絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

気まぐれフランのナイトコース~ルーミア添え

ちょっぴりほわほわふわふわ、そんな雰囲気。
いつもとは少し違う感じのお話です。
 

 月が眩しいくらいに輝く夜を選んで、そっと抜け出してみた。
 以前パチュリーから教わった気配を断つ魔法を使ってみたら、気配どころか魔力の匂いまで消せた。多分私が紅魔館を抜け出したことは、パチュリーも咲夜も美鈴も、きっとあのお姉様でさえ気付いてない。
 紅魔館から少し離れて、魔法を解く。
 何故抜け出したのかと訊かれれば、なんとなくだ。特別な理由は、別になかった。
 このことに気付いたら、お姉様は心配するかな。もしかして、私を捜しに来るかな。なんだか、ちょっとしたいけないことをしている気分。いや、いけないことなんだけどね。
 秋も終わり、冬になったせいかな。夜の風は、今夜の私の行動を責めるみたいに冷たい。何か一枚羽織ってくれば良かったかも。

「ん、風邪引いちゃうかな」

 少し散歩したら、気付かれない内に戻るつもり。
 ただの気紛れくらいで、みんなに迷惑はかけたくないから。それなら最初から抜け出すなって話だけど、それでも何故か抜け出したくなった。狭い世界から、ちょっぴり広い世界への旅立ち。それも一人で。憧れと言うよりは、ちょっとした好奇心。
 ふわりふわりぱたぱた、と空を飛ぶ。
 天敵の太陽は、今はお休みなさいの時間だ。そのままず~っと寝ちゃってくれたら良いな、なんて思ったりもするけど、それじゃあ咲夜が洗濯物乾かないって困りそうだ。美鈴も、お昼寝しがいがないって言いそう。

「あなたは食べても良い人間?」

 気持ち良く飛んでいたら、そんな声がした。
 声のする方へ向いてみると、そこには不自然な闇の球体。夜の暗さに混じって、少し認識し辛い。なんだろう。

「私は人間じゃなくて、吸血鬼。食べられるのは嫌だなぁ」
「そっかぁ、残念」
「お腹、空いてるの?」
「ううん、別にそこまで空いてない」
「なら、なんで食べても良い人間だなんて訊いたのさ?」
「意味はないよ? 訊いてみただけ。もし人間なら、こんな時間にこんな場所をうろついているなんて、馬鹿じゃないのって言ってあげようかなって思った。妖怪に食べられても、文句は言えないもの」

 可愛い声して、何気に毒舌だ。
 でも、もしこんな時間にこんな場所をうろついてる人間が居たなら、それは多分ただの人間じゃないような気もする。魔理沙とか霊夢とか、そんな例外タイプだろう。

「ところで、あなたは結局誰なの?」
「ん? 私?」
「いや、あなた以外にいないじゃん」
「え? あなたの後ろにいるのは?」
「え? 誰もいないけど……」
「あぁ、あなたには見えないんだね……そっか」
「何が見えたの!? ねぇ、何が見えたのさ!?」

 慌てて後ろを向いたけど、誰もいない。気配もない。
 えっと、私には見えない何かが居るって……もしかしなくても、お化け? うぅ、ちょっと怖くなってきた。

「私はルーミア。妖怪だよ」
「えっと、姿を見せてはくれないの?」
「別に良いけど、面白くないよ?」
「いや、人の姿にそんな笑い求めてないから」
「そうー? ならいいけど」

 次の瞬間には闇が消えて、見た目私と同じくらいの女の子が現れた。
 月と同じくらいに、綺麗な金色の髪。そして特徴的な、赤いリボン。闇に同化するような、黒を基調とした服。おっと、初対面だから思わず観察しちゃった。
 うーん、人を食べるようには見えないけど。まぁ妖怪とかって、見た目はあてにならないもんね。私だって、多分何も知らない人が見たら、吸血鬼って思えないんだろうな。

「あ、私はフランドール・スカーレット」
「あーあの紅い館の……んーなるほどね。それでかぁ……」
「え? 何が?」
「いやいや、なんでもないよ。それじゃあ、私は急いでるから」
「何か用事があるの?」
「うん、今日は散歩するの。良い天気だからね」
「それ、用事って言うのかなぁ。そうだ、それなら一緒に散歩しない?」
「フランドールも散歩?」
「うん、散歩」
「そっか。良いよ、別に」

 ついてきなよ、と言われる。良かった、外を知らない私よりも、きっとルーミアの方が詳しいだろう。
 にへらっと笑うルーミアを見ると、こっちまでふにゃっと笑顔になる。なんだろう、相手に警戒を抱かせない笑顔と言えばいいのかな。そんな感じ。

