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絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

首輪に愛を込めて

8月2日、普段お世話になっているameさんのお誕生日でした。8月2日に捧げたSSです。




「うーん……ちゃんと調べて見ないと、分からないかもなぁ」
「あ、やっぱり? パチュリーに訊いた方が早いかしら?」
「アリスでも良いけどな。とりあえず、私には一目見ただけじゃ分からないな。魔法力の匂いがするから、マジックアイテムであることは確かだろうけど。効果は実際に使用してみたりしないと、多分分からない」

 むむむ、と唸る霊夢の手には、問題のアイテムが握られている。それは見た目、どこにでもあるような赤い首輪だ。
 しかし、魔法力の匂いがする。普通の道具に魔力を込めることは、基本不可能だ。媒体が耐えきれなくなり、壊れてしまうことが多い。つまりこの首輪は、ただの道具ではなくマジックアイテムであるということが分かる。

「これ、何処で手に入れたんだ?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 蔵にあったのよ。掃除してたら出てきてね。触れた瞬間に妙な感覚がしたから、ただの道具じゃないって思ってね」
「そこにちょうど、私が来たってか。神社にあったってことは、妖怪退治の道具類なのかもしれないな」
「見た目から察するに、妖怪を首輪で捕まえるとか? ありえない話じゃないけど……そう単純なものかしら」
「けど、それ以外に想像がつかないぜ。試してみるのが一番手っ取り早いんだがな」
「効果があやふやなものを、試すわけにもいかないしねぇ。誰か鬱陶しいのでも現れれば、使ってみても良いけど」
「どうもー! 清く正しい射命丸で――」
「魔理沙! 押さえなさい!」
「よしきた!」
「え? え?」

 二人の前に営業スマイルを浮かべ、現れた文。
 それを見た瞬間、霊夢は目を光らせ、魔理沙は既に行動を起こしていた。魔理沙は帽子からロープを取り出し、僅か二秒程でぽかーんとしている文を縛った。拘束されたことに気付いた頃には、時既に遅し。文の目の前には、霊夢が「そぉい!」と声をあげて飛びかかって来ていた。

「ちょ、ちょー!? いきなりなんですか!」
「霊夢、付けたか?」
「ちょっと待って。今からするから」
「何をする気ですか!? ねぇ何をする気ですか!?」

 離せ離せと暴れる文だが、体をロープで縛られている上に魔理沙に押さえつけられている状況では、抜け出すよりも、霊夢が首輪をつける方が早かった。
 首輪を嵌めると、文の体がうっすらと淡い光を放ち始めた。
 それはほんの数秒だったが、何か効果が現れたのは想像が付く。

「文、体に異変はない?」
「……特に、何も。何だったんですか、さっきの光?」
「あーあ、つまんないな。結局効果は分からずか」
「そうね、残念」
「ちょっとちょっと! さっきから一体何なんですか! 説明してくださいよ、こんな首輪まで付けて――って、あれ?」

 文は首輪を外そうとするが、何故か外せない。それどころか、思うように力が入らない。
 焦る文を見て、霊夢も魔理沙もほぉっと息を漏らした。

「効果はあったみたいだな。しかも、予想通りな感じで」
「そうね。やっぱり妖怪を捕えるアイテムって感じかしら。文、霊力とかその他にも様々な力の類、出せる?」
「……いや、ほとんど出せないです。それに首輪も外せませんし……あの、これ、ちゃんと外れるんですよね?」

 文が恐る恐る訊ねると、霊夢と魔理沙は何処から取り出したのか、露骨にオセロを始めていた。

「相変わらず霊夢は角を取るのが上手いな」
「そういう魔理沙こそ、角を取られたのにそれでも逆転の手を打って来るんだから、油断出来ないわ」
「何私のことは無かったことにしようとしてるんですか! ちゃんと外してくださいよ!」
「魔理沙、これ外すにはどうすれば良いと思う?」
「んあ? 壊すか、もしくは嵌めた霊夢が取ろうと思えば取れるんじゃないか? 取れなかったら、なんていうか……まぁ、どんまいだ」
「そうね、どんまいね」
「力封じられて割とピンチなのに、どんまいの一言で済まさないでください! これから私、どうすればいいんですか……」
「霊夢、外せそうか?」

 文の首に手をかけ、がちゃがちゃと外そうと試みるが、やはり外せなかった。
 霊夢は両手をあげて、降参のポーズ。それを見た魔理沙も、大きくため息。

「まぁ、あれだよ、ベストタイミングで神社に来ちゃった文の自業自得ってことで」
「あぁ、そうね。自業自得」
「何がどうなってそうなるんですか!?」
「仕方ないわねぇ。文、カメラちょっと貸しなさい」
「へ?」

