あやみこラジオ~第4回~2011-03-23 Wed 00:16
あやみこラジオ第4回目!
「みここここー! さぁ、今週も元気にあやみこラジオ。パーソナリティーは私、射命丸文と?」 「前回文に素の状態でラジオをやれと命令した、博麗霊夢でお送りするわ」 オープニング曲の『恋風綺想』が流れる。 元気に挨拶をする文だが、少し笑顔が引き攣っている。ラジオなので、その引き攣った笑みは伝わらないが。 文の目の前に座っている霊夢は、ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべ、文の様子をうかがっている。いつもの放送時とは違って、とても楽しそうだ。 「どう? 今回ずっとそのままでいけそう?」 「うぐぐ……正直きついわね。今まで放送の時って、一応仕事という認識でずっと取材モードの口調でしたから。なんか、違和感と言うか」 「ちょくちょく敬語っぽいの混じってるわね。そもそも、あんたが完全に素のときってしっかり見たことないかも。異変時に対峙したときは、山の仕事としてのあんただし」 「プライベートで会うことって、そういえばあんまり無かった?」 「そうね。会うこと自体は割としょっちゅうな気もするけど、私からあんたのところに行くなんてこと、まず無いし。あんたが私のところへ来るのは、大体新聞押しつけか取材かって感じだったし」 異変の時に何度か対峙、パートナーを組むこともあった二人だが、プライベートで一緒に過ごすということはほとんどなかった。 いつものスムーズな進行とは違って、今回は少しテンポの悪い進行になりそうだ。文は苦笑いを浮かべながら、そんなことを思った。 「ま、あんたがミスしたら私がフォローしてあげるわ」 「巫女に借りを作るなんて……」 「はいはい、悔しそうな顔してないでさっさとコーナーに移るわよ」 霊夢は机の下から、お便りボックスを取り出す。そして、その中からなんとなくでお便りを選んだ。 「えーっと、PN唯さんからね。『文さん霊夢さん、こんばんは。もし一日だけ立場を変われるとしたら、お二人は何をしたいですか? 教えてください。』だってさ」 「立場ってことは、私がお賽銭の無い残念な腋露出性癖を持つ博麗の巫女になって、霊夢が幻想郷最速かつ美しい天狗になるってことかしら」 「あんたが私を普段どういう風に見ているか、よーく分かった。あとでちょっと二人っきりで話があるわ」 「え? もしかして告白?」 「河童に頭のネジ固めてもらえ馬鹿鴉。で、えーとなんだっけ?」 「立場が変わるとしたら何をしたいか、ね」 うーんうーんと、少し悩む二人。 「えっと、まずこいつの立場になるとか絶対嫌」 「うわっ、酷いですね。まぁ組織に属するとかそういうの、あなたの性には合わないでしょうね」 「文、敬語が出てるわよ」 「うっ……」 「ま、理由はあんたの言う通りね。命令に従うなんて面倒なこと、私出来る気しないし。だって組織って、嫌な命令でも従わなくちゃならないんでしょう? そんなもの、従うなんて馬鹿らしいじゃない」 「それは時と場合によりますね。嫌なことでも、しっかりと正当な理論を展開すれば、従う必要が無い場合だってありますし。けど、あなたの場合は上司に対しても、嫌なことがあったりしたら問答無用で蹴りとか入れそうですね」 「あーやー、敬語出てるっての」 「うぐぐっ……」 どうやら気を抜くとすぐに素ではなくなってしまうようで、敬語に戻るたびに指摘される。 それのせいで文は、もう喋らない方が良いんじゃないかとさえ思った。しかし無言では、仕事放棄になるので、当然そんなことはしない。 「あんたはどうなのよ? あんた、私の立場になってみたらどうする?」 「博麗の巫女ねぇ……異変の時以外はつまらなそう。でもまぁ、その立場になったらまずやることは一つ」 「何よ?」 「腋出しという衣装を変える。寒いし」 「夏は涼しいわよ?」 「嫌よ、あんな露出。普通に薄着になれば良いだけでしょう」 嫌そうな顔をして言う文に、霊夢はふるふると首を左右に振った。 「分かってないわねぇ。あれは腋にスペルカード隠せたりとか、いろいろ便利――」 「あ、コーナー終わりの合図。というわけで、結論は互いになりたいとも思わない、ね。それじゃあ、一旦CMタイム」 「人の話聞きなさいよ!」 霊夢の言葉を遮り、CMへと入った。 ~少女CM中~ 「さて、私と阿求でCMを頼まれたわけだが……」 「ですねー」 慧音は少し困ったような声だ。あまり、こういうことには慣れていないのだろう。 それに対し阿求は、のほほんとしている。 「さて、商品を紹介する前に、そもそもCMとは何の略か分かるか?」 「それくらい知ってますよ。コマーシャルメッセージですよね」 「うむ、そうだ。そしてCMは大体数十秒間で行われる」 「その短い間に、いかに商品の印象や特徴を伝えるか、中々に難しいですね」 「あまり凝りすぎても、難しくしすぎて伝わらなかったのなら意味が無いからな。分かり易く、そして良い印象を与えることが大切だ」 「音や声、そして宣伝する人のイメージ。そのあたりも、CM内容によって使い分けることが重要ですね」 「そうだな。例えば、体があまり丈夫ではない阿求が、私はこれで体を鍛えましたと言って鉄アレイを紹介しても、説得力に欠けてしまう」 「ミスマッチですよね。私で言うなら、筆とか本とかそっちの方がイメージには合っている気がしますし」 「そもそも宣伝する行為は――」 結局、二人が商品紹介に入ることはなく、CM終了の時間が訪れた。 ~少女CM終了~ 「ゲストコーナー! と、いつもなら言うところですが、今日はゲストはいませーん」 「文、敬語出てる」 「うぐっ」 コーナー開始早々、ニヤニヤとした笑みを浮かべた霊夢に突っ込まれる文。 「もうあれね、次から敬語出たら、敬語一回につき針一本ね」 「……え?」 「大丈夫、そのたびに針投げるんじゃなくて、番組終わりにまとめて一気に投げてあげるから。これで番組進行の妨げにはならないわ」 「いやいやいや!? 何勝手に決めてるの!?」 「はい、久し振りの『幻想風靡で一発解決』のコーナーよ。えーと、なんだっけ? 悩み相談を、速攻で解決するとかそんな感じだったかしらね」 「さらっと無視した!?」 ぎゃあぎゃあと文が抗議するが、霊夢は無視しつつお便りボックスに手を入れる。 「じゃあこれーっと。PN犬走椛さんからいただいたわ。『以前、某先輩天狗にちょっかいを出されて鬱陶しかったので噛みつきました。すると、痛がるかと思ったら、なんと可愛らしい声を上げてびくりと震えました。M要素があったみたいです。こんな鬱陶しい先輩は、どう対処すれば良いのか教えてください。』だってさ」 「ちょ、椛!? た、確かにこの前噛まれたとき変な声上げちゃったけど、それは驚いたからであって変な意味じゃ――」 「落ち着きなさいよ。PNって言ってるでしょう? もしかしたら、別人かもしれないじゃない」 「そ、そうよね。この投稿者は椛じゃないし、その先輩天狗とやらが私ってわけでもないわよね」 引き攣った笑みを浮かべつつ、大きく深呼吸。落ち着こうとしているのだろうが、額に汗が滲んでいる。明らかに落ち着いていない。 霊夢は軽く欠伸をしている。 「で? どうすればいいの? このコーナー、あんたが答えてあげるコーナーでしょ?」 「え? あ、そ、そうでしたね」 「はい、敬語出た」 「ぅぐぁっ……」 油断した、と悔しそうな表情をする文。 「んじゃ、とりあえずさっさと解決しちゃいなさいよ」 「そ、そうね。えーと……その上司はきっとMじゃなくて、驚いただけ。勘違いも程々にしておけ駄犬が! うん、すっきり。はい、次のお便りよろしく」 「……まぁ、あんたがそれで良いなら別に良いけど。はい、じゃあ次のお便り読むわよー」 お便りボックスに手を入れて、選ぶ。 「PN姫海棠はたてさんからね。『文のばーか。(笑)』だって」 「よし、放送終わったらあいつ殴りに行こう」 「まぁまぁ、落ち着きなさいって。これもPNなんだから、あんたの知ってるはたてじゃないかもしれないでしょ? この文っていうのも、あんたとは違う文かもしれないじゃない」 「いやいや、さすがに二回連続この流れは故意としか思えないわよ。しかも、悩みですらないし」 「それじゃあ、ちゃっちゃと答えてあげなさいよ。解決するのはあんたの役目でしょ」 「だから悩みですらないのに!?」 早くしろ、と視線で促す霊夢。 困った文は、ただ一言だけ―― 「えーと、はたてくたばれ」 とだけ、言った。 そしてガラスの向こうから、にとりがコーナー終了の合図を出す。 「今のお便りで終わって良いのかしら……というわけで、幻想風靡で一発解決のコーナーでした。このコーナーでは、まともな悩み相談のお便りを募集しています。どしどし応募してくださいね!」 「文、敬語出てる」 「お便り募集のときも敬語ダメなの!?」 こうして、コーナーは終わった。 ~少女CM中~ 「ナズーリンさんナズーリンさん!」 「なんだい、早苗」 「私たちがCM担当にされちゃったらしいですよ!」 「いや、まさに今そのCM中なんだが……」 「どうしましょう、私CMなんて初めてで、一体どうすれば……」 「簡単さ。打ち合わせ通り、決められた商品を紹介すればそれで――」 「そうだ! せっかくなんで、守矢神社の宣伝しましょう! これで信仰がっぽがっぽのうっへうっへです!」 「人の話を聞いていたか!? 打ち合わせ通り、決められたことをちゃんとしてくれ!」 すると早苗は、ふっと笑う。 無駄に爽やか笑みだ。 「ナズーリンさん、私決められたレールの上をリズムに乗るぜ♪って言いながら走るだけの人生って、嫌なんです。私は私らしく、私の道を行きたい!」 「格好良いこと言いました、みたいな表情してるが、それは全力で打ち合わせ無視します宣言だね」 「ぶっちゃけ、打ち合わせ中は目を開けて寝ていたんで」 「あれ寝てたのか!?」 「はい、なので商品の宣伝とか言われても、商品が分からないので。まぁほら、どんまいってことで」 「あぁ、今凄く君を殴りたいんだが、殴っても許されるよね」 「暴力は何も生みませんよ。強いて挙げるなら、愛しさと切なさと心強さくらいしか生みません」 「よし、そこを一歩も動かないでくれよ」 「あれ? なんでダウジングロッドを素振りして――」 ふぉん、と風を切る音の後、何か鈍い音が響いた。映像もついていたら、きっと放送禁止レベルだっただろう。 そんなこんなで、CMは終わった。 ~少女CM終了~ 「はい、エンディングねー」 エンディング曲の『少女綺想曲(デモテープ版)』が流れる。 ん~っと、軽く伸びをする霊夢。それに対し文は、盛大にため息を吐いて、机に突っ伏していた。 「いやー、なんだかんだで終わったわね。どうだった、文?」 「あー? この姿見れば分かるでしょうー。いつもの数倍疲れたー」 「なんかあんたがそこまで脱力してるのも、珍しいわね。というか、まだエンディングなだけで、ラジオ自体は終わってないんだから、シャキッとしなさいよ」 「はいはい、シャキッとコーン」 「しばくわよ?」 「あい、すみませんでした」 こめかみに陰陽玉をぐりぐりされて、仕方なくシャキッとする文。 「といっても、もう何もやることないでしょう? このまま終わり、フェードアウトで良いんじゃ……」 「あら? まだやることがあるでしょう? ほら、敬語の数だけ針をぷすって」 「……え?」 文の額に、嫌な汗が流れる。 「えーと何回だったかしら……面倒だから、五十回くらいで良いかしらね」 「ちょ!? 明らかに多い! 多い!」 「大丈夫大丈夫、針治療みたいなものだから。針治療とかやったことないけど」 「え、ちょ、本気で? ぅ、やぁー!?」 「あ、締めの言葉は私だったわね。あややややー」 霊夢の楽しそうな声と、文の悲鳴を最後に、なんだかんだで幕を閉じた。 あとがき みここここー! というわけで、かなり久し振りな気がするあやみこラジオでした。 今回はゲスト無しでした。さてさて、次回は誰か来るのか。それとも今回でラジオ自体が終わるのか。 相変わらず、そんなふらふらふわふわした感じのシリーズです。 そんなこんなではありますが、今回のお話、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。 あややややー! |
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