。少しの間ヤマメをジトっとした目で睨みつけた後、再び歩き始めた。少しだけ、早歩きで。
 その様子に、ヤマメは慌てて追いかける。

「ちょ、どうしたのさパルスィ」

 そう声を掛けるも、パルスィは無言だ。ヤマメの方を見向きもせず、そのまま早歩き。
 ヤマメはどうして良いか分からず、ただ置いていかれないようにパルスィを追いかける。その顔には、焦りや戸惑いが含まれている。それもその筈で、ヤマメからすれば何故パルスィが突然こうも不機嫌になったのか、分からないからだ。

「ごめん、なんで怒ってるのかは分からないけど、ごめんなさいっ」
「……怒ってる理由も分からないのに、とりあえず謝っておけっていう姿勢はより怒りを買うだけよ」
「えぁ、ご、ごめんっ。でもっ、なんで、急にそのっ! えっと……」

 不機嫌なパルスィと目が合うだけで、あたふたと落ち着きなんてものは無くなってしまう。

「あんたのさっきの言葉、あれじゃ私とヤマメがさとりと閻魔よりも仲深くないって言い方じゃない。私はあの二人に負けないくらい、もうあんたとは親密だと思ってたのに。けどそれは、私の勝手な思い込みだった、ってことよね。とんだピエロね、私」
「っ!? ち、ちがっ――」
「もういい。ヤマメは優しいもんね、きっとそれを否定してくれる言葉でもくれるんでしょう? そういうのは私、求めてないから。だから、もういい」
「~っ!」

 パルスィの言葉、冷たい声、そして少しだけ寂しさを帯びた瞳が、ヤマメを責める。
もちろん、ヤマメはそんなことを意識して言ったわけではない。しかし、どうしてあんなことを言ってしまったんだと、酷く後悔していた。何か言わなければならないことは分かっているが、まるで金縛りにあったかのように体は動かない。
 パルスィと視線が交わったまま、固まり続ける。少しだけ、目には涙が滲み始めた。それでも言葉は、やっぱり何も出てこない。

「ぁ――」
「とまぁ、これがヤマメの望んだ喧嘩なわけだけど。どうだった?」
「って、うえぇぇぇぇぇっ!?」

 何かを言おうとして発したヤマメの言葉は、突然ふにゃっと緊張を解いたパルスィによって驚きの声に変わった。
 さっきまでのパルスィの言動が、演技だったということを理解すると、ヤマメは安心やら怒りやら嬉しさやらいろんな感情でいっぱいになった。

「ひ、酷いよパルスィ! 私、心が凍りついたかのようになっちゃったじゃん!」
「涙目になったのを見て、あぁやりすぎたかもってのは正直思った。そこはうん、ごめん。けど、全部が全部ウソってわけじゃないわよ。ちょっとショックだったのは、本当だし」
「ぅ、それはその、こっちこそごめん……」
「良いわよ、別に。ヤマメがそんなこと意識して言うようなやつじゃないって、分かってるし。これでもなんだかんだで、あんたとは長い付き合いだからね。一度も喧嘩らしい喧嘩はしたこと無かったけど、これが初ってことで」
「……自分から喧嘩したいって言っておいてなんだけど、これが最初で最後であって欲しいよ。もうあんな気持ち、味わいたくないし味あわせたくもない」

 もうこんなことはこりごりだ、とヤマメは苦笑いを零す。

「そうね、私もできることならしたくないわ」
「それじゃあ、はい」
「何よ、この手?」

 にぱっと可愛らしい笑みを浮かべ、ヤマメが手を差し出す。
 パルスィはわけが分からず、首を傾げた。

「初めての喧嘩の記念、初めての仲直りってことで。仲直りの印に、手を繋いで帰ろう!」
「何よ、その理屈」
「そしてそのままパルスィの家に行って、泊めてもらう! この傷付けられた心を癒して貰うために、今日は一日中パルスィと一緒に居ることにする!」
「はぁ、勝手なことを……」

 呆れたようにため息を零しつつも、パルスィはヤマメの手をぎゅっと握った。
 互いの手から、確かな温かさが伝わる。ふにゅりとした手のひらの感触が、心地良い。ヤマメが嬉しそうに笑った。

「えへへ、それじゃあこのままパルスィの家までー」
「言っておくけど、客用の布団なんて無いからね。一緒の布団でも、文句言わないこと」
「うんうん、りょーかいっ!」

 ヤマメがきゅっと手に力を入れると、パルスィもぎゅっと握り返す。それを何度も繰り返す。
 ただそれだけのことで、二人は握った手だけではなく心まで温かくなるのを感じた。
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