 文が返事をするよりも早く、霊夢がカメラを奪い、カシャリと一枚。そしてそのカメラを、魔理沙に手渡した。

「それ現像して、写ってる首輪の詳細をパチュリー辺りに訊いて来て。あの図書館なら、きっとあるでしょ。力の無い状態の文を行かせるわけにもいかないし、私は神社で文を保護しておくから」
「あー了解。あの本の中から目的のものを探すのは、中々手間がかかりそうだ。下手したら、数日かかるかもしれんが」
「ま、分かり次第来てくれれば良いわ」
「もし見つからなかったらどうする?」
「そのときはほら、一か八かで首輪壊してみれば良いんじゃない? こういうのって無理矢理外すと、内に溜められた魔力が爆発して大変なことになるかもだけど」
「ちょ、ちょっと!?」
「でもまぁ、文は妖怪だし大丈夫じゃない? とりあえず魔理沙、お願いね」
「ん、それじゃあ行ってくるぜ。文、カメラは借りてくぞ」

 魔理沙はすぐさまその場から飛び去り、紅魔館へと向かった。文ほどではないが、魔理沙も相当速い。あっという間に、姿は見えなくなった。
 どうすれば良いのか分からず、ぽかんとしている文の手を、霊夢はくいっと引っ張った。

「わわっ!?」
「ほら、あんたは部屋で大人しくしてる。今のあんたじゃ、下手すればそこらの妖精にすら負けるかもしれないんだから」
「いや、さすがにそれはないですけど……。って、何処へ?」
「決まってるでしょ? 私の部屋よ。ほら、行くわよ」
「へ?」





◇◇◇





「ここ私の部屋。あんたはここから極力出ないこと。食事は一日三回、運びに来るわ。それじゃ、大人しくしてるのよ」
「ちょっと待ったぁ! これじゃ監禁でしょ!?」

 何処にでもあるような木製の箪笥や棚に、丸い卓袱台。そして座布団が一つ。霊夢の部屋は、つまらないくらいにシンプルだった。
 そして座布団に、ちょこんと座らせられた文。額にはお札が一枚貼り付けてあり、金縛りにあったように動けない。
 ちなみに、取材どころではないと判断した文は、既に取材モードから抜けている。

「なんかあれね、額にお札って見た目キョンシーみたいね」
「凄い張り倒したい。なんで身動きまで奪う必要が?」
「だってほら、あんたが私の部屋を、変に詮索とかするかもしれないし」
「別に巫女の部屋じゃなくても、居間とかで良いのだけど。大体身動きとれない状態で、どうやってお風呂やお手洗いに行けと」
「あー……そんときは大声で私を呼びなさい。手伝ってあげるから」
「何の羞恥プレイ!? お札剥がせばいいだけなのに!」
「え? お腹が空いた?」
「言ってない! 今この状況で空腹状況を伝えるわけがない!」
「仕方ないわねぇ。ちょっと待ってなさい、猪でも狩ってくるから」
「わざわざ!? というか霊夢が居なくなったら、動けない私一人残されて、危険じゃない」
「あー確かにそうね。仕方ない、悪いけど猪はまた今度ね」

 そう言って、部屋を出て行こうとする霊夢。
 その後ろ姿に、文は慌てて声を掛ける。

「ちょっと、結局外してくれないの?」
「あ、忘れてたわ。はい」

 ぺりっと、素直に剥がした。
 文は立ち上がり、両手両足を軽く伸ばす。首輪の影響以外は、特に問題はなく感じた。ほっと一息。

「別にお手洗いでもお風呂でも、世話してあげたのに」
「いやいやいや、何をそんなに嫌がるのかーって顔してるけど、普通に恥ずかしいでしょう」
「あんたって、羞恥心持ち合わせてたのね。知らなかったわ」
「……巫女が普段、私をどういう目で見ているのがか良く分かったわ」
「それじゃあ、私はちょっと出掛けてくるけど、大人しくしてるのよ」
「え、ちょ、今の状態の私を置いて行く気?」
「何よ、寂しいの?」
「若干不安なだけ」
「うーん……急ぎの用じゃないし、あんたが寂しくて心細くて仕方ないーって言うなら、行かないであげても良いけど」
「わーおドS巫女」

 霊夢はにっこりと笑顔。普段いろいろとからかわれている分、この状況下で徹底的に文を攻めてやるといった感じだ。
 しかし、力が封じられているとはいえ、文は長く生きて培った知識や頭の切れがある。一瞬で、この状況を乗り切る方法を、思い付いた。

「どう? 言う?」
「言うわけないでしょう、馬鹿馬鹿しい。巫女は相手を弄るやり方が、なんとも子どもっぽいわね。そんなんじゃあ、呆れた態度を取られるだけ」

 見下すことで、自分の優位をアピール。そして相手のダメなところを、呆れたような態度で指摘することで、相手に羞恥心を与える。これが、文の考え出した方法だった。
 だが、霊夢は別に眉一つ動かさず、表情を変えなかった。笑顔を、崩さなかった。

「そう、なら大人っぽい弄られ方が望みかしら?」
「れ、霊夢? 霊夢の笑顔は素敵だとは思うけど、そこまで笑顔だと少し怖いわ」
「大丈夫、痛くはないから。痛くはないから。痛くはないから」
「なんで三回も言ったの!? 、ちょ、やめ――」
「問答無用! 滅べ!」
「滅べ!?」

 次の瞬間、霊夢が一枚のお札を投げた。それは普段の文ならともかく、今の状態の文では避けれるものではない。

「くっ……!」

 体を捻り、なんとか紙一重で避けようとする。だが、残念なことにホーミングだ。抵抗虚しく、お札は文のお腹辺りにぴたりと貼りつく。
 そしてお札が発光をし始めた。

「な!?」

 数秒程、目を開けられないほどの発光が続いた。
 発光が終わり、ゆっくりと文が目を開くと――

「……え?」

 全裸になっていた。首輪と帽子だけは残っている。けど、全裸だ。どこからどう見ても、全裸だった。
 文は自分の状態を理解すると、かぁっと顔を赤くした。そして、言葉にならない声を発する。
 しかし何故か、霊夢は首を傾げて、疑問符を浮かべている。

「あれ? このお札、こんな効果だったかしら? 間違えた?」
「~っ! ま、間違いで人を全裸にするって、ど、どういうことですか!」

 テンパっているのか、敬語モードが混ざりつつある。
 霊夢はどこまでもマイペースで、舌をちょっと出して、えへへと笑う。

「あー……なんていうか、ごめん」
「謝罪は良いから、早く着る物! 何か着る物を――」
「霊夢、文、見つかったぞぉぉぉぉぉぉ!」

 文が霊夢の胸倉を掴んだそのとき、魔理沙が障子を突き破って現れた。
 そこで魔理沙の視界が捉えた事実は、三つだった。
 首輪と帽子はつけているが、全裸の文。
 顔を赤くして、涙目の文。
 その文が、霊夢に迫っている。
 この三つが導き出す答えは、魔理沙の脳内ですぐに出た。

「霊夢……やっちまったもんは仕方ない。ちゃんと、責任取ってやれよ」
「いやいやいや、誤解ですから魔理沙さん!?」
「分かったわ。責任持って、ちゃんと文を嫁にする」
「何口走ってるのこの巫女!?」
「そうか、幸せにな! それじゃあ、私は邪魔をしないよう、帰るとするぜ!」
「ええ、ありがとう。気をつけて帰ってね」
「式には呼べよな。それじゃ」
「いやいやいやいやいや、首輪外す方法分かったんでしょ! 誤解はともかく、せめてそれ教えてから帰ってくださいよ!」
「たっしゃでなー」
「またねー」
「物凄く自然にスルーされたー!?」

 その後、ぎゃあぎゃあと文が喚いた結果、なんとか解除してもらえたそうな。





 オマケ



「ふぅ……疲れましたよ、本当」
「まぁまぁ、無事解除出来たんだから、良かったじゃない。それにしても魔理沙、予想以上に早かったわね」
「ん? あぁ、写真をパチュリーに見せたら、本とか見ずにすぐ解除方法を教えてくれてな。こういう魔法具は基本的に、解除の仕方が似通って作られるらしい」
「へーそれで見ただけで分かったのね」
「解除出来たのは良いですけど、私は全裸にされたことを忘れませんよ、絶対に」

 ジト目で睨む文に、あははーと霊夢は笑う。

「だから言ったじゃない、責任取って、あんたを嫁に貰うって」
「え? あれって冗談じゃ」
「なんなら誓いのリングでもあげましょうか? 首輪的な意味で」
「~っ! お断りします!」
「せっかく嫁にしてあげるって言ってるのに……」
「文、乙女のプロポーズをそう簡単に断るなんて、お前酷いな」
「なんで私が悪い的な流れに!?」
「まぁ割と本気だから、考えておきなさい」
「……え?」



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