絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

笑って欲しいから

ヤマメとパルスィ。パルヤマ、ヤマパル! そんなお話。

 

「パ・ル・スィー!」
「おらぁ!」
「ごふぁっ!?」

 橋の上でぼぅっとしていたパルスィに、ヤマメがまるで弾丸のような速度で突っ込んで来た。普通なら、その勢いで吹っ飛ばされるだろう。
 しかし、パルスィの元にこうしてヤマメが突撃して来ることは初めてのことではないため、パルスィは冷静にヤマメの腹を右拳で打ち抜いた。
 吹っ飛ばされたヤマメは、ピンボールみたいにそこらの壁や地面にぶつかったりなんやかんやあって、川に落ちた。

「くぅ~……パルスィの拳、威力上がってない? そのうち勇儀と並ぶかもね」
「もし今殴ったのが私じゃなくて勇儀なら、あんたの体は原型保ってないわよ。まったく……毎度毎度、飛びついてくるなって言ってるでしょうが。というか、まずここに一々来るな」

 ヤマメはあははーと笑いながら、川から上がる。
 パルスィからすれば、殴られて何を笑っていられるのか、そもそも何故頻繁にここへやって来るのか分からない。
 へらへらとしたその笑顔は、地底のアイドルと言われるだけあって可愛らしく、そして和まされるものだろう。パルスィもこの笑顔を見ると、怒る気が失せてしまう。

「殴られたのに笑ってるとか、あんたそういう趣味でもあるの?」
「じゃあ毎回殴って来るパルスィは、そういう趣味なのかい?」
「あんたが飛びついて来たりなんかしなければ、殴ったりしないわよ」
「なんてこったい、これから先もずっとパルスィに殴られ続けるのかー」
「飛び付くのをやめる、という選択肢は存在しないようね……」

 心底面倒臭そうに、ため息を吐く。いつの間にか隣までやって来ていたヤマメは、それを見て少しムッとした表情になった。

「なぁにさー嬉しくないの? こんな美少女が会いに来てくれるんだよ?」
「確かに美少女ではあるけど、別にあんたが来たところで何も得しないし。むしろ、胃が痛いし」
「あ、美少女ってところ、否定はしないんだ」
「そりゃあまぁ、あんたはどっからどう見ても可愛いしね。元気で明るいし、笑顔が反則的に魅力的だし」
「……パルスィのそーいうとこの方が、反則だと思う」
「はぁ?」

 やや俯きつつジト目で睨むヤマメに、何かしただろうかと首を傾げるパルスィ。よく見ると、川に落ちたせいで髪や服から雫が垂れている。パルスィは少しだけ、悪いことをしたかもと思った。
 ヤマメはすぅはぁと深呼吸をして、気持ちを切り替える。

「そういえばあんた、わざわざ来たってことは何か用があったんじゃないの?」
「いんや? あえて挙げるとするなら、いつもどーりパルスィとお友達になろうと思って遊びに来ただけ!」
「諦めろ。そして帰れ」
「相変わらず酷っ! 大体さぁ、勇儀やキスメやさとりんとは仲良いじゃん! なんで私だけ、そんな拒むのさ!」

 ビシッと人差し指をパルスィに突きつけ、不服そうな顔をする。
 ヤマメはどちらかと言うと、さっぱりとした性格やその容姿で誰にでも好かれるようなタイプだ。地底の住民たちの中で、ヤマメを知らない者はいないくらいに知名度が高く、交友も広い。
 しかし、パルスィだけはヤマメをまともに相手にしなかった。傍から見れば、ヤマメとパルスィはじゃれ合っている友人同士に見えるかもしれない。けれども、パルスィがヤマメの前で笑ったことは、一度も無かった。
 初めはただ愛想が悪いだけ、笑わないタイプなのだとヤマメは思っていた。だが、パルスィが他の者と話をしていて、笑っている姿を見た。それを見て、ヤマメは少しだけ、悔しいと思ったのだ。

「別に拒んでるってわけじゃあ……ただほら、あんた私の苦手なタイプってなだけで」
「それもう、拒絶してるようなもんじゃん! そもそも、パルスィの苦手なタイプって何さ! さとりんたちは大丈夫で、私はピンポイントでダメーって何でさ!」
「あーもう煩いわねぇ。さとりはほら、心読まれてる分、こっちも気遣うことなく互いに言いたいこと言いまくれるから楽なのよ」
「じゃあ勇儀は!」
「あいつは自分勝手だけど、決して相手が本気で嫌がることはしない。そしてどこまでも、呆れるくらいに真っ直ぐ。一緒に居て疲れるけど、悪い気はしないわ」
「キスメは!」
「良い茶飲み相手ね。あとはこいしとも、たまに軽い世間話したりするわね」
「私は!」
「うざい」
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 ヤマメは頭を抱え、妙な声を上げる。そんなヤマメを眺めつつ、喧しいからさっさと帰ってくれると嬉しいなとか考える。
 数秒して、ヤマメはパルスィに向き直る。

「分かった、こうなったら今まで避けていた質問をさせてもらうよ。具体的に、私のどこがダメなの?」
「え? 分からないの?」
「うぐ……」
「はぁ、そんなことも分からないから、あんたはみんなから陰であんな風に呼ばれてるのよ」
「え、ちょ!? 何それ凄く気になるんだけど? 私なんて呼ばれてるの?」
「ヤマメ」
「ふつーじゃん!? それ普通だよ!」
「とまぁ、今みたいに騒がしいところがダメかしら」
「今のはパルスィが全面的に悪いと思う」

 真面目に言われているのか冗談で言われているのか、ヤマメにはよく分からなかった。

「じゃあ私も一つ、質問してみて良い? ずっと訊くタイミングを逃していた、質問を」
「へいへい、どうぞー」
「あんた、何を企んで私に寄って来てるの?」
「……は?」

 パルスィの言葉に、ぽかんと口を開く。一体どういう意味なのか、分からなかったからだ。
 また冗談交じりの何かかと思ったが、パルスィの眼は真面目そのものだった。
 ヤマメは一体どうしたものかと考えるが、本当に分からないものは仕方ないので、素直に訊き返すことを選択する。

「一体何のことだか、本気で分からないんだけど」
「しらを切っているのか自覚が無いのか知らないけど、あんたからは妙な感じがするのよ。初めの一、二回会ったときはそんな感じは無かったけど。会うたびに、どんどんと膨らんでいる。そうね……嫉妬に近い何かを抱いている感じ」
「嫉妬? 私が?」
「えぇ。そういう類のものを抱いて、私にしつこく纏わりついてくるってことは、何か企みでもあるのかと思ってね」

 その様子だと自覚無しのようだけど、とパルスィは続けて言った。

「わ、私は別に何も――」

 企んでなんかいないし、そんな想いを抱いてもいない。そう紡ぐはずだった言葉は、途中で途切れた。
 もしかして、とヤマメは思い当たる節があったからだ。それはパルスィが自分以外には笑顔を見せていたこと、それを知ったときの感情、それは悔しいと同時に羨ましいという想いもあった。私だって笑顔を見たい、微笑みかけて欲しいという想いだった。
 それを自覚した瞬間、ヤマメはかぁっと顔が熱くなる。恥ずかしさやら気まずさやら、いろんな感情がぐるぐると頭をかき乱す。
 黙ったまま固まるヤマメを見て不審に思ったのか、パルスィは首を傾げる。

「何よ、急に黙りこんで。やっぱり何か企んでたわけ?」
「いや、企んでいたっていうか、なんていうか、そのー……」

 いつもは相手の都合など考えなしというくらいに、押せ押せモードなヤマメだが、今は珍しくもじもじモードになっている。
 その珍しい光景に、パルスィはやや気持ち悪さを感じた。

「はっきりしなさいよ、あんたらしくもない」
「らしくないのは分かってるんだけどさぁー、こればっかりはちと恥ずかしいって言うかさー」
「あぁもうっ! 鬱陶しい! ほら、今白状するなら怒らないから、言いなさい!」
「そんな子どもを叱るお母さんみたいな言い方されても……」
「そんなうじうじしてると、お母さん怒るわよ!」
「パルスィに育てられた覚えは無いよ!? う~分かったよ、言う! 言うから、ちょっと待って!」

 ジッとパルスィの眼を見つめる。すると、パルスィもヤマメをジッと見つめる。互いの視線が、しっかりと合った。
 見つめること、数秒。ヤマメがゆっくりと、口を開く。顔は未だに、少し赤いままで。

「わ、笑って欲しかったんだ」
「え、鼻で?」
「……割と真面目に話してるんだけど」
「ん、ごめん。で? 笑って欲しかったって、私に?」
「うん。パルスィ、私の前だと笑った顔なんて見せてくれたこと無かったからさ。それなのに、他の誰かと話してるときは自然に笑顔だった。それがなんか、羨ましかったんだ。パルスィが感じた妙なものって、多分私のそういう感情だったんだと思う」
「笑顔ねぇ……」
「だ、だからさ、別に何か企んでたとかそーいうわけじゃあ――ほにゃっ!?」

 ヤマメの両頬を、パルスィがぐにーんと引っ張った。ジトっとした眼で、ヤマメを睨む。もちろん、両手はそのまま頬を弄りながら。

「あんた馬鹿でしょう? 私に笑って欲しかったとか……私の笑顔を望むなんて物好きにも程がある」
「いふぁいいふぁい!」
「おーおー良く伸びる頬だこと。柔らかくて気持ちいいわね、なんか楽しくなってきたわ」

 パルスィは意地悪い表情を浮かべ、ぐにぐにと弄り続ける。
 じたばたと暴れ、ヤマメはなんとかその弄りから逃れた。

「物好きなんかじゃないやい! しょうがないじゃん、絶対笑わせてみたいって思っちゃったんだから!」
「それがダメなのよ」
「な、何が?」
「あんたはなんか、自然体じゃなかったのよ。無意識か意識してかは知らないけど、笑って欲しいとか変に少し気負ってたんじゃない? そんな気配を感じたら、こっちだって少し身構えるわよ。笑えるわけないじゃない」
「う、うぐ……うぐぐー」

 ぷるぷると体を震わし、パルスィをキッと睨む。
 だが、パルスィは少しも怯まず、そのまま手を伸ばしてヤマメの頭にぽんっと置いた。そしてぐしゃぐしゃと髪を乱すかのように、荒っぽく撫でる。
 ぐわんぐわんと、ヤマメの頭が揺れる。

「あんたはあんたらしく、自然体でいりゃあ良いのよ。そうしたら、ヤマメみたいな無駄に明るくて喧しいやつ、そんなやつを見て笑わないわけがないでしょう?」
「ちょ、頭揺れる! やめ――ぁ」

 パルスィの手を弾き、文句を言ってやろうとしたそのとき、パルスィの顔が目に入る。その顔は、呆れたように笑う顔、けれどもそれは確かな笑顔だった。
 笑った。その事実に、少しだけぼーっとしてしまうヤマメ。

「ちょっと、何固まってるのよ?」
「え!? あ、いや、なんでも! なんでもないよ、うん!」
「あっそ、それなら別に良いけど。今度からは変に気負わないでよね? 鬱陶しいから」
「うん、ごめん……って、今度? またこれからも来て良いの?」
「どうせあんた、来るなって言っても来るんでしょうが。それとも何? 来るなって言えば、素直にもう来なくなるわけ?」
「~っ! そんなわけないじゃん! 私を誰だと思ってるのさ!」
「誰よ」
「ヤマメだよ!」
「うん、意味が分からないわね」

 とても良い笑顔で言うヤマメに、パルスィは呆れたような表情だ。
 するとヤマメは、パルスィに背を向ける。

「帰るの?」
「今日はね! 服も濡れてるし、また今度改めて来るさ。パルスィが来ても良いって、言ってくれたんだしね」
「今度は飛びついて来ないでよね」
「それは保障できない! それじゃあね!」
「はいはい」

 ヤマメはぶんぶんと大きく手を振った後、その場からダッシュで去る。
 頭の中は、嬉しさやらちょっと恥ずかしいやらでいっぱいだった。この溢れる感情を、次会うときのタックルに全部込めてやろう。
 そんなことを思いつつ、頬が緩むのを感じた。
 
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