あやみこラジオ~第2回放送~2010-10-18 Mon 17:14
2回目!
※この作品は『あやみこラジオ』の続編的位置づけですが、『あやみこラジオ』を読んでいなくても特に問題はありません。 「みここここー! さぁ、始まりました! 毎週土曜日夜八時はあやみこラジオの時間です! パーソナリティーは、毎度お馴染み射命丸文と」 「まだ二回目だし、全然お馴染みじゃないけど博麗霊夢よ」 オープニング曲の『恋風綺想』が流れる。 元気いっぱいに挨拶をする文と、それとは対照的にどこか気だるそうな霊夢。 「霊夢さん、もっと元気にいきましょうよ。これでお賽銭、増えるかもしれないですよ?」 「みなさんこんばんは、楽園の素敵な巫女ですっ」 「……露骨に態度が変わりましたね」 「さぁ、始めるわよ。えっと、最初は普通のお便りのコーナーだったわよね」 「はい、この箱の中にお便りが入ってますからねー。では、PN名前が無い程度の能力さんからいただきました。『お手紙の宛先はどこでしょう?』とのことです。大丈夫ですよーしっかり届いてます」 「そういえば、これってどうやって届いてるの?」 目の前にある、箱に入ったそれなりの量の手紙。霊夢はそれを見て、これらは一体どこから届いているのだろうかと疑問に思ったのだった。 だが、そんな霊夢とは違って、文は知っているようだ。「知らなかったんですか?」といったような、きょとんとした表情。 「これらは紫さんのスキマや、私たち鴉天狗の中での配達などが主ですよ。私たち天狗は、人里などから回収を主に、紫さんはたまによく分からないところから集めてきますね」 「へぇ~でも天狗って結構閉鎖的じゃなかったかしら? 人里とそんな積極的に関わっても良いの?」 「私自身は元から結構積極的でしたからね。悪影響ならともかく、これくらいの関係ならむしろ、良好関係が築けるかもしれませんから。さぁ、次のお便りいきましょー!」 「はいはい、えっと次はPNみやびさんからいただいたものね。『お二人の関係は? 次の4つから選んでください』だって」 「ふむ、その4つとは?」 「えっとね……」 1.恋人 2.夫婦 3.主従 4.ペットと飼い主 「だってさ」 「最後、なんだか不穏な選択肢があった気がするのですが……」 「そういえば、あんたと私の関係ってなんて言えば良いのかしらね。普通に友達? けど、友達っていうのはなんかしっくりこないわよね」 「ですねぇ。かといって、親友なのかというと……」 「そこまで近い感じはしないわ」 「そうですねー」 「私とあんたが会うときって、異変の時かあんたが取材に来る時くらい?」 「あーそうかもしれません。霊夢さんから私のところに来たり、私が霊夢さんのところへ『遊びに』行くことは滅多にないですね」 二人は割と会う機会があるが、プライベート的なことで会うことはほとんどなかった。基本は取材、特別な時は異変解決のパートナーや異変中での敵同士などだ。 よくよく考えてみると、二人の関係は酷く曖昧だった。 仲が悪いのかと訊かれれば、二人ともそれは違うと答えられるだろう。だが、親しいのかと訊かれると、首を傾げてしまう。 「霊夢さんは私のこと、どう思ってます?」 「はぁ?」 「ほら、好きか嫌いか。ただそれだけです」 「いや、なんていうかーそのー」 改めてそんなことを真剣に訊かれてしまうと、言いにくいことこの上ない。 「あ、あんたは私のことどう思ってるのよ!」 「え? 普通に好きですけど?」 「ぐっ……平然と答えるなんて」 「あっはっはー霊夢さん、こういうのは恥ずかしがった方が負けなのです! いっそ開き直って、さらっと言ってしまった方が勝ちなんですよ。さぁ霊夢さん、私のことどう思ってるんですか? さぁさぁさぁ!」 「うっ……くぅ」 わざとらしく、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら霊夢に迫る。 霊夢はここで殴ってやろうかと思うが、殴ったら殴ったで、自分が恥ずかしがっているのを認めているような気がして癪だったので、なんとか堪えた。 なるべく平静を装いながら、口を開く。 「別に、嫌いじゃないわよ」 「嫌いじゃない、じゃなくて、好きか嫌いかハッキリと」 「く……それは、その」 文の視線から逃れるように、霊夢は視線を外す。と、そこでさっきの手紙が目に入る。そして、気付いた。 「そうよ! 別にあんたのことを好きとか嫌いとか訊いてるんじゃないのよ、このお便りは! 選択肢、1~4の中から選べって言ってるだけで」 「む……逃げるんですか?」 「なんとでも言いなさい。私は4を選ぶわ!」 「しかも、よりにもよって4番って! もちろん、霊夢さんがペットですよね?」 「あ?」 霊夢の「何調子乗ってんのよ張っ倒すわよ?」という視線。 「すみませんでしたごめんなさい」 文は速攻折れた。 ラジオで自分の断末魔を流したくはなかったからだ。 「さ、じゃあ続いてのお便りいくわよ」 「あ、霊夢さん霊夢さん。もうお終いらしいです。次のコーナー行かないと」 「え? あ、本当ね。カンペ出てる。じゃあ、CMの後は次のコーナーね」 ~少女CM中~ 「あぁ、困ったわぁ」 「む、どうしたんですか幽々子様」 「あ、妖夢。ちょっと聞いて。最近ね、肩凝りが酷くて……」 「幽々子様、そんなときはこれです。万能包丁ー!」 「え?」 「これさえあれば、どんな凝ってる肩でも一刀両断です」 「え? え?」 「それでは早速――」 「よ、妖夢落ち着いて」 「あはっ、冗談ですよ」 妖夢の目を見て、幽々子は割と冗談に思えなかった。 「というわけで、今回ご紹介するのはこちら、カッパのマークの万能包丁です。使い方はとっても簡単。切れないときに、ここの柄の部分にあるボタンを押すだけ」 「押すだけで良いの? それなら包丁の扱いが苦手な子でも、簡単に切れそうね」 「はい、このボタンを押すだけ。すると、ほら」 妖夢がボタンを押すと、包丁が爆発した。 「料理なんてなかったことになります」 「……妖夢、解決方法がおかしい気がするんだけど」 「お買い求めは、妖怪の山3番通り路地裏まで!」 ~少女CM終了~ 「さぁ、ゲストコーナーです!」 「先週は無かったコーナーね」 「はい、今回は素敵なゲストをお招きしています。地霊殿の主、古明地さとりさんですー!」 さきほどまでは文と霊夢の二人きりだった部屋に、今はさとりも加わっている。さとりもこういうことは慣れていないためか、少し回りをきょろきょろと見渡していた。 座席は、霊夢の隣だ。ちなみに霊夢の正面には、机を挟んで文が座っている。 「えっと、古明地さとりよ。よろしくお願いします」 「さとりさん、そんな緊張しないでリラックスリラックス」 さとりの明らかに見て分かる緊張を、文が笑顔で解す。 「さぁ、実はゲストさんを先週言っていないのに、なんとお便りがいくつか来ています」 「ただ、ゲストが来ることは予想出来ても、誰が来るかまでは予想できなかったみたいね。みんな無難というか、誰が来ても大丈夫な質問ばかりね」 「そ、そうなのですか? 少し、緊張するわね」 霊夢と文は、手紙をいくつか手に取り眺めている。 「じゃあ、読んでいきましょうかねー。PNフェアリーメイドさんからいただきました。『ゲストさん、いらっしゃったらこんにちは。ゲストさんは、休日をどのように過ごしているのでしょうか?』とのことです」 「えっと、私は毎日が休日のようなものですから……その」 「え? さとりって失業者?」 「ち、違います! 一応管理を任されているんですから。ただ、ペットたちがよく働いてくれるので、私の出番は基本ないですね。指示をするだけと言いますか」 「では、その空いてる時間はどのように過ごしているのですか?」 文の質問に、さとりは少し考え込む。 普段の自分を思い出しているのだろう。 「主にお掃除や、食事の準備などを。家事全般ですね」 「どっかに外出したりはしないの?」 「はい、なるべく人と関わるのは避けたいので」 「じゃあさらに訊きますが、そんなさとりさんが何故今回ラジオのゲストに?」 「そ、それは勇儀さんやお燐やおくう、こいしやパルスィさんに無理矢理推薦されて……」 「なるほどー。スタッフが地底の誰かをゲストにお願いします、と言いましたからね。それで推薦でさとりさんが。愛されてますねー」 「べ、別に私は愛されてなんかっ!」 ニヤニヤしている文に、さとりは顔を逸らす。そして、霊夢の方を見て助けを求めるが、霊夢は良い笑顔を返すだけ。 仲間がここにはいない! さとりがそう思った瞬間だった。 「そ、そういう文さんこそっ! 愛されてるじゃないですか!」 「はい? 私がですか?」 さとりの反撃が始まる。 心が読めるからこそ、出来る芸当だ。 「私が誰に愛されていると?」 「霊夢さんです!」 「ちょ、はぁ!?」 まさかの自分にまで矛先が向いた霊夢は、驚きのあまり変な声を上げた。 さとりとしては、別に誰でも良かったのだが、この場に居るのが文と霊夢と自分なため、必然的に霊夢を出さざるを得ない状況だった。 「文さん、霊夢さんはあなたのことを別に嫌っていないそうです」 「あーそれはさっき聞きましたね」 「そして、どちらかというと好きらしいですよ」 「あやややや、それはそれは……私照れちゃいます」 「ちょっと待てぇ!」 さとりは文を攻撃するつもりが、何故か霊夢を攻撃する図になっていた。 「さとり! どうせなら、文の心読みなさいよ! なんで私なのよ!」 「あ、すみません、つい」 「あはは、霊夢さんは私のこと、どちらかというと好きなんですねー」 「黙れ、夢想封印するわよ?」 「そんな真っ赤な顔して言われても怖くないですー」 「うわーうわーどうしよう、霊夢さん私のこと嫌いじゃなかった、良かったー嫌われてるかと不安だったー。ですか……文さん、意外に怖がりですか?」 「な、え、ちょ、うぇぇ!? さ、さとりさん!?」 とても良い笑顔のさとりに対し、文は妙な汗をかいていた。霊夢は最初、さとりが何を言ったのか理解できないでいたが、しばらくして把握。そして、口元を大きく歪ませた。 完全に、文が攻められるパターンになった。 「う、うぐぅ……」 「これはまずい、私の心が読まれるとなっては、絶対に思っちゃいけないことがいくつも。特に私が霊夢さんのことを、割と本気で大切に――」 「げ、幻想風靡ぃ!」 「ちょ、文!?」 ~少女混乱中~ 「すみませんでした、取り乱しました」 たったの数分で、霊夢とさとりはボロボロ状態になっていた。 「と、取り乱すってレベルじゃないわよ……あんたのこの技は」 「うくぅ……わ、私も弄りすぎました、すみません」 「えーと、ゲストコーナー続行できます?」 「……なんとかね」 「私も、一応大丈夫です」 ふらりふらりと、さとりと霊夢は席に戻った。 「さて、では気を取り直してお便りを。PN山の神様Kさんからいただきました。『もしゲストの人がいたら、こんばんは。みなさんの趣味を教えてください』だそうです」 「趣味ねぇ。んー私は一応、料理かしら。新しい料理を作るのは楽しいし。あ、あとはお茶を飲むことね」 「へー霊夢さんが料理趣味とか、意外です。今度食べさせてくださいよ」 「ん? 良いわよ。ちょうど作ってみたかった料理があるから、味見してくれると助かるわ。やっぱり第三者の意見も聞きたいし」 「わぁ、楽しみにしてますねっ」 「あの、いちゃついているところ申し訳ないですが」 「はぁ!?」 「いちゃついてなんかいませんけど?」 「……まぁ良いです。私は、読書ですね。あとは最近は、花を育てるのも楽しくて」 「花ですかー。地底だと、少し厳しい環境下じゃないですか?」 「そうね、ちょっと厳しくはあります。けど、その苦労もあってか、花が咲いたときはとても嬉しくてね」 「花を育てるなんて、さとりにも普通の女の子っぽい可愛い趣味があるのね」 「ほ、放っておいてください!」 霊夢の言葉に、少し赤くなるさとり。 そんなさとりを見て、文は少し笑みを零した。 「文は? といっても、あんたの場合はなんとなく想像がつくけど」 「私はもちろん、新聞です!」 「新聞って、お仕事じゃないんですか?」 「あぁ、別に新聞作るのがこいつの本業ってわけじゃないのよ。担当は広報だけど、義務じゃないのよね?」 「はい。別に新聞を必ず作れというルールはありません。だから、私の趣味ですね。もちろん、他にも新聞を作っている天狗はいますが、みんな趣味でやっていることですね」 「なるほど……てっきりお仕事なのかと思ってました。趣味で新聞を作るなんて、凄いですね」 さとりの言葉に、文は思わず感動した。尊敬の眼差し、本当に心から凄いと思っている言葉、それらは文にとって珍しい体験なことこの上なかった。 身を乗り出し、さとりの手を両手でぎゅっと握る。 「さとりさん、是非私の新聞を購読し――」 「ラジオ内で新聞勧誘しないっ!」 「痛いっ!?」 文の額に、霊夢の八連続デコピンが炸裂。 「いえ、私は別に購読しても良いと思っていたのでそんなデコピンしなくても良いのですが――って、あぁなるほど。そっちじゃなくて」 「な、何よ、さとり? 何ニヤニヤしてるのよ?」 「なるほど、『手』ですか。うふふ」 「っ!? さとりも、デコピンされたいのかしら?」 「え? どうしたんですか? 一体何が?」 「あんたは知らなくて良いのよ。黙ってなさい」 「うふふ、可愛い人なんですね、霊夢さん。取り乱した文さんも可愛かったですが、霊夢さんも充分可愛いですね」 「あーもうっ、文! 次のお便りいくわよ!」 「えっ、あ、はい。っと思ったら、もう終わりらしいです」 文がちらっとガラスの外を見ると、カンペに「もうこのコーナー終わり」と書かれていた。 「えっと、短いゲストコーナーでしたが、さとりさんありがとうございました!」 「ん……お疲れ様」 文は営業スマイルで、霊夢は少しそっぽを向きつつ言った。 そんな二人が何故かおかしくて、さとりはクスッと笑う。 「どうでしたか、さとりさん? 簡単に感想でも」 「そうですね、初めてで緊張しましたが、お二人の掛け合いを見てリラックスすることが出来ました。純粋に楽しかったわ。二人とも、可愛かったですし」 「う……」 「さ、さとりっ! あんたねぇ……」 意地悪い笑みを浮かべるさとりに、二人は言葉に詰まる。 反論しようにも、二人の今の心も読まれている。勝ち目はなかった。 「う、うぐぐー! というわけで、今回のゲストは古明地さとりさんでしたー! ありがとうございましたー!」 「いろいろかちんときたけど、とりあえずお疲れ様」 「ありがとうございました。とても楽しかったです」 ~少女CM中~ 「あ、すみません紫様」 「どうしたの、藍?」 「塩を切らしていました。これじゃあ味付けが……」 「藍、そんなときはこれよ」 「はい?」 「ス・キ・マ・の・塩!」 商品名、スキマの塩。 購入方法は、「スキマの塩くださーい」とその場で叫ぶと、紫が気紛れで送ってくれるとかなんとか。 ~少女CM終了~ 「エンディングですー」 エンディング曲『風神少女(文の鼻歌付き版)』が流れる。可愛らしい声で、風神少女のメロディーを口にしている声が聞こえる。 「本日はゲストコーナーがあったので『幻想風靡で一発解決』のコーナーはお休みでした」 「はぁ、なんか今日は前回以上に疲れた気がするわ」 「やっぱりさとりさん相手だと、思ってることがばれちゃいますからね。初ゲストがさとりさんっていうのは、誰も予想できなかったんじゃないでしょうか」 「そうね、私も意外に思ったわ。てっきり、魔理沙とかそこらへんが来るのかなって思ってたわ」 よほど疲れたのか、大きくため息を零す霊夢。 「まぁ、これはこれで面白かったんじゃないですかね?」 「聴いてる方には楽しいでしょうけど、私からすれば大変だったわよ」 「あ、あははーそれは私も同じでしたが」 思わず文も苦笑い。 けれど、二人とも口には出さないが、楽しかったのは事実だ。 「さて、それではこのへんで締めましょうかね。お便り、ゲストさんへの質問など、たくさんお待ちしていますー!」 「また誰か来るのかしらね」 「さぁ、どうでしょう? それはまだ私も分かりませんけど。さぁ、霊夢さん、あの言葉を」 「う……あれ、やっぱり言うの?」 先週霊夢が噛んで、恥ずかしい思いをした言葉。 それがラジオの締めの言葉だから、絶対に言わなくてはならない。文は、ただ頷いた。 「あ、あややややー!」 「おぉ!」 「ふ、ふぅ……良かった。ほ、ほら! 今回は噛まなくて言えたわよ!」 「霊夢さん、これが言えただけで笑顔ではしゃぐなんて……」 「っ!?」 言い終えた瞬間、ぱぁっと明るい笑顔になった霊夢を見て、文は今日何度目か分からないニヤニヤ。 霊夢はその視線に気付き、自分の行動が恥ずかしくなってきた。 「霊夢さん、可愛いというかなんというか……」 「そ、そんな目で見るなぁ!」 「ちょ、目に針は危ないですってばー!?」 結局、先週同様にどたばたしたまま、ラジオは終わった。 あとがき みここここー! あややややー! どうも、あやれいむ布教委員会会長の喉飴です。 なんだかとっても第2回放送を望む声が多かったのと、実際にお便り(メッセージ)が送られてきたので、仕上げてみました。ちなみにそのお便りは、作中でそのまま使わせてもらっています。こういう参加タイプも面白いかなとか思ったり。 ゲストはさとりさんをお迎えしました。他にも3人くらい候補がいたのですが、あえてさとりさんで。 さて、そんなこんなではありますが今回のお話、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。 |
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