「フランドールはさ、何処か行きたい場所ある?」
「うーん、特に無いかな。元から何から明確な目的も無かったし。この辺りは、何かあるの?」
「森と湖くらいね。どっちも別に大して面白くは無いと思うけど」
「それでもいいよ、連れてってくれる?」
「ん、いいよー」

 ふよふよと、ルーミアの飛行は少しふらついている。飛ぶのが苦手なのかなと思ったけど、ルーミアは笑顔だ。きっと、わざと不安定に飛んで、その感覚を楽しんでいるんだろう。
 それを見てると、なんだか私もつられたのか、ふらりふらり。ふっと力を抜いて急降下してみたり、突然勢い良く加速してみたり、いつもと違う飛び方。
 すると、ルーミアがこちらを振り向いた。

「フランドールも、ふらふら?」
「うん、私もふらふら」

 何がおかしいのかよく分からないけど、私たちはえへへと笑い合った。
 夜空に不安定な飛行生物が二人。きっと、傍から見たらおかしな光景だろうなぁ。けど、たまにはこんな風に飛んでみるのも面白い。

「はい、森とうちゃーくっ!」

 ルーミアがそう言って、地面に着地。少し高い位置から飛行をやめたせいか、ちょっとこけそうになっていた。
 私はゆっくりと着地。森の中は薄暗くて、空に光る星たちの力もここでは薄まっているように思える。けど、怖いって感情よりも、なんだろう……わくわくする。

「で、ここには何があるの?」
「んー? 何も無いよ?」
「えぇっ!?」
「キノコとかはそこらにあると思うけど、食べたら変なことになるよ? 服脱ぎたくなったり、躍りたくなったり、食べた瞬間爆発したり……本当、酷い目にあっちゃうんだからね?」

 ルーミアが真剣な表情で言うけれど、えっと、ルーミアはもしかしてそれらを体験したってことなのかな。なんか妙に説得力がある。
 思わず苦笑い。

「あ、私は別にそんな目にあってないからね? これはーそのーそう、友達の話であって私じゃないからね」
「はいはい、分かったから」
「むぅーフランドール、信じてないって顔してるー!」

 いや、そりゃあそうでしょ。
 ルーミアは嘘を吐くのが下手なのか、面白いほど顔や行動に出る。
 けれど突然、ルーミアの目が大きく開いた。何か、驚いてる様子?

「フランドール、後ろっ!」
「え?」

 ルーミアの大声で、咄嗟に振りかえる。
 そこには、獣型の妖怪。人語を話せないくらいに低級だけど、それゆえに厄介なタイプ。弾幕ごっことか相手が妖怪だとか、そんなことは関係なしに襲ってくる。
 そして私は気付くのが遅かった。油断していた。今からでは、この襲ってくる敵に対応する術がない。いや、あるにはあるが、無傷では無理だ。
 思わず、ぎゅっと強く目を瞑る。一発は喰らう覚悟を決める。
 けれども次の瞬間、襲ってくるはずの痛みが無かった。あったのは、獣の呻き声。恐る恐る目を開くと、獣はその場に血を流して倒れていた。

「えっと……何が起こったの?」

 思わず、ぽつりとそんな言葉を零す。
 するとルーミアは何が起こったのか見ていたのか、私に笑顔を向けてきた。

「フランドール、愛されてるね」
「え?」
「ううん、なんでもない。それよりごめんね。もっと早く私が気付いてれば」
「いや、私も油断してたし。ルーミアは悪くないよ。それに何故か怪我は無かったしねっ」
「ここは危ないね。湖の方行こうか」

 ルーミアの提案に、こくりと頷く。一応さっきの警戒してるけど、もしまた襲われちゃあせっかくの散歩が台無しだ。

 またさっきみたいに、ふらりふらりと空を飛ぶ。
 森から湖はそんなに遠くないようで、少しすると次第に視界に入ってきた。湖に落ちないように、さっきよりも慎重に着地。

「湖とうちゃくーだけど、正直この時期この周辺は寒いよー?」
「うん、もうちょっと早くに言って欲しかったなぁ」

 こ、これは寒いっ!
 うぅ、先に言っておいて欲しかった。さっきの森よりも、明らかに寒い。あーもう、本当に薄着で来たことを後悔しちゃうよこれは。
 けれど、空気は澄んでいるように感じる。心地良い。すぅっと、深呼吸をしてみる。ただそれだけのことなのに、何故か心が落ち着くような気がした。
 いつの間にか、ルーミアは地面に座り込んでいた。
 私もなんとなく、その隣に座る。

「ま、ここもさっきと同じで、特に何もないけどね」

 あははーと笑うルーミア。

「けど、なんだかんだで楽しいよ? ありがと、ルーミア」
「うん、私も楽しいよ。ありがとって言われても、森と湖しか案内してないけどね」

 それでも、私は楽しかった。
 こんな風に初めて一人で外に出て、その先で知り合ったルーミアとこんな風に一緒に過ごせて、楽しくないわけがなかった。何もかもが初めてで、全てが新鮮。
 あぁ、幻想郷は狭いと聞くけど、私にとってはとても広い。
 今日は視野が広がった。そんな気がする。

「星が綺麗だねー」
「そうだねー」
「ねぇ、フランドールさ」
「んー?」
「今日、こっそり抜け出してるんでしょ? そろそろ帰らないと、館のみんな心配するんじゃない?」
「え? なんで分かるの?」
「だって、あの、えっとねー……もう言っちゃっても良いよね? 実は――」
「こらぁ! 空気読みなさいよ!」

 ルーミアの言葉を遮って、聞き覚えのある声が後ろから。
 驚いて振り返るけど、そこには誰も居ない。あれ、なんでだろう。ルーミアはくすくすと笑っている。一体どういうことなんだろうか。

「もう声出しちゃったんだし、正体見せちゃいなよー」
「はぁ……仕方ないわね」
「わぁっ!? お、お姉様!」

 さっきまでは誰も居なかったはずの空間に、突然ため息混じりのお姉様が現れた。私と違って、しっかりと茶色のロングコートを着ている。というか、え? え? どういうことなの? というか、ルーミアは分かってたの?
 いろんな疑問が、頭の中をぐるぐると駆け巡る。
 驚きのあまり、言葉が出てこない。

「大体なんであんたには最初から分かったのよ? パチェ直伝の、姿が闇に溶け込んで見えなくなる魔法を使ってたのに」
「闇は私の得意分野だからねー」
「えっと、ルーミアは最初から気付いてたの?」
「うん。私は言ったよ? 後ろに居る人はフランドールには見えないんだねって」

 あーあー確かにそんなことを言っていた気がする。なるほど、お化けとかじゃなくて、お姉様だったのか。ということは、最初から私が抜け出していたことはバレていたのか。
 いやいやいや、でも他にも疑問はある。

「けど、なんで私のお姉様だって分かったの?」
「えー? だって、二人ともそっくりだよ、雰囲気とか」

 そっくり? 私とお姉様が? そんなこと、初めて言われた気がする。お姉様も私も、目を丸くしていた。
 するとルーミアは、ふわっと宙に浮く。

「それじゃあ、そろそろ私は行くね」
「え? 行くって何処に?」
「さぁ? ふらふらと散歩を続けるだけだよ。フランドールはもう帰った方が良いよ。そこにいるフランドールのお姉さん、ずっとハラハラして見てたしね。あの獣を倒したのだって、お姉さんだよ。それにフランドールが私の真似して不安定に飛ぶのを、とても心配そうに見ていたし」
「……おいこらルーミアとかいったか? それ以上お喋りが過ぎると、紅く染めるわよ」
「あはは、怖い怖い。それじゃあね、フランドール」
「え? あ、今日はありがとう! また、またね、ルーミア!」

 私がお礼を言うと、ルーミアはふにゃっとした笑みを浮かべながら手を振って、その場を去って行った。
 なんだろう、掴めないような性格だったけど、楽しかった。またいつか、会いたいな。
 しばらくルーミアが行った方向をじーっと見つめていると、ごほんごほんとわざとらしい咳。お姉様だ。少し気まずそうに、私の方を見ている。どうしたんだろう?

「あーその、フラン、すまなかった」
「え? 何が?」
「いや、お前をこっそりつけるような真似をして」

 あーなるほど。それに対して、後ろめたさを感じていたのか。
 けど、お姉様は別に悪くない。原因は、私だもの。

「ううん、私こそごめんね。勝手に抜け出すようなことして」
「ん、そうね。正直、せめて私に一言くらい言って欲しかったわ」
「止められるかなぁって思って……」

 きっと、ダメって言われると思ったから。

「今度からはせめて一言、ね?」
「ん、分かった」
「よし、じゃあそろそろ帰るわよ。あ、けど、その前に……」

 なんだろうと思っていると、お姉様が近寄って来て私にコートを着せてくれた。お姉様がさっきまで着ていたのもあって、より温かい。
 ぬくぬくとした温かさと、お姉様の匂い。まるで、お姉様に包まれているような感じだ。

「ほら、帰るわよ、フラン」
「うんっ!」

 差し出された手を、ぎゅっと握る。
 そして、紅魔館へと戻ることにした。ふわっと、空を飛ぶ。お姉様に心配かけないよう、不安定な飛行はやめ、普通の飛行。
 私を責めるように吹いていた冷たい風は、いつの間にか止んでいた。
 
東方SS | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<修羅場ってきた! | ホーム | 執筆中にふと思ふ>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |