大体いつもこんな休日!2012-09-17 Mon 22:36
9月14日マイピクかつついったーとかできゃっきゃさせていただいている、しぐポンさんのお誕生日に贈った小ネタでした。
「文ってさー」 「んー?」 あまり広くは無い部屋に、文とはたてとにとりと椛の四人が適当に腰掛けている。別に何か用があるわけでもなく、たまになんとなく誰かの家に集まってぐだぐだするのが、四人の休日の過ごし方だった。そして今日は、椛の家だ。 「博麗の巫女のこと、好きじゃん?」 「あーうん、そうねー……って、何言わすのよ。違うからね?」 はたての言葉に、あえて一回乗ってからツッコミを入れる文。 「えーけど文さぁ、気付いてないかもしれないけど、あんた博麗の巫女の話題のときはいっつも目きらきらさせてるじゃない」 「そうですね、そのときの文さんは正直ピュアな表情すぎて、ちょっと気持ち悪いですね」 「それはネタとしてあの巫女が優れている存在だからであって、新たなネタが手に入る純粋な喜びのせいですよ。あと椛は、後で一発殴らせてね」 椛のさらっと吐いた毒を聞き逃すこと無く、さらにははたての言葉もちゃんと否定する。 そして一人話の輪に入っていないにとりは、小さな手のひらサイズの機械を弄り回すことに集中しているようだ。文たちの会話には、微塵も興味を示していない。 「じゃあ文は、別にあの巫女が好きなわけじゃあないのね」 「そうよ。そうに決まってるじゃない。大体なんで私が人間なんかを……」 「人間なんかって言っても、博麗の巫女ってそこらの妖怪なんかより化け物染みてる気がしますけど。身体能力、判断力、洞察力、技術力、そして戦闘センス、どれもが優れているのは驚異的かと」 「あら? 椛は意外にも、博麗の巫女のこと評価してるのね」 「私は結構、あの人好きですよ」 「えっ」 「どうしました、文さん?」 「どうしたのよ、文?」 椛の言葉に、文が一瞬だが反応した。ぴくっと反応した。分かり易いくらいに、反応した。 椛もはたても、首を傾げる。相変わらず、にとりは興味を示さない。 「……別に、なんでもない」 「なんでもないって顔じゃないですよ、それ」 「そうね、その顔はどっちかって言うと、あぁ私も巫女のことが好きなのに椛はさらっと好きだなんて言えて羨ましいヘタレな私じゃ怖くて冗談でも言えないわうわーん、って顔ね」 「そんなんじゃないわよ! 何よその具体的な顔!?」 「いやいや文さん、そうやってむきになっちゃうところがより怪しいですって。それにほら、私たちは文さんが素直じゃないってことくらい、もう知ってますし。いやぁすみません、文さんのことを考えたら、こんな簡単に好きとか言うべきじゃなかったですね」 「そうよ、椛。文はさっき、椛が恋のライバルになるどうしよう私どうすれば、って不安になってたでしょうし」 「なってないから! 全然なってないから!」 「安心してください、文さん。私は博麗の巫女のこと、恋愛対象として好きってわけじゃないですから」 「だってさ、良かったね文!」 「~っ! あんたらね~……っ! あぁもうっ、にとりも何か言ってやってよ!」 突然話題を振られたにとりは、んぁっ? と呆けたような声を返した。 「ごめん、何の話?」 「文さんが告白するって話」 「文が博麗の巫女に恋してるって話よ」 「違うからね!? にとり、こいつらの言うこと信じちゃダメよ!」 「んー私にゃあ、そーいうことよく分からないけどさぁ……そうだね、もしもの話をしようか」 「もしもの話?」 にとりの言葉に、文が疑問符を浮かべる。 するとにとりはへらへらと笑いながら、あぁ仮定の話だから適当に聞けば良いさと言う。 「もしも、文が博麗霊夢を好きだったとする」 「だから違うってば」 「まぁまぁ、にとりはもしもの話だって言ってるじゃん」 「そうそう、もしもだってば」 「むぅ……それで、私が仮に巫女を好きだとしたら何?」 少し納得がいかないといった表情で、けれども一応ちゃんとにとりの話を聴く気にはなったようだ。 「博麗霊夢は、人妖種族問わず好かれている存在だ。何かの話題の中心には、彼女がいることが多い。異変解決とかあるから、当たり前っちゃ当たり前だけどね。前に魔理沙が言ってたんだけどさ、人里でも密かに老若男女問わずちょっとした人気になってるらしいよ」 「……ふーん。で、結局何が言いたいのよ、にとり」 いまいち話の核心が掴めない文は、答えを急かす。 にとりはそれに対し、笑いながら、けれども少しだけ真面目な声で言葉を紡ぐ。 「ちょっとは本心曝け出して素直にならないと、損するよってこと。ただでさえライバル多い上に、当の話題の本人である霊夢は、そーいうの鈍そうな人間だしね」 「あぁそういえばあの巫女、前取材したときに人妖問わず人気の秘訣はって訊いたら、博麗の巫女が他者から好かれるわけないでしょ、って言ってた。確かに周りからの好意に、鈍感な面があるかもね」 「へぇ、意外ですね。あの勘の良さやら判断力やらは、戦闘に関してのみってわけですかね」 「……素直になるもならないも、そもそも仮定の話に興味は無いわ。興味は無いし、関係も無いけど……ん、ありがと、にとり」 「もしもの話に、お礼を言う必要なんてないだろう」 「それでも! 言っておきたかったの!」 「はいはい、じゃあその言葉は受け取っておくよ。頑張れ、文」 「私も応援してるわよ、文! 振られても成功しても、どっち転んでも面白そうだし! でも失恋を記事にしたところで、面白くもなんともないから、できれば成功しなさいよ!」 「そうですね、精々頑張ると良いんじゃないですかね。振られる可能性の方が高いと思いますが、泣かれて愚痴られても鬱陶しいですし、良い結果になることを願っておきます」 にとりの素直な応援、はたての少し遠回しな応援、椛の素直じゃない応援、そのどれもが文にとって恥ずかしいながらも嬉しかった。 はたてや椛にもありがとうと口を開こうとした瞬間―― 「それで、いつ告白するの?」 「へ?」 「せめて少し素直になって、巫女とか霊夢さんじゃなくて、霊夢って呼び捨てできるようになりましょうね。前から文さん、呼び捨てすら恥ずかしがって避けてますし」 「へーそうなんだ。こりゃ素直になれないっていうより、ただのヘタレ?」 「あ、あんたたちやっぱり面白がってるでしょ!」 「いえいえそんな、誤解ですよ。あ、三日以内に呼び捨てできなかったら、文さんの二つ名『幻想郷最速のヘタレ』にしますからね」 「よーし椛、まずはあんたからぶん殴ってやるから、ちょっと立て」 ぎゃあぎゃあと暴れ出す文。 結局大体いつも通り、ぐだぐだな休日になってしまった。 ちなみに文が結局霊夢を呼び捨てに出来たのかは、また別のお話。 |
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