絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

お休みの日

さとえーき! 

 
「なんだか映姫の家に来たのって、凄い久し振りな感じが。最後に来たのって、もう八年くらい前でしたっけ」
「いえ、二日前ですね」

 まだ寝巻のまま、寝起きのややぼぅっとした目で目の前に居るさとりを睨む。
 さとりがどうやって家に入って来たか、なんてことはわざわざ訊いたりしない。合鍵をさとりに渡したのが、映姫自身だからだ。映姫は仕事上、丸一日休暇が決まっている日以外は家に居ない時間の方が多い。その際にさとりがわざわざ家にやって来た場合、申し訳ないということで渡した物だった。
 だが、合鍵を手にしてから、さとりはまるで狙っているかのように早朝やら深夜やらにやって来るようになった。
 仕事の疲労が溜まっている映姫からすれば、面倒なことこの上ない。

「なんですか、嫌がらせですか? 私は眠いんですよ」
「私だって眠いんです。映姫の家まで、結構遠いんですよ? それをこんな朝早くに訪れる為、早朝よりも早い時間に地霊殿を出発してるんです。ちょっとはこの努力を、褒めてあげても良いんじゃないかと」
「その努力を仕事に向けなさい」
「映姫に会いたいなっていう、私の乙女心を少しは察してください」
「その乙女心でもう少し相手を思いやって、時間を考えてくれると嬉しいのですが」
「ほら、恋は猪突猛進って言うじゃないですか。愛ゆえにです」
「言いません。そしてそんな愛は、迷惑極まりないです。とりあえず私はまだ寝足りないので、このまま寝かせてもらいます」

 布団の中にもぞもぞと潜り込む映姫。
 それに続いて、布団に潜り込むさとり。
 しばし、沈黙。
 狭い布団の中で、互いの背中をぴったりくっつける形で横になっている。
 少しして、映姫の方から口を開いた。

「……何をしているんですか、あなたは」
「映姫が穏やかに眠れるよう、添い寝を」
「あなたが居なければ、何事も無く穏やかだったわけですが」
「実は映姫を誘ってるんです」
「そういうのは夜にしてください」
「え? 夜なら良いんですか? きゃー映姫のえっちー」
「その点に関しては魅力的なさとりが悪い」
「……へ? あ、ぇ、ぅ、あー……ありがとうございます?」

 思っていた反応と違う反応が返って来たので、思わず言葉に一瞬詰まってしまった。さとりは映姫が嘘をついたりはしないことを、ちゃんと知っている。つまり今の映姫の言葉は、本心なわけで。
 そう考えると、さとりは顔が少しだけ熱くなった。

「えっと、映姫?」
「……すぅ」

 声を掛けると、返って来たのは言葉じゃなくて寝息だった。今の数秒の間に、眠ってしまったらしい。よほど眠かったのだろう。
 さとりはさてどうしようか、と考える。映姫を起こしてしまっても良いが、それをしたら今度こそ『ラストジャッジメント~二度寝妨害の罪は金よりも命よりも重い~』を喰らう気がしてならない。そう思い、ここは大人しくすることを選んだ。

「くぁ……」

 欠伸を一つ。正直、さとりも眠かった。
このまま、本当に添い寝するのも悪くないかもしれない。さとりはそんなことを考えながら、ゆっくりと瞼が重くなっていくのを感じた。





◇◇◇





「額に『肉』じゃなくて『罪』って書かれたの、初めてですよ。いや、別に『肉』って書かれたことも無いですけど」
「人の睡眠を邪魔した癖に、あまりにも寝顔が穏やか過ぎて少々腹が立ったもので」

 濡れタオルで額を拭いているさとりだが、中々文字が消えない。
 さとりが目を覚ました時、まず真っ先に視界に入ってきたのは天井ではなく、馬乗りになった映姫の姿だった。最初は「え? 私寝てる間に襲われてた?」と思ったさとりだったが、映姫の片手にマジックが握られているのを見て、なんとなく現状を把握した。
 さとりは鏡を見て、完全には消えてないが文字がだいぶ薄くなったことを確認し、拭くのをやめた。

「で、結局あなたは今日、何の用で来たんですか?」
「遊びに来ました」
「溜まった報告書は?」
「ほ、報告……書……!?」
「何それ初耳、みたいなリアクションしてもダメです。五時間お説教コースと一時間耐久ギルティ・オワ・ノットギルティのどちらが良いですか?」
「映姫はもう少し、心にゆとりを持つべきだと思います」
「御忠告感謝しましょう。そのお礼に、私の面白いお話をさせてください。主に十時間ほど」
「それ絶対お説教ですよね? しかも倍になってますよね? というわけで、私はもちろん逃げさせていただきます!」

 立ち上がり、映姫に背を向けて、ドアの方へと全力で走るさとり。

「甘いっ!」
「ひゃぅあっ!?」

 しかし、もちろん映姫が許さない。悔悟の棒を投げ、見事それがさとりのお尻に刺さった。
 さとりはそのまま四つん這いになって、ぷるぷると震える。

「……え、映姫、いくらなんでもこれは酷いと思います。絵的にも痛み的にも羞恥心的にも」
「その痛みや羞恥はあなたの罪の重さです。これからは善行をつむことを勧めます」
「いや、明らかに映姫の物理的攻撃のせいですよね」
「ほら、抜きますから動かないでください」
「はぅっ!?」

 映姫が無造作に悔悟の棒を引き抜いた。
 さとりはお尻を擦りながらジト目で、映姫を睨む。

「うぅ、映姫に汚されました」
「人聞きの悪い。私はあなたを裁いただけです」
「お尻に悔悟の棒突き刺すのが裁きって、最近の裁判は斬新なんですね」
「ふむ、もし本当にさとりが私の目の前で裁かれる日が来るのなら、そのときは特別にその方式で裁判をして差し上げましょう」
「嫌ですよ、そんなの。あれですよ、映姫は女の子のお尻大好きって噂流しますよ?」
「やめてください、私が変な人だと思われるでしょうに」
「映姫は割と元から変わり者で有名だとは思いますが」
「一体私の何処が変わっていると――」
「説教して幻想郷中を回ったりする時点で、十分変わり者かと」
「さあ、そろそろ朝ご飯にしましょうか。私ちょっと作ってきますね」
「さらっと流しましたね」

 映姫が台所へと行き、ご飯を作っている間、さとりは何か忘れていると思った。
 何か結構重要なことを忘れている。忘れているという確信はあれど、肝心の内容が思い出せない。そしてどこか、嫌な予感がする。
 その答えは、数分後にすぐ分かることになった。
 お待たせしました、と映姫が戻って来たのだ。両手におにぎりを一つずつ持って。

「……あぁ、忘れてました。映姫は料理が全く出来ないということを」
「失礼な。簡単なものくらいなら、私にだって出来ます」
「レパートリーはおにぎりとゆで卵の二種類でしたっけね。しかも、ゆで卵の方に関してはたまに失敗もしますよね」
「おにぎりは良いですよね。こう形を作るときに、手に愛情を込めて握れる素晴らしい料理だと思います。包丁なんて危険なものを使わなくても済みますしね」
「包丁を持った映姫の姿は、なんというか抱き締めてあげたくなっちゃいます。もういいっ、分かったから! 気持ちは十分伝わったから、無茶をするなっ! みたいな感情が涙とともに溢れ出て来ます」

 さとりはおにぎりを受け取り、ゆっくりと口に運ぶ。さとりが食べたのを見て、映姫も食べ始める。
 互いに無言で、もきゅもきゅもきゅと食べ続ける。
 不味いわけではないのだが、特別美味しいわけでもない。なんともリアクションに困るくらいに、普通の味だった。
 さとりがちらっと映姫の方を見ると、映姫もさとりの方を見た。視線が交わる。言葉は無いが、アイコンタクトで何が言いたいのか分かる。さとりにいたっては、心が読めるのだからより確実に映姫の言葉を読み取れる。
 美味しいですか。いえ、まぁ、普通です。そうですか。このなんとも微妙な空気をどうにかしてください。なんで私が。あなたのおにぎりが原因でしょうが。別に不味いわけじゃないのだから良いじゃないですか。じゃああなたから何か言葉発してくださいよ。嫌ですよなんか嫌ですよ。
 そんなやり取りを、互いに無言のまま行った。
 そしておにぎりを食べ終えて、先に口を開いたのは結局映姫の方だった。ため息混じりに、言葉を紡ぐ。

「はぁ、さとりと居ると、なんでこんなにも疲れることが多いのか」
「今さっきまでの空気に関しては、私は悪くないと思いますけどね」
「お世辞でも良いから、わぁすっごく美味しいーとかリアクションしてくれるのが基本だと思います」
「それ多分、さっきやってたら、もっと酷い空気になってた気がします」

 きっと虚しいだけだろうな、とかそんなことをさとりは思った。
 映姫がこほんと咳払いを一つ。

「ところでさとり、今日はどのくらいまで家に居るつもりですか」
「話変えるの下手ですね」
「う、うるさいっ! そんなこと言うなら、今すぐ追い返しますよ!」
「はいはい、ごめんなさい。そうね……ただなんとなく映姫に会いたいなって思って来ただけなので、目的は既に達成してるんですよね」
「……あなた、さらっと恥ずかしいというか照れることを」
「映姫が朝寝る前に言った言葉よりは恥ずかしくないと思いますが」
「え? あれは私の本心なので、別に恥ずかしくも無いと思いますけど。さとりはとても魅力的ですよ?」
「……私は映姫の基準がよく分からない」

 少し俯いて、映姫から顔を見えないようにするさとり。嬉しさやら恥ずかしさやらで、きっと今自分でもよく分からない表情をしているから。そんなことをさとりは思った。
 映姫は何かおかしいだろうか、と首を傾げている。

「せっかくですし、泊まっていきますか?」
「それはあれですか、襲っちゃうぞ的な意味ですか」
「ただ単に、あなたに早朝や深夜に来られるよりは、泊めてしまった方が楽だと思っただけですよ。さすがに二日連続で、朝早く起こされたりはしたくないので」
「そんなこと言って、やっぱり襲ったり」
「しませんって」
「とか言いつつ、夜になると襲われてしまう可哀想な私」
「だからしませんってば」
「まぁそれは冗談として、映姫さえ良いのなら今日はお言葉に甘えるとします。久し振りに映姫の家に泊まるのも、悪くはないです」
「ん、そうですか。分かりました」

 さとりの言葉に、映姫はにこっと笑う。
 さとりにとっても映姫にとっても、互いに一緒に居られる時間が多いのは素直に嬉しい。
 こうしてさとりは、映姫の家に泊まって行くことになった。



 結局その日、襲ったり襲われたりなことがあったのか。それを知るのはさとりと映姫だけである。
東方SS | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<ありすっ! | ホーム | 大体いつもこんな休日!>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |