絶対あめだま宣言!

好きなことや様々なことを、ただ適当に綴ります。SS書いたりなど。あやれいむ布教委員会の会長です。

小悪魔一人称会議

リクエスト、というよりは牛乳屋さんとの約束のSS。
というわけで、牛乳屋さんに捧げます。


 

「集まったわね」

 パチュリーがそう言うと、目の前に座っている咲夜とレミリアが小さく頷く。
 ランプを消している薄暗い図書館の一角で、木製の椅子に腰掛けるのはパチュリー。
 テーブルの向かい側には、同じように木製の椅子に腰掛けるレミリア。そのレミリアの右側に立っているのは咲夜だ。

「では……始めようと思うわ」
「えぇ」

 パチュリーの言葉にレミリアは、ただ頷き、そう言う。咲夜は何も言わず、静かに目を瞑っている。

「では始めるわ! 第十回小悪魔一人称会議!」
「……ふっ」
「ごふっ……」

 立ち上がり、力一杯拳を天に掲げて叫ぶパチュリー。意味深に笑うレミリア。そして咲夜は何故か吐血。

「さぁ、今回で決着をつけようと思うわ。小悪魔の一人称について」

 今まで不定期に開催されている、小悪魔一人称会議。
 これは、ただの会議ではない。小悪魔という存在そのものに関わる重大な会議、とか言われている。主にパチュリーがそんなことを言っている。

「まずは確認。小悪魔が自分自身を何て呼んでいるか、分かった?」
「駄目ね。あの子、『私』とも『あたし』とも何も言わずに、行動しているわ」
「私も分かりませんでした」
「また駄目だったのね。ということはやっぱり」
「えぇ、小悪魔は一人称を隠している」

 そう、それはある日ふと思った疑問だった。
 小悪魔は、一人称を決して使わないのである。いや、正確には使うのを我慢しているように、パチュリーには思えた。
 時々、何かを言おうとして慌てて口を押さえる小悪魔。その様子は、使わないというよりは我慢している感じだ。
 そんな様子を不審に思ったパチュリーが、レミリアや咲夜に「小悪魔が自分自身をなんて呼んでいるかを聞いたことあるか」と訊いてみたところ、やはり二人とも知らなかった。

「では、会議を始める。意見のある者は挙手で」

 どんな理由があって隠しているのか、我慢しているのかは分からない。
 だが、一度気になってしまうと、やはり理由を知りたくなる。
 隠している小悪魔に訊くわけにもいかず、今まで三人で議論を繰り返していた。
 そして今日も、会議が始まる。

「はい、パチュリー様。私の推測では、やはりシンプルかと」

 咲夜が挙手をし、そう発言した。

「シンプルなのに隠す必要あるか?」
「レミィ、発言の邪魔をしない」
「はいはい、悪かったよ。で、咲夜はなんだと思うんだ?」
「はい、お嬢様の言うことももっともです。ただシンプルというわけではありません。少しだけ捻って考えてみました」

 シンプルなのか捻ったのか、もしこの場に某閻魔様が居たらハッキリしなさいと言うだろう。
 だが、今は誰も発言を遮る者はいない。
 パチュリーもレミリアも、無言で続きを促す。

「そこで私が考えた小悪魔の一人称は、『ウチ』です」
「ほぅ、確かにシンプルと言えばシンプルだ」
「ふむ、新しい見解ね。でも、あまり想像がつかないわ」

 小悪魔が『ウチ』と言っているのを、いまいち想像出来ないというパチュリー。
 レミリアも想像しようとするが、中々上手くいかない。

「いえ、想像しやすいかと」
「咲夜には想像が出来るの?」
「はい、例えばこんな感じです」





 十六夜咲夜の妄想劇――『ウチ小悪魔!』





「パチュリー様、小悪魔をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「あら、忙しいのね。どうぞ」

 咲夜が図書館を訪れ要件を告げると、パチュリーは本から視線を外すこと無く返答した。

「小悪魔、申し訳ないけど、手伝ってくれるかしら?」
「あ、はい! ウチで良ければ喜んで!」
「ありがとう。では、パチュリー様、失礼しました」

 一礼した後、小悪魔を連れて図書館を出る。
 咲夜は、たまにこうして掃除などの仕事を小悪魔に手伝ってもらっていた。もちろん、本当に忙しすぎるときのみ。妖精メイドはたくさんいるが、正直あまり戦力にはならない。

「本当にごめんなさいね。妖精メイドたちの中には、あなたくらい優秀な者が居ないから」
「いえいえ、頼られるのは嬉しいですよ。ウチ、弾幕は弱いので、これくらいしかお役に立てそうにないですし」

 にはっと笑いながら、そう言う小悪魔。

「それじゃあ、まずは廊下の掃除を――っ!? 小悪魔、危ないっ!」
「えっ? きゃあっ!?」

 咲夜が叫んだ次の瞬間には、小悪魔は咲夜にお姫様抱っこをされていた。そして、小悪魔がさっきまで立っていた場所には、荒々しく粗末な弾幕が舞っていた。
 近くには妖精メイドが数人。どうやら、弾幕ごっこをして遊んでいたようだ。
その流れ弾が、危うく小悪魔に被弾するところだった。
 咲夜が気付き、時間を止めて助けなければ、いくら妖精メイド程度の弾幕といえども無防備な小悪魔には危なかっただろう。

「こら、あんたたち! ちゃんと仕事をしなさい!」

 咲夜が一喝すると、妖精メイドたちは慌てて散った。
 はぁ、とため息を吐く。

「あ、あのー咲夜さん」
「んー?」
「助けていただいたのはありがたいのですが、そのぉ……えと」

 咲夜の腕の中で、もごもごと何かを言おうとしている小悪魔。顔を赤くして、少し俯いている。一体どうしたのだろう、どこか怪我でもしてしまったのだろうか、と咲夜は首を傾げる。

「ひ、非常に恥ずかしいのですが……この状況」
「……あぁ、お姫様抱っこ? 私は別に恥ずかしくないけど」
「う、ウチが恥ずかしいんですってば!」
「悪魔なのに、純情なのねぇ」

 思わず、苦笑い。

「あーもう、離してくださいー!」
「あ、ちょ、こら、暴れないの」
「うーうー! 咲夜さんに辱められたー!」
「そういうこと大声で言わない。誤解を招くわよ? それとも、誤解を真実にしてあげましょうか?」
「え? それどういうことですか――って、ひゃあっ!?」



 ~少女にゃんにゃん中~







「といった感じで! まさにウチ小悪魔は、可能性としてありなんじゃないかと!」

 くわっと両目を大きく開き、熱弁する咲夜。
 
「少し落ち着きなさい、咲夜」
「す、すみません、取り乱しました」

 レミリアに言われ、咲夜はハッと我に帰る。そして、少し恥ずかしそうに俯いた。

「ふむ、確かに悪くないわね」
「そうね。けど、ちょっと甘いわ。私はこの図書館で、小悪魔を間近で見てきたからこそ、分かる。小悪魔は、ウチよりももっと似合うものがあると!」
「……聞かせてもらっても、よろしいですか?」
「えぇ、聞かせてあげるわ。『わし小悪魔』説を!」





 パチュリー・ノーレッジの妄想劇――『わし小悪魔!』





「ちょっと小悪魔! これはどういうこと!」
「え? わ、わしですか!」

 パチュリーの怒声に、びくっと体を震わす小悪魔。

「えと、何か間違えてましたか?」
「この本、防水魔法と防火魔法、かけてなかったでしょ?」
「あれ? かけていたと思いましたが……」
「あなたがかけていたの、防雷魔法と防雪魔法よ。何マニアックな魔法かけてるのよ! おかげでほら、弾幕ごっこで少し燃えちゃったじゃない」
「う、うあー!? す、すみませんー! わ、わしとしたことが、不甲斐ない……」

 小悪魔はしゅん、と肩を落とす。
 それを見て、パチュリーはため息一つ。小悪魔のドジは、今に始まったことではない。仕方ない、と思いつつも、やはりこれは直さなくてはいけないなと思う。

「小悪魔、あんた今度からドジをするたびに、罰を与えるわね」
「ば、罰ですかっ!?」

 小悪魔は罰と言う言葉に、びくびくと怯えてしまう。
 魔法の実験、材料、拘束などなど、不穏な単語が脳内を駆け巡る。

「あ、あのパチュリー様……わ、わしはあまり痛いのは嫌なんですがー」
「安心して。ミスするたびに、一枚ずつ服を脱いでいってもらうだけだから」
「あーなら痛く無くて安心――って、うぇぇ!?」
「じゃ、そういうことだから、頑張ってね」
「ちょ、ま、パチュリー様ぁ!」

 ミスれば脱衣。
 その事実が、小悪魔に大きなプレッシャーを与えることとなり、パチュリーの思惑とは真逆の結果を招くこととなる。
 ただでさえ、気の小さい小悪魔。
 それなのに、そこからさらにプレッシャーを与えたら、ミスが多くなるのも当然のことで。



 1時間後、図書館には白いショーツ一枚の小悪魔が!

「ふむ、小悪魔は黒かと思ってたわ」
「まじまじ観察しないでくださぁい! うぅ、なんでわしがこんなことに……」
「あ、ほら、そんな落ち込んでると胸の方が見えちゃうわよ」
「うぐ……」

 右手で胸を隠し、左手で下をカバー。
 いろいろとピンチな状況だ。

「あ、小悪魔、紅茶おかわり」
「ふぇあ!?」

 うふふ、と良い笑顔のパチュリー。
 両手が塞がっている小悪魔に、新しい紅茶を頼むと言うことは、かなりの意地悪だ。
 紅茶を淹れなきゃいけない。けれども、動いたらいろいろと恥ずかしいことになってしまう。どうすればいいのだろうか、と葛藤。
 うーうー唸っている小悪魔を眺めつつ、パチュリーはニヤニヤする。完全にドSだ。

「あら、どうしたの? 紅茶も淹れられないような子には、罰を与えなきゃいけないかしらね」
「へ、や、ぁっ!」

 立ち上がり、小悪魔の両腕を掴む。
 かぁっと、みるみるうちに顔が熱くなっていく小悪魔。

「さぁ、罰を与えるわ。最後の一枚は、私自ら脱がせてあげる」
「ぇ、やぁー……ぱちゅ、りーさまっ。わ、わし……」



 ~少女にゃんにゃん中~






「どう? これぞ、小悪魔よ」
「ないですね」
「ないな」
「ちょ、まさかの全員否定!?」

 ねーよねーよ、とため息混じりに否定するレミリアと、若干本気で引いてる咲夜。
 予想外の二人の反応に、パチュリーはちょっとへこむ。

「ま、ここは私の出番のようね」
「レミィ……何かあるの?」
「やけに自信満々ですね、お嬢様」
「当たり前よ。咲夜もパチェも、大事なことを忘れてるわ。小悪魔は、一応悪魔なのよ? デビル、デーモンの一種」
「それが何よ?」
「そうと決まれば、一つしかないだろう?」

 レミリアは、自信満々に語り始める。





 レミリア・スカーレットの妄想劇――『吾輩小悪魔!』




「ぐぁははははぁっ! 吾輩吾輩ぃ!」







「却下」
「却下ですわ、お嬢様」
「ちょ、まだ始まったばかりじゃない!」

 即却下により、妄想から現実へと戻される。

「レミィ、それはデーモンはデーモンだけど、多分どこぞの閣下よ」
「そうですわ。小悪魔とは別の意味で、次元が違う悪魔の一種かと」
「じゃあ結局一人称はなんなのよ!」

 ぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。

「みなさん、何をそんなにムキになって話し合ってらっしゃるんですか?」

 そこに、紅茶を淹れに来た小悪魔。
 三人は勢い良く小悪魔の方を向き、目をぎらぎらと輝かせる。
 その重圧に、びくっと体を震わす小悪魔。

「小悪魔! もうハッキリ訊くわ! あなたの一人称を教えなさい!」
「はぇ? 一人称ですか?」
「そうですわ。今あなたのことで会議をしていたのよ」
「あぁ、そうだ。というわけで、言え小悪魔!」
「えぇ!? で、でも……そのー」

 もじもじ。
 ちらちら。
 少し、恥ずかしそうだ。

「昔から周りにおかしいって言われてたので、伏せてたんですが……」
「紅魔館には、あなたをおかしいなんて言う者はいないわ。さぁ、小悪魔、一人称を入れつつ簡単な自己紹介でもしてみなさい」

 パチュリーの言葉に、小悪魔は少し悩む。
 うーんうーんと唸ってから、意を決したような顔つきになった。

「で、ではいきます!」

 咲夜もパチュリーもレミリアも、皆息を飲む。
 そして、小悪魔はその小さな口を開き、言葉を紡ぐ。

「ぼ、ぼくは小悪魔ですっ!」
「まさかのぼく!?」
「これは予想外だ」
「くっ……ごふぁ!」

 驚くパチュリー、冷静に予想外のことを対処しようとするレミリア、吐血余裕の咲夜。
 その反応を見た小悪魔は、やっぱり自分はおかしいのだろうかと不安になる。

「あ、あの……やっぱり、ぼくはおかしいでしょうか?」

 震える声で、そう言う小悪魔に三人は――

「ありよ!」
「問題無い」
「最高ですわ」

 とても良い笑顔で、そう返したそうな。







 その頃、紅魔館門。
 美鈴は日傘をさしつつ、フランドールと遊んでいた。

「ねぇ美鈴、お姉様たちは毎回なんの会議をしているの?」
「妹様はあんな風に汚れちゃだめですよー?」
「よく分からないけど、うんー」

 とても平和で純粋な、図書館とは真逆の穏やかな時間が流れていた。
 





東方SS | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<頼りっぱなしで一人じゃ何も出来ない私だから | ホーム | あやれいむプロジェクト始動>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |