たった一言2011-12-12 Mon 01:14
霊夢さんとこいしさんの、何気ないやりとり。4万ヒットの際の、匿名☆希望さんからのリクエストで『マイナーなカップリングのお話』でした。
というわけで、実は結構好きな組み合わせの霊夢とこいしを書かせていただきました。 膝の上に一瞬、ふにゅりと柔らかい感触。普通なら、気のせいかと思うところだろう。だが霊夢にとって、それは既に何度も体験していることだった。そしてその原因も、ちゃんと分かっている。 何も無いように思える目の前の空間に、霊夢は手のひらをぐいっと押しあててみた。 「あうっ」 「やっぱりあんたか」 霊夢の行動に対して発せられたその声は、聞き覚えのある声。地底の異変を解決した直後から、度々博麗神社へと訪れるようになったこいしの声だ。 こいしはくるりと振り返り、ジトっとした眼で霊夢を見る。 「なんで霊夢には私の存在が分かるのよー」 「初めてならともかく、さすがにもう分かるわよ。一瞬の感触やら、ふとした違和感やらでね。というか、気付かれたくないんなら、一々毎回私の膝の上に座るのはやめなさい」 「本当は気付いて欲しいっていう、私なりの想いだよ。可愛いでしょ?」 「お土産の一つでも持って来てくれるのなら、可愛いって言ってあげるわ」 「ぶぅー」 「頬を膨らませても、ただの変顔になるだけよ」 わざとらしく頬を膨らませるこいしに、霊夢はその膨らんだ頬を指で押してやった。ぽふっと、空気が抜けたように元に戻る。 そしてこいしは、何がおかしいのか、ふにゃっと笑った。 「あんたってさぁ、いつも楽しそうにへらへら笑ってるわよねぇ」 「そう? 霊夢と一緒に居るの、楽しいよ?」 「けどあんた、来るだけ来て、特に何もせずに帰ってくじゃない。そんなんで楽しいわけ?」 「私は地底一の暇人なんだよ」 「自分で言うな」 えへへと笑うこいしの額を、ぺしっと叩く。それでもこいしは、楽しそうに笑っていた。 「全く……何が楽しいのやら」 「だって、霊夢って面白いじゃない。私、心を閉ざしたことを後悔したの、初めてだったのよ? もっと霊夢のこと、知ってみたいなぁって思ったんだよ?」 「んで? 知ることは出来たわけ?」 「ぜぇんぜんっ!」 「……」 本当、こいつは何しに来ているんだ。霊夢がそう思い、こいしの顔をじぃっと見つめてみる。だが、そこにあるのはいつも通りの笑顔なだけ。何を考えているのかすら、よく分からない。 霊夢はため息を一つ零した。 「知りたいって思うのはね、そこに興味があるからなの」 「そりゃまぁ、そうでしょうね」 「けどねーそれと同時に、もし嫌われたらどうしようとか、相手を不快にさせちゃったらどうしようって思っちゃうの。どんなに気をつけても、相手の心が分からないから、傷付けちゃうかもしれない。だから私は、霊夢を知りたいなぁって思っても、知ることが出来ないの」 「……何よそれ。別に何か知りたいことがあるなら、訊けば良いじゃない。私は何か訊かれたくらいで、不機嫌になったりしないわよ」 「霊夢が今はそう思っていても、数秒後には、例えば実際に私が何かを訊いたりしたら、不快になってしまうかもしれないじゃない。ねぇ、知ってる? 人の心ってね、秒速で変わってゆくんだよ。だからこそ、怖いんだよ?」 過去に心が読めたからこそ分かる、こいしの言葉だ。 常に変わる人の心が見えるというのは、霊夢にとって理解し難いものだろう。 「そんなもの、みんな同じじゃない」 だが、霊夢にだって分かることはある。 「心なんて読めないのが普通なんだから、私たちはみんな傷付いたり傷付けたりして、そうやって生きてるのよ。そりゃ相手を気遣うことはそれなりに大切だけど、もし相手を不快にさせたらどうしようだとか、一々びくびく怯えながら誰かと接してちゃ何も出来ないじゃない?」 「でも、嫌われるくらいなら、初めから何もしない方が……」 「もし自分の何気ない言動で相手が傷付いたりしたなら、たった一言をちゃんと言えば良いのよ。」 「え?」 「ごめんなさい、ってね」 こいしはぽかんと口を開いたまま、しばし固まる。 そんなこいしの額に、軽くでこぴんを一つ。すると、あうっという言葉を発して、こいしが動いた。 それなりに痛かったらしく、額を擦りながら霊夢をむぅっと睨む。 「ごめんごめん、あまりにもアホっぽい顔して固まってたからつい」 「霊夢に言われたくないなぁ、それは」 「ほう? 今何か言ったかしら?」 「何も言ってないよー無意識だよー?」 霊夢は右手をグーにして見せるが、こいしはへらへらと笑ってそれを流した。 「全く……で? 結局私に何も訊かなくて良いの? 今なら特別サービスで、なんでも教えてあげるわよ?」 にやっと笑う霊夢に、こいしはむーんと考える。 軽く数秒考えた結果、一つ質問をすることにした。 「じゃあとりあえず一つ」 「えぇ、何かしら?」 「霊夢のスリーサイズでも教えてもらおうかしら。そのぺたんこのお胸、私よりも小さそうだし――」 「そぉい!」 「っと、危ないなぁ」 突然の頭突きを、こいしは笑いつつ膝から降りてさっとかわした。 「これでも去年より大きくなってるのよ!」 「あはは、ごめんごめん」 「ごめんで済んだら博麗の巫女はいらないのよ!」 「さっき、ごめんなさい言えれば良いって言ったじゃないー」 「さっきはさっき! 今は今!」 「わーい理不尽だー」 そう口では言いながらも、こいしは楽しそうだ。霊夢も口では怒っているが、攻撃が遅かったり単調だったりなのを見ると、そこまで怒ってはいないのだろう。じゃれあいのようなものだ。 「れーいむっ」 「あぁ? 何よ?」 「……えへ、やっぱりなんでもなーい」 「はぁ?」 霊夢の攻撃を避けつつ、こいしは「あぁ楽しいなぁ」とかそんなことを思った。 |
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