絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

二人一緒

ヤマメさんとパルスィさんで軽めのお話。
 
 
「おっはよぅ!」
「……」

 パルスィが目を覚ますと、視界には馬乗りになっているヤマメの姿。地底の薄暗さに似合わないような、明るい笑みが少し眩しい。
 この状況、パルスィが言いたいことはたくさんある。人の家に勝手に入るな、何乗っかってるのよ、睡眠を妨害するな、などなど。いつもなら、その言葉と共に一発拳をくれてやるところだ。
 だが、今日は少し違った。パルスィはとにかく眠かった。春だからか、それともただ単に寝不足なのかは分からない。眠くて眠くて、仕方が無かった。

「さぁパルスィ、起きて私と遊ぼうか――って、ひゃぁっ!?」
「……うっさい、おとなしくしなさい」

 パルスィは腕を伸ばし、ヤマメを捕え、そして力強く抱き寄せた。ヤマメの背中にしっかりと腕を回し、ホールドしている。
 いつも通り拳が飛んでくると予想していたヤマメだったが、予想外の出来事にかぁっと顔を赤くして慌てる。

「ちょ、パル子! い、一体何をっ!」
「パル子言うな。あれよ、なんていうかほら、私の安眠妨害した罰として抱き枕になれ的な」
「意味が分からないっ!」
「んーぬくぬくね。思ったよりも、気持ち良いわ」
「話を聞いて!?」

 目を細めて、珍しくほぅっと穏やかな表情を浮かべる。だが、そんなパルスィの表情も、抱き締められている状態のヤマメからは見えない。
 ヤマメはジタバタと暴れるが、思いのほかパルスィの力が強くて離れることが出来ない。むしろ暴れるたびに、より強く力を込められる。
 ぎゅーっ。

「蜘蛛なんだから、獲物が巣にかかったとでも思って諦めなさい」
「この場合、私が食べられる立場になっちゃってるじゃん! 逆だよ! 本来なら私が食べる方だよ!」
「はいはい、良い子だから静かになさい」
「わわっ、頭撫でないでっ。というか、離してってばぁ!」

 片腕でヤマメをホールドし、もう片方の手であやすように頭を撫でる。ふわっと柔らかい感触が、また心地良い。
 初めは抵抗していたヤマメだが、次第にそれも弱まり、今ではパルスィに抱き締められながら唸っている。うーうーと。

「うぅ、パルスィのばぁか」
「何よ、そんなに嫌?」
「嫌っていうか、その、恥ずかしいじゃん……」
「大丈夫よ。抱き心地は良いし、髪はふわふわでさらさらだし、良い匂いだし」
「だからそーいうことを言うなぁ!」
「あーもう、耳元で煩いわよ。褒めてるっていうのに、何を怒ることがあるのよ」
「はぁ……もういいよ、諦める。抱き枕でも何でもしたらいいさ」
「何でも? じゃあこれから毎日私の抱き枕にでも――」
「うん、前言撤回させて」

 ヤマメはため息を零しつつも、春の暖かさとはまた違う、心地良い温かさを感じていた。パルスィの欠伸に、ヤマメもつられて欠伸を一つ。
 少しして、ヤマメの耳にすぅすぅと穏やかな寝息が聞こえてきた。眠っているパルスィならば、今のこの状況から脱出するのは容易いかもしれない。
 しかし、ヤマメはこのままでいることを選んだ。くぁ~と、また欠伸。

「んっ、おやすみ……」

 そうぽつりと零して、ヤマメは目を閉じた。



 ◇◇◇



「ぅ、ん……」
「あら、目が覚めた?」
「ほえ?」

 ヤマメが未だはっきりしない目を擦りつつ、声のした方へと顔を向ける。そこには卓袱台に頬杖をついているパルスィの姿があった。
 ヤマメはゆっくりと上半身を起こし、布団から出る。

「……え? あれ? 私、パルスィと一緒に寝てた気が」
「そうね、抱き枕ありがとう。ただ単に、私が先に起きただけよ」
「そっか」
「あ、そうそう御馳走様」
「え?」
「寝顔」
「……はい?」
「いやーあまりにも幸せそうに寝てるもんだから、何か悪戯の一つでもしてやろうかって思ったんだけどさ、あんたの寝顔見たらそんな気も失せちゃった。それくらい可愛らしかったというか、不覚にもきゅんときたっていうか……本当妬ましかったわ」
「~っ! ぱ、パルスィ!」
「何よ? 寝起きに飲み物? そう言うと思って、既に用意してあるわ。はい」
「あ、ありがと……じゃなくって!」

 思わず渡されたコップを投げてしまいたい衝動に駆られたが、なんとかそれを抑える。そんなヤマメに、一体どうしたのかと首を傾げているパルスィ。
 鈍感なのかわざとなのか、前者だとしたら殴りたいし後者ならもっと殴りたい。ぷるぷると体を震わせながら、ヤマメはそんなことを思う。

「なんかさぁ、抱き枕にしたときも思ったけど、ヤマメって褒められることに弱いわけ? あんたは人気者だから、褒められ慣れてると思ってたんだけど」
「こーいうのに慣れとか無いよ。それにパルスィに言われると、他の人に言われるよりいろいろとクるし」
「は? なんで?」
「そこはまぁ、置いておくとしてね。パルスィは褒められても、大丈夫なタイプなの?」
「大丈夫っていうか、ありえないし。私が褒められるとか」

 パルスィはいかにもそんなこと起こりえない、といった態度だ。
 しかしヤマメは、いやいやいやと首を振る。

「パルスィ褒めるところ、いっぱいあるじゃん! 綺麗だし、なんやかんやで面倒見良いし、笑った顔とか凄く魅力的だし!」
「はいはい、ありがとありがと」
「何その信じてません的な返事!?」

 本当だってばとヤマメは言うが、パルスィは手をひらひらとやり「そういうのいいから」と鬱陶しそうにする。

「む~嘘でも冗談でも無いのに」
「だとしたら、眼科に行くことをお勧めするわね。ありえないってーの」
「ありえるよ。だって私、パルスィのこと、その、あの……好きだよ?」
「あはははは」
「笑うところじゃないよね!?」

 棒読みな笑いをするパルスィに、ヤマメは頬を膨らませる。
 もっと自信を持って良いのに、パルスィには良いところいっぱいあるのに。そういう想いがあるからこそ、ややムッとしてしまう。

「パルパルはもう少し、自分に自信を持った方が良いと思うよ」
「パルパル言うな。自信って言ってもねぇ……私よりも断然魅力あるあんたに言われてもなぁ」
「そんなこと無いって。パルスィ、私より魅力的なとこたくさんあるってば。ちょっと真面目に考えてみなよ」
「考えるって言っても……あ、そうね、胸はあんたよりは大きい」
「よりによってそこ!? くっそぅ今凄く蹴り飛ばしたい気分だよ!」

 胸は大きさじゃない小さいのが魅力的な場合もあるそれに形だって、と頭を抱えてぶつぶつ呟いてくヤマメ。その姿からは、少し黒いオーラが見えた。
 パルスィはそんな様子を見て、あぁ意外に気にしてたんだとか呑気なことを思う。

「うん、胸の話はとりあえず置いておこうね? 次胸の話したら、その口塞ぐためにちゅーするからね?」
「してみなさいよ」
「え!? あ、ぇ、やぁ……ぅ」
「なるほど、これがヘタレってやつね。勉強になるわ」
「何の勉強だよ!? あと私はヘタレじゃないから! あぁもう、そんな話じゃなくて……」
「他人の妬ましいところ、良いなって思えるところならパッと思い付くけど。自分となると……」

 しばし考える仕草をした後、ふぅっとため息を零す。そしてヤマメの方を向き、ふるふると首を横に振る。

「やっぱり特に無いわね」
「はぁ……もういいや、パルスィの良いところは私がちゃんと分かっているから、それで良いよ」
「良いところなんて、あるのかしらねぇ」
「良いところが何一つ無いような相手と、私がこうして一緒に居ると思う? こうやって友達してると思う?」
「え? あんた友達のつもりだったの?」
「おぉいっ!? さすがにそれは傷付くよ!?」
「ん、冗談。ごめんごめん、ありがとね」
「まったく……」

 今度そんなこと言ったら冗談でも怒るからね、と既に少し怒った様子のヤマメ。だが、本気で怒ってないことは分かる。そのせいか、迫力も何も無く、どちらかというとただ可愛らしいだけ。
 パルスィは軽く謝りつつ、くっそぅこいつ人気者なだけあって本当可愛いなぁとかそんなことを思う。
 そこでふと、思い出す。

「そういやあんた、今日は何しに来たわけ? わざわざ朝早くからやって来たわけだし、何か用事があったんじゃないの?」
「……あぁっ! 忘れてたぁ! そうだよ、今日本当は限定パフェでも食べに行こうって思ってたんだよ!」
「限定パフェ?」
「最近人気らしくてさぁ。限定で数限られてるらしくて、お昼には既に無くなってるとか。だから朝から行けば、食べられるかなって」
「……朝からパフェって、重たい気がするけど」
「だって限定って聞いたら、どうしても食べてみたいじゃんー。あー今から行ったところで、無いだろうしなぁ。どっかの誰かが、私を抱き枕になんてするから」
「はいはい、それじゃあパフェはともかく、何か食べに行きましょうか。抱き枕のお礼に、奢ってあげるわよ」
「わぁい! パルスィ水っ腹ぁ! 抱き枕でご飯奢ってくれるなら、毎日抱き枕にされても良いくらいお得だね」
「それを言うなら太っ腹。あら? じゃあ毎日お願いしようかしら。結構本気で心地良い抱き心地だったし」
「冗談です全力で遠慮します」

 正直、ヤマメにとっても中々に心地良かったのだが、毎日あんなことをされてはいろいろと身が持ちそうに無かった。
 あら残念、とパルスィは本当に少し残念そうな表情を零す。

「んじゃ、食べに行こうかー! 何食べるー?」
「んーなるべく軽いものが良いわねぇ」
「せっかく奢ってもらえるなら、定番で焼き肉とかかな?」
「……ヤマメ、人の話聞いてる?」

 にぱっと笑顔でパルスィの言葉を流しつつ、ヤマメはさて何を食べようかと心躍らす。
 本来の予定とは違うことになってしまったが、それでもパルスィと出掛けるということは変わらない。奢りも嬉しいが、一緒に出掛けるということの方が嬉しかったりする。
 そしてパルスィも、ヤマメと出掛けることは嫌いじゃない。嫌いだったら、こうやってご飯に誘ったりはしない。

「準備は……財布だけあれば良いか。ヤマメの方は特に準備とか必要無し?」
「うん! ほら、早く行こうー」
「はいはい」

 準備を済ませ、外に出る。地底だから、地上みたいに明るくて温かい陽射しがあるわけじゃあない。
 けれども今の二人には、充分な温かさだった。
 
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