絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

風邪を引いた日

紅魔館で、咲夜さんとパチュリーさんメインです。久し振りにふにゃっとした紅魔館なお話。


 
「大丈夫、咲夜?」
「ご心配をお掛けしてすみません、妹様。ですが、もう大丈夫ですので……っ」
「わ、ちょ、まだ起きちゃだめでしょ。風邪治ってないんだから!」
「いえいえ、これくらい余裕ですわ」

 弱々しくベッドから起きあがろうとする咲夜を、フランドールが慌てて止める。しかし制止も効かず、無理矢理貼り付けたような笑顔で、咲夜は元気アピールをした。額には若干、汗が浮かんでいる。
そしてゆっくりとだが、起きあがろうとする。
 すると、椅子に座っていたパチュリーが、ため息とともに読んでいた本を閉じた。

「咲夜、無理はしない方が良いわ」
「お言葉ですがパチュリー様、私は無理なんてして――」
「じゃあ強情な貴女の為に、言い方を変えましょうか。役立たずは動くだけで迷惑だから、大人しくしてなさい」

 鋭い目つきで、咲夜を睨む。
 だが、咲夜は薄く笑みを浮かべた。
 そして次の瞬間には――

「役立たずと言いますが、この状況でもそう言えますか?」

 パチュリーの背後に回り、ナイフを首にそっとあてていた。
 時間停止能力。どんな相手でも抜け出すことは出来ない、咲夜だけの世界。それを使われては、いくらパチュリーでも不意を突かれる。
 しかし、パチュリーは動じない。

「パチュリー様をここまで追い詰めることが出来る者が、本当に役立たずとでも?」
「パチュリー! 咲夜!」
「……大丈夫よ、妹様」

 パチュリーは再び、大きくため息を零す。
 そして、すぅっと手を動かし、咲夜の背後を指さした。
 フランドールも咲夜も、パチュリーの行動の意味が分からない。

「咲夜、あなた私がこういうことを予測できていないと思っていたの? 確かに停止した時間の中は動けないけど、あらかじめ行動を予測して、来るであろう場所に遅延配置魔法の一つでも置いておけば、対応は出来る。ほら、そろそろ発動するわ。背後に気をつけなさい」
「っ!?」

 その言葉を聞いた咲夜は、パチュリーの拘束を解き、すぐさま背後を向く。迫り来るであろう、魔法に対処するため。
 だが咲夜の目の前には、ただ見慣れた自室の白い壁があるだけ。何も起きない。

「咲夜、こっちを向きなさい」
「え――ぐふぁっ!?」
「何してるのパチュリー!?」

 咲夜が振り向いた瞬間、パチュリーは持っていた分厚い本で咲夜の顎を打ち抜いた。見事なアッパーだ。クリティカルむきゅーだった。
 咲夜はその勢いで、そのままベッドの上へと倒れる。意識はあるようだが、完全に動けないようだ。顎が少し、赤くなっている。
 ぽかーんとして固まっているフランドール。
 パチュリーはゆっくりと咲夜に歩み寄り、ただ一言。

「今のあなたは、魔法を使わない私でも勝てるくらいに役立たずなのよ。理解したかしら?」
「……いや、パチュリー、それって騙し打ちしただけじゃ」
「妹様、私はこの強情馬鹿が逃げ出さないように見張っているから、レミィの方手伝ってきてあげてくれないかしら? レミィはキッチンでお粥作っていると思うから。小悪魔と美鈴は、咲夜の代わりに緊急メイド要員と臨時メイド長やっているし。手が空いているの、私と妹様くらいなのよ。さすがにレミィ一人に料理は、ちょっと不安だからね」
「う、うん。分かったけど、大丈夫?」
「ええ、咲夜は逃がさないようにしっかりと見張っているわ」
「いや、咲夜の体の心配なんだけど……。と、とりあえず、手伝ってくるね」

 苦笑いを浮かべつつ、フランドールは部屋から出て行った。
 パチュリーはまず、ベッドの上で倒れたままの咲夜を、ちゃんと寝かせることにした。非力ゆえに、少し苦労した。
 ちゃんと寝かすと、ベッドのそばに木製の椅子を移動させ、そこに座る。ぎし、と椅子が音を立てた。

「……パチュリー様」
「何?」
「痛いです」
「風邪が悪化したのね。だから大人しくしてなさいと言ったのに……弱っているときに時間停止なんて使ったりするからよ」
「いえ、九割方パチュリー様のせいだと思うのですが……」
「一割あなたの責任でもあるのね。じゃあ一割分大いに反省しなさいな」

 何を言っても、さらっと返される。
 これは逃げ出せそうにない、と咲夜は苦笑い。
 そして互いに無言。
 元からパチュリーは口数が多い方でもないし、咲夜は風邪のせいで体力も気力も欠けている。無言になるのは、自然な流れだった。
 部屋には時折咲夜が咳き込む声と、パチュリーが本を捲る音だけ。

「パチュリー様」
「何? あんまり喋らない方が良いわよ。疲れるでしょうに」
「なんだか、昔を思い出しますね」
「なんのことかしら」
「私が幼い頃体調を崩した時も、パチュリー様はこうやって私を見張っていたなぁと」
「あなたはすぐ仕事をしようとするもの。昔は一応あなたの教育係をレミィに任されていたのだから、見張って当然よ。あなたに何かあったら、レミィに顔向けできないわ」
「おかげでいろんな知識が身につきました」
「感謝なさい」
「パチュリー様って、あれですよね」
「何よ?」

 パチュリーがちらっと咲夜の方へ視線をやると、咲夜はにこっと笑う。

「あんまり表に出さないですけど、なんだかんだでお優しいですよね」
「……熱で頭がおかしくなったんじゃない?」

 咲夜の言葉を、バッサリと斬り捨てる。

「私はもう子どもじゃないのに、今だってこうやって傍に付いていてくださっていますし」
「あなたを逃がさないためよ」
「逃がさないだけなら、それこそ魔法で閉じ込めておくだけで良いかと。なんだかんだで毎回、私の体調が治るまで、ずっと傍に居てくださるんですよね」
「……咲夜、いい加減お喋りはやめなさい。体に響くわよ」
「これくらい、大丈夫ですわ。それにあまり眠くは無いのです」
「なら寝かせてあげましょうか? とっておきで」
「なんです?」
「ロイヤルフレア」
「遠慮しておきますわ」

 咲夜の頬に、ぴたっとスペルカードを押し付けるパチュリー。
 身の危険を感じた咲夜は、即お断りした。今の状態で零距離ロイヤルフレアなんて喰らったら、眠りは眠りでも永遠の眠りになってしまいそうだ。

「さっさと寝なさい。目を瞑っていたら、ちゃんと寝れるわよ」
「その台詞、お母さんみたいですね」
「あなたを教育したのは私だけど、あなたの親になった覚えはないわ。どちらかと言えば、親はあなたを拾ってきたレミィ」
「もちろん、お嬢様には言葉にできないほど感謝していますわ。そういえばパチュリー様、昔私が中々寝付けない時、よく子守唄を歌ってくださいましたよね」
「あぁ、あなたによく音がずれてるって笑われたアレね」
「歌ってくださいよ、久し振りに」
「は? 絶対嫌よ」

 本気で嫌そうな顔をする。
 笑われると分かっていて、わざわざ歌う者などまずいない。だから、パチュリーの反応は普通のことだろう。

「私、パチュリー様の子守唄好きですよ」
「まぁ聴いてる方は面白いでしょうね。本当、何度あなたに笑われたことか……」
「それでも私、最後にはちゃんと寝ちゃってましたよね」
「笑い疲れたんじゃない?」
「もう、そんな不貞腐れないでくださいよ。純粋に聴きたいんですってば」

 ダメですか、と目で訴えられ、パチュリーはうぐっとなる。
 昔から、こういう目をされると弱いのがパチュリーだった。なんだかんだで、割と優しいのだ。しかし認めたくないのか、それを指摘すると、相手が誰であろうと全力で否定をする。
 咲夜はじーっと見つめたまま、視線を外さない。パチュリーは顔を逸らしてみるが、それでも視線を感じる。
 ため息、一つ。

「……笑ったら、そこでもう歌うのやめるからね」
「はい、笑いませんって」
「もう既に顔がニヤついてるじゃない……はぁ」

 頬が緩んでいる咲夜をジトっと睨みつつ、こほんと一つ咳払い。そしてすぅっと息を吸い、歌い始める。魔女というイメージには似合わないような、優しい歌。咲夜にはその歌が、何処の国のものかも、どういう内容の歌なのかも分からない。けれども、咲夜は楽しそうに頬を緩めている。
 相変わらず、少し音がずれている。声は綺麗なのに、明らかにずれている箇所がいくつかある。しかし、咲夜は笑わなかった。笑ってしまったら、そこでパチュリーが歌うのをやめてしまうから。最後まで聴くために、思わずクスッとなってしまいそうになるのを我慢。
 それほど長い歌ではなかったため、数分もしないうちに、それは終わった。
 ふぅ、と息を吐くパチュリー。

「……で、結局寝れそう?」
「音がずれてるのが気になるので、とても寝れません」
「貴女が歌えと言ったくせに……」
「ありがとうございます。楽しかったですわ」
「張り倒すわよ」
「病人ですから、やめてください」
「咲夜、元気になったら真っ先に図書館に来なさいな。特上の賢者の石をお見舞いしてあげる」
「遠慮しておきますわ」

 パチュリーはジト目で睨むが、咲夜はにこにこと笑顔を崩さない。

「まったく……生意気に育ったものね」
「お嬢様やパチュリー様に教育されて、ここまで育ちましたから」
「何よそれ、まるで私やレミィが生意気と言っているみたいだけど?」
「いえいえ、滅相もありませんわ」
「まぁ良いわ。食欲はある?」
「え? 一応、ありますけど……」
「時間的に、そろそろレミィと妹様がお粥を持って――」

 パチュリーが言葉を紡ぐその瞬間、部屋の扉が大きな音を立てて開かれた。
 その音にびっくりして、目を大きく開いている咲夜。しかし、パチュリーは予測済みだったいった様子で、特に驚いた様子は無い。
 咲夜の目線の先には、お盆を持って現れたレミリアとフランドール。お盆の上には、お粥が乗っている。どうやら、お粥を作り終えたから持って来たようだ。

「咲夜、スカーレット式のお粥ができたわ! 食べなさい!」
「す、すかーれっと式?」
「見なさい、これを!」

 咲夜の近くまで来て、お粥を見せる。そこには何故か、真っ赤なお粥があった。恐ろしいほどに、真っ赤だ。スカーレットだ。
 パチュリーも咲夜もそれを見て、口を開いたまま固まる。そしてパチュリーは、ゆっくりと首を動かしフランドールの方を見た。するとフランドールは、すぐにパチュリーから顔を逸らす。

「……妹様、レミィをよろしくって私は言った気がするのだけど」
「だ、だって私も料理したことないし……。それにお姉様が、元気になる隠し味にはこれが良いからって」
「お、お嬢様、これは何故にこんな赤いのですか?」
「咲夜が早く元気になりますように、というおまじないよ。隠し味に不夜城レッドなどを少々」
「パチュリー様……」

 咲夜は助けを求めるかのように、パチュリーへと視線を送る。
 だが、パチュリーは珍しく笑顔を作り、返した。

「咲夜、食欲あるってさっき言ったばかりじゃない。せっかくレミィが、あなたの主があなたの為に作ってあげたんだから、勿論全部食べるわよね?」
「っ!? パチュリー様、もしかしてさっきの仕返しですか?」
「何のことかしら? 私はただ、咲夜ならレミィの好意を無下にしないだろうなぁって思っただけよ」
「……パチュリー様は意地悪です」
「咲夜ほどじゃあないわ」

 睨む咲夜。涼しい顔で受け流すパチュリー。

「咲夜、無理に食べなくても良いんだぞ? もし食べる元気がないなら、無理はしない方が良いし」
「いえ、いえ、お嬢様が作ったお粥なら、私は食べますとも。ええ、残さず食べますとも! ごほっ……」
「さ、咲夜無理しないでね?」
「大丈夫です、妹様。私はこのお粥を完食します、絶対に」
「これでさらに寝こんだら、私は咲夜の目の前で大笑いしてあげるわね」
「ありがとうございますこんちくしょう。風邪が治ったら、真っ先にパチュリー様に会いに行きますね。主にチョークスリーパーを仕掛けに」

 レミリアからお粥を受け取り、スプーンでそっと一口だけ、ゆっくりと口に運ぶ。
 口の中に広がる、スカーレット味。じわりじわりと、咲夜の体が熱くなる。美味しいとか不味いとか、そういうレベルじゃない。だらだらと背中に汗が流れるのを、咲夜は感じた。
 しかし、顔には絶対汗をかかない。主に心配をさせない為、そして己のプライドの為だ。まさに瀟洒だ。
 心配そうな表情を浮かべるフランドール、不安そうな顔をするレミリア。そして俯いて肩を震わしているパチュリー。その震えは、心配だとかそういうのからではなく、笑いを堪えているだけだったりする。

「どう? 美味しい? お粥なんて久し振りに作ったから、柄にもなくちょっと不安だったんだけど」
「もちろん、美味しいですわ」
「咲夜、涙滲んでるけど……」
「妹様、これは嬉し涙です。お嬢様が私の為にお粥を作って下さったこと、それだけでもう涙ものです」

 とても良い笑顔で言う咲夜に、フランドールもレミリアもホッと息を吐く。

「無理をするなよ? 食べれるところまでで良いのよ?」
「全部食べますとも、ええ。美味しいですとも、はい」





 そう言って、結局咲夜はしっかりと完食した。
 その後、力尽きたのか倒れるように眠った。そしてスカーレット式お粥の効果か、たくさんの汗をかいて、なんと一日で風邪が治った。
 元気になった咲夜は、とりあえず図書館へと突撃したそうな。





あとがき

小悪魔曰く、十六夜式チョークスリーパーVS特上賢者の石という夢の対決が見れたらしい。



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